死せる影の狙う先

作者:幾夜緋琉

●死せる影の狙う先
 静けさに包まれた、静岡県の島田市山中。
 人里から離れたここには、人の影などもなく……獣の咆哮が響き渡る。
 ……そこに、突然姿を現わしたのは、赤い翼を持った、女性型の死神。
 そして彼女の目の前には蒼い体躯の、機雷と鮫を合わせた様な姿のデウスエクス『ディープディーブブルーファング』。
 ……そして死神は、というと……そのディープディーブブルーファングに、球根の様な『死神の因子』を埋め込み。
「……さあ、お行きなさい、ディープディーブブルーファング。グラビティ・チェインを蓄え、ケルベロスに殺され……私の研究の糧となりなさい」
 そう言うと共に、ディープディーブブルーファングを野に放つ。
 ……その進路は、人家のある人里へ。
 死神はそれを見送ると共に、その場から消え去るのであった。

「ケルベロスの皆さん、集まって頂けた様ですね。それでは、説明を始めます」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロス達へ軽く一礼すると、早速。
「どうやら、静岡県島田市の人里に、死神により『死神の因子』を埋め込まれたデウスエクスが向かって居る……というのが予知されました」
「このダモクレスは、全長5m程をした巨大な鮫型です。彼は空中をまるで泳ぐかの様に移動し、街へと到着次第、棲む住民の虐殺を行う事は間違いありません」
「今回の事件……今迄の死神の因子の事件とは、少々違う背景がありそうですが……とは言えども皆さんのやるべき事は変わりません。この死神の因子を植え付けられたダモクレスを撃破し、人々を護ってきて頂きたいのです」
 続けてセリカは。
「今回現れたダモクレス、ディープディーブブルーファングですが、その巨大な体躯にメカの触手とサメ魚雷を備えている様です。よって攻撃手段もその二つを活用した攻撃手段となります」
「例えば、メカ触手で身動きを封じた上で、そこに向かって高速で突っ込み、爆風でダメージを与えてくる、とか、メカ触手で掴んだ上で、手足を逆方向に引っ張ることで、身を裂かんが如く攻撃を仕掛けてきたりする模様です」
「特に拘束された上での至近距離での爆破攻撃は、防御姿勢を取る事も出来ませんので、この攻撃を喰らわない様に注意して頂きたい所です」
「尚、今回の死神の因子を植え付けられたデウスエクスは、撃破されると普通、彼岸花の死の花が咲き、死神に回収される……という特性が無い模様です。それがどういった理由なのかは分かりませんが……オーバーキルを狙わなくても良い、という点では良い事かもしれません」
 そこまで言うと、最後にセリカは。
「今回の敵でもあるダモクレス、ディープディーブブルーファング……まるで死神を模した様な魚類型であるのにも、何かの理由があるのかもしれませんね……」
 と……ぽつり、呟くのであった。


参加者
天谷・砂太郎(月下の亡霊・e00661)
バーヴェン・ルース(復讐者・e00819)
浜野・真砂(本の虫・e41105)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)
カーラ・バハル(ガジェットユーザー・e52477)
阿賀野・櫻(アングルードブロッサム・e56568)
カミュ・アルマデル(だったモノ・e61762)

■リプレイ

●凶悪なる影さして
 静岡県島田市の山中、人里から離れた森の中。
 そこに突如姿を現したのが、赤い翼を持った女性型の死神。
 そして、その女性型死神の指示に従うが如く、青い体躯の機雷とサメを合わせた様な姿のデウスエクス……『ディープディーブブルーファング』。
 そんな異様な姿をしたモノが、死神の因子を植え付けられ、人家のある人里に現れ、一般人を殺戮しようとする話を聞きつけたケルベロス達。
「5mの浮遊する鮫型メカ……こりゃ、もうなんでもアリだな」
 と肩を竦める天谷・砂太郎(月下の亡霊・e00661)に、バーヴェン・ルース(復讐者・e00819)とカミュ・アルマデル(だったモノ・e61762)も。
「ーム。空飛ぶ鮫……そんなものは、B級映画の中だけにしろ……ッ」
「全くだ。5mの鮫なんてデカいサメだなおい。死神はジョーズでも意識してるのか?」
「分からん。死神であろうが、何であろうとここで沈めるぞ」
「ああ。何にせよ人食いは困る。さっさと捌いてしまおう」
「……だな。なんにしろ、俺達のやる事に変わりは無いのだからな」
 そんな砂太郎、バーヴェン、カミュら三人の会話に耳を欹てながら、アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)が。
「……今回の相手は死神、ですか……死神が関わる依頼は初めてですので、正直ちょっと不安です。ですが……負けません」
 ぐっ、と拳を握りしめるアクアに対し、阿賀野・櫻(アングルードブロッサム・e56568)が。
「初めて、か……大丈夫、そこまで緊張しなくても。今回の死神は、面倒なダメージ調整は必要無い様だし」
「ダメージ調整……ですか?」
 小首を傾げるアクアに、浜野・真砂(本の虫・e41105)が。
「ええ、と…今迄の死神戦では、オーバーキルをしていた……のでしょうか?」
「そうね。一気に倒さないと、例え倒したとしても相手の利になってしまい、意味が無い……でも今回の相手は単純に、倒せばいい。死神の因子を植え付けられているのに、回収を意図していない……何だか、まるで使い捨てにでもしているみたい。死神……一体何が目的なの?」
 不意に神妙な表情になるが……すぐ、大きく頭を振って。
「考えるのは後。まずは敵を食い止めないと。こんな良く分からない相手に被害を出させる訳にはいかないわ」
 それにエヴァンジェリン・ローゼンヴェルグ(真白なる福音・e07785)とカーラ・バハル(ガジェットユーザー・e52477)が。
「まぁ確かに、花が咲かないのなら、回収するのが目的ではないんだろう。だが……死神の因子を植え付けた他の理由はなんなのだろうな?」
「そんなの何でもいい。倒したら向こうが強くなるとか、そんなことも関係ねェ! ここで負けたら一般人達が虐殺されちまう。そんなの冗談じゃねェ、誰がそんなことやらせるかよッ!」
「……確かに、そうですね。一般人には罪も無い。ならばそれを俺達が止めるだけだ」
 そして、真砂が。
「ええ……ただ超高速の突撃をしてくる様ですから、その勢いを真っ正面から受ければ大ダメージどころでは済まないでしょう。気をつけて行きましょう……」
 と真砂の言葉に皆も頷き、そしてケルベロス達は島田市の人里の傍ら、ディープディーブブルーファングが現れると予知された所へと足を踏み入れるのであった。

●闇の空を泳ぐ
 そして、ケルベロス達は人里の傍らを歩く。
 ……薄暗く、周囲に灯りのようなものもなく、真っ暗で……一人で歩くのは中々の恐怖。
 ただ、引き下がる訳にもいかない……人里に、その巨躯と共に突っ込んでくるかもしれないから……。
「さて、と……何処から出てくかな?」
 とカーラが周りを見渡すが……今の所音は無く、静けさだけに包まれている。
 ただ、5mの巨躯が動く……それも魚雷のような姿形なら、何らかの音はする筈。
 静けさの中に響くその音を見極めながら、少しずつ進む……そして。
『シュウゥゥ……』
 何かの噴射音が、遠くの方から聞こえてくる……。
 そして、木々の間から不意に特攻を仕掛けてくる、ダモクレス『ディープディーブブルーファング』。
 その突撃、咄嗟にバーヴェンが身を呈し、押さえ込む。
 暫しの力比べの後、逆噴射で一端ケルベロス達から間合いを取るダモクレス……宙空に浮かぶ彼の姿に、顔をしかめるカミュ。
「……煮ても焼いても食えないゲテモノめ。成敗してくれるわ」
 と吐き捨てる一言……勿論、ダモクレスは目立った反応を返すような事は無い。
 寧ろ、邪魔なケルベロス達をどう切り抜けようか、と言う風に、具合を伺っている様にも見える。
 ……漆黒の闇の中に、意思のない巨躯が震える。
 そんなダモクレスに対し、エヴァンジェリンとカーラが。
「さぁ、いこうか……」
「そうだな。この先の人達の命は守る。テメェはここでぶっ倒す……絶対にだ!」
 と叫ぶ、それを後押しする様にアクアが。
「水よ、光よ、煌めく万華鏡の様に皆に届け」
 と『シャボン玉万華鏡』を後衛に駆け、狙いアップ効果を付与。更にジャマーの砂太郎がブレイブマインによる強化を追加。
 そして強化を受けた所で。
「絡みつけよっ、「封縛鞭」!」
 とカーラが先んじて『封縛鞭』の一閃を叩きつけると、
 と頷き合い、先手の一撃。
 カーラが放った鋼鞭が、その身体に巻き付くが、青い機雷の様な姿形は鞭の包囲をするっと抜けてしまう。
 ただ、僅かに生じた隙を突いて、更に真砂が。
「きたれ、極夜よりの魔弾』
 撃ち抜く『Freikugel』が、隙の生じた青の体躯を撃ち抜き、命中。
 僅かではあるが、ダメージを喰らったダモクレスの動きがブレる。
 そして間髪開けず、カミュが。
「ここで痺れる、一回休み」
 『電刃不動剣』による、直接的なパラライズの一撃を仕掛け、確実にパラライズ効果を付与。
 そして、ディフェンダーのバーヴェン、櫻。
「ーム。お前の相手は俺だ。こっちに来い」
 とバーヴェンがブレイズクラッシュで炎効果を付与する一方、櫻はじっとダモクレスを睨み付け。
「Look at me! Look at me! Look at me! Look at me! Look at me!」
 『執着の魔眼』による、石化効果狙いの一撃。
 そして、クラッシャーのエヴァンジェリンは破鎧衝の一撃を確実に叩き込む。
 かなりのダメージを喰らった様で、機雷の火花が僅かに収縮。
 ……だが、次の刻、噴出口からの火花を更に散らせながら、どうにか突破するべく突撃を繰り返す。
 ……しかし今度は、その攻撃を砂太郎のミミック、段ボールがぴょんと飛び跳ねてカバー。
 大きくその身体は吹き飛び、僅かに加速度が減った所に、更にバーヴェンが斬り込み。
「せめて祈ろう。汝の魂に……救いアレ!!」
 と『日龍陽光斬』で、その勢いそのままに地面に向けて振り落とす。
 地面にめり込む機雷の身体、後ろのメカ触手が地面から抜けようと蠢いている。
 ……しかし、その隙を見逃さない訳もなく、カミュが。
「今がチャンスだ!」
 と呼びかけると共に、月光斬の一閃。
 更にカーラの猟犬縛鎖に、櫻の憑霊弧月、エヴァンジェリンの雷刃突。
 なかなか抜けきれない状態で、躱す事も出来ず、積み重なるダメージ。
 どうにか地面から抜けたダモクレスだが、一層悲壮な風体になる。
 ……そんなダモクレス、3分目はメカ触手で、櫻を拘束するも……すぐ、アクアが。
「大丈夫ですか? 緊急手術を施術しますね」
 と、即時ウィッチオペレーションを飛ばし、拘束状態から解放。
 又、真砂も。
「させません、離しなさい!」
 と、そのメカ触手の付け根部分にドラゴニックミラージュを叩きつけ、腕一本を吹き飛ばす。
 ……片手を失ったダモクレス、推力も更に減少し、大ダメージの攻撃は段々と難しくなる。
 どうにか切り抜けようと、縦横無尽に特攻していくのだが……それも全て、バーヴェンと段ボールが入れ替わり立ち替わり、防ぎきる。
 そして、戦闘開始から十分程。
 ダモクレスの推力は、もはや姿勢を維持する事でほぼ手一杯。
 腕である触手は共にもぎれ落ちている。
 そんな状況のダモクレスに。
「触手が無い今がチャンス! 続けて喰らえ!」
 とカミュの稲妻突き。
 その一閃がダモクレスの頭部を撃ち貫くと、エヴァンジェリンが。
「これで、仕舞いだッ! 我が魂を刃と為し、万物悉く薙ぎ払え!」
 と、全力の『天を裂く極光の白刃』を、真っ正面から叩きつけ……ダモクレス『ディープディーブブルーファング』は、その場に爆破するのであった。

●突撃塞ぐ
 そして、どうにか無事にディープディーブブルーファングを仕留めたケルベロス達。
 ……周囲の人家には大きな被害も啼く、取りあえずはほっと一息。
「それにしても……死神にも色々なタイプがあるのですね。まだまだ知らない事ばかり……これまた、図書館通いですね」
 と息を吐きつつ、真砂がメモを記す。
 と、安堵する仲間の一方で、直ぐに壊れたディープディーブブルーファングの部品を拾い上げるはカミュ。
「……流石にメモリの様なモノは無いか。でも、何かしらの命令を受けた痕跡が僅かにでも残っているといいが……」
「ーム……そうだな。死神にダモクレス。デウスエクスめ……何を考えて居る……」
 そんな僅かな希望を抱きながら、ダモクレスの死骸……と言うよりは、壊れて零れた部品などを拾い集めるカミュに、櫻、エヴェンジェリンと、バーヴェン。
 それら拾い集める仲間達に任せつつ、残る一方では、回りの壊れた所をヒールグラビティを使用し、回復をしていく。
 ……拾い集めるのと、回復を手分けして行いながら、市民の日常を再び取り戻していく。
 そして、一通り回収、修復を終えた所で……ケルベロス達は、町の人達が起きる前に、其の場を後にする。
「……それにしても死神……噂通り、足取りが掴めないですね。地道に事件が起こったら解決するしかないのでしょうか?」
 小首を傾げたアクアに、砂太郎が。
「そうだな……色々な死神のパターンもある様だし、一つ一つを解決していく他にないしな」
 と肩を竦めつつ、その場を後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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