想い出の枠組み

作者:質種剰


「栃木県にある商店街のアーケードが、デウスエクスの襲撃によって破壊されてしまいまして……」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が、面を曇らせて言う。
「まぁ、深夜の襲来故に怪我人が1人も出なかったのだけは、不幸中の幸いでありましたが」
 とはいえ、アーケードの残骸の撤去やら再設置やら、とても一朝一夕に済むものではない。
 それ故、商店街の中でも暫くは店を休まざるを得ない店舗が多く、地元の人々は弱っているらしい。
「いかがでありましょう、皆さん。急ぎ栃木県へお出向きなさって、商店街のアーケードの修復や抉れた道の整備をお願いできませんか……?」
 深々と頭を下げるかけら。
「その商店街は、お洒落な雑貨屋さんがいっぱい軒を連ねていますから、無事修復を終えられましたら、是非お買い物を楽しんでらしてくださいませ♪」
 かけらのお薦めは、フォトフレーム専門のショップだそうな。
「最近の写真立てはほんと可愛いものばかりで、それはもう目移りすること請け合いでありますよ〜」
 素材ひとつとっても、シンプルな金属製や人気の高いアクリル、キラキラした輝きが魅力のガラス製、素朴で暖かみのある木製など、実に様々。
 フレームの形ともなると、四角に丸型ハート型、果ては指輪型から香水瓶型まで数多い。
 装飾も花を飾ったりラインストーンを埋めたり、鏡や時計と合わせて2面3面と折り畳んだり。
 どんなフォトフレームを選ぶかだけでも楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまう事だろう。
「また、無地のフレームをお好きにデコってご自分だけの写真立てを作る、なんて事もできるそうでありますよ~」
 注意事項は未成年者やドワーフの飲酒喫煙禁止、それだけである。
「きっと、皆さんのお気に召すフォトフレームが見つかるかと存じます。どうぞお気軽にご参加くださいませ♪」


■リプレイ


 仲睦まじく腕を組み、直ったアーケードの下を歩くのは緋霈とイレネ。
「ヒールで直した後の街は、直した人の個性も出たりするから素敵ね」
 イレネは商店街の其処此処に入り混じる幻想的な光景に目を奪われていた。
 喫茶店でお茶したり、雑貨屋でじっくり買い物したりとデートを満喫する2人。
 一緒に過ごせる時間は本当に幸せだから、と思いっきり楽しむイレネが健気で、
(「何か目的があるわけではなくても、隣に愛しい妻がいればそれだけでも特別で幸せな時間だからな」)
 緋霈がしみじみと感慨を覚える通り、夫婦水入らずのひとときとなった。
 最後は例のフォトフレームショップに立ち寄って、写真立てを買うつもりだ。
 色んなフレームを見ながら、2人のお気に入りを探す時間。
 それ自体も緋霈にとっては幸せで楽しい。
 迷いに迷った末に夫婦が選んだのは、アクリル板に金属枠を幾つも留めて、枠の数だけ枚数を飾れるタイプだ。
「これから二人で一生を過ごすのなら、せめてこれくらいは飾れないとな」
「そうね、夫婦になってから初めて買うフォトフレームだもの。あまり奇抜でない方がいいと思うし」
 イレネは頼もしく言う緋霈へ頷いて、艶然と微笑みかけた。
「きっと家族も増えるから、何枚か入る方が嬉しいわね」

「しかしまあ今回も派手に暴れましたね」
 ニコと空野は、互いに協力してアーケードのヒールをしていた。
「おやガイバーンさんこんにちは。これなかなかに大変ですね……」
 ニコが友人に軽く挨拶する間も、空野はドキドキと落ち着かない様子。
(「ニコくんはいつでも優しくてかっこいいですけど、こういう活動の際は殊更、お人柄が目に見えるようですね」)
 ドギマギして視線を逸らせば、合流予定だった神薙と涼香を見つける空野。
「オウガでよかった、ですね」
 と、身の丈より大きなアーケードの残骸をひょいと担ぎ上げる涼香の怪力王者ぶりには、皆が目を丸くした。
(「あのチョーカー……何故だか見覚えがあって懐かしい気がする」)
 神薙は、涼香の首元を眺めて不思議な郷愁に囚われるも、
「ああ、姉さん、言ってくれれば運ぶの手伝いますのに」
 女性に力仕事を任せてばかりは申し訳ない、と慌てて瓦礫を支えに回った。
(「……『姉さん』? ……あ、そっか。うちの弟たちに似てるんですね、この方」)
 涼香は涼香で、神薙に対して抱いていた違和感の正体が判ったらしく、自然と笑みが溢れた。
「大丈夫。そういう重いものはお姉ちゃんに任せてください」
 にっこり優しい微笑を目にして、神薙はかぁっと赤面。
(「懐かしい感じがしたけど……まさか、な」)
 一方。
(「神薙さん、初芝さんとは知り合いかな。昔地球に来ていたとか? でも確かオウガと聞いたし」)
 焦っていた為か親しげな呼び方になる神薙と、衒いなく瓦礫を運ぶ涼香を、ニコは思わず見比べて、
「あれ、灯さんお知り合いなんです?」
 と明るく声をかけた。
「お二人は、もしかしてご姉弟でいらっしゃるんですか……はい?」
 そこで反射的に返事したのが、神薙と名前の同じ空野だ。
「あ……すみません! わたしじゃなかったですね」
 恥ずかしがる空野だが、すぐに気を取り直すと、
(「ちゃんと自己紹介しなきゃ……」)
「初めまして初芝さん……わたし、空野灯と言います……よろしくお願いします」
 日頃の気の弱さを奮い立たせ、丁寧に挨拶をした。
 神薙は神薙で顔が赤いまま、真面目に答えている。
「……初対面だけどどこかで会った気がするんですよ」
 その傍ら、
「姉です」
 さっぱりした顔で言い切る涼香は、なかなかノリが良いようだ。
「空野さん、こちらこそよろしくお願いします」
「え、断言するの!? 姉にしては小さいですよね?」
 咄嗟にツッコむ神薙を見て、ニコも空野も笑った。
「あ、僕あっちの方片付けてますね」
 姉弟疑惑のある2人へ遠慮して他に向かおうとするニコ。
「あの、折角ですし4人で記念写真を撮るのはいかがですか?」
 そんな彼を涼香が屈託無い表情で呼び止め、皆で撮影という流れになった。
(「部屋に飾ろう」)
 シンプルな木製のフォトフレームに収まった4人の笑顔を眺めて、満足そうに頷くニコだ。

「かけらさん、あたしたちの撮影をお願いできる?」
 連がレベッカを伴って入っていくのは、商店街より程近い『休憩』所。
「灯りは点けないでね」
 この時点で嫌な予感のした小檻がおずおずと言う。
「撮影自体はどんな内容でも構いませんが……わたくし、ベッドシーンのギャラリーになるのはちょっと……御衣櫃に撮影代わりますね」
 恋人の痴態を男性に見せたくないかもしれんと気配りした上での人選だ。
「かけらさん、あたしたちの愛の記録、一杯撮影してね。よければ一枚あげ……え、代わるの?」
「……あ、これ撮影進むと良い子には見せられない状況になってる予感」
 早く愛し合いたいと気の逸る連の分まで、レベッカは小檻を気遣ってくれた。
「かけらさん、そういう撮影が駄目なら早めに終わらせても……はあ、撮影者が代わるだけで大丈夫ならそのまま続けちゃいますけど」
 ちなみに写真を1枚あげるという連の提案は『衣が喜ぶから』と譲渡契約が結ばれ、御衣櫃が椅子に座ってシャッターへ手をかける。
「さ、ベッカ。素敵な想い出を記録に残そう」
 早速恋人を抱き寄せ深くキスする連。
 服の下に手を滑らせて連曰くけしからん胸を揉めば、熱い吐息が零れる。
「ね、ベッカもあたしを愛して」
 頷いた黒い頭はカメラを横目で見つつ、白い太ももを両手で支えた。
 連の細く甲高い声が響く。
 その後。
「うん、なかなかいい感じにできましたね」
 厳選した1枚をそれぞれ、温もりを感じる四角い木の写真立てと豪華な雰囲気でアンティーク調の額縁風金属フレームへ収めて、連とレベッカは照れ臭そうに笑い合った。

「……なんとなく、手作りできそうなものは作ってみたくなるんだよな……」
 セイヤはガイバーンを話し相手にフォトフレーム作りへ挑戦中。
 一通り店内の商品を見た結果、シンプルな見た目のアクリル板を気に入って、それをオーバル型に切ろうと奮闘していた。
「尤も、普段写真なんて撮らないので飾る様な写真が無いんだが……」
 ふと自嘲めいた呟きを洩らすセイヤに、ガイバーンも頷く。
「わしもじゃ。盆栽の写真でも入れようかと思ったが、皆で撮るのも良いかもしれんのう」
 同じ頃。
「ん……フォトフレームって、色々あるんだね……にいさんは例によってまた手作りしてるみたいだけど……」
 おっとりと呟いて、可愛い写真立てを探しているのはリーナ。
「あ……かけら、このフレーム、ねこのイラストがいっぱい……」
 小檻へ見せたのは、様々な種類の猫が描かれた暖かな雰囲気の写真立て。
「なんだか花菱さんみたいな子もいるような……」
 リーナが気に留めるは黒猫の仔猫。この仔猫がアクセントになって煩雑な絵柄を引き締めているようだ。
「ん……これ買って飾ってみようかな……」
 気分の浮き立つリーナだが、ふと表情を曇らせる。
「でも、普段写真とか撮らないし、飾らないから入れる写真が無い……」
 すぐに小檻がサッとカメラを掲げた。
「ん……折角だから、みんなで写真撮って、これに入れて飾ろ……」
 それを見てリーナが提案する。
 早速、セイヤとガイバーンを含めた4人で記念写真を撮影。
「ん……思い出、大切にするよ……」
 リーナは嬉しそうに猫達の写真立てを抱き締めた。

「やだぁ蒼眞殿ってばえっち〜♪」
 蒼眞はこの日も小檻に蹴飛ばされていた。
 一連の流れを撮影する機会など滅多にないからと面白がって、意気揚々と彼女へおっぱいダイブしたのだ。
 それが済むと、変わった品を中心に店内を見て回った。
「あら、これ如何であります?」
 蒼眞自身は、基本的に写真立てなど使えれば充分という考えだが、小檻の薦める商品を見てすんなり購入。
 それは、一見したところ大きな雲が幾つか浮かんだ青空の絵に見えるも、雲の数だけ写真が入る仕組みになっていた。
「蒼眞殿お空お好きだし、今の写真を入れるのにもぴったり」
「落ちる男の記録を縁取る青空……悪くないな」
 納得する蒼眞。
 隠し撮りしていたミリムからおっぱいダイブの瞬間の写真を分けて貰うと、早速雲のひとつに嵌め込んでいた。

 修復を終えたライオットは、緊張した面持ちで写真立てを取り出す。
 何の面白みもないシンプルな銀縁のフォトフレームだ。
「一緒に写真を撮っていただけますか?」
「喜んで♪」
 なるほど、よくもまぁご自分にぴったりな代物を選ばれた事か、と小檻は失礼ながら彼の内面を推し量り感心する。
「こういったものに参加するのは初めてなので、声かけていいのかと不安でした」
「お誘い大歓迎でありますよ〜」
 小檻の頭を撫でる構図でツーショットを撮って貰ったライオット。
「依頼等で一緒になったときはよろしくお願いします」
「こちらこそ。依頼だとわたくし送迎役ですから、ご一緒できるのはこういう修復作業でありますね」
 その後、大胆な装いの小檻を前に堪えていた我慢の糸が切れたのか、ライオットは独り鼻血を噴いて蹲った。

「前のお出かけで撮った……その、ウェディングフォト風のお写真を……思い出すと照れちゃうんだけど……それをね、入れるフォトフレームが欲しいなぁって」
 めびるが恥ずかしそうに言うのを、隣を歩く敬重は幸せな心地で聞いていた。
「成る程、あれは真っ先に飾りたいな」
「だからそれっぽいのがあればなぁって思ってるんだけど……どれも素敵で迷っちゃうね」
「ああ。俺も目移りしてるよ」
「せっかくだから、複数枚お写真が入るやつがあるといいなぁ」
 うっとりした声で言うめびるに視線を合わせて、敬重も肯く。
「複数枚飾れるの、確かに良いな。かけらも一緒に撮ったウェディング風の写真もそうだし、最近めびると出かけてきたプールなんかも」
 どれもこれも、共に過ごした想い出の密度は何より濃いものだ——と改めて実感する敬重。
「……これからも、敬重くんと素敵な思い出、たくさん作っていきたいな」
 恐らくめびるも同じ思いなればこそ、自然と零れ出ただろう前向きな願望が嬉しい。
「そうだな。これを全部埋められるくらいたくさん写真撮りたいもんだ」
 と、手に取ったのは幾つものフレームが連なるデザインの写真立て。
 大きな教会を象ったそれは、時計盤、屋根裏の鐘、2階に連なるステンドグラス風の窓、1階の開け放たれた玄関に、それぞれ写真を入れられる仕組みだ。
「折角だし、また一枚撮っていこうか」
 早速、めびると小檻が並んだ所を撮る敬重。
「せっかく栃木だからね、帰りにね、餃子屋さんに寄って帰ろって話してるの、ふふ」
 めびるは気の置けない友人へ、小声で教えてくれたものだ。
「ネットで評判良い餃子屋さんでも探してみるか……」
 女子2人の楽しそうな会話を聞いて、敬重はスマホを取り出した。


 環は、まず様々な淡い色のガラス片を組み合わせてステンドグラスを作成。
 その上から、気泡が入ったガラスの枠組みを専用の接着剤で貼りつけていく。
「どんな写真でも合うようにして、思い出を長く飾っていたいです」
 そんな意気込みの表れか、
 ぴしっ。
 ほんの少しだけ力の加減を間違えて、枠組みを割りそうになっていた。これもご愛嬌。
「銀色で花柄に縁取っても綺麗ですかね」
 咄嗟にヒビを銀色の塗料で隠し、証拠隠滅を図る環だ。
「皆はどんな写真を飾るとか予定はあるのかな……?」
 アンセルムの何気ない問いかけへ、陸也はあっさりと即答。
「何を飾るかってそりゃぁ恋人との写真だろ」
 皆からのニヤニヤと生暖かい視線を一身に集めた。
「……? なんだよ?」
 そんな声なきからかいを気にも止めず、漆喰でちゃちゃっとフォトフレームを作る陸也。
「やっぱ飾りたい写真があるのは良いよな!」
 今年の大運動会の開催地、アマゾンで見つけた貝殻を取り出し、これらもちょいちょいと砕いてみせた。
 細かくなった茶色と白の貝殻を対角にそれぞれ埋め込んで、モザイク模様を描く。
「残る2角は漆喰をそのままにすりゃ、風情も出るってもんだろ」
 陸也の思惑通り、実に大人っぽく仕上がった写真立ては、どことなく夜の海を思わせる趣だ。
 一方。
「ん? どんな写真を入れるのかって?」
 陸也のようにあっけらかんとしていられないのは白。
「……ひ、秘密なのじゃ! ぜーったいに教えぬからな!?」
 と、真っ赤な顔で声を張り上げるぐらい動揺して、こちらも生温い視線を向けられていた。
「さて、どんな物を作るのがいいかのう……?」
 ともあれ、白は気を取り直してアクリル板との格闘を始めた。
(「やはり作るなら、入れる写真に合ったものがいいし……となると」)
 赤いアクリルを専用のカッターにて炎の形と音符の形に整え、それにシンプルな白の四角いプラスチック枠を重ねて接着。
 鮮やかな色味がポップで可愛らしい写真立てを完成させた。
「ボクはもう飾りたい写真があるから……その為のフレームが欲しいんだ」
 ずっとアルバムに綴じたままっていうのも、なんだか寂しいからね——柔らかく笑うのはアンセルム。
「ボクの部屋に飾るものだから、派手にはしたくないんだ」
 木製の写真立てをブラウンで塗装、縁にエーデルワイスの造花を飾れば、彼らしく綺麗な逸品となった。
 和希が探していたのは、暗い色味の木を模した樹脂製写真立て。
 四隅に、大小色々な歯車の装飾を施して、中でも右下に一番多く飾りをつけ、バランスを取っていた。
 最後は左上に時計盤らしき円盤と3本の針をつけて、スチームパンク風写真立ての出来上がりだ。
「話に聞いていた通り、すごい品揃えですね」
 興味津々といった面持ちで辺りをキョロキョロ見回すのはエルム。
「僕も作ってみましょう」
 白い木製の写真立てを土台に青系のモザイクタイルをぎっしり敷き詰め、四苦八苦しながら張りつけていく。
「うん、シンプルだけど綺麗に出来ました」
 番犬部全員の写真立てが仕上がったところで、お披露目会が始まった。
「へぇ、エーデルワイス。大切な思い出、良いチョイスじゃん」
 陸也はアンセルムを始め、皆の写真立てを興味深く眺める。
「綺麗な青のモザイクだなぁ、爽やかで良いな!」
「ありがとうございます。入れたい写真も入れる写真もないけど、いつか楽しい思い出になるから」
 褒められたエルムは、控えめながら楽しそうに胸の内を語る。
「歯車に……こりゃ時計か?」
「ちょっとゴテゴテ……?」
「いやいや、そのゴテゴテが味だろ!」
「そうですね。これで良いのです」
 収めたい写真にはこれがしっくりくる、と内心思う和希だ。
「すごい。なんだか動き出しそうな感じがする」
 アンセルムもスチパン写真立てを絶賛する。
「おー、硝子を並べて、器用だなぁ。キラキラして綺麗だと思うぜ」
「ありがとう! 爽やかだったりスチパン風、木の優しさを活かしたのもやっぱりいいなぁ」
 環も陸也と同様に皆の写真立てへ興味津々、瞳を輝かせている。
「……ん? おい、なんで隠すんだ?」
 陸也が声を投げるのへも気づかず、物陰へこっそり隠れるのは白。
 恋人とのツーショット写真を炎と音符の写真立てへ密かに入れるや、愛おしそうに撫でていた。
「一之瀬さん? 人というものはですね、隠されると余計見たくなるんですよ?」
 そんな彼女の肩からひょいと顔を出したのは環。
「おおーっと、一之瀬は何を入れたのかなぁ?」
 すかさずアンセルムもリア充弄りに加わる。
「……おや? 団長、どうしました?」
 人の好い和希は不思議そうだ。
「いや、その、これはじゃな!?」
 白はハッと我に返って赤面し、慌てて周囲を見渡した。
(「わ、我ながらなんて恥ずかしい……誰にも見られとらんよな?」)
 とにかく必死にフレームを隠そうとするので、エルムも首を傾げ、
「あれ、一之瀬さんどうしたの? なんで隠れているんです?」
 ほら、皆見せてるんですから——と何気なく手元を覗き込めば、
「あ、可愛い」
 なんと、本物のツーショット写真の上から、いつのまにか白の寝顔の隠し撮りが重ねられていた。ミリムの悪戯である。
「あぁ――」
 赤くなったり青くなったり忙しい白を、陸也は武士の情けとばかりに口を閉じ、目を細めて見守っている。

 さて、小檻が蒼眞を蹴飛ばしている所など、気になるスクープの隠し撮りに励んでいたのはミリム。
 中でも一番撮りたいのは修復し終えた商店街なのだと、集合写真の準備にも余念がない。
(「自分達の日頃の活動を改めて実感できますからね」)
 大切な記念写真を飾る為に、革の手帳風フォトフレームを確保した。
 カメラのタイマーもセット完了。
 幸い、今日の修復活動に参加しているケルベロス達の多くが、ミリムの提案に乗ってくれた。
 まずやってきたのはすっかり打ち解けた神薙達4人。涼香は軽く頭を下げると、皆がフレームに収まるよう気遣い詰めて並んだ。
 敬重とめびる、連とレベッカのカップル達も、デートの合間に来てくれた。
 セイヤとリーナの兄妹や、アンセルム、エルム、白といった番犬部の面々の姿も見える。
 隠し撮りを貰った礼に蒼眞や小檻が、つけヒゲを外した場面の写真を流出させない対価としてガイバーンが仲間に入る。
 皆揃ったところへ、ミリムも笑顔で加わって、
「思い出の一枚、はいチーズ!」

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月9日
難度:易しい
参加:21人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 0
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