汗を流す女性達を嗅ぎつけて……

■リプレイ

●本能塗れの使いっぱしりども
　熊本県人吉市。
　依頼の為、この地へとやってきたケルベロス達が降り立つ。
「温泉を利用する皆さんの安全を守ってみせます！」
　首にチョーカーをつけたウェアライダー、ミリム・ウィアテスト（リベレーショントルーパー・e07815）は元気に意気込みを見せる。
「あの……、なんとかと鋏は使いよう……なんて言いますけど」
　この状況はさしずめ使い手を選べない鋏職人の悲哀と言ったところだろうかと、恥ずかしがり屋なクララ・リンドヴァル（本の魔女・e18856）が皮肉を言う。
　今回の場合、鋏職人はドラゴン。鋏は討伐相手オークだろう。
「いつ鋏を使われても良いように、心の準備はしておきましょう」
「ふっふっふー、オークの触手に加えて、服だけを溶かすスライムって組み合わせは、いかにもやらしいわねー♪」
　クララはオーク相手に心構えをしていたようだが、いつもハイテンションなイーリス・ステンノ（オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16412）などはその限りではないらしく。
「ココは身を挺してでも、スライムからいたいけな女性たちを庇うべきよね！！」
　どうやら、オークとスライムという組み合わせに、小悪魔的な性格のイーリスは食指が動いたらしい。
「女性の汗はしょっぱくもどこか甘いといいますが……、オークに味わわせるには勿体無いものですよね」
　非常に大きなバストが目を引くクノーヴレット・メーベルナッハ（知の病・e01052）も、オークに思う事があったようで。
「しっかり退治してしまいましょう」
「温泉をオークやスライムに汚されるわけにはいきませんよね。彼らにはご退場願いましょう」
　見た目も性格もおっとりした、深園葉・星憐（天奏グロリア・e44165）だが、クノーヴレットに同意してしっかりと自らの意見を語る。
（「下卑た奴らの相手なんてしたくないなぁ」）
　今回のチームで唯一、男である青い瞳の晦冥・弌（草枕・e45400）はマイペースに考えて。
「まぁ、温泉に入れるならいいや」
　そうして、彼は女性ばかりのメンバーを追って歩いていくのである。

　温泉に到着したメンバーは各自、敵の襲撃に備える。
　脱衣所の前で待機する弌と花筐・ユル（メロウマインド・e03772）のシャーマンズゴースト、助手を残し、女性メンバー達は中に入っていく。
　多少、気だるげな表情も見せるユルは客を装いながらも、淡々とバスタオルやバスローブの用意を進める。
　イーリス、星憐は手頃な場所で話をし、クララも壁の付近に佇んで状況の推移を待つ。
　他の女性メンバーは、浴場へと入っていた。
　ミリムは狐のウェアライダーの八尾・空子（吉備道中国の妖狐・e65999）と共に温泉に浸かって待機する。
　程なく、それらは突然やってきた。
「「「ブヒヒヒヒイイイィィッ！！」」」
　浴場の壁を破壊し、咆哮を上げて現れたオーク達。
　気構えしていたクノーヴレットが早速、殲滅にと向かっていく。
「……来よったか。豚風情が妾の湯浴みを邪魔するとは、余程命が要らんとみえる」
　空子も言葉巧みに相手の注意を引いていくのだが、何せ敵の数が数だ。
　一部のオークは脱衣所にも女性の匂いを嗅ぎつけ、そちらの壁を破壊してなだれ込んでいく。
　先頭にいた１体が脱衣所にいる人々目掛け、スライムをぶちまけていく。
「「「きゃあああああああっ！！」」」
　脱衣途中の女性の衣服、または浴場に向かおうとしていた女性のバスタオルにスライムは浴びせかかり、布地を溶かしていく。
　それは、脱衣所にいたメンバーにも被害を及ぼして。
「ウプッ！」
　脱衣所方面へと一般人を誘導していたミリムは、スライムを顔面にクリーンヒットさせていた。
「……もうっ」
　クララもまたスライムに服を溶かされ、赤面してしまう。
　そばの星憐も巻き込まれ、スライムと共に服が所々消えていくのを感じていたが、すかさず、難を逃れたユルがバスタオルを手渡していく。
「温泉に入るのに、脱ぐ手間が省けるわね♪」
　こちらも、服を溶かされていたイーリス。
　一般人を庇った彼女はユルからバスタオルを受け取り、そのまま眼前のオークも引きつけていた。
「ケルベロスよ。脱衣所の入り口から外へ」
　割り込みヴォイスを使うユルはケルベロスコートでスライムに溶かされた衣装をカバーし、端的に一般女性に避難を促す。
　外に出る女性達と入れ替わるように、弌が突入していく。
「避難誘導に従って、落ち着いて逃げて下さい！　ぼく達ケルベロスが、必ず皆さんをお守りします」
　女性達の裸には見向きもせず、弌も破壊された壁の代わりとなるようオークの前に立ち塞がっていった。
　バスタオルで体を覆う星憐の手前には、ミリムの姿がある。
「豚の好きなようにはさせない！」
　毅然と立つミリムがオークに立ち向かい、その脅威から女性達を護るべく敵へと攻め入るのだった。

●女性の体を堪能する豚ども
　オーク出現を受けて混乱する温泉の女湯、及び脱衣所。
　クララはダイナマイト変身してバスタオルを手渡した女性達を励ましつつ、オークが開けた壁の穴から彼女達を外へと誘導する。
　退路の確保に当たるユルは脱衣所方面から人々を逃がす役を担い、割り込みヴォイスで呼びかけて避難を促していた。
「「「ブッヒヒイイイイィィ！！」」」
　さて、主に浴場で暴れるオーク達は背中から伸ばす触手に力をこめ、実に上機嫌に叫ぶ。
「あん、や、やめっ……」
「ううん、豚のくせに、そんな、ああっ！」
　すでに６、７名の女性がオークの触手に絡めとられ、粘液にまみれたその尖端を乙女の柔肌の上で滑らせていく。
　クノーヴレットは女性の身代わりとなるべく、前線に出ていた。
　火球を飛ばし応戦する彼女の１ｍを超えるバストがオークも気になるのか、沢山の触手が集まる。
　それにクノーヴレットも進んで交わり、その感触を楽しんでいたようだ。
　こちらも前線でミリムがブルーフレイムソードを構え、女性を捕えたオークの触手を切り落とそうとしていた。
「抑えてる間に避難を！　早く！」
　拘束から逃れた女性は叫ぶミリムの言葉を聞いて破壊された壁に向かい、バスタオルをくれたクララに礼を告げて外へ飛び出していく。
　ただ、ミリムの刃は触手を裂いたが切り落とすとはいかず、オークはその触手で彼女の体を捕えてしまう。
「むぐっ？！　捕まった！　離せー！」
　じたばたと抵抗するミリムだが、触手はめざとく彼女の脇の下から胸へと忍び寄ってくる。
「あっ……、ひあっ！」
　その感触は気持ち悪いのになぜか意思に反して出る自身の嬌声を、ミリムは忌々しく感じていたようだ。
　イーリスも前線で捕まる女性の解放の為、螺旋の力を込めた掌を触手に当て、破壊しようとしていた。
　その一方で、イーリスは小悪魔的な笑みを浮かべ、太股を擦ってくる触手の動きを楽しんでいるフシさえある。
　楽しみながらも、どこかその目は怪しく輝いていたのが怖い所だ。
　前線で敵を抑えるメンバーのケアには、主に弌が当たっていた。
　スペースに対して敵の数が多すぎることもあり、ケルベロスはなかなか一般女性を護る布陣を築く事ができない状況。
　そんな中で、弌は仲間達や女性達にエクトプラズムで擬似肉体を作っていく。
　それらはオークの触手刺しや溶解液などを浴びた衣服を幻想交じりに修復し、女性達の失われた体力も補填していった。
　女性の裸をまるで気にせぬ弌はこの場で男性１人という状況であっても、戦いそのものを楽しんで立ち回っていたようである。
「ほら、皆、頑張るのじゃ」
　オウガ粒子を空子もオークの触手を受けてはいたが、一歩離れた立ち位置を気がけて戦場を動いており、魔力を込めた咆哮でオークの足を止めようとしていた。
　基本、仲間任せな態度も抱かせる空子だったが、捕まった女性の危機を察して自信ありげに相手を挑発して。
「ほれ、その貧相な触手は飾りかの？」
　空子の挑発にオークはにやりと笑い、背中の触手を一斉に伸ばして彼女を襲う。
　それらの触手攻めを受ける空子だが、余裕ありげな態度をほとんど崩してはいない様子だ。
　仲間達を苛む触手から距離をできるだけとる星憐は、一般女性を狙うオークを魔力を込めた瞳で見つめていく。
「ぶひひひひ……」
「ぶ、ぶひっ」
　オーク同士が触手を絡め合う姿に、逃れた女性が顔を引きつらせながらこの場を後にしていた。
　仲間がうまくオークを抑えてくれていたこともあり、一般女性の避難を進めたクララも戦列に加わって。
「……ふ、『不変』のリンドヴァル、参ります……」
　オークの出現に顔を上気させていたクララは２年ぶりの交戦であることを思い出しながらも、この場に図書運搬用の荷台を召喚して。
「汝に木の壁を与え給う」
　年季の入ったその荷台を彼女は横合いから突進させ、オークの体をひき潰していく。
　やや苛立ちを見せたオーク数体が彼女を狙い、溶解液を飛ばし、さらに腰のくびれへと触手を絡ませる。
「やだ……、こんな……！」
　オークの触手によって恥ずかしさを覚え、クララは顔を赤面させていた。
「……手前の麗しい花を護らないとね」
　ユルは盾になる助手の働きを横目で見ながらステップを踏み、花びらのオーラを降らして仲間の回復へと当たる。
　オークはよだれを垂らして触手を伸ばし、その麗しい彼女の体を縛りつけようとしていく。
　それでも、ユルが大きな反応を見せずに冷めた視線で見つめると、オークは一層彼女に関心を示して触手を勢いよく振り上げたのだった。

●お仕置きはしっかりと！
　温泉の浴場、脱衣所で繰り広げられる戦い。
　相手に非物質化した爪で殴りかかるシャーマンズゴースト、助手。
　その助けを受けるユルは別の触手に手足を縛られながらも冷静にフェアリーブーツでステップを踏み、仲間の不浄を振り払う。
　メインの回復手となる弌も、触手攻めで体力を大きく失ってしまった仲間の為にとエクトプラズムで作った擬似肉体で包み込み、さらにカラフルな爆発を巻き起こして支援回復に当たっていた。
　程なくして、触手を堪える女性ケルベロス達の健闘もあり、床に落ちた最後の一般女性が這い出すようにして浴場の外へと飛び出していく。
　後は全力で、オークを排除するのみ。
　それまで、オークからいいようにされてきたミリムは憤慨しながらも、恥ずかしさと怒りを織り交ぜて叫ぶ。
「盛大な花火のお披露目だ！」
　自らの武器に多少の爆発物を巻きつけ、彼女は猛然と敵陣を殴りつける。
　その斬撃と爆発に巻き込まれ、オーク達の体が次々に爆ぜ飛んでいく。
「――狙った獲物は、逃がさないかな♪」
　イーリスは後から触手で嫌がらせをしてくるオークへ七色の衣纏いし伝書鳩を飛ばし、刃となった羽でオークの触手をえげつなく切り裂いていった。
　その後ろから、星憐が刃状にしたワイルドスペースを腕に纏わせ、オークの腹から顔目掛けて大きく切り上げる。
「ブヒイイイィィ！！」
　断末魔の叫びを上げ、絶命していくオーク。
　十分に触手を堪能したクノーヴレットは、武器と化したエクトプラズムで殴りかかるミミック、シュピールに合わせてそっとオークに近づく。
「さぁ、私のこの指で奏でて差し上げますから、素敵な声で歌ってくださいね……♪」
　彼女は魔力を込めた指先で、相手の敏感な部分を擦る。
「ブヒイイイイイイイッ！！」
　オークは溜まらず己の欲を全て解き放ち、力を出し尽くして果てていった。
　全面攻勢にケルベロス達が出れば、オークの数は瞬く間に減っていく。
　暴走ロボットのエネルギー体を敵陣へと向かわせていた空子はさらに、声高らかに号令をかける。
「さあ！　八尾の首領たる妾の名の下に集え狐妖共よ。妾に背く愚か者を蹂躙せよ！」
　彼女の声に応じて現れたのは、無数の狐妖達。
　狙ったオークの体を瞬く間に蹂躙してしまい、ただの肉塊へ化してしまう。
　残るオークが少なくなっても、ケルベロスは容赦はなく攻めていく。
　クララは残る力攻めのオーク２体目掛け、振るったファリミアロッドの先から火球を投げ込む。
「「ブヒイイイイ！！」」
　その爆発によって体を無残に焼き焦がし、だらしなく舌を垂らして白目をむくオーク達。
　敵の全滅を受け、俯いたままのクララは息をつく。
　彼女は戦場となった浴場にバスタオルを投げると、それはふわりと床に落ちていったのだった。

●温泉はいいものだ
　オークを殲滅し終えれば、メンバー達は手早く事後処理へと当たる。
「怪我はありませんか？」
　仲間や一般人を気がける弌は脱衣所の外に用意していた大きなタオルの山を女性メンバー達へと渡し、被害者女性達へと渡すよう依頼する。
　その上で彼はエクトプラズムを使い、破壊された壁やロッカーの修復へと動いていた。
　触手の不快さが残る中、ユルは周囲に花びらのオーラを舞わせ、空子はオウガ粒子を飛ばし、クノーヴレットや星憐は桃色の霧を展開していく。
　ヒールグラビティを持たぬクララやミリムは、手作業での手伝いをしていたようだ。

　そうして、ケルベロス一行は女湯を幻想交じりに修復し終えて。
　かぽーん。
　男湯では弌が１人、鼻歌を歌いながらぽかぽかと温まる。
　広い湯船でのんびりとするのも、実に良いものだ。
　一方、女湯では。
　豚どもに触れた部分を、ミリムが丁寧に洗い流す。
　同様に、体を洗い終えた星憐も湯船に入って一息つく。
「温泉はいいものです」
「はぁー、極楽極楽。骨身に染みるのう。これで酒でもあれば言うこと無しなんじゃがな」
　そばでくつろぐ空子は、ケルベロスというのは面倒事が多いと嘆息する。
　しかしながらも、こうした場所を利用する恩恵に預かる事もまたケルベロスの特権だと彼女は笑う。
「そうですね」
　非常に大きな２つの丸い物体を水面に浮かべ、クノーヴレットも頷いていた。
「もうオークもスライムも懲り懲りです」
　ただ、自身の体を余り見せたくないのか、頭と体にバスタオルを巻いたクララは湯に顔をうずめるようにして小さく告げる。
　そこで、イーリスが大声でハッとして。
「替えの服、忘れてたわっ！」
　さすがに、もらったバスタオルで外に出るわけにはと考えていた彼女。
「それなら、後で買出しに行くわね」
「ありがとっ、助かるわ！」
　そこで、ユルが何気なくフォローを入れると、イーリスも安心して再び湯に浸かり始めていたようだ。
　のんびり、まったり。
　ケルベロスはしばしの間、猛暑の中で溜まった疲れを心ゆくまで癒すのだった。

作者：なちゅい	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年9月14日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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