●駿河湾海底基地
その地にあったのは、確かに平穏であった筈だ。
深い海の底、僅かに残った岩場に座していた砂が海中の流れに押されるようにして流れていく。それは砂であったか、骨であったのか。憂うものの姿はそこになく、ただ何かに気が付いたかのように深海魚たちが方々に散っていく。
前へ、前へ。
振り返ってはならぬとでも言うように、泳いでいく彼らの後ろには海底を『行く』影があった。
潜水艦型ダモクレスと、ディープディープブルーファング。
数体を引き連れていけば、影は長く伸びる。
そう、影だ。暗いはずの海底に差し込むのは海底洞窟からの光。こぼれ落ちた光が、帯のように海底に光を描き、騒音を響かせていた。内部で機械工場が稼働しているかのような音を背に、潜水艦型ダモクレスはその髪を深い海に靡かせながらーー進む。
●蒼海に乱ありて
「皆様、お集まりいただきありがとうございます。最近発生が確認されている、鮫型のダモクレスを利用した死神事件『ディープディープブルーファング事件』に関して、新しい情報を掴むことができました」
レイリ・フォルティカロ(天藍のヘリオライダー・en0114)はそう言うと、集まったケルベロスたちを見た。
「チーディ・ロックビル(天上天下唯我独走・e01385)様が、多くの賛同者と共に調査を行ってくださったのです」
その結果、海底にて、死神とダモクレスが協力する秘密基地の存在を突き止めることができたのだ。
「秘密基地の場所は、フェルディス・プローレット(すっとこどっこいシスター・e39720)様の予測通り、駿河湾海底です」
この秘密基地では、ディープディープブルーファングの量産が行われている。ダモクレスの作戦基地の一つであると考えられるだろう。
「皆様には、この海底基地の破壊をお願い致します」
戦場は、駿河湾の海底となる。
ダイビングをして、潜水で海底の基地に近づくこととなるのだ。
「深海での戦闘となりますが、ケルベロスの皆様であれば支障はありません。勿論、研究所直上の海上までは、私がヘリオンで輸送させていただきます」
そこはもう責任を持って、とレイリは笑みを見せた。
「皆様を見送らせていただきます。海底で不自由しないように、アクアラングや照明などの装備の用意も可能です」
装備自体はなくても問題は無いがーーあれば快適だ。特に理由がなければ装備していく方がいいだろう。
「海底基地は深海の海底洞窟の内部にあります。至近距離まで近づくと、潜水艦型ダモクレスとディープディープブルーファングが迎撃に出てくることでしょう」
迎撃に来るディープディープブルーファングは、死神の因子を植え付けられていない。戦闘能力は低いが、数が多いので注意が必要だろう。
「敵を見誤れば、こちらも襲撃どころではなくなってしまいますから」
そう言って、レイリは説明を続けた。
「迎撃に出て来た潜水艦型ダモクレスの過半数を撃破することができれば、基地は自爆するようです。これで作戦は成功となります」
基地の自爆後は、敵は戦闘意欲を失うため安全に撤退することができるのだ。勿論、そのままの殲滅も可能だ。
「潜水艦型ダモクレスの攻撃方法については、ミサイルによる攻撃と、魚雷による攻撃を持ちます」
一帯を焼き作る強い火力を持つミサイルに、麻痺や、毒を伴う魚雷を使い分けて攻撃をしてくるのだ。
「ディープディープブルーファングは、ダモクレスがこの工場で量産し、死神に引き渡していたものと思われます」
既に引き渡しが完了している個体もあるだろう。
すぐに事件が収束することはないだろうがーー。
「この作戦が成功すれば、死神によるディープディープブルーファング事件も解決に近づくかと」
これより先、彼らが使っていたディープディープブルーファングが提供されなくなるのだ。
「ダモクレスが、何故死神に協力をしているのかは不明ですが、大元の工場を叩くこと作戦を阻止することができる筈です」
まずはひとつ、目の前のことを。
「それでは参りましょう。皆様に幸運を」
参加者 | |
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巫・縁(魂の亡失者・e01047) |
大粟・還(クッキーの人・e02487) |
ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051) |
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591) |
トパジア・ランヴォイア(療源の黄玉・e34314) |
オリビア・ローガン(加州柳生の伝承者・e43050) |
朝比奈・昴(狂信のクワイア・e44320) |
トリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351) |
●深き海へ
海底へと降下すれば一面の深い青と闇がケルベロスたちを出迎えた。海中の泡が消え、強すぎない灯りが足元を照らす。敵を引きつけない為だ。
(「敵影だ」)
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)がハンドサインを出す。濃い影の中、姿を見せたのは青い髪を揺らすダモクレスの娘ーー潜水艦型ダモクレスだ。もう一つ見えたのはディープディープブルーファングなのだがーー。
(「え……」)
ぱち、とトリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351)は瞬く。
参考になるかもしれないと、知り合いのオススメサメ映画を徹夜で見たりしたのに。ついでに全く何の成果も得られなかったから、この鬱憤はサメをぶっ飛ばして晴らすと思っていたというのにーー。
(「まさか1体……」)
(「他の皆さんが引きつけてくれているのでしょうか?」)
朝比奈・昴(狂信のクワイア・e44320)のハンドサインにトパジア・ランヴォイア(療源の黄玉・e34314)は頷いた。
(「そのようです」)
敵を引き寄せないよう、灯りを絞ったのが功を奏したのか。二体の他に、敵が出てくる様子はない。ならばこれはーー好機だ。
(「請け負った、好機だな」)
その機を、逃すつもりはない。
巫・縁(魂の亡失者・e01047)がハンドサインを送る。それが、戦いの始まりを告げた。
「ルァアア!
ケルベロス達の接近に、潜水艦型ダモクレスは、迷うことなく魚雷を放った。高出力の魚雷が狙いはーーウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)だ。
「ーー」
ガウン、と重い衝撃が、海中に伝わった。落ちる声は無い。だが、傾ぐことも無い男の影にまっすぐ向かうのはディープディープブルーファングだ。
(「させません!」)
その斜線に、ロージーが踏み込む。突撃を受け止め、く、と顔を挙げた娘には笑みがあった。背後の一人が動いたのが分かったからだ。
だん、と海底を蹴る。ウルトレスの踏み込みは大きくーーだが迷うことがない。向かう先は眼前、ディープディープブルーファングだ。
「ノリが良いのは結構だが、少し黙ってろ――」
大きく開かれた口へ、突きつけたバスターライフルの銃身はーーだが、鉄鮫の前、踏み込んだ一体に受け止められる。
(「潜水艦型、まさか、ディフェンダーか」)
ゴウ、と深く、重い一撃が潜水艦型を穿った。入った、と確かに分かるのに、手に返る感触が重いのはあれが盾を担うからか。
(「さすがは二体で出てきただけのことはあるデース」)
なら、とオリビア・ローガン(加州柳生の伝承者・e43050)は動く。
二体だけ。だがそこを侮る気は無い。手早く、ケルベロス達は戦略を練り直す。先に盾役を沈めた方がいい、と決めると迷う事なく動き出した。これは、貰い受けた『時』を使う為の戦いだ。
「奔れ、龍の怒りよ!」
辿り着くために、向かう為に。まずは眼前の相手を。
海中にて、縁は龍の名を持つ鞘を振り下ろす。水の衝撃波が、ゴウ、という音と共に潜水艦型へと叩きつけられる。ぐらり、と揺れたその体にオルトロスのアマツが一撃を鎮める。海底に着くはずだった潜水艦型の足が、滑る。
それは、一瞬のーーだが、明確な隙だ。
「ほら、僕らの生きる世界はこんなにも輝いている!」
その一瞬を、逃すことが無いよう、ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)は歌う。水中にあっても響く歌声は明るく、そして仲間へと加護を紡ぎあげる。
前衛へと、届いた癒しに体が軽くなる。昴は海中を蹴った。身を前に、一度高く上がる。伸ばす両の手が、体が痛んだ。ワイルドの体内循環が上手くいっていないのだ。肌を露出していれば大丈夫なのだがーー潜水装備となればそうもいかない。
(「ですが……っ」)
強い信仰心で、昴はそれを耐える。全ては信仰の試練。聖王女の名を口の中で紡ぎ、海中にあって流星の煌めきを得た昴の一撃がーー落ちた。
ガウン、と落とされた蹴りに、一際大きく潜水艦型が傾ぐ。ディフェンダーだ。耐久性能はあるはず。だがあの揺れはーー。
(「弱点、でしょうか」)
その可能性を、皆に伝えながら大粟・還(クッキーの人・e02487)は其の手を伸ばす。光り輝くオウガ粒子が、前衛へと癒しと加護を紡ぐ。海中の戦場は、キラキラと輝いていた。
●爆炎の向こう
「海中で言うのもヘンデスが、次元の炎に灼かれるデース!!」
グラビティの込められた刀で三角形を切り結ぶ。それはオリビアの有すーー加州柳生殺法がひとつ。海中にあって、頭上に生まれた次元の裂け目から炎の剣が降り注いだ。
「ーー!」
庇うように身を逸らす。だが、降り注ぐ一撃の方が早い。轟音響き渡る中、トリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351)はビート板に掴まって光の翼を暴走させる。
(「青髪はぁ、キャラ被るのでぇ、おかえり願いまーす! キャハハハ!」)
高い命中力を持つトリュームの一撃を、真正面から受け止めた潜水艦がぐらり、と身を揺らしーーだが、その顔を起こす。跳ねるように動いたそれに、トリュームは距離を取り直す。
(「オトモダチは選んだ方が良いわよ!」)
死神の所為で居場所がバレたという話をすればダモクレスが疑心暗鬼になったりしないかと思ったがーー水中呼吸では会話はできない。反応が見れれば良かったかもしれないが。
(「よもや、この様な深海にダモクレスの生産拠点があるなんて……死神と結託して事を大きくする前に阻止したいですね」)
唇を引き結び、トパジアは中衛へと癒しと加護を紡ぐ。エクトプラズムで作られた擬似肉体が、機能するのを見守りながら真っ直ぐに、敵を見た。
光と炎の中、戦場は加速する。降り注ぐミサイルにその腕を焼かれながらも、海底を蹴って踏み込めば、潜水艦型とディープディープブルーファングが動く。一撃の精度の高さはーースナイパーか。攻撃の精度は、どちらも高い。海中は得手だと言うことだろう。だがこちらとて、ロージーに還、そしてトリュームによる回復と加護がある。耐性を得れば、海中に生じた爆発の中でも前にーー向かえる。
(「向かうと決めたのですから」)
炎を纏い、一気に間合いへと昴は向かう。叩き込んだ蹴りは、敵の意識をこちらに向けた。だが、それでいい。その合間に踏み込んだトリュームの一撃が届き、縁の一撃が潜水艦型の体に罅をいれる。
「……ッ」
苛立ちに似た手の動きは、怒りか、近づくなというそれか。
(「こんな深海で大量生産、てのはまあいいとして、死神にいいように扱われるために造られているってのはどうにも哀れな話だな」)
こんなことはもう終わらせよう。
ウルトレスが踏み込む、は、と顔を上げた潜水艦型が魚雷を構える。だが男の一撃の方がーー早い。
「昏き底で安らかに眠れ」
「ーーァ」
海中に、泡が生まれる。穿つ一撃に、潜水艦型ダモクレスは崩れ落ち、爆風の中に消える。熱の中、飛び込んできたてディープディープブルーファングもまた、程なくしてケルベロス達の前に崩れ落ちた。
熱だけがまだ、少しだけ海中に残っている。残り火のようなそれを見送り、一行は海底から溢れる光を見た。
(「折角もらった時間です。探索に行きマショウー!」)
オリビアの提案に誰もが頷き、そしてケルベロス達は戦場を背にする。光の見える先ーー海底洞窟へと向かった。
●蒼海に潜む
海底洞窟は長く奥へと続いていた。深い、というよりは長いが感覚としては正しいだろうか。奥へ、奥へと進んでいった先でーー変化が起きた。
「空洞デース」
ぷは、と顔を上げてオリビアは辺りを見渡した。開けた空間だ。空気もある。外した潜水具を手に、オリビアは仲間を見た。
「大当たり、デス?」
「えぇ。まさか、この洞窟の先がこんな場所につながっているとは……」
昴の視線の先そこにあったのは、機械的な工場だった。一目で分かるそれに、響き渡っているのはーー。
「サイレン、か。当たり、だろうな。空気がある上に、あの機械だ」
基地の入り口と見て、間違いは無いだろう。だが、縁は思う。こうして話をしていると言うのに、敵が出てくる気配が全く無い。
(「そも、敵の気配が無いか」)
鞘に添えたままの手はどうすべきか。臨戦体制のままでいたのはアマツも同じでーーだが、ゆるりと首を傾げられる。カチャリ、と響いた金属音は、皆がひとまずの武器を納めた音だった。
「……まぁ、ダモクレスらしい施設ですよね」
機械的な感じが、と呟いた還の腕の中、るーさんがふるり、と尻尾の水を落とす。響く機械音。鉄の音。コンテナも見える。様々な形をした金属パーツに還は眉を寄せた。奥で僅かに聞こえてくる唸るような音はーー。
「コンベアーか」
僅かにウルトレスは眉を寄せ、その目に映った姿に顔を上げた。時を同じくして、合流した他の班のケルベロスたちの姿が見えたからだ。
「お疲れ様なのです。私達はたった今着いた所ですが、皆さんは?」
声の主は、藍色の髪を揺らす少女であった。赤い瞳を真っ直ぐにこちらに向けるレプリカントの彼女に、軽い会釈と共にウルトレスは口を開く。
「こちらも今たどり着いたところだ」
「迎撃用のダモクレスも配置されていたみたいだけど、全部出撃しちゃっているみたいです」
ビキニの紐を直しながら、ロージーはそう言った。けたたましく警報が響く割に、敵が出てくる気配もない。
(「入り口についたのはほぼ同時なのに、ですよね」)
敵襲が無い。鳴り響く警報とは、ひどく不釣り合いなのだ。
「そうですね……確かに私達も、敵とは遭遇しなかったのです」
少女の言葉に、やはりか、とウルトレスは眉を寄せた。迎撃が無いとは思っていたが、無いのではなくただ出来なかったのだとしたら。
(「洞窟は決して短い距離では無かった」)
道中の迎撃もなく、そして今、合流した班も『敵とは遭遇しなかった』という。
(「この分だと、戦力は全て迎撃に出た、ということか」)
ならばーー時間が多く残されていると言う訳では無いだろう。
「急いだ方が良さそう……ですね」
張り詰めた声で言う少女に、オリビアは頷いた。敵の気配が無いとはいえ、此処で足を止めている時間は無い。潜入後、探索に使える時間は最初から限られているのだ。
外にいるケルベロスたちが、稼いでくれた時間だ。
ならば、自分たちも全てを賭けてーー見出すまでのこと。
此処はダモクレスの基地であることに間違いは無いのだから。
「では、ワタシたちはこっちから向かいますネー」
「どうぞお気をつけて」
オリビアに続けて、トパジアは言う。
「ありがとう、皆さんもお気をつけて。また地上で会いましょう」
黒髪を揺らすドラゴニアンの少女と共に手を振る仲間のケルベロスたちと別れ、一行は施設の探索を開始した。
「なんか研究棟っぽくない?」
程なくして、一行が見つけたのはガラス張りの空間だった。トリュームが覗いた先、そこには巨大なガラスの瓶が幾つも並べられていた。天井の管や計器類と繋がっている所を見るとーー。
「カプセルか?」
呟いて、僅かに縁が眉を寄せる。臭いがしたのだ。腐臭めいたそれの答えは、手にしていた灯りが示してくれた。
「ディープディープブルーファング」
さっきまで、戦っていた敵がそこにあった。
稼働していないのは一目で分かる。ここは、ディープディープブルーファングの研究所ということか。
(「研究体に数体使っているのかと思ったが……」)
これは違うな、とウルトレスは言う。
「そうだね。これとか、死神よ」
トリュームが見上げたのは、カプセルに入れられたままになっている下級の死神だった。
「これもよく無いデスネー。もっと、生物みたいな形してマース」
オリビアが示したのは、さっきまでのディープディープブルーファングとは違うーー言わば、もっと生物的な外見をした、ディープディープブルーファングだった。
「鮫よりデスネー」
「ただ試しただけとは……考えにくいですね」
トパジアはゆっくりと口を開いた。この規模、目的があったと思う方が自然だ。
「でも、どの辺りが目的でしょう?」
首を傾げたロージーの横、記憶媒体の捜索をしていた昴が、ふと、顔をあげる。
「ダモクレスは死神に戦力を提供していますよね……」
「あ、はい。そうだって話ですけど……」
まさか、と還は顔をあげる。
「それだけではない、って話ですか。死神を支援しているだけではなくーー」
「はい。『死神を研究して、機械で死神の能力を再現する』するような研究をしているのではないでしょうか」
昴の言葉に、トリュームが振り返る。
「なら、これがどこから来たのかね。下級の死神が提供された研究素体なのか」
「或いは、ダモクレスが鹵獲して秘密裏に研究しているのか、デスネー」
オリビアの言葉に、昴は頷く。重要なのはそこだ。
「ダモクレスと死神の関係が変わって来ます。それを調べるには……」
あと少し、と昴が研究室を見渡したその時ーードン、と大きな衝撃が来た。
「この揺れは……!」
「来たか」
は、と顔を上げたロージーに、ウルトレスが頷く。
「タイムリミットだ」
撤退だ、と告げる男の声を食い散らすように轟音が響き渡った。ギィイイイ、と鈍い音を立て天井に罅が入りーー研究棟の壁が破壊される。次の瞬間、濁流がケルベロスたちを襲った。基地内に入り込んだ海水だ。
濁流に飲み込まれながら、それでもケルベロスたちは目を開けた。天井は砕け、施設のいたる所が崩壊していく。海水に押し流されながらもーー手を伸ばす。進まねば成らない。辿り着かなければ、持ち帰らなければいけないのだ。
(「必ず……!」)
唇を引き結び、トパジアは翼を広げる。濁流に巻き込まれながらも、なんとかケルベロスたちは基地の外へと脱出した。
(「皆、無事か?」)
海が、震えていた。
縁がハンドサインを送る。まだ、白く淀んだ視界の中、頭を振るうようにして皆が頷いた。ぱ、とオリビアが顔を上げる。基地内で出会った別働班の姿を見つけたのだ。あちらも、皆、無事に脱出できたらしい。
(「大成功デース!」)
狼のウェアライダーの少女のサムズアップに、オリビアはVサインを返す。昴は祈るようにひとつ頷いた。
(「無事に皆、たどり着くことができました」)
こうして基地の外にも。そしてーー情報にも。
あと少し調べられれば、と思う所はあったが、持ち帰れた事実こそが大きい。それに調べるべきこともできた。
情報は、そのまま武器となり得る。
ふいに、肌に振動が届く。海流が乱れに振り返れば、海底基地が崩壊していた。
(「戻りましょう」)
明るい笑顔で、ロージーは仲間を見た。手を伸ばして、サインを作る。まずは地上で、久しぶりの海面で。
無事の成功を祝って、それから明日へと続く戦いへと向かうのだ。
作者:秋月諒 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年9月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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