
酷暑に陰りが見え始めた八月末の頃合い。それでも残暑と言うには厳しい夏の暑さは、今もなお、日本列島を覆っていた。
ならばと海への行楽が流行るのも道理。遊園期間が八月末までと長きに渡る南国九州は特にそうであった。
人々は涼を求め、海水浴場へ足を運ぶ。
そして、それは、人々を獲物とするデウスエクスもまた同じであった。
「きゃーっ! 何処触っているのよ!」
海水浴場に絹を裂くような声が響く。悲鳴を上げた女性はまとわりつく触手から逃れようと身じろぎするものの、そこは神ならぬ一般人の悲しきサガ。デウスエクスの膂力を前に、その努力は無意味と化してしまう。
「ぐふふふふ。サイコーな狩場だブヒ!」
喜色混じりに醜悪な声を上げるのはデウスエクス――オークだった。戦利品の如く触手で捉えた女性を掲げ、身に纏う衣装をびりびりと引き裂いていく。
オークの乱暴に露わになるのは豊満な裸身――ではなく、水着に包まれた肢体であった。
「何するのよ! 馬鹿っ。変態っ!」
罵倒の言葉もなんのその。水着の女性を抱えたオークはにやりと笑うと、魔空回廊へと消えていくのだった。
「この水着とかいう薄っぺらい服も気に入ったでブヒっ!」
フェチズム漂う、そんな言葉を残して。
「クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)が心配していた通り、海開き後の海水浴場を狙うオークが現れたわ!」
リーシャ・レヴィアタン(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0068)の言葉は焦燥半分、呆れ半分に紡がれていた。
その真意は、次の言葉に集約されていた。曰く――。
「……そのオーク達だけど、どうも水着が好きらしいの」
なんかどうも目覚めてしまったらしい。どうしてこうなった。
「とは言え、狙いはいつもと同じく、女性の拉致。今回は海水浴場に集った水着女性を狙うようね」
だが、未来予知の結果を元に、彼女達を事前に避難させてしまった場合、オーク達は違う海水浴場を襲撃する結果になりかねない。避難誘導そのものはオーク達が出現した直後に行わなければならないのだ。
「女性達の避難が完了しないまま戦闘に突入した場合、彼女達がオークに悪戯される可能性もあるわ」
それは可能な限り避けて欲しい。それがリーシャの頼みでもあった。
「で、肝心のオークだけど、ちょっと水着に偏っちゃった趣味の普通のオークね」
好色の延長線上に水着フェチが入ってしまったのだろう。水着姿の女性を見るとそっちに注意が逸れてしまうようだ。
なお、オークの攻撃方法は触手での殴打や咆哮による攻撃力アップ。数は20体と多いが、一体一体はケルベロス達より弱い為、確実な撃破を心掛ければ問題ある相手ではないだろう。また、水着姿が好みと言う事で、水着に着替えていれば、色々な場面で約に立つものと思われる。
「あんまりお奨めしないけど、水着姿の女性を囮にして撃破する、と言う手もあるわ」
先のお願い通り、出来れば避けて欲しいけど、とリーシャが零す。
なお、海水浴場にいる女性客は10名程度の様子だ。無事避難誘導を行う為には、ケルベロス側も、或る程度、人数を割く必要があるだろう。
「オークによる略奪行為を許しておけない。まして、水着女性なんて。オークに似つかわしくない事を思い知らせて欲しいの」
そうしてリーシャはケルベロス達を送り出す。ヘリオライダーとして女性として、オークの行為に憤懣を抱かずにはいられない様子だった。
「それじゃ、いってらっしゃい」
いつもの言葉は、荒い鼻息と共に紡がれていた。
参加者 | |
---|---|
![]() アンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715) |
![]() アンナ・トーデストリープ(煌剣の門・e24510) |
![]() クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545) |
![]() 黎泉寺・紫織(ウェアライダーの鹵獲術士・e27269) |
![]() カレン・シャルラッハロート(シュトゥルムフロイライン・e44350) |
![]() リーア・レオノーラ(紫銀の戦棍法師・e61699) |
![]() リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102) |
![]() ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164) |
●夏ももう終わり
2018年の夏は「とにかく暑かった」。それが、クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)が抱いた感想であった。
記録的な猛暑、例年類を見ない異常気象、連日行われるデウスエクス達による襲撃……。
「ぶひーっ。女だ女っ。水着でブヒよっ!」
海水浴場に木霊するオーク達の歓声は、デウスエクスによる襲撃の最たるものであった。
つまり、この事件、彼らが元凶であったのだ。
「今年の夏は水難事故が多発していると言うが……もしや、こいつらも関わっているんじゃないだろうか?」
海水浴場上空に広がる魔空回廊を見やり、げんなりとした表情を浮かべる美女がいた。
その名はジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)。ライフセーバーのアルバイトに従事していた彼女もまた歴としたケルベロスの一員だ。ライフセーバーシャツを押し上げる膨らみが、これ以上なく、自身を誇示していた。
「オークみたいな雑魚なんて怖くないよ。リリがやっつけてやる」
その傍らで、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が小さな胸を張る。罵倒の言葉に対し、しかし、青い瞳は剣呑な光を帯びている。その愛らしげな表情に、油断の色を伺う事は出来なかった。
「オークを倒して、最後の夏の海を楽しんじゃおうか」
欠伸混じりの黎泉寺・紫織(ウェアライダーの鹵獲術士・e27269)の台詞に、ケルベロス達は応と頷く。
斯くして、夏の最後の戦い――海辺を巡る番犬とオークとの戦いの火蓋は切って落とされたのだった。
「水着好きのオークかぁ、オークにも色々いるんだね」
そんな感想を抱くのはカレン・シャルラッハロート(シュトゥルムフロイライン・e44350)だった。布面積小さい青色のビキニに身を包んだ彼女は、色々と垂涎な膨らみが零れそうで、風体としては目の毒であった。むしろ肌色は余すところなく零れているのだが、その狙いはむしろ。
「水着ブヒーっ!」
好色なデウスエクス、つまりオークの目を引くのに一役買っていた。
無論、オークを誘惑……もとい、囮役として奮闘するのは彼女だけではない。
「さぁ、悪しきオークさん。こちらで相手になりますよ」
とは、フロントクロスモノキニの水着で仁王立ちするリーア・レオノーラ(紫銀の戦棍法師・e61699)の台詞だ。髪の色と揃えた白と紫の水着は、そのコンストラクトで強烈に周囲の目を引いていた。本人のスタイルの良さもあって、オークの視線を集めるのに充分だった。
「ぶひーっ!」
歓喜の声を上げ、オークが二大巨頭――もとい、はち切れんばかりの二人の美女へと殺到していく。
無論、オークの標的になった物は彼女達二人だけではない。
「来ない理由は無いでありますね」
自身に伸ばされる触手に抗う為、嘆息混じりにサーフボード型の盾を構えるクリームヒルトであった。スタイルこそは先の二人に見劣りするが、それはあくまで凹凸の問題。縦横無尽に飛び回る戦闘機の如き引き締まった肢体は、むしろ健康美として周囲の目に映っていた。
何より特筆すべきは彼女の身を包む水着である。
流線型の身体を包む布地の色は、翼を思わせる白と空を思わせる蒼。腰を包むパレオは自身の定番とも言えるセーラー服のスカート型だが、大胆にも施されたスリットから覗く腰はショートパンツに包まれ、すらりと伸びた白い足を強調している。
これにむしゃぶり付かないオークがいようか。答えは当然――。
「否っ! 否であるブヒ!」
地の文に対し、反語を唱えながらオークがクリームヒルトに組み付く。その勢いは、熱い唾液を飛ばさんが如く、であった。
「浅ましい豚共め! 大地の精霊よ、彼の者を束縛せよ!」
クリームヒルトを護るべく、紫織の詠唱が砂の蔦を編み上げる。網状に広がったそれはしかし――。
「――っ?!」
束縛を目的とする精霊魔法も、当たらなければ意味がない。ゴロゴロと地面を転がり、砂の蔦を躱したオークは、触手を振り被ると、紫織へ突き立てる。
「お前も水着になるでブヒ!!」
欲望塗れの咆哮は詠唱として響く。
衝撃波斯くやの咆哮と共に触手の爪を突き立てられた紫織は、ああ、何と言う事だろう!
「何すんのよ?!」
大胆なカットが施されていた戦闘用コスチュームは無残にも引き裂かれ、胸部と腰部を残し塵と散っていく。有り体に言えば、紫織の防具はビキニを思わせる衣装へと加工されてしまったのだ。
「ふ。夏の渚には水着が似合うでブヒよ」
虚無的な笑顔と共に台詞を口にしたオークはぎろりとした視線を周囲に巡らせる。ともあれ、今や、水着姿、或いはそれに準じる大胆な姿を晒していないのは、ジークリットのみとなっていた。
即ち。
「楽園はここにあったでブヒよ!」
オークの歓喜だけが、海岸に響いていく。
●海辺の君
「ケルベロスが貴女達を守るから、落ち着いて避難してねー」
避難誘導を請け負ったアンナ・トーデストリープ(煌剣の門・e24510)の声に従い、女性客達が海水浴場から退避していく。20体と数の利があるオーク達から、無事、一般人達を逃す事が出来ているのは、視界の端に映る7人のケルベロス達の奮闘があっての事だ。
(「まぁ、二人はちょっと違うけど……」)
幸いなのか否か。15歳未満のアンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)とリリエッタはオーク達の標的からは外されているようだ。可愛い水着姿なのに……と抗議の気持ちを抱かなくも無いが、純粋無垢な天使がオークの標的にならない事は良い事だと思い直す事にする。
「しつこいであります!」
「この服は水着じゃない!!」
「いい加減にしろっ!」
その分、オークの攻撃は残りの5人に集中している。とりわけ、前衛を担うクリームヒルト、紫織、ジークリットの三者の負担は増大であった。
それでも、衣服を引き裂く触手に対峙し、それでも良く頑張っていると思う。幸い、オークは水着に固執しているようで、水着を切り裂き、霰もない姿を露出させる事はなさそうだったが。
だが、多勢に無勢を覆す事は困難だった。如何にケルベロス達がオークを上回っているとは言えど、それは個々の実力の話。
集団の力は時に個の優位を凌駕する事も事実だった。
「ジークっ!」
リリエッタの悲鳴と共に響き渡ったのは、絹を裂くような悲鳴――否、シャツが切り裂かれる悲鳴だった。
「くっ」
切り裂かれたのはジークリットが身に纏うライフセイバーTシャツであった。紫織の時とは違い、散り散りに裂かれたそれは原型を留めず、褐色の肌を夏の空気の下に零れ出させる。
「くっくっく。こんな上玉を隠し通せると思ったでブヒか!」
勝ち誇った笑みを浮かべたのは、触手の一撃を敢行したオークであった。あわや白昼堂々と紡がれるかと思われたぽろんの惨劇はしかし、他ならぬジークリットの手によって遮られている。即ち。
「褐色の肌を支える白のフロントホック! 布の少なさこそが正義と言わんばかりの堂々とした出で立ちにしかし、それを誇るスタイルに文句のつけようは無いでブヒ!」
「解説ありがとうよ」
オークに対する返礼は、ゾディアックソードの一撃であった。
喉を貫かれ、絶命したオークの身体を討ち捨て、ジークリットは己が得物である斬霊刀、そしてゾディアックソードの二刀を構える。
「さて。見た所、避難誘導も完了したようだ。……ここからは本気で行く。死にたい奴からかかってきな。もっとも」
「逃げてもバラバラにするけど、ね」
ジークリットの言葉を引き継いだリリエッタが引き金を引く。青と白のドレスを思わせるフリルに彩られた水着は、銀の髪と同様、柔らかく風になびいている。手にした銃が水鉄砲であれば、渚に戯れる天使そのものであったかもしれない。だが、彼女の手に握られたのは、彼女専用に調整された自動小銃――すなわち、実銃であった。
響く銃声はまごう事無く本物。
そして、その弾丸が刻む傷跡もまた、本物であった。
「ひぃぃぃっ?!」
再三の悲鳴が海水浴場に響く。
その主は、残されたオーク達であった。
●水着が好きでいいじゃない
「ちょっぴりスリリングな散歩道にご招待、です♪」
天女を思わせる、或いは天の使者を思わせる白き衣装に身を包んだ少女がオークに飛びつく。オークが最期に目撃した光景は、朱と白の残滓、そして陽光と海の蒼さであった。
脳天を砂浜に叩き付けられたオークはそのまま絶命。零れた血反吐と体液はそのまま、波に浚われ消えていく。
光の粒へと消えていくデウスエクスを前に、アンジェラが浮かべた微笑は天使そのものであった。
「オークさんはひとり残らず殲滅、です♪」
それは絶対的な告死であった。幼き身体を包む水着はむしろ、夏衣装のワンピースを思わせる程、清涼で純真。そして浮かべる笑顔は無垢。それ故に、オーク達に走ったそれは、恐慌であった。
ああ。そうだ。海辺に降り立った可憐な天使に見えて、彼女もまた、死の牙を持つ番犬が一人。獲物の対象でない事は、オーク達の都合でしかないのだ。
ケルベロスはオークと違い、獲物を選り好みしない――。
「そう言う事ね。――永劫の時、来たれり。死出の門、開門」
アンナに紡がれた無数のオーラがオークの身体を貪り、死出へと誘っていく。
そのオークが最期に見た光景は、薄布のワンピース越しに見える、躍動する美女の黒ビキニ姿――ではなく。
「うふふ、最期に見るのが水着なんて許されないの」
ごきり、と鈍い音が響いた。
瀕死のオークの網膜に焼き付いたのは、彼同様、死を刻まれていく仲間達の姿であった。アンナによって首をへし折られたオークに用意された冥土への土産は、見目麗しい水着が弾む光景ではなく、むさ苦しい仲間の最期だったのだ。
何たる惨劇。何たる酷劇! 水着を求めたオークの最期に水着を添える事すら許さないとは!
「まー。オークですしねー」
棘付き鉄球――いわゆるモーニングスターと化したガジェットを振り回すカレンは、にこやかな笑顔を浮かべていた。すらりと伸びた肢体は紐水着に申し訳程度に隠され、しかし、弾ける二つの膨らみの躍動は隠される事もない。そして、白く細い可憐な腕から繰り出された三つ目の球体――棘付き鉄球はオークの顔面を捉え、派手に血飛沫を撒き散らす。それが鼻血ではない事だけは断言出来た。
「ブヒィィィ」
情けない悲鳴と共にオークの一体が絶命する。
もはや、オークの戦線は崩壊の一途を辿っていた。残されたオーク達は一体、そして一体と、まるで稲穂を刈り取るかの様に、ケルベロス達に蹂躙されていく。
「数の利も無くなりました。残されたオークも大したことはありません」
勝利を確信したリーアが断言する。
その手が胸元を抑えているのは、水着の揺れを気にするが為か。デザイン重視で締め付けが皆無な水着は、彼女の双丘を包み込む事もなく、覆っているだけだったのだ。派手な動きをオークに指摘され、隠す様に両手で覆っている。
「むしろ、そっちの方がえっちいでブヒ……」
交差する両手と、それに抑えられら膨らみを満足げに見送ったオークは、リリエッタの弾丸に撃ち抜かれ、黄泉路へと旅立っていく。その終わりは、アンナによって葬送られた仲間と違い、幸せそうな終局であった。
そして残された最後の一体もまた――。
「この斬撃、躱せはしまい!」
ジークリットの斬撃に切り裂かれた触手は虚空を舞い、夏の空に溶けていく。そして。
「これで最期でありますっ!」
クリームヒルトの碇型槍による刺突が、その心臓に牙を剥く。
ヴァルキュリアの両手に伝わる鈍い感触は、確かにその命を奪った衝撃。
「――水、着でぶひ」
最期にオークの瞳が何を捉えたか。
さらさらと崩れていくそれが、答える事は無かった。
「デウスエクス撃破、であります」
淡々と呟くクリームヒルトはびっと槍を振ると、残滓を全て拭い去る。
不埒なデウスエクスの最期など、そんなものだ。
まるで、そう言いたげな、何処か寂寥感を感じさせる表情であった。
●暑い日々にさようなら
さて。
デウスエクス退治は終局した。
しかし、ここには水着姿のケルベロス達が8人集っている。
ならば、やる事は一つだった。
「……いいのかなぁ」
とは、ジークリット談。オークの血やら粘液やらで汚れた身体をシャワーで流しながらの台詞であった。
「いいんじゃないの? バイト仲間の人も笑顔で送り出してくれたし」
シャワーヘッドをジークリットに向けながら、リリエッタがふふりと笑む。何と言ってもケルベロス達は海水浴場を護った功労者達なのだ。少しぐらい仕事を忘れて楽しむのもいいだろう。生真面目な彼女は渋るだろうが、それぐらいの役得があっても良い筈だ。
今頃、海岸でも他のケルベロス達が各々、楽しみを享受している筈だ。
「そこに寝転ぶでありますよ」
笑顔で宣言したクリームヒルトが忙しくスコップを動かせば、3つの砂塚が出来上がる。
それぞれ、アンナ、紫織、リーアの三人であった。
「ちょっと張り切り過ぎじゃない?」
無数の視線を感じながら零れたリーアの台詞に、返って来た返答はクリームヒルトのいい笑顔だった。
そう、リーアは知らない。一番ギラギラとした視線が隣から注がれている事に。
「あー。クリームヒルト。胸のあたり、重点的にお願いねー」
「……すぐ崩れるから難しいでありますよ」
視線の主、もとい、アンナから発せられたリクエストにクリームヒルトが憮然とした声を上げる。互いに超えられぬ垣根がある以上、色々と仕方ないやり取りであった。
「うふふ。それにしても、水着、サイコーね」
何処かで聞いたセリフを口にするアンナであった。
彼女の視線の先にあったもの。それは――。
「きゃぁ。冷たいです! やりましたね!」
「わわわ。ちょっとタイム。タイムだよぅ~」
波間で二人の妖精が戯れている。一人はふわりと、一人はたぷりと。その光景にアンナが満足げに頷いた事を、二人は知る由もなく。
カレンに水を掛けるアンジェラは、手に伝わる温度がむしろ、心地良い物である事を実感していた。
(「ああ、そうか」)
海が冷たくなってきた。それはつまり、夏の終わりと、そして、秋の到来を告げる物だ。
(「もしもオークさんなら、『水着の季節の終わり』を嘆くのでしょうか?」)
それが何処か可笑しくて、クスリと笑ってしまう。
「どうかしたの?」
カレンの問い掛けに、何でもないと答える。
夏は終わってしまう。それは事実。だが、それでも。
いずれ、また夏は巡って来る。今は亡き彼らが待ち望む季節もまた。それが、この世界の理――道理なのだ。
作者:秋月きり |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2018年9月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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