●海底基地出撃
静岡県の南、駿河湾。
最深部では2500mにも達するその海底では、日本の他の海ではなかなか見られない奇怪な生物が動き回っている。
もっとも、普通の目しか持たない者では、それらの生き物は見られない。そこは本来、暗闇の世界のはずだからだ。
だが、日の光も届かない深海に、光があった。
海の底にある洞窟から、光が漏れている。
光だけではなく、音も漏れている。深海にはそぐわない、機械の駆動音が洞窟の中から響いているのだ。
そして、さらに海の底には似合わない存在が洞窟から出てきた。
黒いワンピースに黒いヘアバンドをつけた女。もちろん、潜水器具もつけずに深海を進む女がただの人間であるはずはない。
背から伸びたミサイル、太ももから伸びた魚雷からもそれは明らかだ。
さらにその後方からは、機械でできた鮫が5体、付き従っている。
もしもこの場にケルベロスがいれば、その鮫が最近出現しているディープディープブルーファングというダモクレスだとわかっただろう。
深海の水を引き裂いて進んでいくダモクレスたちの進む先から、深海魚たちが音もなく姿を消していた。
●ヘリオライダーの依頼
集まったケルベロスたちに一礼して、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は口を開いた。
「最近発生しているディープディープブルーファング事件についての調査に、進展がありました」
チーディ・ロックビル(天上天下唯我独走・e01385)が多くの賛同者と共に調査を行い、ディープディープブルーファングが量産されている秘密基地を発見したのだ。
おそらくはダモクレスが作った作戦基地の1つなのだろう。
「場所はフェルディス・プローレット(すっとこどっこいシスター・e39720)さんが予測していた、駿河湾の海底だったようです」
芹架はケルベロスたちを見回した。
「皆さんには今回、海底に潜ってこの基地を破壊していただくようお願いします」
そう告げて、彼女は頭を下げた。
それから、芹架は作戦についての詳細を語り始めた。
場所は駿河湾の海底となるが、ケルベロスにとっては水中でも戦うのに支障はない。言うまでもなく、デウスエクスも同様だ。
目的の海上まではヘリオンで移動し、空中からダイビングすることになる。
「アクアラングや照明はこちらで用意することが可能です。素潜りでも死ぬことはないはずですが、とても苦しいはずなのでできればご使用されることをお勧めします」
基地は海底洞窟の内部にある。
至近距離まで接近すると、ミサイルや魚雷を装備した女性という姿をした潜水艦型ダモクレスと、数体のディープディープブルーファングが迎撃に出てくる。
潜水艦型はともかく、死神の因子を植え付けられていないディープディープブルーファングの戦闘能力はそれほど高くはないらしい。
「潜水艦型は必ず1チームに1体向かってきますが、ディープディープブルーファングのほうは、強そうなチームや派手なチーム、先頭にいるチームなどに多く襲いかかってきます」
腕に自信があるならば、多く引き付ければ他のチームが楽になるだろう。通常は5体だが、近くに気を引くチームがあればもっと少ない敵と戦うことになる可能性もある。
「迎撃に出てきた潜水艦型を半数以上撃破すれば、敵は基地を自壊させて引き上げるはずです。その後は撤退しても構いませんし、敵を追って殲滅を目指しても構いません」
基地を放棄することを決めた時点で敵は戦闘意欲を失うので、いずれにせよたまり危険はないはずだ。
「攻撃手段ですが、潜水艦型は魚雷とミサイル、ディープディープブルーファングはメカ触手とサメ魚雷で攻撃してきます」
潜水艦型の魚雷は単体攻撃で、両脚から連続して発射することで追撃することができる。
ミサイルは範囲攻撃だ。2パターンの撃ち方をすることができる。ホーミング性能を重視した当たりやすい攻撃と、牽制してプレッシャーを与える撃ち方だ。
ディープディープブルーファングの触手は単体攻撃で対象を怒らせ気を引く効果があり、サメ魚雷は範囲攻撃で食らいついて足止めする効果がある。
また、このチームが戦う敵は、潜水艦型は後衛で自らを守らせるようなたたかいかたをするらしい。
「ダモクレスと死神、それぞれどのような意図があるかはわかりませんが、作戦が成功すれば両者の目的を妨害することにつながるはずです」
よろしくお願いしますと、芹架は頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994) |
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623) |
タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699) |
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023) |
端境・括(鎮守の二丁拳銃・e07288) |
マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301) |
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176) |
八尋・豊水(イントゥーデンジャー・e28305) |
●深海へもぐる猟犬
ヘリオンから目標地点の近海へ降下したケルベロスたちは、深海へと潜っていった。
アクアラングから漏れる無数の泡を、ライトの光が切り裂いていく。
「もうすぐ基地がある地点だね。気をつけよう」
装備しているヘッドセット型の水中無線機で、ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)が仲間に呼びかける。
彼は頭につけたライトだけではなく、多数のケミカルライトで前方を照らしていた。
いや、ルアだけではなく、他の者たちもライトの光量を最大限に上げたり、あるいは複数のライトを装備して他のチームよりも目立つようにしている。
(「水中とは戦艦竜を思い出すなぁ……あの時は水対策何もしてこなかったなだぜ……」)
ドラゴンとの水中戦を思い出しタクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)が呟く。
ケルベロスだろうと海の中では息苦しいということを、身をもって知っているのだ。
苦しいだけで死なないということもわかっているが、今度の戦場は息継ぎもできない深海だ。戦闘に支障がないからと言って再度経験したいとは思わない。
かつての戦いについて思い出しているのはタクティだけではなかった。
「戦艦竜亀山と戦った時を思い出すな、姉ちゃん。あん時の仲間は今回はいねぇけど、開発した武装にまた日が当たるのは嬉しくなるな。海ん中で会話できる水中無線機とかよ」
かつての戦いでも身に着けていた戦闘用加工を施した学生用水着を着け、神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)がヘッドセット型骨伝導無線機で姉に声をかける。
「うん、ノーザンさんがいないのがちょっと残念かな。あの亀山さんとの戦いで仲良くなったようなものだから……」
煉の姉である神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)も、やはりあの時と同じ羽衣を身に着けていた。
「ルアさんとかマークさんみたいに見知った人はいるんだけどね……あまり思い出話に浸ってる気分でもないけど……」
「あぁ、分かってるよ。死神だろ?」
「うん、やっぱり死神が絡んでるってだけで嫌悪感すごいし。何を企んでるか分からなくて不安……すごく気になる。あの基地で何をしてるのか……」
海の底にある洞窟の奥にはいったいなにがあるのだろう。
今気にしても仕方ないことだが、どうしても気になってしまう。
「残霊装置から繋がりがあんのは分かってたが……こそこそ動きやがって。ともあれ俺らの方針は陽動だ。奴らの企みを潜入組が明かしてくれるよう頑張んねぇとな」
基地に潜入を試みようと考えているチームのために、敵をなるべく引き付けようというのがこのチームの方針だった。
(「洞窟が見えてきた」)
水陸両用のスラスターユニットで潜水しながら、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)が目的地が近いことを身振りで伝えた。
「マティアスとは師団で馴染みじゃけど、こういう形でお仕事で一緒になるのは初めてじゃったかの」
端境・括(鎮守の二丁拳銃・e07288)が銀髪の青年に問いかけた。
「んむっ。さにあらずば手を抜く、というわけではないけど、なお一層がんばらねば!」
同じ緋色蜂師団に属する青年は話しかける彼女にうなづいた。
(「皆で必ずや勝利をつかもう」)
マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)は口の中でそう呟く。
はっきりとは見えないものの、洞窟から数えきれないほどのダモクレスが出てきた。
「はぁ、ダイビングなら善き日に素敵な殿方と来たかったわ……。煮ても焼いても食えないアンタ達は根絶やしにしたげるから覚悟なさい!」
女性のような姿をした八尋・豊水(イントゥーデンジャー・e28305)が水中で嘆息する。
オネエのエルフはオウガメタルから暗黒の太陽を呼び出した。
他のケルベロスたちもそれぞれに範囲攻撃を放っている。
炎のブレスやミサイルを飛ばし、あるいは炎をまとわせた得物を薙ぎ払う者もいる。他にも様々な攻撃が水中に放たれた。
無論、攻撃を当てるにはまだまだ遠い位置だ。
派手な牽制を行うことで力を示し、敵の注意を引こうとしているのだ。
果たして、潜水艦型ダモクレスは多くの配下を引き連れて接近してきた。
「7体も寄ってきたよ。オタ芸ってやつを動画で見て覚えた甲斐があったね」
ケミカルライトを振り回して誘導しながら、ルアが軽口を吐いた。
(「戦闘フェーズ移行……」)
(「SYSTEM COMBAT MODE」)
マティアスやマークが戦闘態勢に自身の意識を切り替える。
多数の敵を相手に、ケルベロスたちは水中に布陣した。
●猟犬を妨げる機械鮫
鮫型ダモクレスの大半は、前衛で守りを固めているようだった。聞いていた数よりも増えた2体は潜水艦型の近くで構えているようだ。
その機械鮫の間を、潜水艦型の放つミサイルが抜けてくる。
(「やらせないんだぜ!」)
タクティとマティアスがとっさに仲間を攻撃からかばう。軽くはないが倒れるほどでもない痛み。
そのまま反撃に向かおうとしたタクティの前を鮫が阻んできた。
もっとも、それはケルベロスにとって想定の範囲内。
漆黒の太陽を生み出し、焼く相手は潜水艦型をかばおうとしている前衛だ。
鈴は彼に続き、彼女の翼から生み出された羽扇を振りかざす。
回復役の鈴だが、今のうちに弱体化の技を使って有利な状況を作り出しておかなければならない。
「リューちゃんはみんなを回復してあげてね」
ボクスドラゴンのリュガに告げると、鈴は羽扇を九節鞭のごとく伸ばす。
長く伸びたそれを薙ぎ払い、太陽で足止めされた鮫たちを氷漬けにする。
雄叫びのような声がヘッドセットから聞こえて、煉の咆哮が敵を吹き飛ばす。マティアスのミサイルも水中に爆発を起こした。
かばいあう敵の一部にしか攻撃は当たっていないのは仕方ない。
(「重力装甲展開」)
マークは不可視の防御フィールドを周囲に展開した。
展開したフィールドに何体かが放ったサメ魚雷が命中した。着弾時の反発で、周囲に展開した防御膜がかすかに浮かび上がる。
魚雷の牙は装甲を貫いてマークや仲間たちにまとわりついてくる。
足止めされる者たちの周囲に括や豊水がケルベロスチェインの結界を展開してくれる。
1体1体の攻撃はさほど強くはないものの、とにかく数が多い。まずは守りを固めるのが必須だった。
水陸両用のスラスターで加速し、マークは攻撃に転じる。
5体の敵前衛と、潜水艦型を含めて3体の中衛を、ケルベロスは範囲攻撃を中心にして攻めていく。
反撃も楽にはしのげないが、回復役たちもそこを支えている。
「オン・セイ・ニン! 受け継がれし御技よ、我が同胞に救命の息吹を!」
豊水はサメ魚雷を浴びてついた傷から流れる血を、紅色の螺旋へと変化させた。
八尋流忍者の血を代償に生み出す高濃度螺旋をマティアスへ向けて飛ばす。
潜水艦型の魚雷を受けて傷ついていた彼に螺旋はまとわりつき、急速に傷を癒やす。
(「かなりこの技を使わなきゃいけないかも……後で貧血気味になるのよね」)
心の中で呟くが、だからといってやらないわけにはいかない。
隣では、ビハインドの李々もがんばってくれている。
幾度も攻撃を浴びる。だが、豊水や鈴、リュガの回復に加え、括が防御力を強化する技を使い続けているおかげで倒れる者はまだいない。
マティアスは潜水艦型が鈴へと飛ばしてきた魚雷の前に飛び込んだ。
(「俺が盾になる……!」)
衝撃の後、爆発が襲ってきて海中でさらに吹き飛ばされる。
(「被ダメージ、想定内。問題ない」)
鈴がすぐに回復すると言ってくれているようだった。
照明のサインで謝意を伝えた後、彼は両腕を剣状に変化させる。
(「……薙ぎ払う」)
旋風のごとく切り込んだマティアスは機械鮫たちを切り刻み、刃から体力を強奪した。
●消耗戦
戦闘開始から数分が経過したが、まだ敵の数は減っていなかった。
とはいえ、それは範囲攻撃を中心に戦っている者が多いからだ。敵の前衛は決して浅くない傷を負っている。
タクティの右腕に装着されたガントレットから、光の戦輪が飛び出して敵を切り裂く。
煉は手の中の棍に烈火の闘気を込めた。
「1体1体殴ってたららちが開かねえ……けど、そろそろヤバいヤツもいるんだろ!」
水中であるにもかかわらず、伸びる棍には紅蓮の炎が宿った。
戦輪で切り裂いた軌道を追って、煉はそれを一気に振り下ろす。
ディープディープブルーファングのうち2体が仲間をかばって、それゆえに棍に打ち砕かれて爆発した。
残る敵は6体。
ルアは中衛にいる潜水艦型へと接近した。
「敵の数も減ったし、悪いけど少し君も削っておかないとね」
息を吸い込みながら女性型ダモクレスへと近づく。どうやらキャスターである潜水艦型の動きは速いが、ルアが仕掛けようとしている攻撃も当てやすい技だった。
「ヘッズ・アップ!」
声に乗せたグラビティが水に振動を起こした。衝撃波が潜水艦型を揺らがせる。
それなりの時間は過ぎているが、海底基地を探索に行こうとしていたチームはもう戦闘を終えただろうか? 彼らが少しでも探索できるよう時間を稼がなくてはならない。
「援護チームが来るまでがんばるぞい!」
気合を入れながら、ルアは一度後退した。
攻撃してきたルアへ潜水艦型が魚雷で反撃するが、マークがかばった。
ダメージが蓄積している防衛役に、強力な単体攻撃は痛打を与えている。
(「貴様が挑むは無間の結晶……! さあ、突破できるかな?」)
タクティが結晶を付与して回復するが、それだけではまだ十分ではない。
括は拳を固めて、そこに全身全霊の治癒力を込めた。
「歯を食いしばるのじゃ!」
金属でできたマークの姿に一瞬躊躇するが、これも神の務めと括は彼に接近する。
脳天に振り下ろした拳が彼の傷を吹き飛ばす。
マティアスと同様に戦闘中は機械のようにふるまうマークだが、それでも目線で感謝の意思を一瞬だけ伝えてきた。
「特に此度は他班のため、ひいてはみんなのために厄を引き受けるがわしらのお役目。この身に代えても成し遂げねば!」
鷹揚にうなづき、括は軍船の装備から作った籠手と拳銃を味方の後衛へ向けた。
続く機械鮫の攻撃に備えて、鈴が氷盾を生み出し、豊水が鎖の守護を展開している。
敵も味方も守りを重視している戦いは、大きく状況が動くことなく続いた。ただ、おそらくはまだ10分もたってはいないだろう。
回復の手が足りなくなり、ケルベロス側は防衛役や妨害役が回復に回る頻度も高い。
潜水艦型ダモクレスがミサイルを放とうとした。だが、ルアが何度も放っていた衝撃が効果を発揮し、射撃を行う動きが停止する。
タクティは隙を逃さず、オウガメタルのxenoに『黒太陽』を具現化させた。
絶望の黒光が敵前衛を焼く。うち1体が仲間をかばった。ボロボロになった敵に、ミミックから飛び出したエクトプラズムの武器が止めを刺す。
(「よくやったんだぜ、ミミック」)
サーヴァントへとタクティは親指を立ててみせる。
苦労しているが、きっと苦労した分だけの調査結果を探索チームが手に入れてくるだろうとタクティは考えていた。
(「そういやダモも結構取り逃してるの多いんだよな……一体おとし前つけたいやついるしその辺も分かればいいんだけどだぜ」)
呟きながら、タクティは次に来る攻撃に備えて篭手を装備した腕を構え直した。
●敗走するダモクレス
前衛に残った2体のディープディープブルーファングを片付けるべく、ケルベロスたちはさらに攻撃を続けていた。
マティアスが両腕を剣状に変えて旋風のごとく敵を切り刻んだかと思うと、マークが20mmガトリング砲で追撃を加えて敵を制圧する。
まだ敵は倒れない。
だが、そこに飛び込んできた者がいた。
筋肉質の老ドラゴにアンが一瞬笑顔を2人に、皆に向けてくる。
市松・重臣の固く握った拳が、機械の鮫を強かに打った。
さらに漆黒のオーラをドラゴニックハンマーにまとわせた青年が傷ついた敵へと一気に接近した。村雨・柚月の闇がライトの明かりを遮る。
闇のオーラが離れると、残ったのは残骸と化した機械鮫だけだった。
(「GOOD KILL」)
ハンドサインでマークが柚月への称賛の意を示す。
「援護待ってたよー、助かった!」
ルアがケミカルライトを大きく振って感謝の意を伝える。もっとも、言葉のほうは届いていないだろうが。
豊水の回復や、括の支援が飛ぶ中、遠くから振動が響いてきた。
海底の基地が自爆したのだ。
残っていた潜水艦型と、3体の鮫たちが撤退を始める。
援護に来てくれたケルベロスたちが、黒い翼のサキュバスと髪飾りをつけた女性を先頭に逃げるディープディープブルーファングへと追いすがる。
(「後顧の憂いは断たせてもらうんだぜ。ミミック、行くんだぜ!」)
タクティがミミックを連れて追撃に入った。
他の者もすぐに敵を追いかけ始める。
マティアスが指で一点を示す。
「皆の者、潜水艦型の守りがお留守になっておるのじゃ!」
最初に彼の意に気づいた括が皆に無線機で伝えたが、その時には他の者たちももう動き出している。
援護に来てくれた班が鮫を狙ってくれたおかげなのか、潜水艦型が孤立しているのだ。
タクティのxenoが深海に黒い太陽を出現させる。
絶望の黒光に足が止まった隙に、マークの砲撃がミサイルをひしゃげさせ、ルアの手から伸びた攻性植物が潜水艦型を捕縛する。
巨大な剣に炎をまとわせたマティアスが敵を切り裂いたかと思うと、括の小型拳銃から射出されたチェインが貫いた。
「あと一息よ! ここで決めましょ!」
「ああ、わかってらぁ!」
豊水の声に応じた煉が、鈴と共に左右から潜水艦型にせまった。
蒼い髪の姉弟は、水中で視線を交わしあう。タイミングをあえて合わせるまでもない。
「これが俺(わたし)達の絆っ!」
煉の右腕に、水中でも消えない蒼い炎が宿った。
用意してきた照明にも負けないほど明るい光が、姉の腕にも宿っている。
焔と光は逃れようとする敵へと、左右から食らいついた。まるで、巨大な狼が獲物を噛み千切るかのように。
断末魔は水の厚みに阻まれ、聞こえない。
視線を巡らせると、残ったディープディープブルーファングたちを、援護に来てくれたチームが追っているのが見えた。
鮫は逃げているようだが、まだ攻撃の射程からは外れていない。
追撃に加わると、さして時間がかかることなく機械鮫もまた深海の藻屑となった。
基地があった洞窟のほうを振り返るが、ここからでは状況はよく見えない。
ダモクレスと死神の共闘に関する情報が見つかること……あるいは、すでに見つかっていることを願いながら、ケルベロスたちは深海から海上へ登り始めた。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年9月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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