ブルーファング、再び

作者:坂本ピエロギ

 時も場所も定かでない、静謐に満ちた広い空間。
 赤い翼の死神は、寄り添う鋼の青鮫に死神の因子を植え付けながら呟いた。
「『貴方達』のポテンシャル……実に素晴らしいですね」
 ディープディープブルーファング――高度なレベルで調整が施された戦闘マシンは、研究を進める上で大きな助けとなってくれるだろう。
 得られる成果は多いほどいい。
 そのためにはより多くの事件を、このダモクレスに起こして貰わねばならない。
「お行きなさい、ディープディープブルーファング」
 暴れ狂う青鮫を送り出し、死神は優しく微笑んだ。
「グラビティ・チェインを蓄え、ケルベロスに殺され……私の研究の糧となるのです」
 来たるべきその日のために。
 死んでデスバレスの礎となりなさい。

「大物がかかったぞ。空飛ぶサメだ」
 ヘリポートに集まった猟犬達をマルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462)は藍色の瞳で見渡し、そう告げた。
「ディープディープブルーファング。死神の因子を植え付けられ、日本各地で事件を起こしているダモクレスが出現する」
 出現時刻は今日の夜、場所は神奈川県平塚市だ。現場付近では花火大会が予定されており、すでに見物客で賑わっているという。
「ここから先は、私から説明させてもらおう」
 事件を予知したザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)が話を継ぎ、概要を説明し始める。
「敵は相模湾から河口へ侵入、相模川を北上して花火大会の会場を目指している。ひとたび奴の侵入を許せば惨劇は避けられない。そうなる前に何としても阻止せねばならん」
 迎撃ポイントは河口付近の河川敷だ。光源は確保され、ケルベロスが到着する頃には周辺の避難は完了している。
「ただし、河川敷の北にある花火大会会場は見物客でごった返している。こちらの避難は間に合いそうにない。絶対に討ち漏らすことのないよう、確実に依頼を遂行してくれ」
 ケルベロスが果たすべき仕事はたったひとつ。
 ディープディープブルーファングの撃破、これだけだ。
「今回観測された敵は全長5mほど。空を漂って移動しながら、鋼鉄製の触手と小型のサメを模した魚雷を駆使して攻撃してくる。前回交戦したタイプとほぼ同一のようだな」
 死神の因子を植え付けられたデウスエクスは、撃破されると彼岸花のような赤い花を咲かせ死神に回収される特性があるが、ディープディープブルーファングにその特性はない。
「死神勢力の目的が何であれ、すべき事は変わらない。死神の下僕を撃破し、人々の平和を守れるのはお前達しかいないのだ。頼んだぞ!」
 そう言って王子は、ヘリオンの発進準備に取り掛かるのだった。


参加者
マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462)
立花・雪菜(花天月地・e01891)
シャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)
グレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)
葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)
尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)
オニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)

■リプレイ


 8月某日、神奈川県平塚市。
 茅ヶ崎市との境、相模湾の河口に程近い相模川の河川敷にケルベロスはいた。
 黒いビロードの帳を降ろしたような水平線の闇を、マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462)は川辺から静かに眺めている。
(「ディープディープブルーファング。死神の因子を持つ鋼の青鮫……か」)
 避難の完了した河原で仲間の息遣いを感じながら、レイピア型斬霊刀を静かに握りしめるマルティナ。先の戦いであの青鮫を斬った感触は、未だその手に生々しく残っている。
(「死神とダモクレス……奴らめ、一体何を企んでいるのだ……」)
 手を組んだ理由も、活動の目的も、未だ謎に包まれたままの敵対勢力に思いを巡らせて、マルティナは小さな唸り声を漏らす。
 この戦いで、少しでも情報を得たい――そんな事を考えているマルティナとは対照的に、戦友の立花・雪菜(花天月地・e01891)の心は、早くもお祭りへと向いているようだ。
「せっかく花火大会ですもの。皆様のために、頑張って阻止いたしませんと」
「本当にね。決行してもらう為に頑張らなきゃねぇ」
 砂利道の感覚に慣らすように、エアシューズで河原を軽く走る雪菜の言葉に同意しつつ、光の翼で川の上を蛍のように舞うグレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)が、やれやれと肩を竦めて溜息をつく。
「空を泳ぐ魚……か。人さえ襲わなければ、幻想的でいいんだけどねぇ……」
「死神は相変わらず、ダモクレスを弄んでいるのね……」
 シャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)は夜闇の果てを見据えて、静かな怒りの言葉を発した。
 襲い来る敵を叩くしか出来ない現状は、何とももどかしい。早く黒幕の尻尾を掴めるといいのだが――。そんなシャーリィンの黙考を、葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)の言葉が打ち切った。
「ほぉら皆。おっきなお魚さんが、こっちに泳いできたよぉ」
 顔の上半分を布で覆い隠している咲耶だが、周囲はしっかり見えるらしい。指さす先の、灯火管制によって暗く沈んだ海岸線を、滑るように飛来する光が確認できる。
「せっかくの花火大会が台無しにされてはたまりません。早急にお帰り願いましょう」
「下準備は出来ておるようだな。では、ひと暴れするとしようか!」
 無骨なガトリングガンを構えるレフィナード・ルナティーク(黒翼・e39365)の前列で、オニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)がチェーンソー剣のエンジンに火を点す。
 迎撃の準備は万端だ。みるみるうちに迫ってくる鋼の青鮫と真っ向から睨み合いながら、尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)はニッと不敵に笑って見せた。
 彼にとって、ディープディープブルーファングとの戦いは初めてではない。だが、たとえ何度来ようとも、彼がやるべき事はひとつだけ。
「いいぜ、何度でも壊してやる。そいつがお前の任務で俺の任務だからな」
「ガオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
 咆哮を轟かせ、一直線に迫りくるダモクレスの進路を塞ぐ雪菜とシャーリィンも、履いた獲物で河原を踏んで、戦いのゴングを慣らす。
「ここから先は通しません。楽しもうとしている皆様の邪魔はさせませんよ」
「花咲く宵の空を、貴方は泳げないのよ。ここで冥府にお行きなさい」
 機体後尾から鈍色の触手を次々と解放し、返答代わりに攻撃動作を取る青鮫。
 包囲陣系を取り、阻止せんと立ちはだかるケルベロス。
 死闘の火蓋が切って落とされた。


「さあ来いよ、壊せるもんなら壊してみろ」
 有毒の触手が蠢き、鉄槌のような衝撃をともなう攻撃が前衛の一帯に次々と炸裂した。
 土砂が抉れ、石が吹き飛ぶ嵐の如き猛攻撃を、広喜は笑顔で一歩も下がらずに守り切る。
 盾役を務めるシャーリィンとマルティナが毒に蝕まれたと知るや、すぐさまメディックの属性インストールと大自然の護りが、バッドステータスを取り除いていく。
「みんなの傷は、あたいがみぃんな癒やしちゃうからねぇ」
「ありがとうネフェライラ。さあ、反撃よ」
 サーヴァントであるボクスドラゴンの援護を受けたシャーリィンがフローレスフラワーズを発動した。青鮫の触手による攻撃は、メディックとは思えぬほどに重く、ネフェライラと咲耶の二人でも持て余し気味だ。
 戦闘開始から1分も経たないうちに河川敷は激戦の坩堝と化した。水柱が乱立し、土砂が吹き飛び、辺り一帯はたちまち荒れ地へと変じてゆく。
「これ以上、好きにはさせんぞ!」
 飛び交う触手を懸命にかいくぐりながら、マルティナがサイコフォースを発動。
 眼前の突然の爆発に、一瞬たじろぐディープディープブルーファングめがけ、広喜の背後から飛び出したのはグレイシアだ。
「さぁ……お仕事の時間だよぉ」
 エアシューズで地を駆け、敵との距離をつめたグレイシアは、ひねりを利かせた回し蹴りを青鮫の鼻面めがけて叩き込む。衝撃でセンサーが乱れたのか、動きが鈍った敵目がけて、雪菜のスターゲイザーが腹を蹴り上げるように、さらに一撃。
「ガオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
 ディープディープファングの咆哮が河川敷の闇に轟く。
 悲鳴ではない、怒りの叫びだ。鋼の青鮫はケルベロスの攻撃に全く怯むことなく、前衛の射程ギリギリを挑発するように横切って泳いでみせる。
「面白えじゃねぇか。行くぜ!」
 それを見た広喜は、心底楽しそうな笑顔を浮かべて、鋼の拳を振りかぶる。煤と血にまみれた砂利を蹴って突進する広喜。レフィナードのガトリング掃射を浴びてダンスを踊る青鮫めがけ、青炎を纏う『抉リ詠』の拳で、頭上から思い切り殴りかかった。
「来いよ、壊せるもんなら壊してみろ」
 一発、二発、三発……広喜の拳が鋼のボディに叩き込まれるたび、空気の振動が土砂を舞い上げ、川面の飛沫を吹き上げる。回復を阻害する青い炎に覆われた青鮫は、熱で生じた陽炎をまといながら、狂ったように河川敷を暴れ回る。
 誘われるように、オニキスが相棒のチェーンソー剣を構えて敵へと躍りかかった。
「なかなか骨のありそうな敵じゃのう! 吾の一撃、受けてみよ!」
 軽々と振るうチェーンソーの火花を散らし、憑霊弧月で標的を切り刻むオニキス。対する青鮫は川の上でぐるりと身を翻し、自己修復モードで負傷を回復し始めた。
「ピー……ピピピピ……」
 妨害能力を上昇させた機体から、足止めが、毒が、武器封じが次々と除去されてゆく。
 ここでケルベロスが最優先で取った行動は、妨害能力の除去だ。
「『抉リ詠』の炎は消せなかったみてえだな。こいつを食らいやがれ!」
「その力、わたくしが剥ぎ取ってあげる」
 広喜のハウリングフィストが、シャーリィンの竜爪撃が即座に叩き込まれ、向上した妨害能力を瞬時にブレイクする。
「あーらら、振り出しに戻っちゃったかぁ。面倒な敵だねぇ」
「く……足止めを回復されたのは厄介だな」
 咲耶は小さく溜息しつつアニムズムアンク『後天八卦卜骨』をかざした。操作された運命が大自然の護りとなって、広喜の傷を塞いでゆく。
 マルティナのレイピアが放つ二刀斬霊波をディープディープブルーファングは身を切って躱し、サメ魚雷で標的を探し始める。
「ここから先は、一歩も通しませんよ」
「それにしてもデカいねぇ……当てやすそうだから、イイっちゃ良いけどねぇ」
 川の上から遡上しようとする青鮫を牽制するように、ドラゴンの翼を広げたレフィナードが懸命にフレイムグリードを浴びせる。炎の花が照らす敵の横腹めがけて空中から叩き込まれる、グレイシアのヴァルキュリアブラスト。
 次第に体の傷を増やしていく敵に狙いを定め、雪菜が七色の光弾を発射した。
「デウスエクスには、こちらの花火がお似合いですよ。マジックミサイル、発射!」
「ガオオオオオオオン!!」
 雪菜の発射した流れ星のような弾が背びれに着弾。破裂の光が青鮫を白い光で包み込む。身をよじって暴れる敵めがけ、チェーンソーのトルクを最大にして跳躍するオニキス。
「さあ食らえ! チェーンソー斬り――」
 だが、それをチャンスと捉えたかのように。
「ガガガ……」
 振り向いた青鮫の口がオニキスに向いたのは、彼女が剣を振り下ろすのとほぼ同時。
 大きく割けた口の奥で、サメ魚雷がギラリと微笑んだ。
「ぬうっ!」
 魚雷発射。
 着弾の赤黒い炎が、夜の相模川を不吉に照らす。


「ガハッ……!」
 黒い爆煙を突き破り、オニキスの体が河原に叩きつけられた。
 直撃を受けて転がるオウガの少女は、悲鳴を上げる体を叱咤してすぐさま跳ね起きると、口端の血を拭いながら胸を反らしてディープディープブルーファングを挑発する。
「良い狙いだ! だが、そんな程度では止まらぬ!」
 オニキスの指さす先、青鮫の右頬には、縦一文字に切り裂かれたチェーンソー剣の傷跡があった。敵にとって痛手だったのは疑いない。
 だが敵と同様、オニキスが受けたダメージもまた大きい。笑うたび、体中の筋肉が悲鳴をあげるように痛む。
「あんまり無茶したらダメだよぉ?」
 葛之葉の御札でオニキスのアンチヒールを除去しつつ、咲耶は傷の具合を確かめた。溢れ出る血は共鳴効果によっても完全には止まらないようだ。
 シャーリィンと雪菜の発動する咎人の血と気力溜めで、止血の完了を確認すると、咲耶はぽつりと呟いた。
「さっさと落としちゃおうよ。自由にさせると危ないよぉ」
「うむ! 勢いづく前に叩き潰す、これぞ喧嘩の常道よ!」
 レフィナードのフローレスフラワーズでBS耐性を付与されたオニキスが、剣を手に再度跳躍。哄笑を迸らせながらギザギザの刃を振り回し、装甲板を切り刻み、火がついたように滅茶苦茶に暴れ回る。
「ふはははははは! まだまだ、この十倍は持ってくるがいい!」
 最初から防御をかなぐり捨てた猛攻撃が真正面からぶつかり合い、火花を散らす。
 マルティナのサイコフォースに腹を抉られ、グレイシアの百烈槍地獄に背を貫かれても、青鮫の勢いは全く衰えない。既に相当なダメージを受けていることは疑いようがないが、敵はそんな事にはまるで頓着せずに次々とケルベロスに攻撃を繰り出してくる。
「勿体ねえなあ。お前、因子なんざなくても充分性能良いのによ」
 一際激しく燃えさかる青い炎が、広喜の笑顔をまぶしく照らす。
 強敵と戦えることが、彼にとってはこれ以上なく嬉しい。容赦せず、遠慮なく、全力で叩き壊せるからだ。
 速度と体重を込めたストレートを真正面から振り抜く広喜。拳が鼻先を砕くのも構わず、ディープディープブルーファングは後部のメカ触手を再度展開し、広喜と仲間達のいる前衛を有毒の触手を次々と撃ち込んでゆく。
「回復は任せてねぇ。どんどん攻めて倒しちゃおうよぉ!」
 キュアウインドで前衛の毒を吹き消しながら、仲間の背中を押す咲耶。
 レフィナードと雪菜が、青鮫めがけてガトリング連射の砲弾とマジックミサイルを一斉に発射。ぶちまけられた弾の雨が夜の河原を真っ白く照らし、弾幕の網に敵を絡め取る。
 地面を蹴った広喜が、旋刃脚を振るった。軽快なステップと共に繰り出されるマルティナの二刀斬霊波と合わさって、三条の光となって青鮫を切り裂いていく。
「どうかお赦し下さい……月に捧げましょう……その御身、御心……全てが朽ちるまで」
 シャーリィンの『ルナ・ヴァンデッタ』が呪縛の鎖と化して青鮫を縛り付けた。煙を噴いてなおも暴れ狂う敵めがけ、オニキスが龍王『沙羯羅』を召還する。
「吾は水鬼、この程度は朝飯前よ! 滾れ! 漲れ! 迸れ! 龍王沙羯羅、大海嘯!!」
 激流と化した川の水に飛び乗って、混沌の水で織りなした水龍を叩きつけるオニキス。
 龍王の頭上で腕を組み、波の上から青鮫を見下ろして哄笑する。
「ふははははは! 花火の前の余興となるよう、せめて派手に散るが良いわぁ!」
「さぁて、そろそろお終いだ」
 ヴァルキュリアブラストを構えるグレイシアの笑顔を、光の翼が照らし出す。
 子供が見たら腰を抜かして泣き出しそうな笑みをニヤリと浮かべ、最後の一撃を発動。
 光の翼の暴走で全身が光る粒子と化したグレイシアの体当たりは、黄金色のバンカーにも似て、青鮫の横腹に命中。鋼のボディを真っ二つにへし折り、そのまま貫く。
「ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
 直撃を受けたディープディープブルーファングは爆発の炎に包まれて、断末魔の絶叫をあげながら轟音と共に砕け散った。
「皆さん、お疲れ様です。なかなか激しい戦いでしたね」
「ああ。無事に終わって何よりだ」
 残骸となった機体を見下ろしながら呟く雪菜とマルティナ。ふたりの視線の先、植え付けられた死神の因子は、トドメの衝撃で完全に破壊されていた。
「皆、任務お疲れさん」
 広喜は、最期まで任務に忠実だったダモクレスに敬意を捧げると、戦いを終えた仲間達と肩を叩き合う。
 またひとつ死神と戦う理由が増えた、そう心に刻みながら。


 夜風に乗って囃子の音色が流れてきたのは、ケルベロスが現場修復を完了した頃だった。
「よしっ、片付けはこんなモンだな」
「お疲れ様。ちょうど花火大会も再開されたみたいだねぇ」
 広喜と咲耶が川上を眺めれば、明かりの灯った公園から人々の賑わう声が聞こえる。街のスピーカーから流れてきたのは、まもなく花火の打ち上げが行われるというアナウンスだ。
「花火、いいねぇ。折角だから皆で見に行かない?」
 グレイシアの誘いに、その場の全員が頷く。
「大賛成だ! 丁度良い時間であろうしな!」
「そうだな、是非見ていきたいな。うん、私も見ていきたい」
 警戒を終えて、笑顔ではしゃぐオニキス。その横で、嬉しさを隠しきれずにそわそわするマルティナの姿に雪菜は思わず微笑んだ。戦いが終わると、この戦友は少女のような可愛い一面を覗かせる。
 大会会場はすぐ傍だ。数分ほど歩いて、一行は会場に到着した。
 人混みに混ざりながら、星のない闇夜を仰ぐケルベロス達。
 程なくして――。
「すげえーっ」
「うむ、雅よなあ」
 人で賑わう公園から眺める相模湾の夜空を、大輪の光る花々が満たしていく。
 花火に見入る広喜とオニキスの横では、レフィナードが屋台で買ったリンゴ飴を手にそれを見上げている。咲耶もまた、色鮮やかな夏の夜景を楽しんでいるようだ。
「すっごーい! キヒヒ、いい景色だねぇ」
「こういう縁で見るのも良いものだな」
「うん。綺麗だね」
 今年初めての花火を仲間と満喫しつつ、ぽつりと呟くマルティナ。
 隣で背伸びをするように、夜を照らす光の飛沫を眺めてそっと頷く雪菜。
 咲いては散る花々を見上げながら、ケルベロス達はそっと祈る。
 ある者は、変わらぬ平和を。
 ある者は、因縁あるデウスエクスとの再戦を――。
 様々な思いを胸に、夏の夜は更けていくのだった。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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