無頼の徒

作者:八幡

●回遊
 静まり返った夜の町。
 人気のない道の上を三つの影が揺らめいている。
 よくよく目を凝らせば、その三つの影は大きな魚のような姿をしており……この熱帯のような夜の空気の中を悠然と海遊しているようだった。
 しかし、そんな魚が地球上に存在するはずもなく。それが死神であることは誰の目にも明らかだった。
 魚の死神は一定の距離をゆらゆらと泳ぎ、泳ぎ回る奇跡が魔方陣のように浮かび上がる。
 そして、魔方陣のようなものが完成すると、その中央に一人の男が出現した。
 人の二倍はあろうかと言う巨漢に全身を包む鎧。その姿はエインヘリアルであるが……隆々とした筋肉ははち切れんばかりに膨張し、手にした斧を潰さんばかりに握り締め、目と耳からは赤い液体を流し続けている。
 常軌を逸したその姿もまた死神のなした業だろうか。
 それから、魔方陣のようなものが空気に溶けるように消滅するのと同時に、蘇ったエインヘリアルの目の前の道が爆音とともに砕け……その中心に剣を持つエインヘリアルが降り立ったのだった。

●戦闘狂
「死神の活動が確認されたんだよ!」
 小金井・透子(シャドウエルフのヘリオライダー・en0227)はケルベロスたちの前に立つと、話を始める。
「今回確認されたのは、かなり下級の浮遊する怪魚みたいな死神なんだけど……この怪魚型死神は前にみんなが倒した罪人のエインヘリアルを変異強化した上でサルベージして持ち帰ろうとしているみたいなんだよ」
 怪魚型死神。この知性を持たない死神が、死者を蘇らせて持ち帰ろうとする……それだけなら今までにも報告のあった事例だが、
「それだけじゃなくて、罪人のエインヘリアルがサルベージされるのと同時に、別の罪人のエインヘリアルが出てくるんだよ」
 他に何かあるのか? と言うケルベロスの視線を受けて透子は頷く。
 罪人エインヘリアルのサルベージを援護するエインヘリアルの妨害行動……それは、エリン・ウェントゥス(クローザーズフェイト・e38033)が危惧していた事態だろう。
「エインヘリアルは斧を持ったエインヘリアルと、剣を持ったエインヘリアルの二体だよ」
 エインヘリアルが二体か、と唸るケルベロスたちへ透子は続ける。
「斧を持ったエインヘリアルは、前にみんなが倒したエインヘリアルなんだけど、完全に知性を失っていて目の前のものに力任せに攻撃してくるみたいだよ」
 もともと野獣のようなエインヘリアルだったが、完全に知性を失い本物の野獣と化したようだ。否、中途半端な知性が無くなった分、以前より厄介になっているかもしれない。
「剣を持ったエインヘリアルは……全てを殺す。黙って殺す。まずは殺す。っていうとにかく好戦的なエインヘリアルで、みんなを見たら迷わず攻撃してくるんだよ。それと、少しでも弱いと判断されると、執拗に攻撃してくるみたい」
 剣のエインヘリアルについて話しつつ、透子は自分の肩を抱く。
 人の命を奪うことが第一。目をつけられたら命を奪うまで諦めない、生粋の殺人者。そんな存在は透子のような力無い者には恐ろしいのだろう。
 だが、力と知性を持つケルベロスならば、付け入る隙ともなるに違いない。
「後は、怪魚型死神が三体居で、この死神は咬みついて攻撃してくるんだけど、あまり強くはないみたい」
 強くは無いと言っても油断はできないけどと、透子はケルベロスたちを見つめて続ける。
「みんなが着いた時には周囲の避難は完了してるんだけど……戦闘する場所以外の住民は避難していないんだよ」
 それは、広域の避難をした場合にグラビティ・チェインの確保ができなくなるため、死神の行動が変わることが予測されるからだ。
 予測が変わる事態は避けねばならないのだが、透子は話し辛そうに胸元を押さえ、
「サルベージされたエインヘリアルは、グラビティ・チェインを手に入れなくても七分後に死神に回収されるから、住民への被害を考えなくていいんだけど……新しくあらわれたエインヘリアルは、そのまま残っちゃうからみんなが倒せなかった場合、かなりの被害が予測されるんだよ」
 万が一、新しいエインヘリアルの撃破に失敗した場合は、住民に被害が出るだろうと告げた。
 何を選択し、何を諦めるのか……あるいは、全てを抱える覚悟を持って挑むのかを考える必要があるだろう。
 それから透子は真っ直ぐにケルベロスを見つめ、
「大変なお仕事だけど、なるべく多くの人を助けてあげてね!」
 胸元に両手を合わせながら、ケルベロスたちにあとのことを託した。


参加者
二羽・葵(地球人もどきの降魔拳士・e00282)
伏見・万(万獣の檻・e02075)
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
円谷・円(デッドリバイバル・e07301)
未野・メリノ(めぇめぇめぇ・e07445)
ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)
一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)

■リプレイ

●開戦
 人気のない町は何処か現実離れしており、薄ら寒くすら感じる。
 そんな町中を駆け抜けつつも、ふと空を見上げれば、町の明かりで姿を消された星の中に月だけが煌々と輝き――その空に穴が開いたかと思うと、穴の中より現れた一つの大きな影が地上へ向けて落ちて行く。
 落ちていく影を追えば、そこには三つの魚のような異形と斧を持つ大男……斧を持つエインヘリアルの姿があり、羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)は胸元で揺れる少し無骨な首飾の感触を確認するように触れてから大きく息を吸い込む。
「好き勝手はさせません」
 それから空から降ってきた影……剣のエインヘリアルが地上へ降り立つその横を走り抜けて、半透明の御業で斧のエインヘリアルを鷲掴みにした。
 唐突に体を掴まれた斧のエインヘリアルは口から赤い液体を垂れ流して身を震わせ、自分の真横を抜けた紺へと反射的に剣のエインヘリアルが腕を振るおうとするが……それより先にエインヘリアルたちを視界にとらえた、玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)が殺気を放つと、ウイングキャットの猫の体毛が青白く変化する。
「行け」
 人懐っこい表情も消えて鋭く冷たい瞳でエインヘリアルたちを睨む猫へ陣内が命じると、猫は翼を羽ばたかせて強い冷気を放つ。
 放たれた冷気はエインヘリアルたちと、浮遊する三体の怪魚こと死神をまとめて包み込む……が、紺の御業を振り払おうと飛び上がった斧のエインヘリアルがこれから逃れる。
 逃れた斧のエインヘリアルに視線を向ける陣内の前で猫は敵を薙ぎ払うように尻尾の輪を飛ばし、続けざまに繰り出された攻撃を煩わしそうに剣のエインヘリアルが受け止め、その動きに反応するように死神たちが陣内へ向かう。
 剣で受け止めたエインヘリアルの視線が猫へ向いた隙に、円谷・円(デッドリバイバル・e07301)はエイワズのルーンが刻まれたロングボウから妖精の祝福と癒やしを宿した矢を射ち、紺に敵の呪的防御を破る力を与え、
「蓬莱、こっちは大丈夫だからそっちは任せるよ!」
 円が放った矢を追いかけるように前に出たウイングキャットの蓬莱へ呼びかけると、蓬莱は陣内に向かって牙を突き立てようとしていた死神たちの前に躍り出て……その牙を全て受け止めた。
 噛みつく死神を振り払うように羽ばたいて邪気を祓う蓬莱の頭上を飛び越え、ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)は斧のエインヘリアルに接近すると、
「覚悟しやがれッ!!」
 流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを斧のエインヘリアルの胸へ叩き込む。
 命を蹂躙するのも、死を冒涜するのもランドルフにとっては許せないことなのだろう。渾身の一撃は違わず斧のエインヘリアルの胸を抉り、蹴った反動を利用して後ろへ飛んだランドルフはエインヘリアルとの距離をとる。
 ランドルフと入れ替わるように、二羽・葵(地球人もどきの降魔拳士・e00282)が駆け込んで、剣のエインヘリアルへ向けて鉄塊剣を振り下ろす。
 単純かつ重厚無比の一撃。だがエインヘリアルはそれを半歩引いて避けて……葵の鉄塊剣は虚しく地面に突き刺さる。剣のエインヘリアルはお返しとばかりに葵の頭上に星座の重力を宿した剣を振り下ろす。
 葵はその一撃を地面に突き刺さした鉄塊剣を軸に体を反転させて避けるも、完全には避け切れずに剣先が腕を掠めて肉を抉る。
「……っ!」
 焼き切られるような苦痛……だが、それ以上に葵は大げさに苦悶の表情を見せて、葵の表情を見た剣のエインヘリアルは口の端を上げた。
 仲間たちの最後尾についていた、伏見・万(万獣の檻・e02075)が剣のエインヘリアルの表情の変化を注意深く観察する中、
「グオオオ!」
 万の視界の先、ランドルフの一撃で体勢を崩していた斧のエインヘリアルが咆哮と共に立ち上がると目の前に居た紺の頭上から斧を振り下ろす。
 御業を放った姿勢のままの紺は頭上に迫る斧を回避できず、剣の一撃を避けるために体勢を崩した葵も反応できず……、
「やれやれ、倒した筈がまたお前と戦う羽目になるとはのう……」
 一撃を受ける覚悟を決めた紺の前に、一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)が立つ。
 紺の頭蓋を捕える寸前、白が如意棒で受け止めた斧のエインヘリアルの一撃は重く、如意棒を持つ手が震え、体を支える足と背骨が悲鳴を上げる。
 だが、それでも白は倒れず、ぶつかり合った如意棒と斧越しに自分を見下ろす斧のエインヘリアルに向けて、「前にもこんなこと、あったのう」と軽口をたたいて見せた。
「……力を、尽くしましょう」
 軽口をたたく白の背後にカラフルな爆発を発生させ、爆風を背にした白たちの士気を高めて傷を癒しつつ、未野・メリノ(めぇめぇめぇ・e07445)は金色の瞳でエインヘリアルたちを見つめる。
 自分たちが為すべきことを為さねば、あのエインヘリアルたちに多くの命が喪われる……そんなことはさせないと、メリノは覚悟を決めて、
「バイくん、力を貸して、ね」
 ミミックのバイくんへ指示を出すと、バイくんはエクトプラズムで作り出した武器で斧のエインヘリアルを殴りつけ、白のビハインドである一之瀬・百火が周囲の物に念を籠めて飛ばす。
 バイくんと一之瀬・百火の攻撃で斧の圧力が緩くなったところで、白は斧の下から抜け出し、葵へ向けて剣を構える剣のエインヘリアルの横へ張り付くと、二本の如意棒を百節棍と化して怒涛の乱打を叩き込む。
 真横からの攻撃を剣のエインヘリアルは咄嗟に剣で受け止めるが、受け止めきれない乱打が鎧に傷をつけ、そこから氷の膜が広がっていく。
「大盤振る舞いってか」
 そんな白の背中へ手を伸ばそうとする斧のエインヘリアルを、万は精神操作で鎖を伸ばして締め上げ……、
「食い応えありそうだなァ」
 挑発するように鼻で笑った。

●拮抗
 切り結ぶこと数度。
 長期戦を重視した円たちはエインヘリアル二体と死神三体の攻撃を無難にしのぐが、円たちにもまた決定打が無い状態だった。

 半歩後ろに下がりながら紺が指先を回すと、身に着けたマインドリングから光の戦輪を具現化する。
 具現化した紺の光の戦輪は斧のエインヘリアルの胸元と剣のエインヘリアルの腕を裂き、さらには死神たちをも切り裂いて虚空へと消え、体を裂かれて一瞬動きの止まったエインヘリアルの目の前で陣内が鳳凰と太陽が描かれた極彩色の大扇と月と牡丹が描かれた大扇を手に円舞のように舞うと、戦場の全方位に十八の光線が乱れ飛ぶ。
 陣内が放った閃光は斧のエインヘリアルの脚を貫くも、剣のエインヘリアルは半歩横に動いてそれを避ける。
 だが横に避けた剣のエインヘリアルの目の前をランドルフが駆け抜け、全身を覆うオウガメタルを鋼の鬼と化して斧のエインヘリアルの腹へと捻じ込み、ランドルフに続いて白が太い竜の尻尾を薙ぎ払う。
 白の尻尾は斧のエインヘリアルの足を捕えて体勢を崩させるが、剣のエインヘリアルは軽く飛び上がってこれを躱したが、さらに続けて体勢を崩した斧のエインヘリアルの足元へ電光石火のごとく駆け込んだ葵が、下から突き上げるように蹴りを放つ。
 葵の蹴りは斧のエインヘリアルの喉元に突き刺さるが……目の前で足を振り上げる葵を前に斧のエインヘリアルは高々と飛び上がり、斧を振り下ろす。
 足を振り上げた姿勢のままの葵はそれを避けることができず……葵の体から見ればあまりにも大きな斧が葵の肩口に深々と突き刺さった。
 その衝撃に思わず息が漏れるが、痛みなど感じる暇もなく、急速に失われる体液と感知できない苦痛に葵の意識が一瞬遠のく……が、
「やらせないんだよ!」
 鮮血を噴き出しながら崩れそうになる葵へ向けて両手を差し出すと、円は濃縮した快楽エネルギーを桃色の霧として放出する。
 桃色の霧は葵から失われたものを補完するように傷口へ収束して傷を癒すが、葵の姿に小さく舌をなめた剣のエインヘリアルが剣を横なぎに振るう。
 振るわれた剣から星座のオーラがほとばしり葵たちの体を裂いて虚空へ消える中、メリノは全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出し葵たちの超感覚を覚醒させ、
「ちいせぇ女ばかり狙いやがって」
 前衛の仲間たちの傷がメリノの粒子に癒されていく様を確認しつつ、万は砲撃形態に変形させたドラゴニックハンマーから竜砲弾を放つ。
 砲撃は斧のエインヘリアルの顔面を捕えて爆発するも、爆発の向こうに見える斧のエインヘリアルは倒れる様子が無く……その様子と、時計に設定したアラームの音を聞きながら万は小さく舌を打った。

●決着
「オオオオオ!」
 万の時計の音は他の仲間たちにも聞こえていたはずだが、だからと言って何が変わることも無い。
 七度目に斧のエインヘリアルが腕を振るった後、空に開いた穴に獣のような咆哮を上げながら斧のエインヘリアルは吸い込まれていった。
「ホワイトナイトは現れずか」
 吸い込まれていく斧のエインヘリアルへ一瞬視線を向けた陣内がつぶやく……あれを倒すつもりだったのなら危険を覚悟の上で攻撃を重視するか陣形を考えるなど、もっと攻めを重視した作戦が必要だったかもしれない。
 否、元々あわよくば斧のエインヘリアルを倒せれば良いと言う作戦だったのだ。だとすれば、単純に『あわよくば』の部分が無くなっただけの話。何より重要なのは地球の人々を守ることだ。
「やらねばいけないことは、変わりません、ね」
 いずれにしても住民を虐殺するであろう剣のエインヘリアルを放置することはできない。メリノは己の気を引き締めるように左手で胸元を押さえ、
「あの世へ送ってやらあッ!!」
 メリノに応じるようにランドルフが吠えた。

「絶っ対に、守りますから、ね……っ!」
 葵は剣のエインヘリアルから放たれたオーラを鉄塊剣で受け止め、背後の町に居るであろう住民たちを想う。
 もう演技の必要は無い……が、執拗に剣のエインヘリアルに狙われ続けた葵の体は限界に近かった。それでも背後の人々のためにも、全力でこのエインヘリアルを撃破しなければならないのだと、葵は歯を噛みしめて鉄塊剣を持つ手に力を篭める。
「勿論です」
 そんな葵の言葉に同意するように息を吐いてから紺は目にも止まらぬ速さで礫を放つ。放たれた紺の礫はエインヘリアルの眼前を通り過ぎて、死神の一体に直撃し……直撃した死神は音も無く宙で泡となって消えた。
 消えた死神の両脇で揺れる残り二体の死神へ陣内が天空に召喚した無数の刀剣を放ち、
「さァ、刻んでやるぜェ!」
 万が己の中に潜む獣の群れを幻影として呼びだすと、降り注ぐ刀剣の中を万が放った獣の群れが駆け抜ける。
 死神たちは万が放った獣たちの爪に掻き毟られ、切り裂かれて――刀剣の雨が止み、獣の群れが消えるころには跡形も無く消滅していた。
 陣内の刀剣と万の獣たちの幻影を避けるようにエインヘリアルが後ろへ飛んだ隙に、円は幻想の月を召喚する。
「月輪よ、かの者に再び立ち上がる力を!」
 それから加護を受けた呪言を葵にかけると……葵の傷口に月の光が集まり、円の月の加護を受けた葵は再び鉄塊剣を頭上に掲げて、単純かつ重厚無比の一撃を打ちおろした。
 葵の一撃は違わず剣のエインヘリアルを捕え、身を守るために思わず差し出した腕をあらぬ方向へと捻じ曲げる。
 だが、エインヘリアルは捻じ曲がった腕など構わずに、葵の喉元へ向けて星座の重力を乗せた剣を突き立て……、
「やらせぬよ!」
 その剣が葵に突き刺さる直前、葵とエインヘリアルの間に割り込んだ白がオウガメタルを纏った腕で受け止める。受け止めたと言ってもその威力を削ぎきることはできず……腕を貫いた剣の先は白の眼前でようやく止まった。
 致命傷を受けたわけではないが、体力を奪うには十分な一撃……腕を貫く灼熱のような感触に白の膝が折れる。だが、剣のエインヘリアルは狙った相手以外に剣を突き刺したことに舌を打ちし、
「この白銀の拳を見よ! 畏れよ!! そして砕け散れえッ!!」
 折れた白の頭をかすめるようにランドルフが左右の拳を連打すると、丁度白の頭上あたりに在ったエインヘリアルの顔面を綺麗にとらえた。
 回復弾の生成に使用していたグラビティ・チェインと気を純粋な攻撃エネルギーとして生成し、咆哮による音波衝撃を纏わせ、威力を大幅に増幅させた銃魂技であるそのコンビネーションブローの威力は確かなもので、剣のエインヘリアルの顔面が悲惨に歪んだ。
「支えて見せますっ」
 ランドルフがエインヘリアルの顔面を捉えるのと同時にメリノは両手を白へと差し出すと、満月に似たエネルギー光球を白へとぶつける。
 メリノの光球を受けた白は地面につきそうになる寸前で踏ん張り、凶暴性を高めるように吠えると、百火の両腕に纏った鎖を無数に飛来させてエインヘリアルの四肢を拘束する。
「如何なる強靭な肉体を持とうと―――コイツには無意味じゃ」
 それから自分の頭上で拘束される形となったエインヘリアルの腹を突き上げるように掌底を叩き込むと、極限まで練り込んだ気のグラビティ・チェインを流し込んだ。
 撃ち込まれた気とグラビティ・チェインはエインヘリアルの内側で混ざり合い極大な破壊力を生み出し――爆発するように背中から中身を噴き出させると、完全にエインヘリアルの活動を停止させたのだった。

●帰還
「終わりました、ね」
 消え去るエインヘリアルを前にメリノが呟いていると、足元にバイくんが近づいてくる。
「皆さん無事で何よりです」
 近づいてきたバイくんを抱き上げるメリノの姿を横目で確認しつつ葵はほっと胸を撫で下ろし、
「完勝とはいきませんでしたが、役目は果たしました」
 紺は勝利を噛みしめるように頷いた……確かに完勝とはいかなかったが、紺たちは十分に役割を果たしたと言えるだろう。
「腹立たしい連中だ」
 とは言え……と、命を弄ぶものたちの目論見を完全に潰せなかったことにランドルフが唸る。
 ランドルフの苛立ちもまた致し方の無いことだ。サルベージされたエインヘリアルを逃したことによって、家の中に出た虫の姿を見失うような……得も言われぬ気持ち悪さが残ったのは確かなのだから。
「何を企んでいるのやら」
 ランドルフの唸り声を聞きながらエインヘリアルが消えていったあたりを見つめて、陣内は呟く。
 エインヘリアルと死神……相容れないと思っていた二つの勢力、果たしてどちらが親なのやらと思考を巡らせる。
「何かやってきたら、また潰すだけじゃ」
「ちがいねぇ」
 だが、何があっても返り討ちにすればよいと白が胸を張り、万も何とでもするさと鼻で笑って見せた。そんな彼らに陣内はそれもそうだなと頷いた。
「早く帰ろうよ!」
 それから、既に帰る準備万端な円が手を振ると……一行は円に促されるように帰路へと着いたのだった。

作者:八幡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月15日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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