キノコの女王は危険な香り

作者:雷紋寺音弥

●美味しいキノコ狩り?
 人里離れた森の中。少しばかり開けた場所にて、何やら白い煙の立ち昇っている。
「やはり、秋と言えばキノコ狩りの季節だ。しかし、折角のキノコ狩り。世間一般に出回っている、スーパーマーケットで買えるようなキノコを食しても意味は無い」
 屋外調理用のガスバーナーに掛かっている鍋の前にいるのは、なにやら赤いキノコのような帽子を被ったビルシャナだった。
 その手に握られているのは、真っ赤な傘に白い斑点のような瘤が付いたキノコ。どう見ても、メルヘンの世界に登場する妖精が座っていそうな代物で、人間が食せるとは思えないのだが。
「野山のキノコで最も至高の味を誇るのは、やはりキノコの女王であるベニテングタケを除いて他にない! 毒キノコとして知られてはいるが……なぁに、少しばかり食したところで、苦しいのは一瞬だ。究極の美味を前にして、腹痛程度で引き下がれるはずがない!」
 高々とキノコを掲げ、叫ぶビルシャナ。殆ど自殺の勧めにしか思えない主張だったが、周りにいる一般人たちは、今や完全にビルシャナに感化されており。
「うぉぉぉっ! は、早く、そのキノコを俺にも食わせてくれぇっ!」
「猛毒がなんだ! キノコの女王様に甚振られて死ねるなら、俺は本望だぜぇっ!」
 完全にトリップ状態になった患者の如く、一斉にキノコへと群がり始めていた。

●それは食べたら駄目です!
「キノコ狩り……この季節には、いいっすよね。でも、これは駄目っす。いくらなんでも、危険過ぎるっすよ……」
 その日、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)よりケルベロス達に伝えられたのは、究極のキノコを求め、それを食すことを推奨するビルシャナが出現したとの報だった。
「ビルシャナが勧めているのは、よりにもよってベニテングタケっす! 見た目は可愛くて美味しそうでも、下手に食べたら一般人は、命の保証がないっすよ!」
 ベニテングタケ。赤い傘に白い斑点の付いた、可愛くも毒々しいキノコである。当然、見た目通りに強烈な毒性を誇り、吐き気、眠気、発汗と言った症状を引き起こし、果ては多幸感や、健忘を経て、混乱や幻覚、昏睡といった症状を経て、最悪の場合は死に至る。
 ちなみに、解毒剤は存在せず、吐かせる以外の療法はない。そんな危険な毒キノコなのだが、何故か味だけは恐ろしく美味い。なんでも、含まれている毒の成分が強烈な旨味作用を持っているらしく、一般的な出汁成分の実に10倍近い旨味なのだとか。
「そういうわけで、ビルシャナの周りにいる10人程の信者達も、完全に危険なキノコの味に魅了されているっす。説得して救い出してあげたいところっすけど……正論は、まず通用しない相手だと思った方がいいっすね」
 ビルシャナの影響力により、信者達は『美味いキノコが食えれば死んでもいい!!』といった、重度のキノコ狂になっている。正論は元より、普通の料理程度では、彼らの頭や舌を元に戻すことは殆ど不可能だと思った方がいい。
 彼らを説得する際に、重要なのはインパクト。美味い、不味いに関係なく、衝撃的な味のする何かを食べさせれば、そのショックで目が覚めるかもしれない。
「戦いになると、ビルシャナはキノコを使って攻撃したり、キノコを食べて体力を回復したりするみたいっすね。それと、信者達もビルシャナのサーヴァントみたいな状態になって、皆さんに向かって来るっす」
 もっとも、信者達の戦闘力は、ケルベロス達の敵としては最弱レベル。ちょっとした攻撃でも死に兼ねないので、できれば先にビルシャナの影響下から解放し、戦場から遠ざけておくのが望ましい。
「野山のキノコは秋の味覚っすけど、美味しければ死んでも構わないなんていうのは、さすがに拙いと思うっす。これ以上、被害が広まる前に、危ないビルシャナを退治して欲しいっす」
 最後に、それだけ言って、ダンテは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
暁星・輝凛(獅子座の星剣騎士・e00443)
四辻・樒(黒の背反・e03880)
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)
月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)
フィオ・エリアルド(ランビットガール・e21930)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
キャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)

■リプレイ

●ザ・クイーン・オブ・マッシュルーム!
 薄暗く、人気のない森の中にある小さな広場で、白い煙が立ち昇っている。
「やはり、秋と言えばキノコ狩りの季節だ。そして、キノコと言えばベニテングタケ!」
「1本くらい食ったところで、いきなり死ぬなんてこともないはずだ!」
 キノコ傘のようなものを頭に乗せたビルシャナを中心に、キノコ中毒になった信者達が、もう待ち切れないと言った表情で、箸と皿を用意してスタンバイしていた。
「山の幸が美味しい季節なのはわかるんだけどね……」
「いくら死ぬとは限らないからって……流石に食べたくはないなァ」
 トリップ寸前な信者達の様子に、フィオ・エリアルド(ランビットガール・e21930)やペスカトーレ・カレッティエッラ(一竿風月・e62528)は早くもドン引きしていた。
 はっきり言って、これは拙い。信者達の瞳には既に目の前のキノコしか映っておらず、毒のリスクや後遺症といった言葉が、完全に抜け落ちてしまっている。
「美しい花に棘があると言うが食も一緒なのだな……」
 妙に感心しているエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)の言葉は、どこか的を射たものだった。
「キノコ、キノコ、おいしいキノコ……」
 そんな中、若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)だけは、何故か目の前のキノコに視線を定め、物欲しそうにしていたが、それはそれ。
「みなさん、本当にキノコが好きなんですね。これでもどうぞ」
 まずは信者達の気を逸らさねばと、キャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)がキノコ型のチョコレートを差し出した。が、既に目の前のキノコしか見えていない彼らにとっては、そんなものは紛い物のイミテーションにしか過ぎなかった。
「はぁ? なんだぁ、このキノコは? どこからどう見ても、ただの菓子じゃねーか!」
 案の定、信者達の反応は辛辣である。まあ、それも無理のない話だ。彼らが魅せられているのはキノコの形ではなく、凄まじい美味さを誇るというベニテングタケの味なのだから。
「え? 食べないんですか? まさか、皆さん、タケノコ派ですか?」
「なんだ、そのタケノコ派ってのは? 俺達は正真正銘、根っからのベニテングタケ派だぜ?」
 それでも喰い下がるキャロラインだったが、どうにも視点がずれているためか、信者達と話が噛み合わない。とうとう、しまいには強引にチョコ菓子を食べさせようと迫ってみたものの。
「タケノコ派じゃないんなら、食べていただけますよね?」
「うるせー! さっきから、訳の解んねぇこと言ってんじゃねーよ!!」
 チョコ菓子を叩き落とされ、そのまま踏み付けられてしまう始末。
 やはり、彼らの頭を正気に戻させるには、普通の食べ物では駄目なのだ。だが、それでもこれで時間は稼げた。信者達やビルシャナの意識がキノコ鍋から逸れた瞬間。そこを狙って、めぐみがキノコの入った鍋を奪っていた。
「もう我慢できません……いただきま~す」
 そう言うが早いか、鍋の中で茹でられていたベニテングタケを食べまくる。明らかに、一般人にとっては致死量とも言える数を食べているのだが、そこは彼女とてケルベロス。防具の力も巧みに併用すれば、毒キノコであろうと、なんのその。
「こ、これは……!! 美味しい! 美味し過ぎます!!」
 赤い傘を口に放り込んだ瞬間、めぐみの顔が恍惚の色に包まれた。芳香かつ濃厚な至福の味。ベニテングタケの猛毒成分であるイボテン酸は、同時に強烈な旨味の成分でもある。
「あぁっ! お、俺達のキノコが!?」
 ここに来て、ようやく信者達が気付いたようだが、もう遅い。既にベニテングタケの半分は、めぐみの腹の中だった。
「確かに美味いキノコは良いものだ」
「ベニテングタケなのだ。樒、あーんするのだ」
 ドサクサに紛れ、四辻・樒(黒の背反・e03880)と月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)の二人も、めぐみの奪った鍋に箸を突っ込んで、互いに食べさせ合っていた。
「こ、これは……物凄く美味しいのだ!」
「毒キノコが美味いのは知らなかった! 灯にこうやって食べさせて貰うと、更に美味しい気がする」
 怒りの信者達をそっちのけで、完全に二人の世界に入っている灯音と樒。さすがに、これにはビルシャナもブチ切れ、彼女達からキノコを奪還すべく鍋へと翼を伸ばしたが。
「まあまあ、そう怒らずに」
「ビルシャナさんも、あーんするのだ」
 灯音と樒の二人から強引にベニテングタケを口に押し込まれたことで、瞬く間に至福の表情に。
「ん……んまぁぁぁぁい!!」
「あぁっ! お、俺達にも……そのキノコを食わせてくれぇっ!!」
 たった一口食べただけで、口から涎を垂らしながら叫ぶ鳥頭。そして、目の前で繰り広げられる光景に、もはや辛抱堪らん状態になっている信者達。
 やはり、その魅力的な旨味に打ち勝つには、ショック療法が不可欠であろう。そう確信したケルベロス達は、次なる手段に出ることにした。

●壮絶、ショック療法!?
 赤いキノコの誇る魔性の味に魅せられて、もはや自分さえ見失っている信者達。彼らの心を正気に戻すべく、まずは暁星・輝凛(獅子座の星剣騎士・e00443)が語り掛けた。
「そもそもの話をするんだけどさ。僕、キノコ類ってそんな好きじゃないんだよね……」
 のっけからの、爆弾発言。しかし、重度のベニテンジャンキーである信者達は、その程度ではたじろがない。
「だったら、さっさとこの場から去ればいいだろーが!」
「そうだ! そうすれば、残りのキノコは全部俺達のものだぜぇっ!!」
 ともすれば、自分の取り分が増えると言って譲らない始末。しかし、それでも彼は諦めず、フィオの持っている瓶を指差して言った。
「世の中には、もっと衝撃的な食べ物ってのがあるんだよ。美味いキノコを食べられるなら死んでもいいっていうけどさ……実際どんな衝撃があるのか、まず試してみたら?」
 そう言って彼が指差した先にあったのは、瓶詰めになっている大量の虫! さすがに、この見た目には、信者達も一瞬だけ怯むような素振りを見せた。
「お、おい……。なんだ、その薄気味悪い代物は……」
「……え、これ? ヘボ……の、佃煮。ヘボ知らない? クロスズメバチ。はちのこって呼んだりもするけど」
 平然とした様子で語るフィオだったが、知らない者からすれば、これはなんともグロテスク。もっとも、見た目に反して味は意外とクリーミー。成虫も、小エビのような風味でなかなか美味い。
「これ初めての人いるー? いたらそこの君だ! ほら、まずは口いっぱいにどうぞ!」
「えぇっ! お、俺かよ!?」
 いきなり輝凛に名指しされ、信者の内の1人が明らかに動揺していた。が、そんなことはお構いなしに、フィオが半ば強引に瓶の中身を口の中へと押し込んだ。
「ほら、見た目に惑わされずに。遠慮しなくていいから。大丈夫、大丈夫♪ ……良いから食え」
「むぐっ!? ぐふぉっ……うぐがげげ……」
 いきなり口の中に虫を押し込まれた信者は、あまりのことにパニック状態。だが、それでもしばらくすると、落ち着きを取り戻して佃煮を飲み込んだ。
「……ふむ。思っていたより悪くないな。しかし……」
 味の面では、ベニテングタケの方が数段上だ。衝撃という点では間違っていなかったが、視覚だけでは、やはりインパクトが薄かったか。
「それより、お前達は食わんのか? 他人に勧めておいて、それはないだろう」
「僕? 僕は……その……前に経験したから今回はいい、かな……」
 思わず目を逸らす輝凛。どうやら完全に墓穴を掘ってしまったようだが、フィオはそんなことも予想済み。
「あ、輝凛君には私が張り切って美味しいお弁当作ってきたから!」
「お弁当……って、手作り!? 作ってくれたの!?」
 依頼の緊張感など、どこへやら。どうやら、この場にいるリア充は、灯音と樒だけではなかった模様。そして、その灯音と樒はといえば……めぐみと共に、未だ鍋をつついていた。
「ん~、美味しい……ッハ!? こんな場合じゃないのだ! 樒、準備はいいのだ?」
「ん、準備はできているぞ灯」
 だが、さすがに拙いと思ったのか、唐突にドレスやタキシードに着替えると、どこからともなく巨大なケーキを運び出して積み上げて行く。
 そんな彼女達の作ったケーキは、トマト尽くしの真っ赤っか! 見た目だけなら、ベニテングタケの親玉に見えなくもないものであり。
「樒ー、大好きなのだー」
「私も大好きだ」
 そして、何故かいきなり始まる結婚式。互いに抱き合い、その後に深々とケーキ入刀。これにはビルシャナも信者達も呆気に取られるだけだったが、それこそが彼女達の狙いでもある。
「旨味成分が堪能したいなら発酵食品に限る。発酵食品は毒キノコと違って体にもいいしな」
 そういうが早いか、樒は徐に魚の描かれたラベルの缶詰を取り出して、それをビルシャナと信者達に向けて開封した。
「「うぎゃぁぁぁっ!!」」
 途端に広がる、阿鼻叫喚の地獄絵図。
 そう、何を隠そう樒が開封した代物は、世界一臭いとされる発酵鰊の缶詰だった。
「さあ堪能するがいい」
 倒れた信者達の口の中へ、樒は追い討ちとばかりに缶詰の中身を押し込んだ。瞬間、口の中に広がる臭気に耐えられず、彼らは咀嚼もできないまま意識を失った。
「発酵食品なら、こちらにもあるぞ。実は……猛毒を乗り越えてでも美味を求める君達に、是非とも食して貰いたい食べ物があってな」
 完全にパニック状態になっている信者達に、続けてエメラルドが何かを勧めた。どうやら、チーズの類のようだが……問題なのは、やはりその臭い! 別名、『神のおみ足』や『豚の蹄の間』等とも称される、衝撃的な臭気のチーズ!
「エポワス、と言うチーズだ。匂いのきつい食べ物が美味しい例には事欠かないが……このチーズもその類だ。しかも、いつでも食べられるキノコと違って、日本で食べたければ輸入するしかないのだ!」
 それでも、キノコを先に食べたいのか。ならば、そのキノコにもエポワスを掛けてやる。そう言って信者の口にチーズを押し込めば、彼らの顔は至福と苦痛の交錯する天然の顔芸状態に!
「こ、これは……確かに美味……って、臭ぇっ! 臭すぎる! だが、しかし美味……いや、やっぱり臭ぇぇぇっ!!」
 なにやらゲテモノゲテモノグルメパーティの様相を示していたが、それはそれ。
「さあ、口直しにベニテングタケのパスタはどうかな?」
 駄目押しに、ペスカトーレがタッパーに詰めた、真っ赤なパスタを信者達に勧めて回った。だが、それはベニテングタケパスタ等ではなく、尋常ではない量のチリペッパーを使った激辛パスタ。
「「フォッ……フォヴォォォォッ!!」」
 文字通り、口から火を吐くような辛さに、信者達は顔面の穴という穴から汗を噴き出し、そのまま舌を痙攣させて卒倒した。だが、それでもビルシャナの支配からは、解放されたので結果オーライと言えるだろう。
「うふふ、キノコ、キノコ……めぐみのキノコ」
 そんな中、いつの間にか残ったキノコを全てめぐみが平らげてしまったことで、とうとうビルシャナがブチ切れた。
「お、おのれぇ……! お前達、あのキノコ泥棒どもを、ここで血祭りに上げてやれ!」
「うぉぉぉっ! 俺達のキノコを返せぇぇぇっ!!」
 半狂乱になりながら、突進して来るビルシャナと残りの信者達。猛毒キノコの旨味にやられた彼らの姿は、正に危険な薬でトリップしている、危ない連中そのものだった。

●キノコの見せた夢
 壮絶ショック療法にて信者達を解放したケルベロス達だったが、それでも全てを救えたわけではない。缶詰やパスタなどを口にしなかった者達は、キノコを奪われた恨みで猛然とケルベロス達に襲い掛かる。
「いい加減に、目を覚ますのだ!」
「こんなことなら、騙してでも全員に缶詰を食べさせるべきだったか」
 灯音と樒が、襲い来る信者達を懸命に気絶させようと試みるが、残りの信者達は4名程。残念ながら、彼女達だけでは手が足りない。
「あなたに見せてあげます。めぐみとキノコさんの絆を……。シロちゃん、あの鶏の動きを止めて!!」
 ナノナノのらぶりんに仲間達を守らせつつ、めぐみが異世界より召還した菌糸で投網を編んで、ビルシャナ目掛けて投げ付けた。が、ビルシャナだけを狙うには、彼女の技は攻撃範囲が広過ぎた。
「「うぎゃぁぁぁっ!!」」
 ビルシャナと同じ隊列にいた者や、咄嗟にビルシャナを守ろうとした者。そんな信者達も纏めて飲み込んでしまい、哀れ彼らは白い菌糸の栄養に。
「うぅ……キ、キノコに抱かれて……逝かせてくれるのか……」
「お、お嬢さん……あんたこそ、正真正銘のキノコの女王様だぜぇ……」
 だが、何故か最後はめぐみを崇拝しながら、信者達は恍惚の表情を浮かべたまま土に還って行く。不幸な事故と言わざるを得ないが、それでも彼らに後悔の二文字は存在しなかった。
 兎にも角にも、これでビルシャナは丸裸。こうなれば、もう遠慮する必要は無いと、ケルベロス達は全力で攻撃開始!
「うぐぐ……。こ、このままでは、やられてしまう!」
 さすがに戦力差を感じたのか、キノコ爆弾を投げ付けながら逃げの体勢に入るビルシャナだが。
「その傷ついた翼を広げ、再び大空高く羽ばたいていけ!」
「食べるべきとするキノコを、爆弾として攻撃の手段に使うとは何事だ!」
 キャロラインの紡ぐ歌声で、爆弾の効果は綺麗サッパリ解除され、お返しとばかりに放ったエメラルドの弓が、ビルシャナの尻に突き刺さった。
「いくら美味しいからって、毒があるものをバクバク食べるなんてどうかしてるヨ!」
 ベニテングタケには即効性の毒だけではなく、体内に蓄積するタイプの毒もある。そんなものを食べさせるなど、正気の沙汰ではないとペスカトーレの拳がビルシャナを殴り。
「これで終わりだよ」
「……喰い千切る!」
 最後は、輝凛とフィオの刃が重なって、十字に斬り裂かれたビルシャナは、そのまま二人の背後で爆散した。
「樒、一緒に帰るのだー。晩御飯はお肉がいいのだー!」
「ん、じゃあ今日は美味しい肉を買って帰ろうな」
 全てを終えて、樒と灯音は意気揚々と、秋の山を下って行く。その一方で、エメラルドは生き残った信者達に、改めてエポワスの良さを説いていた。めぐみはめぐみで、一般人でも食べられる食用キノコを取り出して、改めて鍋を作り出し。
「うむ、こう言ったチーズも中々美味しいものだろう? そも、このエポワスというチーズは一時期、絶滅してしまうかも知れなかった歴史があってな……」
「折角、お山に来たのです。皆さんで、安全なキノコを食べませんか?」
 秋と言えば、食欲の秋。木々の葉も色付き始めた秋の山々にて、そんな言葉を思い浮かべる光景が広がっていた。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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