●罪人、再び立てば
深夜、人通りもなくなった、とある繁華街である。
街の中央と言う事もあり、季節のイベントのたび、様々な装飾が人々を楽しませて来た場所だ。例えば昨年のクリスマスの時などは、大きなツリーを飾り、鮮やかなイルミネーションが輝いている。
さて、そんな場所で、何かがふよふよと、泳ぐように、飛んでいた。
青白く発光するそれは、おぞましい姿をしていたが、かろうじて魚のように見えた。体長は2mほどだろうか。数は三匹。宙を泳ぐそれは、何か図形を描くように、ある規則性を持って回遊する。
怪魚がふと、泳ぐのをやめた。怪魚の泳いだ軌跡は魔法陣のようなモノを描き、怪魚たちはその外周で、中心を見つめるように、ふよふよと浮かぶ。
ほどなくして、魔法陣の中心に、何かが現れた。
3mほどの体長の、大男である。
ボロボロに破損した甲冑のようなモノを身に着け、見開いた瞳は血走り、理性も、知性も、感じさせない。
「ア……ア――ガアアアアアア!!!」
大男は、吠えた。
「ケル、ベロスゥ……ッ!!」
両手の二振りの大斧を振り上げ、産声のように、或いは憎悪を吐き出すように、吠えた。
●再び、眠りを
「集まってもらって感謝する。今回は、死神達が事件を起こすようだ」
アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、集まったケルベロス達へ向けて、そう言った。
アーサーによれば、とある繁華街にて、死神の活動が確認されたという。
現れる死神はかなり下級の存在のようで、宙を泳ぐ怪魚のような姿をした、知性もあまりよくないタイプであるようだ。
「こいつらが現れただけなら、問題は簡単だったのだが。どうやらこいつらは、かつて皆が撃退してくれた罪人エインヘリアル、そいつを変異強化した上でサルベージするつもりらしい」
怪魚型死神は、サルベージした罪人エインヘリアルを利用して周辺住民の虐殺を行い、グラビティ・チェインを補給した上で、デスバレスへと連れ帰ろうとしているという。
何故死神達が罪人エインヘリアルをサルベージするのか。目的は不明だが、この事件を放ってはおけないだろう。
今回サルベージされた罪人エインヘリアルは、昨年のクリスマスの夜に現れた個体であるという。「自分以外の存在が幸せそうなのが気に入らない」という実に身勝手な理由で暴れていたようだが、駆け付けたケルベロス達により撃退されている。
戦闘方法は、当時と同じく『二振り』の『ルーンアックス』相当の武器とグラビティ、そして『クラッシャー』に相当する能力を持っている。
「変異強化によるサルベージの影響か、件の罪人エインヘリアルは知性を失い、ただ暴れるだけになっている……のだが、前回からしてそういう奴ではあったな。とは言え、純粋な戦闘能力だけ見れば、決して油断はできない相手だ。気をつけてくれ」
怪魚型の死神は、近くに居る一人へ、噛みつき攻撃を行うという。頑丈な牙による攻撃は斬られたような痛みと共に、生命力を吸い取るのだそうだ。死神達は、3体全てが、罪人エインヘリアルを守る様に行動するのだという。
周囲の状況に関してだが、ケルベロス達が到着した時点で、周囲の住民の避難は完了している。しかし、付近一帯の全ての住民たちの避難が行われたわけではない。
これは、住民たちの完全な避難が行われると、死神達はそれを察知してしてしまう可能性があるからだ。付近の住民たちがいなければ、グラビティ・チェインを奪うことができなくなってしまうため、死神達は、サルベージする場所や対象を変えてしまう可能性が発生する。そうなってしまっては、事件を阻止できなくなってしまう。
「そのため、住民たちの完全な避難は行われておらず、また行う事もできない。万が一君達が敗北してしまえば、かなりの被害が出てしまう。頭に入れておいてくれ」
また、死神達は、自分達が劣勢に立たされたと判断した場合、サルベージした罪人エインヘリアルを、撤退させようとするという。
「だが、連中の知性はあまり高くはない。こちらが劣勢である、と相手に思わせる……例えば、そのように上手く演技して見せたりすれば、相手は自分達の状況を勘違いするだろうな。仮に君達が本当に窮地に立たされていた場合でも、あえて自分達が優位であるように振舞えば、敵は自分達が劣勢だと思い込み、撤退を行い、ひとまず住民たちを守ることができるかもしれない」
死神達が撤退するタイミングでは、死神も罪人エインヘリアルも、攻撃などは行わず、撤退の準備を行うため、こちらが一方的に攻撃する隙にもなるだろう。死神達は、撤退を決定してから、一分後に撤退する。
その一分の間に敵を全滅できるのならば、あえて撤退させるように誘導するのも良いかもしれない。
「奴らはエインヘリアルを狙ってサルベージしているようだ。霧島・絶奈(暗き獣・e04612)が危惧していた通り、何らかの密約のような物が交わされていたのかもしれないな……おっと。そう言った調査は事件の解決後に行ってもらうとして、今は人々を救う事に注力してほしい。作戦の成功と、君達の無事を、祈っているよ」
そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出した。
参加者 | |
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ディディエ・ジケル(緋の誓約・e00121) |
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612) |
霧島・絶奈(暗き獣・e04612) |
アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587) |
水無月・一華(華冽・e11665) |
唯・ソルシェール(フィルギャ・e24292) |
オリヴン・ベリル(双葉のカンラン石・e27322) |
●闇夜に吠える
深夜の繁華街で、それは吠えた。
3mほどの大男。かつて罪人として放逐され、異郷の星にて暴虐の限りを尽くし、その報いを受けたエインヘリアルは、二度目の生を受け、ここに蘇った。
だが、その姿は、かつてのそれからはかけ離れていた。その肉体は醜くただれ、異常に発達した筋肉が、いびつな姿をさらしている。
身を包む鎧は、かつての死闘の後を残し、その役割を果たすことができるかは疑わしい。
そして、その眼にはもはや、知性はなかった。かつても知性や常識とはかけ離れた行動をする存在ではあったが、そのなけなしのそれすらも手放したように。その姿はまるで――。
「獣、ですか」
嘆息するような声が、辺りに響いた。
霧島・絶奈(暗き獣・e04612)である。その表情は微笑を浮かべていたが、それは絶奈の作った、いわば仮面であるため、絶奈が抱く真の思いはうかがい知ることはできない。
「いえ――獣とて、自らの群れを守るという、知性と情は持ち合わせているもの。で、あるならば、貴方は一体――なんなのでしょうね」
問いかけのように放たれたその言葉の意味を、罪人は理解できないだろう。目の前にいるものが、かつて相対した存在であるという事すら、理解してはいまい。
「ケル……ベロスゥ……!」
罪人が唸る。目の前にいる相手が、敵であるケルベロスである、と理解する程度の知性はあるのか。或いは、本能的な物か、植えつけられた認識か。
「憎悪の塊、って感じだね……! 元からなのか、サルベージされたからなのかは分からないけど……っ」
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)が言った。罪人より放たれる、明確な悪意、敵意……一般人であれば、その恐怖に足がすくんでしまうだろう。
「生前の情報からして、俗なもの。せめて戦士らしい矜恃があればと思いましたが、持っていなかったのですわね」
柔和な笑顔で水無月・一華(華冽・e11665)が言った。
「……周りを嫉み、傷つけ……その末路がアレか。自業自得と言えば自業自得だが」
気だるげな声で言うのは、ディディエ・ジケル(緋の誓約・e00121)だ。陰鬱な仏頂面ではあるが、これはディディエの普段通りの物である。
「蘇らされて……それで残ったのが憎しみだけ、って言うのは、ちょっとかわいそうかな、って思う」
アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587)は言いながら、罪人の周囲を、きっ、と睨みつけた。そこにはグロテスクな深海魚――下級の死神が3体、宙を舞っている。
「死神、デスね! やり方がロックじゃないデス!」
むっとした表情で、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)が言う。
「だよね。寝てる所を無理矢理起こして働かせるなんて、信じられないよ」
オリヴン・ベリル(双葉のカンラン石・e27322)が答える。
「死神の考える事はよくわかりませんが……ここで死神達を止められなければ、人々に被害が及びます」
唯・ソルシェール(フィルギャ・e24292)が言った。死神達の行動を確定させるため、付近の住民たちの避難はさておき、広域の住民たちの避難はまだ完了していない。
唯の言う通り、ここで敵を止められなければ、人々に被害が発生する事は確かだ。それだけは、避けなければならない。
ケルベロス達は各々武器を構えた。死神達はその様子をしばし眺めていたが、ケルベロス達がこちらに敵意を抱いているのだという事に間をおいて気づき、その牙をカチカチと打ち鳴らした。
それは、罪人に対する命令であったのかもしれない。罪人は、その音を合図に雄たけびを上げると、その両手に携えた二本の巨大な斧を振りかざし、ケルベロス達へと突撃してくるのであった。
●敗北への道筋
「ケルベロスゥゥゥゥ!!」
雄たけびと共に振り下ろされた斧が、オリヴンへと襲い掛かった。罪人の全筋力を乗せたであろう一撃は、オウガメタルにより守られたオリヴンの体へ、激しく叩きつけられた。
「うう……っ!?」
オリヴンが苦し気にうめき声をあげる。衝撃はその身体では受け止めきれず、後方へと激しく弾き飛ばされる。
「オリヴンさん!!」
アトリの悲痛な叫び声が、辺りに響いた。
絶奈が敵の群れを凝視する。催眠の力を込めた魔眼である。魔力によるダメージを期待したものだが、
「これは……効いていないようですね……」
期待したほどのダメージを与えられなかった、と、絶奈は呻いた。その攻撃の埋め合わせをするように、絶奈のテレビウムは、懸命に死神へと殴り掛かる。
「うう、痛い……」
呻きながら、よろよろと、オリヴンが立ち上がった。妖精弓をかざし、味方へと矢を撃ち放つ。祝福と癒しの力を持つその矢は、仲間の傷を癒し、力を向上させるものである。
「お願い、地デジ……」
その言葉に、テレビウム『地デジ』は頷いた。凶器攻撃により死神を殴りつけるが、
「ち、違うよ地デジ、狙うのはあっちのおっきい方……!」
オリヴンの言葉に、地デジは、しまった、と言った様子を見せる。
ケルベロス達の戦いは、まるでちぐはぐで、息が合っていない様に見えた。適切ではないと思われる攻撃は敵に通じているようには見えず、各々が勝手に行動しているようでもあり、およそ戦略的とは言えない。
「ボクの歌を聞くデスよー!」
シィカがギターをかき鳴らし、魔力のこもる歌を歌う。その歌に合わせるように、
「……凍りつけ……!」
ディディエが放つ氷河期の精霊が死神達を飲み込むが、それらも決定打には至らない。
「ふぅ……歌が届いてないデスか……?」
息を切らせつつ、しょげるように嘆くシィカに、
「……これほどまでに、効かないか」
呟くように返すディディエ。
「でも、諦めるわけには……っ!」
リディが叫び、罪人へと駆けた。『ハピネス』の名を冠するオウガメタルを身に纏い、一撃をお見舞いする。肉体へと突き刺さるも、罪人は顔をしかめる事すらしない。
「そんな……っ!」
驚愕の表情で、リディが呻いた。
「援護しますわ、退いてください!」
一華が指先を転がすように振るうと、無数の刀剣を召喚された。それらが敵へと降り注ぐのを合図に、リディは大慌てで、逃げるように距離をとる。
「ありがとうっ! でも……」
リディの言葉に、一華は頷いた。
「はい。どうやら相手は、一枚も二枚も上手のようですわ……」
「せめて、少しでも長く耐えられる様に……!」
唯が呟き、ヒールドローンを展開し、仲間たちの傷を少しでも癒していく。
「でも、このままじゃ、抑えきれないよ……」
薬液の雨を降らせながら、アトリが答えた。
敵の攻撃に、ケルベロス達は傷ついていく。しかし、敵に有効打を与えられているようには見えない。
ケルベロス達は少しずつ、確実に、不利な状況へと追いやられていくようであった。
「……此処まで強大な敵とは。或いは、死を覚悟しなければならんかもしれんな」
ディディエの言葉に、ケルベロス達は、悲痛な面持ちで頷く。
「これがボク達のラストライブになるデスか……」
シィカが呟く。同時に、死神の群れがケルベロス達を襲い、その身体をむさぼった。
襲い来る痛み。それでも、ケルベロス達は、決して折れることなく戦い続けた。果敢に反撃を続け、死神を2体、討ち取る事に成功した。
だが、それがなんになるというのだろう? 死神側の最大戦力である罪人エインヘリアルはいまだ健在である。こう言っては何だが、怪魚型死神は戦力としては、弱い、と言える方だ。その死神をようやく倒した様なケルベロス達に、罪人を討伐するほどの力が残っているわけがない。直に、罪人の手により、ケルベロス達は全滅するはずだった。
もうすぐ。もうすぐ。もうすぐ。もうすぐ。
もうすぐ――その時は、本当に来るのか?
罪人が吠え、手にした斧を、振り下ろす。傷ついたディディエに、それを受け止めることができるとは、思えなかった。その斧は、ディディエを捕え、その命を奪うだろう。そのように見えた。
だが、ディディエはそれを、『スピニングスティック』をかざして、何のことはなしに、受け止めた。その様子に、過度な消耗の色は感じられない。
「……そろそろ頃合いだろう」
ふむ、と唸り、ディディエが呟いた。
それを合図にするようにして、ケルベロス達の纏っていた雰囲気が、一瞬にして逆の物へと切り替わった。
「――呆れましたね」
絶奈が呟いた。その顔に浮かぶのは、狂ったような笑み。右手を振りかざすと、青い燐光がその手に宿る。そのまま罪人へと迫るや、その掌を罪人へと押し付けた。
「確かに貴方は……以前よりどうしようもない。同情すら覚えますよ」
言葉と同時に放たれる、青の光。生命賛歌の神槍。光が、罪人を貫く。衝撃に吹き飛ばされる罪人へ、テレビウムが追撃をお見舞いした。
「ボク達の演技、どうデシタか?」
シィカがにっこりと笑って、声をあげる。
「ふふふ、騙されましたね?」
と、どこか悪戯っぽい笑顔で、アトリが続けた。手にした杖を振って、どこか楽し気でもある。
つまり、すべて演技だった、という事なのである。苦戦していたのもそう。攻撃がちぐはぐな様子だったのもそう。最初から、何もかも。
死神達は、自分達が優位な立場にいると思い込んでいたのだが、その事実、敗北への道筋をひた走っていたわけである。
「狐につままれましたわね?」
頬に手を当てつつ、一華が微笑んだ。
「これで最後デス! ボク達の歌を、聞けーっ!」
シィカがギターをかき鳴らすと、二つの残霊が現れた。シィカの大切な、友の残霊。一人はドラムを、もう一人はキーボードを鳴らし、シィカはそれに合わせてギターを鳴らした。『天穹へ至れ、竜たちの唱(ドラゴニック・ライブ・センセーション)』。その歌は夜空を切り裂き、攻撃の嚆矢を告げる歌となる。
「その程度でわたくし達を討とうとは――ぬるい」
呟き、一華は喰霊刀を抜き放った。流れるような所作から繰り出される、鋭い一刀。武器に込められら呪詛を乗せながら、その軌跡は見惚れるほどの美しさを魅せる。斬撃をまともに受けた罪人が、その身体を大きくぐらつかせる。
「えっと、こういう時は……ふゅーちゃりんぐ、アトリ……って言うのかな?」
シィカの歌を背後に、アトリの呼び出した翡翠色の鳥たちが舞う。歌に合わせるように、曲に合わせるように、踊る様に、歌うように、翡翠色の鳥たちが、『旅人達への守護(タビビトタチヘノシュゴ)』を祈り、戦場を舞う。
「うん、もう少しだよ、地デジ」
オリヴンは言って、無数の氷の欠片を発生、罪人へと向けて放った。その欠片の煌くさまは、緑柱石の如し。『アクアマリンの欠けら(アクアマリンノカケラ)』が次々と罪人へと突き刺さり、地デジは今まで不利な演技をしていたうっぷんを晴らすように、罪人へと攻撃をお見舞いする。
「ガアアアッ! テメェ、ら! ヨク、も、よくモォぉォぉ!!」
罪人が雄たけびを上げる。
「……ちゃんと喋れるみたいじゃないか」
ディディエは呟き、ゆっくりと手をかざした。途端、地に黒いモヤのような物が生まれるや、そこから四足の獣のような物が現れた。
牛のような巨大さと、狼の様な外見を持つ――しかしその正体が判然としない。見るたびに形を変えるようで、聞くたびに形を変えるようで、その姿は一つにとどまらないのだろう。
「……自分以外の存在が倖せそうであることが気に入らぬなどと、甚だ迷惑な被害者思考だったようだが、それも今度こそ、今夜が最後だ」
なぜならそれは、伝説の物であるがゆえに。呼び出された『恐乱の黒妖獣(ラ・ベート・デュ・ジェヴォーダン)』が吠え、罪人へと襲い掛かる。
罪人が噛みつかれたかのように見えた瞬間、獣は消え失せた。すべては幻想の内に。されど、その傷は現実である。それが致命傷となった罪人は、うめき声をあげると地に倒れ伏した。その肉体は塵と消え、甲冑と、服と思わしき布切れだけがその場に残された。
「前にも、不利な演技をして戦ったことがあったけど――」
リディが呟き、残された死神へと攻撃を行う。もはや遠慮はいらない。リディは死神の周囲の空間の時間を凍結させた。不完全な時間停止は、力技で振り切ることができる程度の物だ。だが、それを行う者は無傷では済まない。
「その時の敵は、もうちょっと早く気付いた気がするよ」
「では、これにて終幕としましょう」
唯は呟き、その手を振るった。無数の純白の羽が、死神を目がけて、ゆっくり、ゆっくりと舞い散りゆく。優雅なれど、その翼は凶器。無数の鋭い刃である羽に包まれ、ゆるり、ゆるりと、その身を切り刻まれていく。
『堕落の翼(ディプラヴィティ・ナイトメア)』が全て地に落ちた時、死神もまた、地に落ち、消滅したのである。
●残った謎
「お疲れ様、地デジ。ぼくもちょっと疲れたよ……」
眠たげにあくびを一つ、オリヴンが言った。地デジはそんなオリヴンをねぎらうように、ぱたぱたと飛び跳ねる。
無事に戦いを終えたケルベロス達は、戦場のヒールを済ませた。この繁華街には、明日もまた、多くの人が行き交うのだろう。
罪人の墓標となった、甲冑の残骸を前に、アトリは跪き、祈りを捧げていた。
「……祈り、ですか」
絶奈の言葉に、アトリが答える。
「うん……命を弄ばれたことに、変わりはないから……」
そう言って、アトリは再び、いのりを捧げた。絶奈は微笑を崩さず、
「……良き永遠の憩いを」
小さく呟いた。
「ふぅ。皆迫真の演技で、ちょっとドキドキデシタよ!」
と、シィカが笑う。
「ね。分かってても、なんだか気持ちが沈んじゃうよねっ」
苦笑しつつ、リディ。
「しかし、今回の事件、その目的……まだ、不明のままですね」
唯が言った。今回の事件の背景は、未だ不透明な部分が多い。
「色々と、調べられることがあるかもしれませんわね……」
一華が答える。この事件の背景に、何があるのか。それを解明するのは、これからのケルベロス達の、地道な調査にかかっている。一つの事件を解決したばかりだが、やる事は山積みだ。
「……だが……ひとまず今は、無事に作戦を完了できたことを、喜ぼうか」
ディディエがそう言って、口元に、少しだけ笑みを浮かべる。
その言葉に、ケルベロス達は同意した。
夜は過ぎ、やがて夜が明ける。
この街は今日も変わらず、平穏な日常の姿を見せるのだろう。
それは紛れもなく、ケルベロス達の活躍があっての事だ。
また繰り広げられる人々の営みと幸せ。それに想いを馳せながら。
ケルベロス達は、凱旋するのであった。
作者:洗井落雲 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年8月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 0
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