●闇纏いの風に
深夜、街角の一角にぽつんと存在する、廃ビル。
既に管理放棄され、ビルの中は荒れ果てており、立ち入る様な人も居ない。
『……ウ……ぅ……』
まるで人の如きアンドロイド型のダモクレスが、カタ、カタ、と瓦礫の上を歩く。
……だが、その肩口などには穴が開いており、そこから火花散らし、ショートしたケーブルの様な物も見える。
そんなダモクレスの動きを、ぼんやりと見つめているのは……黒衣に身を包んだ、女性型の死神。
彼女が見つめる中、ダモクレスは……瓦礫に脚を引っかけ、転んでしまう。
そして……死神は、ダモクレスの肩口へ球根の様な、『死神の因子』を植え付けると。
「さあ、お行きなさい。そしてグラビティ・チェインを蓄え、ケルベロスに殺されて来るのです」
と言うと共に……ダモクレスは、カッ、と目を見開く。
そして立ち上がると共に、ダモクレスは……廃ビルから繁華街へと、飛び出して行くのであった。
「ケルベロスの皆さん、集まって頂けましたね。それでは、早速ですが説明を始めます」
と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロス達に一礼すると、早速。
「三重県の四日市市で、死神により『死神の因子』を埋め込まれたデウスエクスが暴走する、という事件が予知されたのです」
「このデウスエクス、死神の因子を埋め込まれ、大量のグラビティ・チェインを得る為に、人間を虐殺しようとしています」
「もしも、このデウスエクスが大量のグラビティ・チェインを獲得してから死ぬ事になれば……死神によって、強力な手駒になってしまうでしょう。その為にも、このデウスエクスが人間を殺し、グラビティ・チェインを得るよりも早く、撃破しなければなりません。急ぎ現地へと向かい、デウスエクスを撃破してきて頂きたいのです」
続けてダンテが。
「今回、死神によって死神の因子を埋め込まれたのは、アンドロイド型のダモクレスの様です。一見して人型の様ですが、一部既に壊れてしまっており、それで人型のダモクレスである、と判断する事は容易でしょう」
「このダモクレスは、正気を既に失っており、四日市の市民の方々を次々と殺戮しようとしています。夜半を過ぎた頃ですので、そんなに人は居ませんが……ダモクレスは、一般人を殺し、グラビティ・チェインを得ようとしているので、駆けつけるなり、街角を歩く一般市民の方達を避難させつつ、ダモクレスを足止めする必要があります」
「又、このデウスエクスは死神の因子を植え付けられており、普通に倒すと、その死体から彼岸花の様な花が咲き、何処かに消えてしまう様です。ですが、デウスエクスの残り体力に対し、過剰なダメージを与えて死亡させた場合、死体は死神に回収されない様ですから、出来る限り回収されない様に対処お願いします」
そして、最後にセリカは。
「死神達の動きは正直不気味ではありますが……まずは暴走するデウスエクスの被害を食い止めねばなりません。皆さんの力を貸して下さい、宜しくお願いします」
と、深々と頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313) |
シャルロット・フレミス(蒼眼の竜姫・e05104) |
ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471) |
スズナ・スエヒロ(ぎんいろきつねみこ・e09079) |
カシオペア・ネレイス(秘密結社オリュンポスメイド長・e23468) |
八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443) |
浜野・真砂(本の虫・e41105) |
ザベウコ・エルギオート(破壊の猛獣・e54335) |
●足音
四日市の街角に存在する、とある廃ビル。
既に人の管理の手を離れ、荒れ果てたビルの中……薄気味悪い雰囲気の中、人の如きアンドロイド型ダモクレスが突如姿を現わす、という話。
「壊れかけのダモクレス、ですか……」
と、ぽつりミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)が呟くと、それにシャルロット・フレミス(蒼眼の竜姫・e05104)と喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)も。
「そうですね。死神の使い魔みたいに操られて可哀想に……」
「うん。今回のダモクレスも敵なんだけど、利用されちゃうとなんか可哀想に思えてくるね……」
「そうね。でも……人を傷付ける道具になっているなら破壊しないといけないわね」
「傷だらけの物を相手にするのは気が引けますけど、一般人に危害を加えるなら容赦はしません」
「そうだね。手駒にされない様に引導を渡して上げるよ」
と、そんな三人の会話に頷きつつも、ふと小首を傾げるはスズナ・スエヒロ(ぎんいろきつねみこ・e09079)。
「それにしても、死神とダモクレス……何処まで協力しているんでしょうね。最近、海底にも拠点が見つかった様ですが……」
それに浜野・真砂(本の虫・e41105)が。
「確かに……先日鮫型のダモクレスが出て来ましたよね。この時は普通に倒して良かった筈ですが……今回の敵は、すぐに倒してはいけないのに、最後はダメージを過分に与える必要が有る……真逆ですね。いや、というより今回の形態が多いのでしたよね?」
と言うとカシオペア・ネレイス(秘密結社オリュンポスメイド長・e23468)が。
「ええ。死神の因子を埋め込まれた死神の傀儡達は、普通にダメージを与えて倒すと死神の因子が咲いてしまう様です。その為、最後の一撃はオーバーキルで倒す必要があります」
「分かりました……えっと、氷と炎は外して、累計ダメージを与えない様に……と。うう……難しいですが、学ぶ事が多いですね。でも、負けません、頑張ります!」
ぐぐっ、と拳を握りしめた真砂に、軽く頷くカシオペア。
「しかし……死神の因子ですか……壊れかけたダモクレスとは言え、一般人には脅威に違いなく、また死神たちの都合の良い様な利にさせる訳にはいきません」
として、八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443)とザベウコ・エルギオート(破壊の猛獣・e54335)が。
「ああ、一仕事だ。アンドロイドにお別れを告げるとしよう」
「ああ。壊れかけとはいえ油断は禁物だな。よっしゃ行くぜェーっ!」
確りとした言葉で決意し、拳を振り上げる二人……そしてケルベロス達は、ダモクレスの徘徊する廃ビルの中へと向かうのであった。
●涙も無く
そしてケルベロス達が足を踏み入れた廃ビル。
市内から少し離れた所にあるビルの周りには、多少人の流れがある状況。
「取りあえず、市街地に近いですから、一般人の方の避難を先行して始めませんと」
とカシオペアの言葉に頷き、早速波琉那が『凛とした風』を使い、其の場に展開。
更にビルの周囲をぐるりと囲う様に、キープアウトテープを張り巡らせる真砂。
そのテープを張り巡らせながら、真砂は。
「ケルベロスです! ここは戦闘になります! 早く避難を!」
と呼びかけていく。
……突然に戦闘になる、と言われて驚く人達も居るが、そんな人達の所には、ミントやスズナ、波琉那が赴き。
「大丈夫、皆さんの事は、私たちが守ります! ケルベロスのわたしたちが居ますから、ご安心を!」
「取りあえず、この廃ビルから離れる様に一旦逃げて下さい。大丈夫、夜が明ける頃には元に戻っていますよ」
「そうそう。だからみんな、おまわりさんの指示に従って、落ち着いてここから逃げてね。大丈夫大丈夫!」
と、柔らかな言葉を呼びかけて、落ち着かせる様に避難指示。
……その一方、空からシャルロットが廃ビルと、その周りを見渡して、逃げ遅れた人が居る所を指示し、逃げ遅れを一人でも出さない様に行動する。
そして、そんな避難誘導をしている最中、カシオペアとザベウコの二人は、廃ビルの中を捜索。
「さって、と、何処にいやがるんだろうなァ? ほら、出てきやがれ!!」
と声を上げて威嚇。
しかし……ダモクレスが怯えて出てくる様な事は無く、廃ビルの中は静けさに包まれるばかり。
ただ、この廃ビルの中の何処かには居る筈で……下から上へと、虱潰しに探していく。
……そして、小一時間程捜索し、周りの住民避難もあらかた終わり、外に居た仲間達も合流。
残る捜索範囲は最上階……と、その時。
『ウウウ……』
くぐもった呻き声が、どこからともなく響き渡る。
その声は……何処か機械的な合成音声の様で、人の物ではないのは明らか。
「……この声は……やはり、上層に居た様ですね」
「だな! よーっし、んじゃ行くぜェ!!」
カシオペアに頷いたザベウコが、先陣切って上層階への階段を駆け上がる。
そこには、立ちつくしながらも、呻き声を上げている……その身体の節々はショートした電線が、パチパチと火花と音を放つ。
……そんなダモクレスの悲壮な姿に、波琉那は。
「……可哀想な姿……こんなに死にかけの状態を、死神は利用してるのね」
余り意識せずとも紡がれたその言葉。
しかし……ダモクレスは、そんな自分の身の傷を理解する事も憚られ……死神の傀儡として。
『ウウゥアアア!!』
混在する合成音声と共に、対峙するケルベロス達へ攻撃。
その攻撃、真っ正面に立ちはだかるザベウコが。
「俺が相手してやらァ!!」
敢て組み付くようにして、敵の攻撃を力尽くで抑え込む。
そして、ザベウコに続きシャルロットは後衛より、死天剣戟陣を放つ。
その一撃を、ダモクレスは回避する個ともなく、受け止める。
……回避という行動を忘れたのか、それとも……自分の死を望んでいるのかは分からないが、少なくとも下手に攻撃を加速刺せると、不意に死んでしまう可能性は十分にあるだろう。
「取りあえず、ダメージの具合を見ながら仕掛けるしかありませんね……きたれ、極夜よりの魔弾」
と真砂が『Freikugel』を放ち、更に紫々彦がフォーチュンスターを展開。
そして、更にスズナが前衛陣へボディヒーリング。
「マヒ攻撃対策は、お任せください! 皆さん、うっかり倒さないよう、お気をつけて!」
と、仲間達に励ましの声を掛けつつ、BS耐性を付与する。
続くディフェンダー陣がダモクレスへ近接、最初にサイが武装具現化で仲間達を強化。
そして。
「さあ、これでも食らって、痺れてしまいなさい!」
とミントが旋刃脚を蹴りつけ、更にカシオペアはファナティックレインボウで怒りを付与。
更にザベウコと、彼のナノナノ、鯖が。
「燃やしてやるから、逃げんなよォーッ?」
と、『燃魂の角集射』を撃ち抜く、そして波琉那が。
「取りあえず、殺さない様に注意しながら、だね……!」
と自分に言い聞かせるようにして、スターゲイザー。
……その一撃に、ダモクレスの肩が大きく破損、そして苦しみの悲鳴を上げる。
が……己を回復する様な事はなく、次の刻も攻撃を継続。
一切の防御を捨て、ただただ攻撃するがのみ……そんなダモクレスの動きは、正しく死神の傀儡。
そんなダモクレスへ真砂は。
「本当……死神の指示に従うその姿、可哀想ですね……」
と、悲しげな一言を紡ぐ。
しかし、その悲しげな言葉にダモクレスが何か反応を返すという事も無く、ただただ攻撃をし続ける。
そんなダモクレスの攻撃、直ぐにスズナがマインドシールドで回復。
そして真砂が禁縄禁縛呪、シャルロットが絶空斬でBSを更に倍加。
又、紫々彦が。
「雪しまき、呑まれて消える人影よ」
と『雪浪起』で攻撃。
そして……更にミントが。
「炎よ、敵を焼き払いなさい!」
とグラインドファイア、更にカシオペアが稲妻突きでパラライズを付与、そしてザベウコがケイオスランサー。
そんな次々と放つ攻撃の波に、ダモクレスは明らかに疲弊していく。
でも、決して殺さぬ様に、段々とダメージを抑え、瀕死の状況に近づけていく。
そして……経過する事十分程。
……もはや立つ事だけでも精一杯のダモクレスを、敢て……攻撃を止めて状況注視。
「お、そろそろ行けるか?」
とザベウコの言葉に波琉那は頷き。
「そうみたいだね……うん、行くよ。ダメだったら、みんなも続いてね」
と仲間達に促し、ダモクレスの真っ正面に立ち塞がる。
そして。
「……さぁ、これで終わりだよ!」
と、波琉那のギロチンフィニッシュがダモクレスの身体を一刀両断に穿ち……最早ボロボロのダモクレスは、完全に分解していくのであった。
●悲劇の影
そして、どうにか無事にダモクレスを倒したケルベロス達。
……無事に終わったことで、ほっと一息……と言いたい所ではあるが……。
「お疲れ様でした、皆さん……最後の一撃、お見事でございました!」
とスズナの言葉に対し、頷きながらミントも。
「ええ……お疲れ様でした。さて、死神の因子は……どうなりましたか?」
と言いつつ、死したアンドロイドの周辺を確認。
幸い花が咲く事は無く、ただ……霧のように姿が消えていくのみ。
そんなダモクレスの消え行く姿に対し、植え付けた発生源の情報に繋がる推理材料を捜索する波琉那。
……ただ、目立った手がかりを手にする事は出来ず、残るはダモクレスから飛び散った破片位。
「……仕方ありませんね。何にせよ、死神の因子が咲かなかった事ですから、死神の利には鳴らなかった筈……後は、壊れた部分を回復して戻していくとしましょうか」
「ええ……そうですね」
とシャルロットに頷くカシオペア。
元々、かなりの部分が人の手を離れた結果、ボロボロになってしまっているが、そんなボロボロの部分を一つ一つ、ヒールグラビティで回復していく。
来た時よりも、ファンシーではあるが、姿を取り戻した光景は……何だか不思議な感覚。
とは言え、これでまた一つ、死神の脅威を塞ぐ事が出来たのは間違い無い。
そして……空がうっすらと明るくなり始める頃。
「……ふぅ。夏休みが少しだけ、恋しいですね……」
時は9月……夏休みも終わり、周囲は日常を取り戻しつつある。
電車に急ぐ学生や、サラリーマンの人達の姿を見て……ぽつりとスズナは憂うのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年9月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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