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その日。
岡崎・真幸(異端眷属・e30330)は、古書店へ向かうべく雑踏をとぼとぼと歩いていた。
ボクスドラゴンのチビが自分より狭い歩幅で後からちょこちょこついてきているのを、耳だけで確認しながら、通い慣れた道を進んでいる——筈だった。
「……?」
ふと気づいた時、行き交う人々の声や足音はすっかり遠退いて、真幸は人っ子ひとりいない小道の上にいたのである。
「此処はどこだっけか……?」
聴覚だけでなく思考にも靄がかかり始めた頃、
「やあ、こんなところにいたんだね。探しちゃったよ」
少年のものらしき爽やかな声音が耳を打った。
嫌な予感がして真幸が振り向けば、黒を基調とした装束に身を包んだ少年が、人好きのする笑顔でこちらを見ていた。
プラチナ色の瞳は穏やかな光を湛え、深い藍色の髪には蓮らしき花が咲いている。
「探す? 何の為に?」
内なる動揺を抑えて真幸が問う。
「決まってるじゃない。キミを殺すためにだよ!」
少年は優しげな言い回しに似合わぬ俊敏な動きで、真幸に斬りかかってきた。
右手に握られた鋭く尖った菖蒲の葉が、植物とは思えぬ重く硬質な感触でケルベロスコートを引き裂いてくる。
「御多分に洩れず話が通じない事は理解した」
真幸は苦虫を噛み潰した顔で臨戦態勢を取った。
●
「皆さん、困った事になりました。岡崎真幸殿が狂信者 マキナなるドラグナーに襲われると、予知してしまったのであります……」
小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が深刻そうな面持ちで言う。
「すぐ岡崎殿へ連絡を取ろうとしたでありますが、やはり繋がらず……もしやすると既に交戦中なのかもしれません…」
それだけ、事態は切迫しているという事になる。
「どうやら一刻の猶予も無いであります。どうか皆さん、岡崎殿がご無事なうちに、いち早く現場へお出向きください……」
深々と頭を下げるかけら。
「狂信者 マキナは、グラビティを込めた様々な植物を武器がわりにして攻撃してくるであります」
刃物そのままの斬れ味を誇る『花菖蒲』は、遠くにいる敵にさえ命中させる射程の長さと、相手へ反撃の隙を与えず追い撃ちをかけられるぐらいの敏捷性を誇る。
「また、『蒲公英の綿毛』を勢いよく吹きつけて、苦無のように何本も突き刺してくるであります」
複数人に当たる魔法な上に、綿毛が刺さると毒にまで冒されるのだから油断ならない。
「更には、『木苺の果実』をその頑丈さに任せて投擲、敵複数人の攻撃グラビティの威力へ悪影響を与えてきますので、お気をつけくださいましね」
かけらは再び頭を下げて頼み込む。
「どうか岡崎殿をお助けして、狂信者 マキナを撃破してくださいませ。宜しくお願い致します……」
参加者 | |
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翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814) |
エンデ・シェーネヴェルト(フェイタルブルー・e02668) |
土岐・枢(フラガラッハ・e12824) |
唯織・雅(告死天使・e25132) |
リョウ・カリン(蓮華・e29534) |
岡崎・真幸(異端眷属・e30330) |
天喰・雨生(雨渡り・e36450) |
華嵐・スラッグ(ヴァルキュリアの刀剣士・e42489) |
●
静まり返った小道。
「ああ、やっと会えた。もう気が逸ってしょうがないよ。早くキミを殺さなくちゃ」
狂信者 マキナは明るい物言いで饒舌に喋るや、花菖蒲の鋭い葉で斬りつけてきた。
(「会いたかったが、会いたくもなかった……どうせ確実に殺し合いになると分かっていたしな」)
咄嗟に庇った左腕へ疾る痛みを堪えながら、岡崎・真幸(異端眷属・e30330)はマキナと対照的に無言の行である。
オールバックに近い短髪に3色の彼岸花を咲かせたオラトリオの男性だ。
物言いはかなりキツく、上から目線がデフォルトの偏屈な性格。
それでも最近は教え子と恋人を大切にしていて、愛情表現しようにも加減が解らず、恋人を引かせている模様。
(「だが、ケリはつけなければならないとも思っていた。殺す気で来るなら、応えるまでだ」)
マキナが笑顔の裏の殺意をまざまざと見せつけるにつれて、真幸の内心は次第に冷え切っていく。
機敏に跳躍してから、重力宿りし飛び蹴りを頭蓋へ食らわせて平衡感覚を削ぐ様も、因縁ある相手故の躊躇いは感じられない。
ボクスドラゴンのチビは最初オロオロしていたものの、真幸が反撃したの機に彼へ属性インストールを敢行、深い刀傷を塞いだ。
「じわじわ嬲り殺しにされたいのかな?」
だが、マキナは攻撃の手を緩めず、真幸を容赦ない綿毛の雨が襲う。
「真幸一人だと思った? 残念だったね」
すると、一本足の高下駄で器用に走り込んできた天喰・雨生(雨渡り・e36450)が真幸を背中で庇い、彼の代わりに毒を喰らった。
黒くふわふわしたくせっ毛と表情豊かな紫色のツリ目が人好きしそうな、妖剣士の少年。
その華奢な身体と低い背丈から女の子と間違われる事もあり、やはり年頃の男子らしくその度に酷く激怒するとか。
しかし、日頃は自らが用いる術の研究に専念していて、他にはとんと無頓着だそうな。
「お前には何の恨みもないけれど、生憎、襲われてる人を放っておく趣味もなくてね」
雨生はマキナへ負けじと爽やかに言い放って、手に嵌めた透墨から光の剣を顕現。
マインドソードでマキナの肩をズバッと斬りつけ、言い知れぬ威圧感を奴に植えつけた。
呆気にとられる真幸の視界の端に、ふっと照り映えた白刃が映る。
「さて、大きなお世話かもしれないけど、手助けさせてもらうよ。同胞が殺されるのは見てられないからね」
こちらも急いで駆けつけたリョウ・カリン(蓮華・e29534)が構える、天鱗の切っ先だ。
物心ついた頃から奴隷として飼育されてきたという、シャドウエルフの少女。
長く伸ばしたツインテールに青を基調とした髪飾りやワンピースがよく似合っている。
躰中に魔術回路を埋め込まれた証か、虎にも傷跡にも見える炎の呪紋が全身に散らばっていて、今は行き場を失くして彷徨いながら生きる意味を探しているのだとか。
「最初からドーン!」
リョウは天真爛漫に叫んで、到底常人には視認困難な斬撃を繰り出す。
まるで影のように密やかな一太刀をマキナの背中へ浴びせて、平衡感覚をますます奪った。
「花、……なるほど。かわいらしい武器たちねえ」
翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)は、乾ききった無表情の中に瞳だけを眇めて、マキナの花菖蒲を眺める。
たっぷりとした漆黒の髪に煌々と輝く翡翠色の瞳が特徴の、華奢なシャドウエルフの少女。
一見したところ物静かなお嬢様に思えるも、その実は大雑把で面倒臭がりなガサツ娘。
だが、笑顔を忘れた能面の裏では、心にぽっかりあいた穴と浮いたままの悲しみを何となく持て余している一面も。
「でも、エンデの咲かせる花のほうが、ずっと恐ろしくて……きれいだわ」
どことなく陶酔した物言いで懐いている仲間への賛美を口にするロビン。
その間にも手元のゾディアックソードはすらすらと守護星座を描いて、前衛陣の異常耐性を上昇させた。
続いて。
「俺にとっちゃただの敵でも、因縁のある奴にとっては念願だったり思い入れがあったり、色々するもんらしいからな」
そう真幸の心情を斟酌するのはエンデ・シェーネヴェルト(フェイタルブルー・e02668)。
切れ長なコーンフラワーブルーの目と次第に青みがかっていくグラデーションが綺麗な黒髪を持つシャドウエルフの青年。
かつては螺旋忍軍に薬漬けにされ、暗殺人形と揶揄される程、自我を奪われた状態で酷使されていた。
その為か意識に当時の悪夢と恐怖と隷属気質が色濃く刷り込まれ、彼の人格形成に影響を及ぼしているという。
「道は開いてやるよ、見せ場も真幸に譲るさ——精々その手前までは暴れさせて貰うとするかな」
エンデはさっぱりした顔で呟いて、電光石火の蹴りを放つ。
マキナの急所目掛けた旋刃脚が嫌な音を立てて、とてもすぐには立ち上がれない程の衝撃と激痛を奴へ齎した。
「銀河随一の、お節介。ケルベロス……只今参上、です」
唯織・雅(告死天使・e25132)は、丁寧な口上こそたどたどしいが、強い意志を窺わせる眼でマキナを睨みつけた。
鴉の濡羽色と灼光が如き眩さの翼が上下に一対ずつ生えたヴァルキュリアの少女。
切り揃えた黒髪と鏡を述べたような銀の瞳、動き易さを重視した羽織袴が、まるで日本人形の趣である。
死した鎧装騎兵からはその志と力を受け継ぎ、定命化してからは日本の老夫婦に名を貰って、今は高校に通っているらしい。
「それでは……参り、ます」
控えめに宣言しては、全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出する雅。
前衛陣の超感覚を覚醒させると共に、彼らの集中力をも高めた。
ウイングキャットのセクメトも主へ従って清らかな翼を羽ばたかせ、後衛陣の異常耐性付与に努めている。
「援護しますよ、岡崎さん」
仲間へ衒いなく声をかけて、バスタードソードを抜くのは土岐・枢(フラガラッハ・e12824)。
肩につくかつかないかで切り揃えた茶色い髪と穏やかな光を湛えた瞳が印象深い、ブレイズキャリバーの少年。
そんな柔和な容姿とは裏腹に、戦闘スタイルは力押しで荒々しく、大剣を頼りにひたすら前へと突き進む。
また、幼少から音楽に親しんで育ち、かつては吹奏楽部にも所属していた枢。得意な楽器はトランペットで、現在は東京の私大に通っているそうな。
「どんな理由があろうと、僕の仲間は傷つけさせませんよ」
枢はじりじりと前へ進み出るや、突然目の色を変えてマキナへ肉薄。
まさに伝説の狂戦士が如き——捨て身覚悟の強引極まりない剣戟を披露して、マキナの足を本能的な恐怖で竦ませた。
「部下の窮地であるからな。現上司の私は助太刀せぬ訳には行くまい!」
華嵐・スラッグ(ヴァルキュリアの刀剣士・e42489)は、やたら偉そうな物言いで啖呵を切る。
絹を縒ったような金髪と涼やかな碧眼を持つ年齢より相当若く見えるヴァルキュリアの女性。
美人である事を自覚しているせいかプライドが高く、パートナーには人生経験が豊富で美しい年上男性を求めている。
もっとも、美形だらけの親族の中育った為、理想が高くなるのも仕方ないのだろう。
「……私が足手まといにならねば良いが……」
虚勢の中に隠していた本音をぽつりと洩らしつつ、ドラゴニックハンマーへ空の霊力を宿すスラッグ。
マキナの背中へフルスイングして、確実に命中させるのみならず、奴が下腹へ負った衝撃の度合いも強めた。
●
「全く、往生際が悪いとはこの事だね」
狂信者 マキナは如何に頭から血を流そうとも表情と声音だけは涼しいままで、変わらず花菖蒲の刃を振るってくる。
「させるか!」
戦闘開始から既に6分経過している。雨生は真幸が狙われるのを見越して、可能な限りダメージを肩代わりしていた。愛用のフード付きローブもすっかり血に染まっている。
すかさず草臥・衣(神棚・en0234)が護殻装殻術で彼の怪我を治癒する。
「フレイム、……いくよ」
てのひらにひとつ、ひとかけらの硝子片を喰らい生み出されたはらぺこ火の玉をベスチアの焔に纏わせるのはロビン。
すいたすいた、腹が空いたと嘆く炎の舌は赤々と揺れて、渾身の力でマキナの顔面を撲りつけると同時にめらめら燃え盛った。
「目を閉じろ。耳を塞ぎ、息を殺せ。さもなくば」
ロビンと息の合った動きで、エンデは警告と共に黒猫を嗾ける。
帳垂れ込める深淵の闇の先、ゆらりゆらり鮮やかに光の尾を引く青——青い眼の黒猫の百の鬼をも喰らい尽くした牙が、マキナの魂に喰らいつけた。
「血に応えよ――天を喰らえ、雨を喚べ。我が名は天喰。雨を喚ぶ者」
厳かな雰囲気で一族に伝わる術『雨呪』を詠唱しながら、『第零帖壱之節・解天』を用いて解析作業に入るのは雨生。
マキナの身体の内へじわりじわりと水が染み出すように水塊を生成して、奴の呼吸を遮断、溺れもがくかの如き苦しみを味合わせた。
「炎、水、ときて……また炎だったりして」
リョウは捧げ持ったネクロオーブから水晶の炎を生成。
熱を持たぬクリスタルファイアを弾丸のように飛ばして、マキナの身体を服ごと無残に焼き切った。
「生きる力は、魂の力。それぞれの、存在の形。今、共々に鳴り響き。いざ、生を奏でよ……」
己が翼の一対に表れるが如く、月の光と夜が司る『安らぎ』と『休息』を齎そうと、特殊な力場フィールド『生命の場』を展開する雅。
「そう、簡単には……墜とさせは、しません」
今まで流石に無傷では居られなかった真幸の『魂の波長』を共振調律して、生命力などの活力を与えた。
セクメトも懸命に尻尾の輪を飛ばして、少しでもマキナへ打撃を与えようと必死である。
「この前はワタシが見つけたビルシャナの依頼でお世話になったから! 信者の説得が難しいの分かってて来てくれたし、今度はワタシが助ける番!」
そんな義理堅い思いを胸に、真幸を手助けしようと現れたのはマヒナ。
「どういう因縁かは知らないけど……マサキには大切な人も、大切に思ってくれてる仲間もいるんだからアナタには諦めてもらうしかないよ」
きっぱりと狂信者 マキナへ言い放つや、エクトプラズムが圧縮されてできた大きな霊弾を奴の腹目掛けてぶち当てた。
シャーマンズゴーストのアロアロも己が爪を非物質化して、マキナの霊魂を直接斬りつけている。
「大分、攻撃が当たるようになってきましたね」
枢は、皆が地道に繰り返してくれたスターゲイザーや轟竜砲の効力を実感して、バスタードソードを構え直す。
余計な動きの一切を削ぎ落とした斬撃がマキナを圧倒し、その背筋を凍らせた。
「敵の持っている花の花言葉が意味深なのだがわざとなのだろうか……仮にそうだとすれば心境が非常に気になるな」
と、マキナの扱う花菖蒲、たんぽぽの綿毛、木苺を気にするのはスラッグ。
「それとも偶然……ううむ」
悩んではいるものの『殺しに来た敵へは全力で相手をするのが礼儀』と武人みたいな信念を貫いて、『砲撃形態』のドラゴニックハンマーから竜砲弾をぶっ放した。
「こんな……徒党を組んでかかってくるなんて……反抗的だね」
狂信者 マキナは、あれだけ滑らかだった舌が上手く回らない程に疲弊していた。
もはや虫の息な彼を目の当たりにして、真幸の胸に様々な思いが去来する。
「昔聞いた事は、ある程度は理解出来るようになった」
かつて共に暮らしていた兄貴分から、不器用ながらも家族愛を注がれていた事。
後々になってあれはそうだったのだと理解したものの、当時の想い出は確かに幸せであったと今にしても思う。
「少し前まではアンタに殺されるのも悪くないと思っていた」
しかし、その兄貴分と敵対した時から、狂信者 マキナとの殺し合いは避けられない運命だったとも感じる。
「だがもう、出来ない。こちらに大切なものが増えすぎた」
全て自分の都合なればこそ自分の手で終わらせる——真幸は強く決意すると共に、異世の神々の一部を召喚。
「……一緒に居られなくてごめん」
マキナの全身を強烈な冷気に晒して、ついに息の根を止めたのだった。
(「埋めてやる事も、情から捨て置く事も俺には出来ない……敵対種族故に」)
苦い顔で掌からドラゴンの幻影を放射し、真幸はマキナの遺体を焼却する。
それでも、散らばった蓮の青い花弁や花菖蒲の葉、たんぽぽの綿毛を、何気ないそぶりで拾っていた。
「ありがとな」
振り返って仲間達へ礼を言う彼の声は心なしかさっぱりしている。
他人の為に顔色を繕うなどしない性格だとよく解っているスラッグなどは、その感謝が上辺だけでない事や、本人がどこか吹っ切れたような心境なのを察して、驚きと安堵が綯い交ぜになった心地で見守っていた。
霧が晴れた雑踏に生々しく残る戦闘の痕跡は、雅や雨生、マヒナがヒールして、道そのものを修復する事で消し去った。
その後は、
「古書店行きてぇんだけど。本、読みたい」
エンデの提案もあって、ケルベロス達は真幸の当初の予定、古書店での買い物へ同行した。
「古書店? ……わたしも、ついていこうかな」
読書はちょっと、ニガテなんだけどね——ぼそっと呟くロビンだが、その足取りはどことなく期待に弾んでいる。
「なんか良い魔導書ねぇかなー」
店へ入るなり瞳を輝かせてオカルト関連のコーナーを漁るエンデは、心底楽しそうである。
「オカルト、ねえ……魔術書のたぐいでも混じってないかな」
彼と気の置けない友人である為か、ロビンの思考も自然に彼と似通ってくるようだ。
「四大元素にまつわるモノでもあれば、うれしいけど」
それでもロビンの探し求めている系統の書籍でお眼鏡に叶うものは無かったようで、
「いい本、あった? 読みやすくて面白そうなのあったら、教えてちょうだい」
と、エンデの手元をひょいと覗き込んでいたりする。
その一方では、
「こういう本は、初めてですね……」
日頃オカルトに縁のなかった雅も、読み易い神秘学の入門書を見つけて、パラパラと捲っている。
「これは……相当昔の総譜なのでしょうね。貴重です」
枢は音楽関連の書物を集めた本棚の前で、クラシックについて書かれた本を興味深く漁っていた。
「魔術書は流石に置いてないだろうけど、占いや呪いの本くらいは……あれ?」
リョウは気の赴くままに色んな書棚を見て回った末に、
「へえ、40年以上前の占星術の本かー、掘り出し物かも!」
お目当ての本を見つけて、楽しそうに歓声を上げた。
「オカルト物、というより、オカルトだと思われて魔術書とか紛れ込んでそうで……」
そんな期待に胸を膨らませていた雨生は、
「あった! 割と新しめの魔術書!」
現代魔術なるものを体系ごとに理論的に解説したマニュアル本を発見、早速手に取って読み始めた。
「兄弟に何か買って帰ろう……とびきり危険な物をな」
などと、最初こそ悪どい笑みを浮かべていたスラッグだが、
「……ほうほう」
すっかり廃墟を取り上げた本の虜になって、自分が読み耽っている始末。
「……はっ、いかん。本に食われてしまう」
ふと我に返ったものの、廃墟暮らしを面白おかしく綴ったハウツー本が余程気に入ったのか、
「しかしこれは面白いな。兄弟達も読むかもしれない」
他の廃墟の写真集などと共に、購入して帰るつもりのようだ。
同じ頃。
そうは見えなくても古書店に着いてテンションの上がった真幸は、ひたすらレアなオカルト本や魔道書を探し当て掻き集めていたが、
「……この、多方面からの殴り込みや私刑のような喧嘩の売り方……小気味好いとでも言うのか、面白い切り口の本だ……」
ふと目にした、科学的や生物学的見地から超常現象について詳しく解説した本を読んで、買おうか真剣に迷い始めた。
彼の左脇には、いつの間に見つけたものか、花がモチーフのタロット本も挟まっている。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年9月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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