●双鬼のビジョン
夜の市営プール。
満月が映る昏い水面の上を深海魚のような姿の死神たちが舞っていた。数は三体。
それらは意味もなく宙を泳いでいるわけではなかった。青白い体が通過した後には赤い眼光の名残りが刻まれ、その軌跡が魔法陣に変わっていく。死者をサルベージするための魔法陣に。
やがて、魔法陣の中心から死者が姿を現した。
エインヘリアルだ。
身長は三メートルほど。筋骨隆々たる体は暗紫色の瘴気を放ち、目は白濁している。身に着けているのは黒いタイツのみであり、武器の類も手にしていない。
「ムゥアァァァ……スルァァァァァ……」
言葉になっていない呻きを発しながら、死者はプールサイドに目を向けた。
そこに同胞がいた。
そう、死者がサルベージされている間に別のエインヘリアルが降り立っていたのである。もちろん、生者のエインヘリアルだ。死者のエインヘリアルと同様にタイツだけを身に着けて逞しい筋肉を誇示しているが、徒手空拳ではない。大きな戦斧を持っている。
「さーて、獲物はどこだぁ?」
夜空に向かって戦斧が突き上げられ、刃が月光を照り返した。
「このゲニーグ様が狩って狩って狩り尽くしてくれるわ!」
●音々子かく語りき
「新潟県三条市の屋外型市民プールで死神どもがデウスエクスをサルベージするようです」
と、緊迫した声でケルベロスたちに告げたのはヘリオライダーの根占・音々子。
発進準備が整ったヘリオンを背にして、彼女は語り続けた。
「そのデウスエクスは、去年の九月にケルベロスの皆さんによって倒された『ムズル』という名のエインヘリアルです。自分の筋肉美に酔いしれるナルシスト野郎だったんですが、ゾンビ状態となった今は理性も知性も残っていません」
ムズルをサルベージした死神は三体。どれも下級の死神であり、ムズルと同様に高い知性は有していない。
ムズルは出現してから七分後に回収される。それはサルベージの儀式によって生じる自動的な現象であり、たとえ死神たちが途中で死んだとしても影響はない。回収を阻止したければ、ムズル本体を倒すしかないのだ。
「でも、今回の敵はムズルと死神どもだけじゃないんですよー。もう一人、エインヘリアルが送られてくるんです。どうやら、エリン・ウェントゥス(クローザーズフェイト・e38033)さんが危惧していた通り、エインヘリアル勢が死神のサルベージを援護しているみたいですね」
もう一人のエインヘリアルの名は『ゲーニグ』。各地で事件を起こしているエインヘリアルたちがそうであるように彼もまた重罪人であり、帰還の手段は用意されていないらしい。
「要するに使い捨ての鉄砲玉ですね。でも、鉄砲玉だけにものすごく狂暴だと思われます。皆さんが姿を見せたら、問答無用で攻撃を仕掛けてくるでしょう」
戦いの末にすべてのケルベロスが戦闘不能になったら、ゲーニクは新たな獲物を求めてプールの外に出るだろう。そうなった場合の被害は計り知れない。夜半ということもあってプールの施設内は無人だが、予知の内容に影響を及ぼさぬために戦闘区域外の避難はおこなっていないのだから。
「おさらいしますと、敵はゾンビ状態のエインヘリアル、活きの良いエインヘリアル、三匹のオサカナ死神の計五体。ゾンビ野郎は七分以内に倒さないと撤退してしまいますし、活きの良いほうを食い止めることができなかった場合は市民に被害が出ます」
厳しい戦いとなることは承知の上で二兎を狙うか、あるいは一兎に絞り込むか。また、後者の場合、どちらの兎を狙うのか。
難しい選択ではあるが、ケルベロスたちの出す答えを信じている者はいる。今、彼ら目の前に。
「でも、大丈夫です! 皆さんならできます!」
と、『信じている者』が言った。
参加者 | |
---|---|
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
茶斑・三毛乃(化猫任侠・e04258) |
峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147) |
風音・和奈(怒哀の欠如・e13744) |
西院・織櫻(櫻鬼・e18663) |
アミル・ララバイ(遊蝶花・e27996) |
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082) |
蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515) |
●戦鬼が立つ!
三匹の異形の魚が水の上を舞っていた。
その水に腰まで浸かった巨躯の男を取り囲むようにして。
夜の屋外型市民プール。魚たちは死神であり、男はエインヘリアルである。ただし、普通のエインヘリアルではない。冥府の海からサルベージされた存在なのだから。
もう一人、プールサイドにもエインヘリアルがいた。こちらは普通のエインヘリアルだ。永久コギトエルゴスム化の刑を解かれて地球に放逐された罪人を『普通』と呼べるとすればの話だが。
「さーて、獲物はどこだぁ?」
プールサイドのエインヘリアルが戦斧を突き上げた。
「このゲーニグ様が狩って狩って狩り尽く――」
「――せると思うな」
と、女の声が頭上から声が割り込んできた。
そして、声の主たるヴァルキュリアの天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)を含む八人の戦士がゲーニグの前に降り立った。
「なんだ、貴様らは!?」
「化猫任侠黒斑一家家長、茶斑三毛乃」
目を剥くゲーニグにガトリングガンを突きつけて、猫の人型ウェアライダーの茶斑・三毛乃(化猫任侠・e04258)が静かに名乗った。
「二兎の両獲りに参りやした」
「ムアッ! スリャァァァーッ!」
『二兎』のうちの一兎と見做されたプール内のエインヘリアル――ムズルが吠え、身構えた。知性は失われているが、三毛乃たちが敵であることは本能的に察したのだろう。
「あの死者も、死神たちも、そして、貴方も――」
照明代わりのサイリウムを何本もプールに投げ込みながら、シャドウエルフの西院・織櫻(櫻鬼・e18663)が視線を巡らせた。ムズルから死神たちに、更にゲーニグへと。
「――我が刃の糧となっていただきます」
「糧だとぉ? 図に乗るな!」
一兎であるところのゲーニグが怒号した……と、思いきや、いきなり笑い出した。
「しかぁーし! この頑強なる肉体を摩天楼に例えるセンスは誉めてやってもいいぞ。まっはっはっ!」
「……マテンロウ? なに言ってんだ、こいつ?」
エクスカリバールを掌に何度も軽く打ちつけながら、峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147)が首をかしげた。
「『二兎』を『二都』と勘違いしてるのかな」
ドワーフの蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515)が呟いた。その頭上では蟲型のボクスドラゴンのセンチピードが翅を震わせて滞空している。
「兎だろうと、摩天楼だろうと、同じことだけどね」
そう言って、オラトリオの風音・和奈(怒哀の欠如・e13744)が二丁のガトリングガンを構えた。二丁といっても、砲身の束は全部で四つだ。どちらのガトリングガンも二丁のそれを一つに組み合わせた代物なのだから。
「兎なら、屠るまで。摩天楼なら、打ち崩すまで」
「イエース! ボクのロックで打ち崩してやりマース!」
人派ドラゴニアンのシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)がバイオレンスギターをかき鳴らした。
「レッツ、ケルベロス・ライブ! ボクの歌を聴けデェース!」
そして、ギターをドラゴニックハンマーに持ち替え、歌声ならぬ砲声を響かせた。
砲撃形態のドラゴニックハンマーから吐き出された竜砲弾は仲間たちの間をすり抜けて飛び、ゲーニグの腹に命中。
だが、ゲーニグは動じることなく――、
「まっはっはっ! 痛くも痒くもないぞぉー!」
――体にまとわりつく砲煙を払い除けるかのように戦斧を振り上げた。
それが振り下ろされる前に動いたのは水凪。
「痴れ者め。笑えるうちに笑っておくがいい」
エインヘリアルに対する怒りを込め、ディスインテグレートの虚無球体を撃ち出す。
ゲーニグではなく、プール内のムズルに向かって。
しかし、ムズルの前に死神が滑り込み、盾となった。
「ギシャーッ!?」
苦しげに身悶えする死神。ディスインテグレートを受けた背鰭の一部が半球形に抉り抜かれている。
「うっとうしい魚だなぁ。まとめて冷凍してやんよ」
雅也が九尾九節鞭で死神たちを打ち据えた。ジャマーのポジション効果を得ているため、敵に与える氷結の異常耐性は通常の三倍だ。その成果を見て、彼はニヤリと笑った。
「ざっと、こんなもんだ」
続いて動いたのは織櫻。二本の斬霊刀――『櫻鬼』と『瑠璃丸』を抜き、二刀斬霊波を放つ。水凪と同様、標的はムズル。桜の象嵌が施された白刃と瑠璃の象嵌が施された黒刃から生み出された衝撃波は、サイリウムによって幻想的な色合いとなった水面上を走り、生ける死者を斬り裂いた。
「ええい! 俺を無視するなぁー!」
ゲーニグが織櫻めがけて戦斧を打ち下ろした。
だが、その刃を受けたのは織櫻ではなく、オラトリオのアミル・ララバイ(遊蝶花・e27996)。先程の死神と同じように自らを盾にしたのだ。死神と違って、無様に身悶えることはなかったが。
「無視なんかしてないよ。罪人は等しく裁かれるべきだから。でも――」
アミルは悠然と妖精弓に矢を番えた。
「――貴方は後回し」
「そう、アンタは後できっちり仕留めてあげる。覚悟しときな」
和奈がゲーニグに言葉をぶつけた。先程までは二丁のガトリングガンを手にしていたが、今は一丁だけ。もう一丁はオウガメタルのクウが保持している。
「まずはそっちのアンタからよ! 絶対に逃がさない!」
言葉をぶつける相手をムズルに変えて、和奈は走り出した。ガトリングガンを連射しながら。
その場に残ったクウもガトリングガンを連射した。
二列の水柱(前述したように和奈のガトリングガンは二丁一組なので、正確には四列だが)がプールを走り、Xの字を描く。『Cross Double Gatling』なるグラビティ。Xの交点にいる標的はムズルだ。
だが、ムズルは死者らしからぬ素早い動きで銃撃を躱すと――、
「モァッシュウゥゥール!」
――何発ものパンチを繰り出し、ケルベロスの前衛陣に衝撃波を浴びせた。
死神たちも次々と怨霊弾を撃ち出していく。
たちまちのうちに前衛陣は傷だらけとなった。
もっとも、その程度のことで怯む者は一人もいなかったが。
「厳しい戦いだってことは判ってる。でも、決して無謀じゃないはず。音々子ちゃんがあたしたちを信じて託してくれたお仕事だもの。そうだよね、チャロ?」
弓を引き絞りつつ、アミルが頭上に語りかけた。
「にゃん!」
ウイングキャットのチャロが主人に答え、清浄の翼で前衛陣を癒した。
ほぼ同時に三毛乃がリボルバー銃を取り出し――、
「身内にチャカを向ける無礼、ご容赦くだせえ」
――アミルに銃弾を撃ち込んだ。もちろん、攻撃したわけではない。これは対象の傷を癒すと同時に命中率を上昇させる(三毛乃はメディックのポジション効果を得ているので、キュアも伴っていた)グラビティなのだ。
そして、アミルの弓から矢が放たれ、一匹の死神を刺し貫いた。ムズルの盾となった、あの死神である。
彼(彼女?)の受難は終わらなかった。
グラビティ『全てを刈る影』を発動させながら、ヒアリが突進したのだから。
「ぎっちょん、ぎっちょん」
ヒアリは奇声を響かせ、影のような物に覆われた縛霊手でチョップを見舞った。
●幽鬼を討つ!
エインヘリアルの盾として振る舞う死神たちは厄介な存在だった。
しかし、盾であるが故に消耗が激しい。
最初にムズルを庇った死神はその後、アミルとヒアリの猛攻を受けて早々に沈み、残りの二匹も雅也の三度目の九尾九節鞭で息絶えた。
「五分が経過しやした」
無数の光の粒子になって散りゆく死神を見ながら、三毛乃が仲間たちに告げた。
「あと二分以内に倒さなくてはいけないのですね」
「ギリギリいけるかどうかってところかな」
言葉を交わしながら、織櫻とアミルがムズルを攻撃した。前者はグラインドファイアで、後者は気咬弾で。
「まっはっはっ! たった二分で俺を倒すつもりか!」
「おまえのことではない」
勘違いして笑っているゲーニグに冷たく言い放って、水凪が如意棒『la tringle』を伸ばし、ムズルに如意直突きを食らわせた。更に雅也と和奈が投げバールとガトリングデストラクションで攻撃し、仲間の治癒に専念してしていた三毛乃も一時的に役割を変更してガトリングガンを連射した。
そして、ずっとゲーニグを攻撃していたシィカまでもが――、
「逃がさないデス!」
――ムズルめがけて殺神ウイルスのカプセルを投げた。
「なにぃ!? 貴様まで俺を無視するのか!」
哄笑から一転、シィカに怒りを燃やすゲーニグ。しかし、近距離攻撃しか有していないので、後衛のシィカには手が出せない。結果、八つ当たり気味に水凪を攻撃した。
そんなゲーニグに代わって……というわけでもないだろうが、ムズルがプールの端まで一気に駆け抜け、高速のパンチをシィカにぶつけようとした。
だが、ヒアリが両者の間に割り込んで盾となり、轟竜砲で反撃した。
「ありがとデス! さて、残り時間は――」
礼を述べながら、ヒアリの肩越しに轟竜砲を発射するシィカ。
「――あと一分デス!」
二発分の砲煙がムズルを覆い隠したが、その中央に真円の穴が穿たれた。水凪が虚無球体を撃ち込んだのだ。
ケルベロスたちは次々と砲煙の穴めがけてグラビティを発射した。雅也は投げたバールをテグスで引き戻しつつ、グラインドファイアを。織櫻は『櫻鬼』と『瑠璃丸』を振り下ろし、二刀斬霊波を。三毛乃はファミリアロッドを構えて、マジックミサイルを。
「あたしたちが、正しく黄泉路へ送り返してあげる。もう決して迷わないように」
その言葉とともにアミルがホーミングアローを射た時にはもう穴は消えていた。いや、砲煙そのものが晴れたのだ。
そして、再び露わになったムズルに向かって――、
「いくよ、クウくん!」
――和奈がクウとともに『Cross Double Gatling』を仕掛けた。
「バッズブゥーッ!?」
二丁のダブルガトリンガンの咆哮にムズルの絶叫が重なり……やがて、後者が途絶えた。
二度目の死を迎えたのである。
「撤退はなんとか阻止できましたね」
「うん。でも、まだ終わったわけじゃない」
織櫻の言葉に頷いて、和奈はゲーニグに目を向けた。
「もう一兎のほうが残ってるから」
「なんだとぉー!?」
ゲーニグが顔を怒りに歪め、和奈を睨み返した。
「見くびるなよ、小娘! 俺の魂は百万石だ!」
「……ヒャクマンゴク? なに言ってんだ、こいつ?」
雅也が首をかしげた。
「『一兎』を『一斗』と勘違いしてるのかな」
呟きながら、ヒアリがまた『全てを刈る影』を発動させてゲーニグに突進した。
●悪鬼に勝つ!
仲間たちが死に絶えても(当人は仲間と見做してはいなかっただろうが)意気を落とすことなく、ゲーニグは戦斧を振るい続けた。
もっとも、その戦術は単純だった。いや、戦術と呼べるほどのものではなかった。スカルブレイカーとルーンディバインドで交互に攻め、時折、ブレイクルーンを使う――ただ、それだけだ。
「食らえい!」
戦斧がまた振り下ろされ、ルーンの輝きの残光が軌跡を描いた。今度の攻撃はルーンディバインド。
戦斧の落下地点にいたのは雅也だったが、センチピードが素早く割り込み、自らの小さな体を盾にした。しかし、その強力な一撃によって、蟲型のボクスドラゴンは消滅した。
「まっはっはっ! 小煩い蚊トンボを仕留めたぞ! 残るは――」
ゲーニグが見得を切り、ケルベロスたちをねめつけた。
「――たったの八人と猫一匹!」
「なにが『たったの』なんだか……」
苦笑を漏らしつつ、グラインドファイアで攻撃する雅也。
「なぜ、この状況で勝ち誇っていられるのでしょうね」
織櫻もグラインドファイアを放った。無表情だが、心の中では呆れている。
この二人だけでなく、他の者たちも呆れていた。
ゲーニグの愚かさに対して。
確かに彼は孤軍奮闘していたし、ケルベロスの前中衛陣は大きなダメージを受けていた。しかし、彼のほうが劣勢なのはあきらかだ。様々な状態異常に蝕まれ、ブレイクルーンによる癒しも追いつかないほどのダメージを受けている。
「センチピードは蚊トンボじゃないよ」
そう呟くヒアリの背中で光球が弾けて消えた。三毛乃のルナティックヒール。
「一寸の虫にも五分の魂。でも、このデカブツの百万石の魂とやらは蚊トンボよりも軽そうね」
そう言いながら、和奈がクウととともに幾度目かの十字砲火を見舞った。いや、今度の砲火は十字ではなく、アスタリスクだ。アミルもすかさずガトリングガンを連射したのだから。
「甦りし罪人、放逐された罪人、どちらも決して容易い敵ではなかったが――」
二人(と一体)分の銃弾の嵐が止むと、水凪が手を突き上げた。
「――もはや、勝負は見えた」
その手が静かに振り下ろされると、無数の槍がいずこからともなく出現し、ゲーニグに降り注いだ。冥府の冷気から生み出された『魔槍(アイドーネウス)』だ。
それでもゲーニグは怯むことなく、槍の雨の下で哄笑を響かせたが――、
「おう、見えたとも! 貴様たちが無様に倒れる様がな! まっはっはっ……はうわぁーっ!?」
――笑い声は途中で悲鳴に変わった。
ヒアリの竜砲弾(ルナティックヒールの恩恵で攻撃力が上昇していた)が顔面に直撃したのである。
間髪を容れず、シィカが横手に回り込み、アイスエイジインパクトを脇腹に叩きつけた。
「どうだ! ボクのクールかつロックな一撃は!」
「き、効かぬわぁーっ!」
怒声を吐きながら、ゲーニグはシィカに反撃した。変則的な横殴りのスカルブレイカー。
だが、その一撃で最後の力を使い切ってしまったのか、体をよろめかせた。
「さて、そろそろ――」
アミルがホーミングアローを射た。
「――幕を下ろしましょうか」
後を引き取った織櫻が二刀斬霊波を浴びせた。
続けて、雅也がエクスカリバールの絶空斬で傷口を抉り、和奈がガトリングデストラクションで蜂の巣にして、水凪がヴァルキュリアブラストで突撃した。
「ぐぬうぁーっ!?」
光の粒子群と化した水凪に撥ね飛ばされるゲーニグ。だが、それだけの衝撃を受けてなお、戦斧を手放すことだけはなかった。
「エ、エインヘリアルの勇者たる俺が……この程度でくたばるものかぁーっ!」
戦斧を杖代わりにして立ち上がり、自称『勇者』の罪人は笑ってみせた。
「まぁーはっはっはっはっ!」
もはやおなじみとなった笑い声……ではない。先程までと違って、虚勢の響きが含まれている。
その偽りの哄笑を冷ややかな表情で受け止めながら、三毛乃が――、
「見上げた根性……と、言いたいところでござんすがねぇ」
――名乗りを上げた時と同じようにガトリングガンを突き出した。
「勇者なんてものを気取るからにゃあ、散り際をわきまえなくちゃいけませんや」
ガトリングガンが唸りをあげ、ゲーニグの笑い声をかき消した。
彼の『百万石の魂』もろとも。
作者:土師三良 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年9月12日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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