サメのいる動物園

作者:青葉桂都

●死神と人食い鮫
 赤い翼を背に生やした女は、盆地に広がる市街地を見下ろしていた。
 傍らには巨大な鮫を模した機械が浮かんでいる。
「ここにしましょう」
 冷たい声が山地に響く。
 デウスエクス……死神である女には、目に映る人里の風景がただの実験場にしか見えていないのだろう。
 球根のような形をした『死神の因子』を、女はダモクレスである鮫に埋め込んだ。
「さあ、お行きなさい、ディープブルーファング」
 機械の鮫が、声に応じて宙へと舞い上がる。
「グラビティ・チェインを蓄え、ケルベロスに殺され――私の研究の糧となりなさい」
 ディープブルーファングと呼ばれた鮫型ダモクレスが、空中を泳ぎながら一直線に街へ向かって飛んでいく。
 速度は非常に早く、見る者が見れば高い戦闘能力を有していることを察しただろう。
 もっとも知性を有しているようには見えない。その高い戦闘能力を、ただ命じられたまま殺戮を行うために発揮すべく、ディープブルーファングは市街地を目指した。

●ヘリオライダーの依頼
 集まったケルベロスたちに一礼をすると、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は予知した事件について語り始めた。
「北海道の旭川市に、『死神の因子』を埋め込まれたダモクレスが向かっています」
 鮫に似た形をしたダモクレスは全長5mほどもある。
 空中を泳ぐようにして市街地に到達したダモクレスは、当然ながら虐殺を行うだろう。
「今回の事件はこれまでに発生した事件と異なった背景がありそうですが、なにが起こっているか考えるのはデウスエクスを倒した後の話になります」
 ケルベロスがやるべきことはいつもと同じ。
 因子を植え付けられた敵を倒し、人々を守ることだ。
 今回の事件で、ディープブルーファングという名らしい敵は、旭川市の東にある山から市街地に入り込んでくる。
「付近に動物園があり、デウスエクスはそこを狙ってくるようです。人が多くいる場所を目指してくるということでしょう」
 寄り道をしなければ東側の入り口付近で交戦することになるはずだと彼女は言う。
 警察や施設の職員の協力は当然得られるが、事前に大規模な避難活動を行うと避難している人たちのほうに向かう可能性がある。
 避難活動をケルベロスたちが行う必要はないが、序盤はできる限り敵を足止めするように戦ったほうがいいだろう。
「敵は『メカ触手』と『サメ魚雷』を用いた攻撃を行ってきます」
 触手による直接攻撃は受けたものを捕縛する効果がある。
 また、触手を周囲にあるものに巻き付けて高速機動を行い、範囲攻撃を行うことも可能なようだ。反動を利用した高速攻撃は命中しやすいので注意したほうがいいだろう。
 範囲にばらまかれるサメ魚雷は衝撃でダメージを与えるだけでなく、目標に食いついて足止めする効果もある。
「過去、死神の因子を受け付けられたデウスエクスを撃破した際に、彼岸花が咲いて死神に回収されるという事例がありました。しかし、今回はその特性がないようです」
 死神に回収させないように倒す必要は、おそらくないだろうと芹架は言った。
「死神の狙いは今のところ予想もつきませんが、目的がなんであれ目の前の被害を放置するわけにはいきません」
 ケルベロスだけが、敵を阻止できるのだと芹架は最後に告げた。


参加者
天崎・ケイ(地球人の光輪拳士・e00355)
蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
ティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467)
天司・桜子(桜花絢爛・e20368)
ハートレス・ゼロ(復讐の炎・e29646)
天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)
陸堂・煉司(冥獄縛鎖・e44483)

■リプレイ

●ズー・シャーク
 動物園のそばにある広い公園の端にヘリオンが降り立ち、ケルベロスたちは急いで敵が現れるはずの場所へ向かっていた。
「死神が新たな動きを見せたみたいだね。死神の因子を破壊することに気を配る必要は無いみたいだけど、どんな相手であれ、油断はしないよ」
 決意を込め、天司・桜子(桜花絢爛・e20368)は公園の土を踏む。
 桜色の髪が夏の夜にも鮮やかに揺れていた。
「しかし、死神は本当に何を企んでいるのでしょうねえ? 皆目見当がつきません……」
 夜の風景に溶け込むような黒い服を着た少年、天崎・ケイ(地球人の光輪拳士・e00355)が首をかしげた。
「今度は因子の回収なしでダモクレス狙いの黄泉がえり…………死神の奴ら、一体何を狙っているんだ? 今まであまり表だった動きをしていない分、警戒せざるをえないな」
 蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526)も、女性のように見える顔に疑問符を浮かべている。
 動物園の入り口が見えてきた。
 駐車場には少なくない車が並んでいるものの、歩いている人の姿はない。
 真琴は円滑な避難活動を行うよう連絡していたが、連絡するまでもなくとうに動いているということだった。もうこの辺りは避難し始めているのだろう。
「グラビティチェインを集めさせ、その後回収させないのはなぜだ。別の形態で回収しているのか、もしくは戦闘自体に意義があるのか」
 ハートレス・ゼロ(復讐の炎・e29646)が呟いた。
「因子を回収されるでもなく、ただ殺される。無駄に戦力を消耗させるだけ。……ってワケじゃねぇんだろうな」
 右目と腕に青い炎を宿した陸堂・煉司(冥獄縛鎖・e44483)が、鋼に包まれた彼の言葉に応じる。
「あー、これは完全に捨て石ですねー。だいたいこういうパターンって、私達の注目を引付けて何か別の作戦を行っていると考えるのがセオリーですけれど、そんな様子もないし……」
 ウサギのウェアライダー、ティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467)が言い切った。
「となると、敵の目的は新型因子の開発かな? 戦闘の様子を観察している敵が別にいるのか、このサメの中に何らかの送信機が入っているのか……」
 もっとも彼女の断定が正しいかどうか現時点ではわからない。決め打って調査するか、あるいは柔軟にいろいろ考えるか……いずれにせよ戦いが終わってからのことだ。
 公園の、別の方向から飛んでいく機械鮫が見えた。
「いずれにせよデータを十分に収集する前にさっさと倒してしまうのが一番ですね。……行くよ、プリンケプス!」
 ティがかたわらにいるボクスドラゴンに声をかけた。
「……まあいい。何をたくらんでいるか知らんが、すべてオレの地獄で焼き尽くす」
「だな。連中の目的が何なのかは知らねぇが、指咥えて黙ってるワケにゃいかねぇ。斬り捨てるまでだ」
 ハートレスや煉司も、走る速度を上げる。
 動物園の駐車場にたどり着いたのは、敵味方ともほとんど同時だった。
「色んな勢力のデウスエクスをサルベージしたり、因子を埋め込んでコントロールを奪える死神は厄介だな」
 天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)が地獄で作った翼を広げる。
「今回はダモクレスだけが敵だけど、やろうと思えば色んなデウスエクスの兵種で部隊が組めるってことだよね。大事になる前に早めに対処していかないとね」
 空気抵抗の少なそうな体がわずかに地面から浮いて、敵に向かって宙を滑る。
 大きな音が響いた。
 機械鮫がケルベロスたちのほうへ視線を向ける。
 蛍ともう1人、金木犀を髪に生やした青年がメガホンで音を立てたのだ。
「まあ、思う所は多々あれど、目の前の虐殺しようとしている物騒な奴は即刻倒した方がいいよね。まずは、かけがえのない沢山の命を救わないとね」
 源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)と蛍、さらにライトを使ってダモクレスの注意を引いた。ティが牽制に放った攻撃もそれを手伝う。
 敵の動きが止まった隙に、ケルベロスたちは動物園との間をふさいでいた。

●空中を踊る機械鮫
 ケルベロスたちに対してディープブルーファングがなにを思っているのか、外見からは想像もつかないが、邪魔に感じていることは間違いないだろう。
 鋭く牙を剥く無数の魚雷をダモクレスが放ってきた。
 前衛に出た4人と1体……いや、ハートレスが瑠璃をかばったので3人と1体が、魚雷に食いつかれる。
 魚雷の合間を縫うように放たれた反撃の霊弾をダモクレスは回避してみせた。
「ちょろちょろと……こいつは確かに面倒だ」
 煉司が言った。
「知能のほうはともかく戦闘能力は侮れないみたいですね」
 ケイは魚雷を払い落そうとしながら呟く。
 攻撃にせよ防御にせよ、敵は間違いなく強力だった。
 後衛から狙いすました蛍のガトリングガンによる射撃と、ティの飛び蹴りが敵の機動性能を奪おうとする。
 真琴が蟹座の紋章を宙に描きながら、オウガメタル粒子を放った。前衛の傷を癒やすとともに感覚を強化してくれている。
「迅速に撃破するためにも、まずは敵の足止めからですね」
 薔薇の香気がケイの周囲に漂い始める。
「紅はお好きですか?」
 ケイから広がっていく香気がダモクレスを包み込む。五感を鈍らせる香りは、機械である敵にも有効だ。
 そして舞い散る真紅の花吹雪も機械鮫の装甲を切り刻んでいた。
「先ずは、そのすばしっこい動きを封じさせてもらうよー」
 桜子の重力を操った飛び蹴りや、後方から煉司が飛ばしたドラゴニックハンマーで砲撃も敵の足を止めている。
 さらに幾度か足止めを繰り返したことで攻撃を当てやすくはなったものの、機械鮫は意に介すことなく攻撃を続けていた。
 ハートレスは瑠璃へと伸びる触手へと飛び込んでいった。
「貴様の相手はオレだ」
 金属製の触手は、彼の身を覆う防具へと絡みつき、縛り上げる。
 捕縛しながらさらに伸びた鮫の武器が、方向を変えてハートレスを貫く。
 触手が引き抜かれると、弾けた甲冑の内側から地獄の炎が吹き出した。
「助かったよ。大丈夫かい?」
「問題ない。それよりも、攻撃を!」
「ああ、わかってるよ。さっさと片付けよう!」
 穏やかそうな声にいくらかの嫌悪をにじませて、瑠璃が降魔の一撃を鮫の装甲へ叩き付けた。
 ハートレスも、触手を引きちぎりながら敵へと突撃した。
「できる・できないではない、挑むか・挑まないかだ」
 瑠璃の攻撃で触手の動きが止まった一瞬で、無数の触手をすべてかいくぐる。
 亡き友から学んだ信じる心を魔法に変え、跳躍したハートレスの蹴りが敵を捉える。
 敵を凍てつかす一撃は、見る者たちに確かな将来性を感じさせていた。
 大きく空中旋回しながら、無数の触手が伸びて置き去りになったままの車に絡みつく。
 車が舞い上がったかと思うと、敵がスーパーボールのように飛び、跳ね回った。
 蛍は仲間たちをなぎ倒す敵へと、翼を広げて接近していく。
 高く飛びすぎると不利になるが、地上を移動するのと変わらない低空飛行なら問題にはならない。有利にもならないが、蛍は飛びながら戦うほうが好きだった。
 体を傾け、螺旋軌道を描いて敵の頭上をすり抜ける。
 ダモクレスが視界の端に見えた。魚雷で狙った前衛たちへ向かっている。あるいは、さらにその向こうにある動物園を狙っているのか。
「その動きは見逃さないよ」
 地獄の翼の出力を上げ、加速しながら蛍は旋回した。
 狙いをつけつつ、3時の方角に回り込んでガトリングガンの引き金を引く。
 弾丸は装甲をうがち、動きを鈍らせる。同時に動物園へ向かう軌道もそらすことに成功していた。
「まぁ、よく動けるもんだ」
 煉司は飛び回る鮫の姿を見て呟いた。
 もっとも、メカ触手を使って加速している時はともかく、回避する動きは鈍ってきている。
「攻撃はだいぶ当たるようになってきていますね」
「だな。足止めはそろそろ十分そうだ」
 近くにいたティの言葉に、煉司はうなづいた。
 日本刀を構えたティが急加速し、敵へ一気に接近した。月のように弧を描いた刃が敵を深々と切り裂く。
 彼女が通り過ぎた瞬間、プリンケプスのブレスがさらに敵を傷つけていた。
 別の方向から煉司もダモクレスとの距離を詰める。
 ドラゴニックハンマーを振りかざし、凍り付くほど卓越した一撃を鮫へと振り下ろす。
 敵の動きを常に警戒しながら、煉司は後衛からダモクレスの体力を削っていった。

●鮫は大地に沈む
 いくら攻撃を繰り返しても、ディープブルーファングは揺らぐ様子を見せなかった。
 機械の触手がまた高速で伸びた。
 狙われた桜子がとっさにそれを飛び越えようとするが、素早い反応で触手は回避した彼女を追っていく。
 花吹雪柄を施した丈夫な服に、メカ触手が巻き付く。
 地面に叩き付けられて、少女の体が浮き上がった。
 瑠璃が鋭い蹴りで桜子から機械鮫を引きはがす。
 真琴は自分自身の羽から作り出したカードを取り出した。
「慈愛深き天と水の乙女よ。我が盟約に従い、その力を顕現させよっ!―――――来い、『ピアリィ』!」
 魔力を込めた弾丸でカードを撃ち抜くと式神の少女が出現した。
 下半身は魚、すなわち人魚だが、背には天にも届く翼を生やしている。
 式神は澄んだ歌声を響かせ始めた。
 癒しの歌声を浴びて、桜子の傷が治っていく。
「助かったよ、真琴くん。わかってたけど、最後まで油断はできないね」
「ああ。回復の手もちょくちょく足りなくなってる。気は抜くなよ」
 少女ががうなづいた。
 歌だけでは治しきれない傷を、ティのプリンケプスが属性をインストールしてさらに回復している。
 桜子は、真琴の声にうなづきながら桜の花弁状のエナジーを無数に創造していた。
「桜の花々よ、紅き炎となりて、かの者を焼き尽くせ」
 高速で飛び回る機械鮫へと桜の花弁が飛んでいく。動きは素早いが、最初に付与し続けた足止めのおかげで逃げ切れるほどではない。
 囲んだ桜の花弁が、燃え上がった。
 桜の形をした炎へと変じ、ダモクレスの装甲を焼き焦がす。
 炎に取り巻かれた敵へ、ライドキャリバーに乗ったハートレスが接近していった。
「オレの地獄に付き合ってもらうぞ」
 乗っていた彼が敵をジグザグに切り刻んだかと思うと、ライドキャリバーのイレブンが炎をまとって突撃し、さらに炎をあおる。
 それでも、敵はまだ倒れなかった。
 攻撃を受けながら、鮫は触手をハートレスに飛ばしてきている。
「あいつ、ハートレスや桜子を狙ってやがる。ダメージを食らってるからな。……しっかし、鮫のくせに触手とはよ」
「厄介だよね、あの触手。その前にこっちが倒しちゃわないとね」
 煉司の言葉に蛍が応じた。
 そのまま前進していく蛍は螺旋軌道を描く飛行で敵をかわしつつ、炎をまとったガトリングガンを叩き付ける。
「瘴霧一閃。―――呪縛、解放」
 彼女を追って同じく前進した煉司がハンマーを振り上げると、具現化した妖気が妖刀を形作った。
 瘴気をまとった一閃で、呪詛が敵をむしばむ。
 ティは横目で動物園の入り口を確かめた。
 園内にいた人たちの避難活動は、そろそろ終わっていることだろうか。
 だが、そちらに行かせないに越したことはない。
「……行くよ、プリンケプス」
 ダモクレスと動物園の間をふさぐ方向に移動した後、ティは一気に地面を蹴った。
 高速で動く敵の動きに合わせて、機敏な動きで少女はダモクレスに接近する。
「バン!」
 そのまま身をかがめて鮫の真下に潜り込み、至近距離から敵の内部にグラビティ・コアを撃ち込んだ。
 転がりながら敵をすり抜ける間に、重力崩壊を起こしたコアが敵を内部から破壊する。
 崩壊していくダモクレスはプリンケプスのブレスをも浴びるが、まだ倒れない。
「あと一息のはずだよ。一気に決めよう」
 瑠璃は仲間たちに声をかけた。
 まだ倒れていないものの、装甲はへこみ、触手はちぎれ、ダモクレスにもう余裕がないことは見て取れた。
「ええ。こんな場所にサメがいるのは野暮というもの。冥府の海に帰っていただきますよ」
 ケイが阿頼耶識をまとい、輝く拳で華麗なる一撃を敵へと放った。
 他の仲間たちも次々に攻撃を繰り出していく。
 ダモクレスがちぎれた触手を周囲に巻き付けて高速機動を行ったが、桜子とハートレス、イレブンが確実にその攻撃を防いだ。
 瑠璃は自らが秘めた太古の月の力を引き出した。
「うん、ちょっと重いけど、行くよ!!」
 振り上げるのは一本の巨大な剣。
 因子のことは今は気にしない。それに――かつて故郷や母を失った瑠璃は、この敵のように命をないがしろにする相手に強い嫌悪感も覚えていた。
 これ以上、あの敵を生き残らせておくわけにはいかない。
 扱いにくい月の剣だが、皆が敵の足を止めてくれたおかげて十分に当てられる。
 気合を込めて一気に振り下ろすと、太古の月はダモクレスを過たず両断していた。

●動物園に鮫は似合わない
 切り裂かれたダモクレスが地面に落下する。触手が砕け散ってチリと化し、やがて本体も動きを止めた。
「死神は本当に何を企んでいるのでしょうねえ? 皆目見当がつきません……」
 ケイが敵の死を確かめながら呟く。
「確かに、死神の狙いは気になるところだな……」
 ハートレスが呟いた。
「ともあれ、まずは戦場を片付けてしまおうよ」
「そうだね。動物園の入り口だし、早めにヒールしておきたいね」
 真琴の言葉に瑠璃が同意した。もっとも、残念ながら打撃役だった彼自身は回復の技を用意してきていないので、ヒールは誰かに頼むしかない。
「色んなところに触手を飛ばしてたから、だいぶ壊れちゃったなあ」
 転がる車や街灯の残骸などをながめ、蛍も言う。
 回復の技を準備してきている者たちの幾人かが、手分けして周囲をヒールしはじめた。準備してきていない者たちも後片付けを手伝っている。
「死体、消えちゃうのかな。まだ残ってるなら今のうちに調べておきたいね」
 片付けている間に、桜子はディープブルーファングの死体を確認していた。
 デウスエクスの死体がどうなるかは個体によって異なる。死体がいつまで残っているかは定かではない。
 死神の足取りを追う手掛かりがないか、桜子は観察していた。
「これまた妙なケースだからな。……数年間鳴りを潜めてた連中だ。何らかの下準備って事には違いねぇんだろうが」
 煉司も残骸を確かめるように見つめている。
 だが、少なくとも、この場ではっきりわかるような情報は得られなかった。帰ってから改めて検討したらなにかわかるかもしれないが……。
 ティは周囲を見回した。
 新型の因子を開発しようとしていると目星をつけてはみたものの、それを証明する手掛かりもやはり見つからない。
 今わかるのは、避難した人たちが戻ってき始めているということだけだった。
 ケルベロスたちの目の前で、再び動物園はにぎわいはじめていた。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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