キララの誕生日~月、星、運命の輪

作者:つじ

●彼女の愉しみ
 ヘリポートの一角に、いつの間にかそれはあった。小さなテントというべきか、屋台と呼ぶべきか、いずれにせよ、DIYの香りをふんだんに漂わせたそれは、来客を待ち受けているように見える。
 入口らしき暗幕をくぐれば、中には蝋燭の灯に照らされたテーブルと、黒衣の女の姿が見えるだろう。
「やあ、いらっしゃい」
 テーブルに両肘を乗せたまま、彼女は微笑む。ぱたぱたと、その手の内でカードが踊る。
 こんなところで何をやっているのか。当然のように生じる疑問に、彼女は先手を打って口を開いた。
「見ての通りさ、タロット占いというやつだよ」
 絵柄の描かれた面を一度見せて、再度それを切り始める。
 そして手の動きはそのままに、向かいに座るように視線で促した。
「今日は私の誕生日でね。こういうの、一度やってみたかったんだ。まぁ話相手になると思って、ちょっと付き合ってくれたまえ」
 やってみたかった、というのは本当に言葉通りの意味なのだろう、内心の照れが零れたような表情が、一瞬。
 テーブル上、ばらばらに広げたカードを、また一か所に、一束に纏め上げて。
 その頃には、五条坂・キララ(ブラックウィザード・en0275)はいつもの自信ありげな笑みを浮かべていた。
 ふふん。
「さぁ、何が聞きたい?」
 
●解説と一例
「予知能力持ちの君を占うのは、どうも変な感じがするね」
「僕達のあれは、そんな便利ツールじゃないんですよー」
「あー、そういうつもりで言ったわけではないんだ。気を悪くしないでくれたまえ。……それで、聞きたい事は?」
 キララがそう促すと、最初の客として現れたヘリオライダー、慧斗は視線を逸らしながら話し始めた。
「ええと、そのですね……実は、気になる人が居まして。その、恋愛について……」
「ほほう、相手は私も知っている人かな?」
「ええ、そこ詮索しちゃうんですか?」
「詳しく語ってくれた方が答えも明確に返せるからね……でもまぁ、言いたくないなら構わないさ」
 何でもない様子で笑って、キララがカードを切り始める。ヘリオライダー界隈も、何やら色々と大変らしい。
「……あとは、そうだ。今頭に浮かんだ数字を教えてくれるかな」
「なんでもいいんですか? 65535とか?」
「構わないが……拘りの数字でないなら、私が一回聞いて覚えられる範囲で頼むよ」
「では28で」
「ははぁ、にわとり……」
 混ぜて、分けて、カットして、頭の中で組み立てた回数だけカードを繰って、キララはその一枚を表に向けた。
「運命の輪。遠からずチャンスは来るから、それを逃さないように。準備はしておいても良いんじゃないかな」
「それはつまり、告白の……!」
「かもね。頑張りたまえよ、少年」
 気合の入った表情で去っていく慧斗を見送って、キララは貴方に向かって手招きをする。
「次は君の番だね。さぁ、どうぞ?」


■リプレイ

●愚者の正位置
「さぁ、何が聞きたい?」
 テーブルに両肘をついたまま、黒衣のケルベロスはそう尋ねた。
 あくまで優雅に、自信ありげに。内心の程は、はてさて。

●ニコラウス
「仕事運、恋愛運、健康運。さてどれに絞るか……」
「いい加減決めたら?」
 腰かけたブリッツェンの傍らで、コメットがそう急かす。
「コメットは何にする? にーちゃんのオススメは仕事運だ」
「僕は他の人の占い見たかっただけだから大丈夫。兄さんは多忙だし、健康運見てもらえば? 恋愛運は僕が聞いてあげる」
「えっ、でも俺はやっぱりお前の仕事運が――」
「僕は仕事選ぶから、心配しないで!」
「ふふ、決まったかな? それでは――」
 息を一つ吐いて、キララがカードを引く。
「健康運は悪魔の正位置。今、もしかしたらと恐れた病気はなかったかな? もしもあるのなら、その懸念は当たってしまいそうだよ。
 それから、恋愛運だが……君、もしかして苦労人なのかな?
 力の逆位置。なかなか苦戦しそうだよ。恋愛に積極的なのだとしても、背負うものがその足を鈍らせる。強引に振り切ろうとしても上手くいかないだろうから、辛抱強く、ね」
「この流れだと、仕事運、仕事運は……」
「気にしすぎだよ兄さん! ほら、甘い物でも奢って! 早くっ」
 切り替えろ、というように、コメットがブリッツェンを引きずっていった。

●共に高みへ
「まずはヒノトからどうぞなのよ」
「いいのか? じゃあ俺から!」
 エルピスに促され、ヒノトが身を乗り出す。
「術の上達に向けて毎日修行してるけど、このままで本当に強くなれるのかな」
「えっ」
 修行してるの? すごい! という声が隣から漏れたが、ともかく。
「力の正位置――なれる、とカードは言っているね。君の才能、秘めた力をいずれ思うままに振るえる時が来るだろう。でもこの札が示すのは『忍耐』……改めて言われるまでもないだろうけど、努力は怠らないことだよ」
「やったー!」
「ああ、今後に活かしていくよ」
 頷くヒノトの横で、自分の事のように喜んでいたエルピスが、今度は前に。
「次はアタシ! ヒノトと肩を並べるくらい強くなれる?」
「良いね、ライバルかな? ……ふふ、太陽の正位置。君が望むなら、叶うだろう。なんだったら超えてしまえるかも知れない。運も味方している、自分の望みをしっかり持つと良い」
「さすがエルピス……油断できないな」
「ワタシも頑張るから、すぐに追い抜いちゃうのよ? ふふふのふー」
 本日の勝負はノーゲーム。決意を新たに、二人は帰路に着いた。

●食卓の話
「どーよ占い主、捗ってる?」
「思ったより、ね」
 続けて入ってきたかだんは、まだまだ暑い、とかあそこの野菜ジュースは根菜が、とか情報交換をしてから。
「あ、今日の夕飯は何にしたらいい?」
「ええ? やってみるけどさぁ……」
 若干途方に暮れながら引いたのは、審判の正位置。
「変革、復活……昔、こう、食べるのを諦めた料理とか、再挑戦してみよう」
「あったかな、そんなの……」
「君じゃなくても、一緒に食べる人のとか! ね!!」
 もはやこれは占いなのか。食卓を囲む相手を頭に浮かべて、メニュー会議はもうちょっと続いた。

●零からの
「じゃあ、占って貰おうかな」
「良いとも」
 意地っ張りと見栄っ張りが、不敵な笑みで向かい合う。
 サイファの問うたのは、これからについて。直面している喪失感、途方に暮れるような現状。語る口調は、徐々に弱く。
「……へへ、玄人のオレとしたことが弱気になっちまったかな」
「全くだね。女帝の正位置。まずは愛されている現状を自覚すると良い。
 それから、『収穫』の時が来ているよ。行く道が分からないなら一度振り返ってみたまえ。君のこれまでの行いが、自ずと道を示してくれるさ」
 今回はこっちの勝ち。ドヤ顔で、キララはそう言い切った。

●いつまでも
「大好きな人と、いつまでも幸せで居られるか……途中で困難とか無いか、占って欲しいのです」
「了解した」
 カードを切り始めたキララと真理が言葉を交わす。話題は最近向かった事件と、敵について。
「白の純潔事件とかそうだったですが、男の人ってやっぱり誘惑とかに弱いんですかね……?」
「まぁ、男に限った話でもないかもね。
 女帝の逆位置……情緒豊かだが不安定。悩みの種になる女性が現れそう。相手への信頼や油断が問題を起こしかねないから、気を付けて」

●友達の話
 恋愛運を頼んだ榧は、「飽くまで友人の話だ」と言って口を開いた。
「好きな人に『大事な相手』って言われてね、それ以来顔を合わせづらいんだって」
「ははあ、悩ましいね」
「年の差もあるし、今後どう接すれば……あ、友人の話よ?」
 そんな彼女に差し出されたのは、運命の輪の正位置。
「一目惚れ、運命の恋。君の恋愛はかなりの大事だ。
 巡り廻る、一度離れてもまた近付く、数奇な付き合いになりそうだよ。大切に、ね」

●占師
「俺に、店に幸運を運んでくれる輩はいるかね?」
 占師を営むヒコが、客側に座るのは珍しい光景だった。
「さぁさ、新米占師のお手並み拝見」
「お手柔らに、ね」
 緊張気味にカードを混ぜて、引く。
「女帝の正位置。
 ああ、期待していると良い。幸運の女神……いや、幸運な女神? がそちらを訪れる。仕事場を片付けておいてはどうかな?」
「ほう……で、どうだ。誰かの吉兆を見るのも楽しいもんだろう?」
「たしかに、これは良いね」
 ヒコの言葉に、新米占い師は微笑んで頷いた。

●卵男
「占ってほしいのは、親愛なるおじさまについて」
 メアリベルが語るのは、父母亡き後に世話をしてくれた恩人が、父母の死を仕組んだ犯人なのではないかという疑いについて。
「メアリはこのまま知らんぷりしてたほうがいいかしら、それとも……」
「……戦車の正位置。望むものは困難の先にある。立ち向かえ、とカードは言っているようだね。どうするかは、君次第だけど」
 健闘を祈るよ。そう言ってキララは札を置いた。

●岐路
「五条坂さんも19歳なんだ?」
「なるほど、君とは同い年か」
 そんなミリムの望んだのは、『今後の在り方』について。
「最近ちょっと、自信を無くすことが多くて……」
「ふむ……法王の正位置。
 一旦落ち着いて、という感じかな。慎重に、『何となく』ではなく不安な現状をしっかり分析して、変化が必要か否かしっかり見極めてくれたまえ。先輩や師匠にアドバイスを求めるのも良い」
 お互い頑張ろう、とキララはそう締めくくった。

●ホーム
「前の仕事辞めてから宿無しになっちゃって、住む場所探してんだけど」
 そんな猫晴の言葉に対して、引かれたカードは……女帝の逆位置。
「残念だけど、かなり苦戦する。物件の希望条件は?」
「理想はやっぱ周りに他に人が住んでない場所かなぁ……」
「……通りで。この札の逆位置は孤独を求める意味もあるんだ。でも今の日本で人と関わらずに生きていける場所って、そんなにないのかも」
 可能なら私は図書館かプラネタリウムに住みたい。キララは溜息を吐いた。

●にゃんにゃん
「これから先も、ケルベロスとして全力で走っていける?」
 そう聞いて、環は腰を下ろした。
「最近は敵の動きも大きくなって、友達も狙われたり大怪我したり……ちょっと不安になっちゃって」
「女帝の正位置、だ。心配しなくてもいい。
 君の優しさや、懸命な姿勢の賜物だろう、何事も円満に解決していけるよ。戦い以外にも、説得や救助とかもそうだ。自信を持って挑んでくれたまえ」
 先輩に対してでも自信ありげに、キララは言い切った。

●100
「やあ、元気だったかな刃蓙理君」
「……楽しんでます。そちらは?」
「上々だよ」
 黒魔術師仲間に笑顔で返して、キララは続きを促した。
「では、その……と、友達100人……出来るでしょうか……」
「そうだねぇ……力の逆位置。強引に行って失敗する、そういう徴が出たね。やはり人間関係は難しい。きちんと順序を踏んでいこう」
 そこまで読んで、刃蓙理の方を覗き込む。
「……ところで、私の事はちゃんと『友達』でカウントしているよね?」

●手がかり
「時々……自分が自分で無くなっていくような感覚があるのだ」
 紅の求めるのは、その原因。失われた過去の記憶こそが、それではないか。
「女帝の正位置。出会いが手掛かりの発端になりそうだね。協力者が現れそうだよ、女性の」
「そうか、あまり不安に思う必要はなさそうだな」
「ああ、基本的に良い方向に向かうカードだ。少し肩の力を抜いて構えても良いだろう。……見つかると良いね」
 励ますようにそう言って、二人はアフターヌーンティー談義に戻っていった。

●行く道
「今後についてを……漠然としていて済まない」
「良いんだ水凪君。君の選択の一助になれるなら――」
 何よりだ、とカードを捲る。
「正義の逆位置。間違った決断。……迷いが出ているのかな、もしかしたら、君はちょっと冷静さを欠いているのかもしれない。決断の前に、一度真逆の選択肢を考慮してみてはどうだろう」
「ふむ……」
「それでも、最後に選ぶのは君だ。参考程度にね」
 あの時のおみくじ機よりは役に立てたかな? そう言って、水凪に笑いかけた。

●仇敵
 テントを訪れたシフカの占い内容は、仇敵の行方について。
「新聞社の社長として、日頃から情報収集を行っているのですが……どうにも、復讐対象以外の情報ばかりでして」
「なるほど、じれったい思いをしてきたようだね……法王の逆位置だ。自分だけで考えた方法では、なかなか成果が挙がらない。しかし、変化は訪れる、近く状況は変わるよ。それが良い方向か、悪い方向かは、分からないけれど」
 備えて、と。キララはそう付け加えた。

●探し物
「――家族のような接してくれた人から貰った大事なロザリオなんです。いつ無くしたかすらハッキリしてなくて……何か得られればいいなと」
「失せ物探しかい、任せてくれたま、え?」
 エルムの前で、カードを引いたキララの頬が引き攣る。
「ごめんよエルム君、死神の正位置だ……。
 探し物は向こうから訪れる。探すか探さないかに関わらず、時期が来れば自ずと、ね。
 ただ、そこでお別れを言うことになるかも知れない。手の届かない所に落としてしまうとか、壊してしまうとか、かな。気を付けて」

●星は遠く
「お久しぶりです、キララさん」
 恋愛運の占いを頼んで、イルシヤが口を開く。
「あの時は言う暇がありませんでしたが、素敵な名前ですね。瞬く星々、ですか」
「ふふ、ありがとうイルシヤ君。昔はよくからかわれたものだけど――」
 今となっては逆に自慢だ、と言いつつ、キララはカードを引いた。
「星、だけど逆位置か。届かぬ想い、叶わぬ恋。……仕事運とかなら、目標を少し下げる事をおすすめするんだけどね、事が恋愛となると難しいかな。道のりは遠い。挑むのなら、覚悟して」

●素敵な殿方
「将来、素敵な殿方に出会えることはあるかしら?」
 席に着いたカタリの言に従って、キララがカードを混ぜ始める。
「……力の逆位置。なかなか現れなくて苦労する、と出たよ。カタリ君の……その、主張の強さに足踏みをしてしまう男が多いんだろう」
「そう……最近ちょっとしたことですぐイライラしちゃうんだけど、これも関係ある?」
「あるかも。休憩用のハーブティーの葉があるけど、持っていくかい? 落ち着くよ」
「そうしようかしら……」

●友人
 占いたいことは友人関係。アンセルムはそう切り出した。
「色々あってね、もう仲直りは終わっているからいいんだけど……またちゃんと仲良くできるか、占って欲しいな」
「……正義の正位置。
 大丈夫だよ、正しく模範的な付き合いが出来る、と出ている。君の今感じている距離感はきっと適切だから、自分の感覚を信じて過ごすと良い」
「そう、なのかな……そういえば、キミも覚醒するまでは普通に暮らしていたんだよね」
 友人関係は、という問いにキララは目を逸らした。
 察して。

●相棒
「仕事運について、占ってもらえるか? 少々気になることがあってな」
「……ふむ、皇帝の正位置。統率する立場、指揮官として活躍できるだろう。受け身になるより主導的に、リーダーシップを発揮していった方が良い」
 なるほど、と頷くマルティナの様子を、キララが窺う。
「……まだ気がかりが?」
「いや、実は占いの他にもう一つ……」
 曰く、意中の相手に、女として見られていないのでは。
「ああ、君はちょっと格好良すぎるからね、服を気にしてみるとか……恋愛運が気になるならまた来ると良いよ」

●指導、小アルカナ
「わたしの、今週の運勢……2オラクル、できるかしら」
 タロットに関しては先達、ハンナの言葉に、キララが応じる。
 キーカード、剣のキング逆位置。補助、杖のペイジ正位置。
「うぐ、コートカード……」
「まだ慣れてない? 基本的には大アルカナと同じよ、一枚一枚の特徴と個性を、絵柄から読み取りましょう」
「ふーむ……綺麗に割り切れない問題に直面していないかな? 少し新しい意見を受け入れて、対応を柔軟にすれば、糸口が見つかるかも」
 どうにか道を見つけた新米は、どや顔でハンナにそれを語った。

●そういう時期かも
「俺に運命の相手はいるのか? 宿敵でも恋愛でも、なんでもいい」
「了解したよ瑞樹君、それでは……」
 カードは二枚。キーに戦車の逆位置、補助に金貨の8逆位置。
「んん。まず、これは精々3ヶ月程度先までの事だと思って聞いて欲しい。
 ワンマンかつ気の多い部分が出ている、近未来中にはチャンスは到来しない時期のようだ。……とはいえ、君の言う通り未来は固定されてはいないから、ね」

●JKとJD
「ちーっす、なゆきちだよー!」
「うわあ」
「いきなりめんどそーにしないでって、占ってくれんでしょ?」
 玲衣亜の選んだ内容は、キララとの相性。引かれたカードは順に、杖の5正位置、皇帝の逆位置、杖のキング正位置。
「良い意味で張り合えるような関係だった。今は強引さに振り回されている――どう思うなゆきち君?」
「あー、ワガママだもんねーキララ」
「この……けれど、この先リーダーとフォロワーとして良い関係を築ける。相性はまぁ、うん、あれだよ。これからもよろしくね?」

●二人の相性
 次に訪れたのは、月夜と絃の二人だった。
「えっと、二人の相性を占ってほしいんすけど」
「できますか?」
「ああ、でも、覚悟は良いね?」
 そう言って、キララはカードを混ぜ始める。
「大丈夫、結果がどうでも、イトと私はきっと、似た者同士だから」
「それに、月夜が俺の恋い焦がれたひとだって事実は、揺らがない」
 熱烈。くすくすと笑う女性二人に、絃の頬が染まった。
「金貨の6、吊られた男、杖のクイーン全て正位置だよ。
 少しだけ打算込み、この人ならきっと、と思って付き合い始めたかもしれないね。いいや、悪い事じゃない。今となっては相手の為なら、と自らの心を預けて尽くしたいほどになっているのだから。
 ワンドのクイーンも、このまま信じるままに行くが良い、って言っている。君達が互いを信じあって居る限り、絶対に良い方向に進めるだろう。相性は良いと思うよ」
 仲良くね、とキララは二人に笑いかけた。

●運
「つまり、不運の流れを変えたい?」
「変えてどうするわけもねぇ、今更だ」
「……まぁ、そこは任せるよ」
 恵の言葉に相槌を打って、カードを三枚置く。杖の4逆位置、金貨のペイジ逆位置、杯の6正位置。
「問題は、君が現状の不運に納得していること。それで目の前にある可能性の種を潰してしまっている。それを育てていくべきだよ。やり方は……追憶、君の思い出の中にある」
「なるほど、参考にしておくぜ」
「幸運を祈る、ってね。ふふふ」

●素敵な出会いを
 月の前に、三枚のカードが並べられる。占う内容は出会いについて。
 杖の3正位置、杯の8逆位置、杖の5正位置。
「過去に旅立ちがあった、大きな希望と、広がる展望。でも今、少し悩んでいるんだね、確立されたものが無くなってしまった事の不安があるのかもしれない」
「その……色々あって、自分でも動かなくちゃって思ってるところなのです」
「なるほど。大丈夫、出会いはあるよ。悩んで動けばいい、思わぬ方向から良い事が起こるだろうから」

●近付き方
「先に占うのは……ん、私で、いいの?」
 ぐっと親指を立てたうつぎに促され、桔梗が興味深げにタロットを見る。
「……気になる人が、いるの。そのひとと……もっと近づくには、どうしたら良い?」
「キーに杖のペイジ逆位置、補助に恋人の逆位置。君の殻を良くも悪くも破ってくれる相手のようだね。ただ、まだ気持ちが揺れているのかな? この状態で相手を見ても解決にはなかなか結び付かない。まずは桔梗君、君が自分を見つめて、結論を探してみよう」
 続けて、うつぎの方は。
「私がお願いしたいのは、桔梗ちゃんとの相性です」
「あ……私も知りたい……」
「剣のクイーン正位置、杯のナイト、キングでどちらも逆位置。気になっていても手を出すことができない状態だった。しかし、変化は始まって、今は良くも悪くもその途中だ。
 熱心に関わり続ける事で、お節介と感じられてしまう事もあるかも知れない。カップは心の水だ。満たしすぎても溢れてしまう。気配りは忘れずに、ね」

●瞬き
 ふっと蝋燭を吹き消して、闇に身を浸した。心地良い疲労の中で一日を思い返し、緩く微笑む。
 そんな、19歳の誕生日。

作者:つじ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月6日
難度:易しい
参加:31人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 8
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