穢れたる者の宴

作者:雷紋寺音弥

●黒き海嘯
 広がる草原と聳え立つ山々。リゾート地を思わせる雰囲気の豪華なテントが立ち並ぶ場所にて、響き渡るのは場違いな悲鳴。
「ヒッヒッヒ……。やはり、美しいものが穢れて行く様を見るのは堪らんな。この世は漆黒、闇と絶望の色に染まっているのが正しい姿よ」
 漂う腐臭と血の臭い。その中心に立っているのは、青白い顔をした卑屈そうな男。だが、その身は3mを越える巨体であり、人間でないのは明白だった。
 肌はくすみ、瞳は濁り、口元には不気味な笑みを湛えている。その身体に纏った、流動的な黒き衣。それが様々な形に姿を変えて人々に襲い掛かる度に、新たな悲鳴が悲劇を紡ぐ。
「さあ、惨めに地べたを這い回り、逃げ回って命乞いをするがいい! 貴様達、無力で美しい者が穢され、絶望に染まる鳴き声こそが、この私……『黒喰のフォグナー』にとっては最高のメインディッシュなのだからなぁ!」
 両手を広げ、天を仰ぎ、その男……アスガルドより送り込まれたエインヘリアルは、興奮した様子で狂った高笑いを上げる。だが、それに何かを返す者はおらず、周囲に転がっているのは無残に蹂躙された人々の亡骸だけだった。

●全てを穢す者
「鉄・冬真(雪狼・e23499)の懸念していた事態が現実のものとなったようだな。グランピング……と、いうのか? 大型のキャンプ施設を兼ねたリゾート地にて、デウスエクスの襲撃が予知された」
 敵は、アスガルドより放たれし、重罪人のエインヘリアル。大至急、現場に向かってもらいたいと、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)はケルベロス達に告げた。
「敵のエインヘリアルは、『黒喰のフォグナー』と名乗っている。私も面識のある相手ではないが……少なくとも、好意の持てる相手ではないことは間違いない」
 そう言って、まるで害虫でも踏み潰した時のように、ザイフリート王子は顔を顰めた。
 黒喰のフォグナー。その異名が示す通り、ブラックスライムに似た武器を用いるエインヘリアル。だが、武闘派な考えの者も多いアスガルドにて、その存在は極めて異端。
 身体こそ3mを越える巨体だが、フォグナーは決して屈強な身体つきをした男ではない。性格は卑屈で弱者を攻め苛むことを至高とし、特に純粋な者や美しい者が穢され死んで行く様を見ることを最高の喜びとする異常者だ。
「事件の発生する当日、周囲には行楽に訪れた一般人も数多くいるだろう。だが、お前達がフォグナーと接触する前に彼らを避難させれば、フォグナーが別の場所に出現してしまう可能性がある」
 事前の人払いには期待できない。しかし、一度でも敵の狙いをこちらに向けさせれば、ケルベロス達が全滅でもしない限り、一般人が虐殺されることもない。
「フォグナーの嫌悪するものは、愛や友情といった感情や、男女問わず見た目は美しいが自分よりも力は弱そうな存在だ。この性質を利用すれば、フォグナーは最初から、嬉々としてお前達を穢し、殺そうとしてくるだろう」
 下手に挑発して怒らせるよりも、相手の性質を逆手に取って、惹き付けてしまった方が安全だ。なんとも腹に据え兼ねる相手だが、それでも人々の命には代えられない。
 美しい自然や、今を生きる人々の命。それらを穢そうとする邪悪な存在を許すわけにはいかない。そう締めくくり、ザイフリート王子は改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)
御影・有理(灯影・e14635)
筐・恭志郎(白鞘・e19690)
鉄・冬真(雪狼・e23499)
篠村・鈴音(焔剣・e28705)
イ・ド(リヴォルター・e33381)
速水・紅牙(ロンリードッグ・e34113)

■リプレイ

●蒼天を穢す者
 聳える山々を一望できる、緑色の草原に設けられたレジャー施設。夏の終わりを迎え、シーズン最後の客を迎えていたグランピング会場に、それは突如として現れた。
「ヒッヒッヒ……。おるわ、おるわ。脆弱なる肉体を持った、無力なる者達が」
 黒き衣を身に纏い、卑屈そうに笑う顔色の悪い男。だが、その身の丈が優に3mを越えることからして、人でないのは明白であり。
「うわっ! な、なんだ、こいつは!?」
「ば、化け物だ! 逃げろ!」
 逸早く男の危険性に気付いた者達が一斉に逃げ出したが、それでも男は何ら気にする素振りさえ見せない。薄気味悪い笑みを浮かべて片手を掲げれば、その動きに合わせて男の纏っていた衣が漆黒の影となって人々へ襲い掛かる。
「ヒヒヒ……なぁに、直ぐには殺さんよ。この私……『黒喰のフォグナー』が、直々に恐怖と絶望を与えてやろうというのだ。もう少し脅えてくれんと、面白くないからなあ」
 敢えて攻撃を逸らし、無人のテントを破壊することで、非道なるエインヘリアルは人々の心を弄ばんと、次なる獲物を探して回ったが。
「そこっ! 隙ありです!」
 逃げ遅れた人々へ視線を向けた瞬間、フォグナーの顔面に篠村・鈴音(焔剣・e28705)の鋭い蹴りが突き刺さった。
「ぐぅっ!? な、何者だ!」
 口元を拭い、辺りを見回すフォグナー。その淀んだ瞳がロッジの屋根に向けられれば、そこに立っていたのは4つの影。
「弱いものをいたぶり、殺戮する。……グラビティチェインを得る上で、合理的な手段ではある。矜持や誇りも、戦場においては時に邪魔になることすらあろう。だが……」
 それが許されるのは、あくまで修羅と修羅がぶつかり合う戦場のみ。戦う力さえ持たぬ者へと刃を向ける理由にするのは、あまりに無粋だとイ・ド(リヴォルター・e33381)が言葉を切り。
「自分より弱い者のみを鏖殺し、悦に浸る者……ですか。ああ、なんと醜悪」
「黒曜牙竜のノーフィアより黒喰のフォグナーへ。牙と汚泥の祝福を」
 嫌悪を露わにしてアリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)が告げれば、ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)が堂々の宣戦布告。もっとも、己より弱き者を屠ることしか考えていないフォグナーにとっては、少々歯応えのある獲物を見つけたに過ぎなかったのかもしれないが。
「やい、黒喰のっ! この速水紅牙が相手だぞっ! 正々堂々勝負し……っ!?」
「ヒハハハッ! 甘いわぁっ!!」
 続けて、速水・紅牙(ロンリードッグ・e34113)が名乗りを上げようとした瞬間、彼女の身体を漆黒の影が、槍のような形になって貫いた。
「くぅっ……。おのれこしゃくなっ! 正々堂々来いよっ!?」
 影を引き抜き叫ぶ紅牙だったが、その間にも傷口からは、焼けるような痛みが襲って来る。身体の中に硫酸を直接流し込まれでもしたら、このような感覚になるのだろうか。
「大丈夫ですか? まったく……あなたには、戦いにおける最低限のマナーもないのですか?」
 紅牙に気を分け与えつつ筐・恭志郎(白鞘・e19690)がフォグナーを睨むが、心の底まで腐ったフォグナーにとっては、その言葉さえ誉め言葉だった。
「ヒッヒッヒ……貴様、なかなか澄んだ目をしているなぁ。そういうやつの心を圧し折って、『御免なさい。優しく殺して下さい』と言わせるのも一興よのう」
「……っ! この男……」
 あまりに外道。あまりに醜悪。腐臭さえ漂ってきそうなフォグナーの言葉に、思わず御影・有理(灯影・e14635)も感情を抑え切れなくなりそうだったが。
「有理、危ないから僕の後ろに下がっていて……。大丈夫だよ、君は僕が必ず守るから」
 そんな彼女の手を優しく取って、鉄・冬真(雪狼・e23499)は薬指の指輪へと唇を落とした。
「ありがとう、冬真。でも、守られてばかりじゃないよ。最愛の貴方の背中は、私が守る」
 微笑む有理。それに対して、冬真も笑顔で返す。
 そうだ。こんな薄汚い卑劣漢に、負けるわけにはいかないのだ。喩え、個々の力で劣っていても、ここにいる全員で力を合わせれば。
「行くぞ! 今度は邪魔させないからな!」
「《反抗》、開始……」
 紅牙が一瞬にしてスタイリッシュな姿に変身すれば、イ・ドもまた視認することさえ難しい速度で、機械鎧を装着してフォグナーに挑む。
 悲鳴と絶望に飢えた黒き影。草原に満ちた長閑な空気を切り裂いて、異界より追放されし狂った戦士との戦いが幕を開けた。

●邪悪なる捕食者
 人々の嘆きを糧とする悪辣なエインヘリアル。黒喰のフォグナーは確かに強かったが、それ以上に厄介なのは彼の性格そのものだった。
「よ~し! 狙い撃つぜっ!」
「ヒヒヒ……やってみるがいい」
 真正面から紅牙の放った竜砲弾を迎え撃つフォグナー。しかし、別に彼は命の削り合いを楽しんでいるのではない。
「なっ……!? アタシの一撃が効かないだとっ……!」
 爆風の中から平然とした顔で飛び出して来たフォグナーの姿を見て、思わず紅牙の手が止まる。そこを逃さず、フォグナーは影の黒衣を大きく伸ばして広げると、海嘯の如く紅牙たち目掛けて解き放った。
「ヒャッハァァァッ! 無駄だ、無駄だぁっ! 貴様の攻撃が、一番貧弱だぞぉぉぉっ!」
 敢えて敵の攻撃を食らい、その上で相手に自らの力を思い知らせる。敵をやり過ごすためではなく、己の力を誇示するための死んだふりにも等しい行為。身体だけでなく、心まで折ることを目的とした、品性の欠片もない行動が不快感を煽る。
「……っ! やってくれますね」
 頬を掠めた影を払い、アリシアはフォグナーを睨みつけた。
 シグフレドやリムといったボクスドラゴン達が盾になってくれたことで、被害は最小限に留まっている。だが、絡みつく影は肉体の自由を奪い、注入された猛毒は、情け容赦なく守り手達の体力を削って行く。
 時間を掛けて戦うのは得策ではない相手だ。否、それ以前に、こんな下劣な者と一緒の空気を吸う時間は、少しでも短くしておきたいところ。
「つまらぬ者よ。輝きを嫉み、美しきものを否定する者。お前のような者は、この場には相応しくない。疾く去るのが定めと知れ」
 敵の身体に影が戻る瞬間を狙って、高々と跳躍し、蹴り飛ばす。鋭い爪先の一撃がフォグナーの腹に突き刺さったところで、イ・ドがライフルより魔法の光を放って牽制し。
「こちらで敵の力を削ぐ。後は効率的に傷口を広げてくれればいい」
「解りました」
 イ・ドの言葉に頷いて、鈴音が擦れ違い様に空の霊力を帯びた刃を抜き放って敵を斬る!
「ぐぅぅぅっ! お、おのれぇ……狩られる者どもの分際で! 大人しく、私に穢されていれば良いものを!」
 さすがに、これは効いたのか、フォグナーが腹の傷口を抑えて後ろに下がった。それでも、未だ憎まれ口を叩けるのは、まだまだ余裕がある証拠なのだろうが。
「穢す? この程度でか? まだ意志にも剣にも! 曇り一つ貰ってないよ!」
 間髪入れず、ノーフィアが叫ぶ。そんな彼女の身体も多数の影に絡み付かれていたが、しかしノーフィアは気にしない。
「フォローはこちらでやるよ」
「その間に、皆さんで攻撃を!」
 舞い散る花の円舞にて、有理と恭志郎の二人がボクスドラゴン達の体勢を立て直す。そんなボクスドラゴンの内の一体、ノーフィアの相棒であるペレもまた、主に自らの属性を分け与え。
「よし、行くよペレ!」
 付与する力は蒼き焔。燃え上がる炎が絡み付いた影を溶かすようにして払い、ノーフィアは拳を構えて立ち上がった。
「お返しは、させてもらうからね!」
 纏った炎を力に変えて、ノーフィアの蹴りが燃え盛る刃となってフォグナーへと襲い掛かった。すかさず、影を盾のような形にして防がんとするフォグナーだったが、そこは冬真がさせはしない。
「まだだ。僕の一撃も、持って行ってもらうよ」
 御業より繰り出す炎弾を重ね、黒き盾を突破する。蒼と紅、二重の焔は吸い込まれるようにしてフォグナーの顔面に直撃し、卑屈な笑み諸共に焼き払った。
「ぎゃぁぁぁぁっ! か、顔がぁぁぁぁっ!!」
 両手で顔面を抑え、フォグナーは慌てて鎮火を試みる。が、単なる炎であればまだしも、グラビティによって紡がれた火炎は、その程度では完全に消えることはなく。
「お、おのれぇ……貴様達、もう許さんぞ!」
 焼け焦げ、溶け掛けた顔を片手で覆いつつも、フォグナーは再び影の衣を展開し、ケルベロス達へと襲い掛かって来た。

●因果の果て
 残忍、狡猾、冷淡、卑怯。人の感情としては時に唾棄すべきものとして忌み嫌われるものだが、戦場においては極めて有利に働くのも事実。
 もっとも、それはあくまで、その心を持つ者が初志貫徹を通せればの話。善意であれ、悪意であれ、一時の感情の暴走に任せて我を失えば、非情なる殺戮者も単なる粗暴な荒くれ者でしかない。
 黒喰のフォグナーとて、それは変わらないようだった。精神に重大な欠陥を抱く、エインヘリアルの犯罪者。だが、それでも所詮は小者なのだ。己の優位を少しでも失いかけた瞬間、短慮で凶暴な側面を露わにするというのは。
「えぇいっ! こうなれば、貴様のその美しい顔に、猛毒を注ぎ込んで穢してくれるわ!」
 先程から仲間のフォローに専念していた有理を狙い、フォグナーは鋭く変形させた黒き影を伸ばして来た。
「下がるんだ、有……理……っ!?」
 間髪入れず、割って入る冬真。だが、その一撃が冬真の急所近くを貫いていたことで、思わず恭志郎が駆け寄った。
「兄さん……!」
「だ……大丈夫……だ……」
 傷口を抑えて堪える冬真だったが、明らかに傷が深い。そんな彼らの様子を見て、フォグナーは勝ち誇ったように笑っていた。
「クックック……愚かなやつよ。私の狙いは最初から貴様だ。そこの女を狙うと言えば、無防備を晒して突っ込んで来ると読んでいたのでなぁっ!!」
 下らぬ自己犠牲の心など持たねば、苦しまずに死ぬこともできたはずだ。狂笑を浮かべながら告げるフォグナーだったが、それは同時に盛大なる死亡フラグであることに、果たして彼は気が付いていただろうか。
「さて……その傷では、もはや誰も庇えまい。次は本当に、そこの女を穢してやろう。私の影を口と鼻へ突き刺して、直に猛毒を注ぎ込んでやるのも面白い」
「こ、こいつ……!!」
 普段の敬語さえ一瞬忘れ、恭志郎がフォグナーを睨み付ける。だが、目の前の敵に対して憤りを隠し切れないのは、どうやら彼だけではなかったようだ。
「「「クァァァッ!!」」」
 リム、ペレ、そしてシグフレドといった3体のボクスドラゴン達が、一斉に吠えながらフォグナーへと体当たりを開始した。
「ぬぉっ! な、なんだ、こいつらは!? えぇい、離れろ! 離れんか!!」
 怒りに満ちたる小さき者達の反抗に、動揺を隠し切れずフォグナーは影を振り回す。なんとかボクスドラゴン達を振り払ったものの、それは大きな隙を生み。
「そろそろ、年貢の納め時ですよ」
「愛だの友情だのは、柄ではないが……地球で戦い、《学習》した事実程度は、教えてやろう。……闇や絶望を払うのは、地球の戦士が得意分野だ。覚えておけ」
 体当たりの連続に気を取られていた隙を突いて、鈴音とイ・ドが一気に間合いを詰める。
「熱風の刃……疾れッ!」
「そして、凍り穿てッ!」
 その刃が生み出すは熱風。その穂先が繰り出すは氷雪。相反する二つの斬撃が、醜悪なるエインヘリアルの纏った衣を穿ち。
「……もう、どうなっても知らないからなっ!!」
 練り上げた苦無に螺旋の力を注入し、紅牙はフォグナー目掛けて投げ付けた。それが突き刺さった瞬間、フォグナーの身体があらぬ方向にねじ曲がり、苦痛が体内を駆け抜ける。だが、この程度で死ねれば、まだマシだったであろう。
「我、流るるものの簒奪者にして不滅なるものの捕食者なり。然れば我は求め訴えたり。奪え、ただその闇が欲する儘に」
 続けて放たれたのは、ノーフィアの描いた魔法陣より構成されし漆黒の球体。それはブラックホールの如くフォグナーを引き寄せると、更に彼の身体をねじ曲げ、押し潰す。
「ガホッ!? オ……ボボボォ……」
 内と外から、異なる力によって引き絞られることによって、もはやフォグナーの身体はボロ雑巾同然だ。手も足も、背骨さえもあり得ない方向に曲がっていたが、そんな彼を見て、冬真と恭志郎は静かに告げた。
「……覚悟はできているんだろうな?」
「兄さんと有理さんを狙ったこと、後悔させてあげるよ」
 やろうと思えば、一撃で急所を貫くことはできる。だが、今の二人は、敢えてそれをしなかった。
 ナイフと刀。それぞれの得物を手に、敢えて敵の傷口を抉るように斬り付ける。それはフォグナーに更なる苦痛を与え、彼の身体をより複雑に歪ませて。
「ブボォッ! ……ブギョ……ゲボガァ……ッ!?」
 限界を迎えたフォグナーの肉体が大きく捻じれ、とうとう木っ端微塵に弾け飛んだ。
「我が祝福の下、ここに誓いましょう。すなわち我らが勝利。勇士の躍動にこそ、この力は強く輝く――今こそ、その真価をここに」
 原型さえ留めぬフォグナーの身体。アリシアの生み出した宝剣の一薙ぎが炎を呼び、最後は残滓さえも残さずに焼き尽くす。
 己が傷つけ、喰らって来た者達の痛みと恐怖。その一割でも、最後にしっかりと刻み込んでから散って行け。消し炭となったフォグナーの残骸を、冬真と恭志郎、そしてアリシアが、無言のまま静かに見つめていた。

●レッツ、グランピング!
 災いは去り、森と草原は再び優しい空気を運んで来る。
「折角ですし、前にキャンプ場で兄さんが作ってくれたスモア、また食べたいです!」
「ああ、構わないよ。丁度、材料も持って来たんだ」
 恭志郎の願いを聞いた冬真が、そう言って木製のテーブルの上に材料を広げた。チョコレートにマシュマロに、そしてクラッカー。漂う甘い香りにリムが尻尾を揺らしているのを見て、有理が思わず苦笑した。
「全く、食いしん坊なんだから」
 確かに、そのまま食べても美味しそうだが、折角のグランピング。焚き火の炎で焼いたマシュマロを、チョコと一緒にクラッカーに挟んで食べるのもまた一興。
「美味しそうですね。一つ、いただいてもよろしいですか?」
「あっ! アタシの分も、残しておいてくれよな!」
 森と草原に響き渡る笑い声。人々の笑顔と平和な世界。それらの何気ない喜びが、ケルベロス達にとっては一番の報酬だった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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