二刀の剣士は砂浜に蘇る

作者:青葉桂都

●砂浜のサルベージ
 夜の砂浜の上を、3匹の巨大な魚が泳いでいた。
 宙を泳ぐ魚たちは、死神と呼ばれるデウスエクスの一種……その中でも下級の存在だ。
 体長2mにも達する魚に似た異形の姿が、砂浜の一角で等間隔に離れ、円を描くように泳いでいる。
 海水浴のシーズンも終わりに近づいており、夜の浜辺にひとかげはない。
 ただ、もしも目撃した者がいれば、そこが昨年二刀流のエインヘリアルがケルベロスに倒された場所だとわかったかもしれない。
 怪魚たちの泳ぐ軌跡が青白く発光し、やがて魔法陣を描き出す。
 その中心に、エインヘリアルが出現した。
 もっとも、かつてこの地で倒れた敵を知っている者が見ても、果たして同一人物と認識できたかどうか……。
 顔は真一文字に深い傷が刻まれている。
「血っ、血血血……血の……海を……」
 おかげでまともにしゃべることもできない様子だ。仮にしゃべれたところで意味のある会話ができそうな雰囲気はなかったが。
 そもそも、自分がソーンダイクという名であったことすら覚えているかどうか。
 体にも二条の大きな傷があり、そこから大量の血を流している。
 全身をぴっちりと覆っていた鎧は肥大化した筋肉によって砕けており、海パンに似た形で腰を覆う部分が残っているばかり。
 両手に構えている剣……らしきものにもはや星座の紋様はなく、奇妙にねじくれた刃から絶え間なく赤い液体がしたたっている。
「血ィィィィ!」
 獲物を求めて、サルベージされたエインヘリアルだった存在は夜の闇に吠えた。

●ヘリオライダーの依頼
 とある海水浴場で、死神が出現するのを予知したと、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は告げた。
「死神といっても下級の、知性を持たないタイプになります」
 体長2mほどもある魚のような外見をした死神と、戦ったことがある者もケルベロスの中には多いだろう。
「目的はかつてケルベロスによって倒されたエインヘリアルをサルベージすることのようです」
 捨て駒として送り込まれていた罪人エインヘリアルを強化変異させてサルベージしようとしているのだ。
「サルベージ時には周辺住民を虐殺し、グラビティ・チェインを補給した上で、デスバレスに連れ帰ろうとしているようです」
 市民を守るため、死神と蘇ったエインヘリアルを撃破してほしいと芹架はケルベロスたちに告げた。
 サルベージされるエインヘリアルは、ソーンダイクと名乗っていた二刀流の使い手らしい。
「もともと罪人エインヘリアルはおおむね知性的なタイプではありませんが、サルベージされたことでわずかな知性さえ失っているようです」
 ただ血を求めるだけで、意思の疎通も難しい。別に敵と会話する必要はないので問題はないが。
「敵の攻撃手段ですが、血まみれの双剣て攻撃することで、傷つけるだけでなく麻痺させることも可能です」
 その他、対象を切り裂いて血の海を作り、そこに敵をとらえて追撃する技を使う。
 また、鮮血の津波を作り出し、敵を毒に冒す範囲攻撃を行えるようだ。
 3体の怪魚型死神は噛みつくことで生命エネルギーを奪ったり、怨念の弾丸を爆発させる範囲攻撃で毒を与えたり、空中を泳ぎ回って自らを回復できる。
「死神たちはさして強くありませんが、強敵のエインヘリアルと同時に戦うことになりますので、油断はしないでください」
 ケルベロスが到着する頃には、浜辺には一般人が近づかないよう避難勧告が行われている。
 ただし、あまり広範囲に避難を行うと、グラビティ・チェインが得られなくなるため死神は別の場所で別の対象をサルベージしようとするため、事件が阻止できなくなる。
「皆さんが敗北し、敵が砂浜の外に出れば多数の犠牲者が出てしまいます」
 また、死神たちは戦況が不利になればエインヘリアルを撤退させようとする可能性がある点も要注意だ。
 ただし、敵の知能は低いので、劣勢をうまく装えば撤退させないようにできるかもしれない。
 撤退時は一方的に攻撃できる機会となるので、状況によっては逆に敵を撤退させるように仕向けるのも手かもしれない。仮に倒しきれなくとも、とりあえず敵が撤退してくれれば住民の被害は防ぐことができる。
「とはいえ、敵はなるべく逃がさないにこしたことはないでしょう」
 敵はエインヘリアルを狙ってサルベージしきている。霧島・絶奈(暗き獣・e04612)も危惧していたが、死神とエインヘリアルの間でなんらかの密約があるかもしれない。
 そう告げて、芹架はケルベロスたちに頭を下げた。


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
安曇・柊(天騎士・e00166)
楡金・澄華(氷刃・e01056)
デレク・ウォークラー(灼鋼のアリゲーター・e06689)
リリス・セイレーン(空に焦がれて・e16609)
葵原・風流(蒼翠の五祝刀・e28315)
ラカ・ファルハート(有閑・e28641)

■リプレイ

●砂浜のサルベージ
 ヘリオンから降りたケルベロスたちは、サルベージが行われているはずの現場へ向かって走っていた。
 夜の砂浜に足が沈む感覚を覚えるが、ケルベロスにとっては大きな問題ではない。
「海に魚は付き物だけど、死神なら放っておけないわよね」
 踊るような足取りでリリス・セイレーン(空に焦がれて・e16609)が歩を進めるたび、ふわふわにカールした赤い髪が夜でも鮮やかに揺れる。
 死神たちが描き出す魔法陣の青い光が遠くに見える気がする。
 そこを目指してケルベロスたちは走る。
「日本で言う所のお盆はとうに過ぎているというのに、逝き遅れたのが居るとはね」
 海の色に似たマリンブルーの薔薇を揺らしながら、ローザマリア・クライツァール(双裁劒姫・e02948)の静かな声が、闇に響く。
「最近、撃破されたエインヘリアルがサルベージ対象になることが多いな」
 夜の闇に溶け込むような漆黒の髪をポニーテールにまとめた楡金・澄華(氷刃・e01056)が、答えるともなく呟く。
「いずれ、もっと強力な存在をサルベージしてくる死神が出てくるかもしれません。充分に気をつけないといけませんね」
 葵原・風流(蒼翠の五祝刀・e28315)が言った。
 緑の髪をした小柄な女性の言葉に、2人も相槌を打つ。
 魔法陣の中心に二振りの剣を手にした異形の剣士が現れているのが、もう見えていた。
「ハ、死人を甦らした所で所詮は死人だろ。甦ったならもう一度冥土に叩き帰してやるまでよ」
 地獄化した目で敵の姿を見やり、デレク・ウォークラー(灼鋼のアリゲーター・e06689)が鮫のように笑う。
「確かに……出来れば此処でエインヘリアルも死者に還したい所です、ね」
 安曇・柊(天騎士・e00166)がボクスドラゴンの天花とともに、仲間たちよりも少し先へと前進する。青年は荒っぽい笑いとは対照的に、憂いを帯びた表情を浮かべていた。
「罪人が思うこと――どうなのでしょうね。朽ちてなお使役されるそれを終わらせることができればいいのですが」
 紅弁慶を象った鍔を持つ太刀に手をかけて、十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)が宵闇の刃を音もなく抜く。
「血っ、血血血……血の……海を……」
 狂気そのものの表情で、エインヘリアルが双剣を構える。
 8人のケルベロスと付き従うサーヴァントたちも、いつでも迎え撃てるよう身構える。
 ラカ・ファルハート(有閑・e28641)は、口元に浮かべたゆるい笑みはそのままに、敵を見据えた。
(「塵は塵に。灰は灰に。死を冒涜する者へは、報いを――」)
 青年の腰には二刀が下がっていたが、それに手を触れることなくハンマーを構える。
「叶うなら此処で、止めてみせる」
 口の中だけで呟いて、ラカは動き出した仲間たちに続く。
 そして、戦いが始まった。

●双剣の襲撃
 幾人かのケルベロスが持ち込んだ照明が夜の砂浜を照らし出す。
 暗い明りの中、変異強化されたエインヘリアルの動きは、誰よりも早かった。
 呪いのこもった剣が、泉を狙って振り下ろされる。
 柊は大きな翼を広げて、長身の身体を刃の前へと飛び込ませた。
 異形の巨体が繰り出す剣技は青年の身体をたやすく切り刻む。
 間近に見える凶悪な瞳に心を鷲づかみにされるが、それでも退かない。
 傷つけられることよりも、さらに恐ろしいことがある。
「ありがとうございます、安曇君」
「いえ……十夜さん、気にしないでください」
 短く会話を交わした直後、泉が近づいてきた死神を切り裂く。
 その動きを横目に、柊はオラトリオの翼を大きく広げた。
「……大丈夫、ひとりじゃないです、から」
 花霞の翼を大きく羽ばたかせる。
 そこに灯るのは、薄く柔らかな花の青。
 海風に巻き上げられ、青は広がり、熱を帯びていく。
 弱く、けれども強い青年の心を映して、紫へと変じた花は風にあおられた炎のごとく大きく広がり、敵を薙ぎ払う。
 死神のうち1体が、炎からエインヘリアルを守った。残る2体の死神も花の炎に巻き込まれている。
「……どうやら敵はすべて前衛のようです。死神はディフェンダーですね」
「なら、やっぱりまずは死神からね。アタシと黄泉還ったエインヘリアル、どちらの二刀がより鋭いのか、勝負といきたかったのだけれど」
「私も、柄になく少しやり合うのが楽しみだが、まずは任務優先だな」
 いずれもエインヘリアルと同じ二刀流の使い手であるローザマリアと澄華が言った。
 ローザマリアもまた、光を放って敵の動きを確かめている。
 その間に、澄華は喰霊刀で喰らった魂を取り込んで自らを強化していた。
 死神の怨霊や、他のケルベロスたちの攻撃も、それぞれ敵に向けて放たれていた。
 エインヘリアルの強力な攻撃はその後もさらに続く。
 死神も、エインヘリアルに比べれば弱いとはいえ、3体いれば侮れない。怨霊弾の爆発が、ケルベロスたちを毒に侵し、徐々に体力を削り取っていく。
 ラカが薄く笑った。
「ずいぶんと楽しそうね」
 リリスは仲間たちの負傷状態を確かめながら彼に声をかけた。
「いや、なに。装うまでもなく劣勢じゃと思うてな」
「確かに、敵が4体もいる状態では、そうなっても仕方ないわね。でも、そこを支えるのが私の役目よ」
 言って、リリスは砂の上でステップを踏む。
 肉付きの良い体を包むドレスが、薄赤い色をした髪が、照明に照らされて舞い踊る。
「Kommen Sie, Geister Schnee」
 頭上に陣が描き出される。そこからひらひらと舞い落ちる雪の精霊たち。
 仄かに光る精霊の羽は六角形に近い形――すなわち雪の結晶に似た形をしていた。
 神秘のヴェールはリリスを中心に広がっていき、彼女のウイングキャットを含めた前衛のケルベロスたちの傷を癒やしていく。
「海水浴場にふさわしいのは、死神や血を求める生き物の姿ではなく、たくさんの人が笑っている姿よ」
 スイートピーのように柔らかな声がヴェールとともに仲間を支えていた。
 ラカが滑るような足取りで死神の1体に接近し、ハンマーを叩き付けている。その間に彼のボクスドラゴンであるどらさんが、属性をインストールして柊を回復していた。
 もっとも、本当の劣勢は戦闘が始まってから数分間だけのことだった。
 デレクは仲間たちの攻撃で傷ついている1体へ接近する。
 移動しながら青年は身体中にしっかりと酸素を取り込んでいた。
「刻んでやるよ、テメェの鎮魂歌をよォ!」
 死神へと連撃を叩き込む。
 ハンマーで、銃把で――呼吸を止めたまま、息継ぎする間すら取らない打撃の嵐から死神は逃れられない。
 激しい攻撃が身体の中にある酸素を猛烈に消費していく。
 そして、敵を完全に動きを止めたところで、デレクは大きく息を吸い込んだ。
 落下した死神の向こうに異形の剣士が見えた。
「また殺られに冥界からはるばるご苦労なこった」
 エインヘリアルに向けて、デレクは親指を下に向けて見せた。
 敵の1体が倒れ、戦いは少し楽になった。
 けれどその分、死神の動きは消極的になったようだった。もちろん血に飢えたエインヘリアルは旺盛な戦意を見せている。
「そっちが血を見る為に剣を振るうなら、アタシは護る為に剣を振るう。それだけよ」
 天空からローザマリアが敵に向かって剣を降らせ、攻撃を妨害しようとする。
 風流は中衛から彼らに向かって歌声を響かせ始めた。
「眠いのじゃ~、疲れたのじゃ~、もう、やめるのじゃ~♪」
 かつて経験した戦いの中で覚えた……というか、耳に残って離れなかった歌。敵のやる気をそぎ、戦う意思をくじく歌。
 しかしまたも、剣士との間に死神が割り込み、歌声からかばってみせた。
「もう、邪魔をしないでよ! そいつの攻撃を食らったらまずいのに!」
 あからさまにいら立った声を風流は吐き出す。
 もっとも、不満があったのは事実だが、大きな声を出したのは演技だ。
 死神の突撃を受けた澄華が大きく後退するのが見えた。けれど、それもまた意図的なもの。プレッシャーを受けての攻撃は、けして彼女に痛手を与えてはいない。
 少し優勢になったことを敵が認識できないように、ケルベロスたちは自分たちが不利であるように見せかけていた。

●双剣は闇に消える
 1体目の死神を倒してから数分が経過した。
 おびただしい血が津波となってケルベロスたちに襲いかかってきた。
 ローザマリアが牽制の攻撃を飛ばしてはいるものの、威力が下がっても変異強化されたエインヘリアルの攻撃は強烈だ。
 天花とウイングキャットが泉と澄華をかばって津波を浴びている。
 とはいえ、2体目の死神もだいぶ弱まってきているようだった。
 うまく騙されているようで、死神は引き気味に戦うケルベロスたちを包囲し、攻撃を加えようとする。
「……このままやられるくらいならっ」
 泉は捨て身を装って、宵の色をした刀を手にその死神へと接近する。
 迎え撃とうとする敵よりも少しだけ早く、最小限の動きで彼は死神と対峙した。
「これも自信はありませんが、フタツメ、当たれば痛いですよ?」
 少しだけ重く、少しだけ正確に……滑り込むように、刃が敵を捉える。
 突撃しようとした勢いのまま魚型の死神を断ち切ると、2つに分かれた身体が左右にゆっくりと倒れた。
 2体の仲間が倒されて、死神が少し後退した。
 とはいえ、まだ逃げることを決めたわけではないらしい。怨念を集めた力がケルベロスたちの間で炸裂する。
「くっ……よくもやってくれたわね……!」
 黒く染まった傷口を押さえて、ローザマリアがよろめく。
「ようやく倒せたが……これ以上は厳しいのう……」
 ラカはハンマーを杖にして、砂浜に膝をついた。黒鎖で封じた二振りの太刀が、ぶつかりあって音を立てる。
 そうしながらも観察し、彼は死神が撤退すべきか迷っていることを察した。
 けれどもエインヘリアルの一撃が敵を攻勢に回らせる。血の海に囚われた天花を双剣が深々と切り裂いたのだ。積極的に仲間をかばい続けていた花の竜が動かなくなる。
「……天花」
 倒れたサーヴァントの姿に、柊が悲しげな声を出す。
 そうしながらも、彼は長身を低くしてエインヘリアルに組み付き、注意を引いた。
 柊が注意を引いている隙に他のケルベロスたちが死神を狙う。
 死神も柊へと攻撃を加えようとするが、後衛から飛び込んだデレクがかばう振りをしながら割り込む。
「やらせねえぜ!」
 言いながら、オーラに包まれた拳で凍り付くような技量の一撃を叩き込む。
 デレクが離脱した後で、ウイングキャットが本当に柊をかばう。
 死神を追い詰めるまでさほど時間はかからなかった。
 ラカの手からケルベロスチェインが伸びる。鎖が巻き付き、締め上げる。
 無機質な死神の顔が目に入った。心の中に怒りが沸き上がる。
「これで終いだ」
 その怒りを彼は面に出さなかった。
 静かに、しかし強く引いた鎖が死神の体を引き裂き、細切れにする。
 視線の先を砕けた死神から、異形の剣士へ変える。
 剣は封じているものの、ラカも剣士のつもりだ。元は剣士であったエインヘリアルが異形の姿をしていることに一抹の悲しみと憐れみを覚える。
 思いを心のうちに隠したまま、彼はハンマーを最後の敵に向けた。
 他のケルベロスたちもエインヘリアルへと得物を向ける。
 その間に、リリスが柊へとピンク色の霧を柊へと飛ばして彼を回復している。
「血ィィィィ!」
 柊がまた切り裂かれた。血の海に足を取られた彼が何度も切りつけられる。
 演技ではなく崩れ落ちそうになる。だが、リリスが回復していたおかげかどうにか踏みとどまった。
「起こされてしまったようだけど、あなたも再び眠るべきだわ。エインヘリアルの人」
 微笑みとともにリリスが告げた。
 強力な攻撃を受けながら、ケルベロスたちはエインヘリアルへダメージを与えていく。
 澄華は至近距離から敵と対峙していた。
 異形の双剣が、蒼き大太刀と漆黒の太刀とぶつかりあって火花を散らす。
 もう不慣れな演技をする必要はない――が、演技抜きでも力負けしそうなほどの力を敵は有している。
 この戦力を死神が得れば厄介なことになるだろう。
 エインヘリアルと死神、どのように繋がっているのかも気になるところだが、まずは敵を倒すのが優先だ。
「この技、避けきれるかな……?」
 つばぜり合いを演じながら、澄華は敵の周囲に魔法陣を作成した。
 刃を弾いて距離を取ると同時に、絶え間ない閃光が幾度も敵を貫き続ける。
「死神は倒れました。あなたも、もう逃がしません」
 風流が両手の斬霊刀に空の魔力を込めて、傷跡を正確に斬り広げる。
「うむ。やることは一つじゃな」
 ラカがハンマーを振り下ろして、氷河期の冷気で敵を包んだ。
「わかってると思うけど、油断はしないでね。最後まで攻撃には回れそうもないわ」
 リリスやどらさんの回復に支えられながらケルベロスたちは攻撃を続ける。
 それでもやがてウイングキャットが柊をかばって倒れた。
「チッ、どっちにしたって、撤退止めた以上はここから出てかせらんねえんだよ!」
 デレクが穴を埋めるべく前衛へ回った。
 2人で仲間をかばいながら、なおも攻撃を続けていく――。
 デウスエクスは死ぬまで動きが変わらないが、負わせた傷と流れる血が追い詰められていることを示している。
 だが狂った剣士は攻撃の手を止めない。
 大きく翼と両手を広げた柊がなおも繰り出される双剣を体で止める。
 流れる血に捕らわれた彼に追撃の刃が振り下ろされる。
「助かりました、セイレーンさん。それにウォークラーさんも……。おかげで……最後まで、守れました」
 砂浜に倒れ込みながら、彼は告げた。
「眠ってください。今度こそ、安らかに」
 泉の正確な斬撃が、澄華の暴走する二刀が、さらに深く敵を切り裂く。
 なおエインヘリアルは歩みを止めないが、もう限界であることは明らかだった。。
 ローザマリアは因果と応報の太刀を構えた。
「劒の媛たる天上の御遣いが奉じ献る。北辺の真武、東方の蒼帝、其は極光と豪風を統べ、万物斬り裂く刃とならん――月下に舞散れ花吹雪よ!」
 両腕を重力から解放し、加速する。
 幾度も振るう双剣が月光を反射して、花のような淡い光を周囲に散らせた。
 超高速の斬撃は無数の真空波を生み出して、海風を切り裂いて敵に迫る。
「同じ二刀を得物とする者の誼よ――今度こそ、眠りなさいな」
 切り刻まれた剣士は、血の塊となって砂浜に飛び散った。
 血は砂に染み込んでいき、やがて痕跡もなくなった。
 場所が砂浜なので修復は必要なさそうだ。リリスが中心となって傷ついた者たちの手当てをはじめる。
 そうしているうち、夜の砂浜にブルースハープの音色が響き始めた。
 泉が奏でるハープがレクイエムを歌い上げる。
 蘇らせられ、そしてまた散った命に捧げる曲は、静かに夜闇に流れ続けた。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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