ミッション破壊作戦~大樹は星を絞め殺す

作者:坂本ピエロギ

「グラディウスの充填が完了しました。これよりミッション破壊作戦を行います」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はケルベロスを出迎えると、そう話を切り出した。
「本作戦の目的は強襲型魔空回廊を強襲した後、回廊の支配領域から離脱する事です。強襲型魔空回廊は敵の重要な拠点であり、もしこれを破壊できれば、その種族との最終決戦勝率が上昇します。戦局に与える影響は大きなものとなるでしょう」
 今回攻撃するのは攻性植物の魔空回廊だ。折しも大阪では白の巫女との決戦が並行して行われており、ここで回廊を陥落させれば、かなり大きな損害を敵に加えられることだろう。
「魔空回廊は強固なバリアに覆われており、通常攻撃ではダメージを与えられません。そこで必要になるのが、この『グラディウス』です」
 そう言ってセリカは、一振りの小剣をかざしてみせた。
 長さはおよそ70cm程度、成人男性の片腕と同じくらいだろうか。
「現地上空まではヘリオンで移動します。皆さんはそこから高空降下を行い、回廊本陣を攻撃するのです。グラディウスは1人1本しか持てませんから注意して下さいね。さて……」
 ここからが一番大事なところです、と念を押してセリカは口を開いた。
「グラディウスは所持者の『魂の叫び』に共鳴することで兵器としての力を発揮します。この力を使えるのは一回の作戦で一度だけ。それも降下から着陸までの間だけです」
 魂の叫びによって発生する雷と炎は、グラディウスの所有者以外を無差別かつ徹底的に破壊する。加えて、視界を遮る濃厚なスモークというオマケつきだ。
「降下と同時に皆さん自身の『魂の叫び』をグラディウスに込めて下さい。平和への祈り、戦いにかける思い、なんでも構いません。込めた叫びが純粋で強いほど、グラディウスは力を発揮するでしょう」
 繰り返しになるが、作戦の目的はグラディウスを使って回廊にダメージを与えることだ。グラディウスで回廊に与えた損害は修復できないため、どんなに強大な回廊であっても、10回程度の強襲を行えば確実に破壊できる。
 ただし、ひとたび力を発動したグラディウスは、半月から数か月ほどの期間、グラビティの充填が必要となる。安易に乱発できる兵器ではないので、強襲する拠点は慎重に選択せねばならない。
「強襲敢行後は迅速に作戦領域を離脱して下さい。その際、敵との戦闘は不可避です。いかにグラディウスといえど、敵支配領域の全てを攻撃することは出来ないからです」
 スモークが晴れれば、敵の増援に囲まれるのは時間の問題。そうなれば作戦は失敗、降伏か暴走以外に手段はない。最悪、グラディウスを敵に奪われる可能性もある。
 魔空回廊を強襲し、グラディウスを使って回廊にダメージを与えること。
 強襲敢行後、敵を撃破しつつ作戦領域を離脱すること。
 この2つが作戦の達成目標だ。
「攻性植物との戦いはこれからも続くでしょう。1日も早い勝利のため、皆さんの確実な遂行をお願いします」
 セリカはそう言って一礼すると、ヘリオンの発信準備にとりかかるのだった。


参加者
伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)
アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)
ステイン・カツオ(砕拳・e04948)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
村雨・柚月(黒髪藍眼・e09239)
豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)
天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)
今・日和(形象拳猫之形皆伝者・e44484)

■リプレイ

●15-4『足利樹海化地帯』
 眼下に広がる濃緑の海を、天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)は凝視していた。
「街並みが全然見えない。緑色の絨毯みたいだ」
「全くだ。改めて見ても、異常な侵食力だな……」
 蛍の言葉に、村雨・柚月(黒髪藍眼・e09239)が頷く。
 ヘリオンの窓の外、ふたりの視界に映るのはひたすら緑、緑、緑。ビルも道路も呑み込みジャングルと成り果てた無人の地だった。
 栃木県足利市――。
 攻性植物『クルウルクの落とし子』の根城であるこの土地は、今も貪欲なアメーバのごとくその領域を拡大し続けている。
「ひとが、すんでたとこ、森が、たべちゃった、か」
 伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)は俯き気味に、グラディウスの刀身に視線を送る。
 心の在処を探すレプリカントの少女は、ふと考える。果たして今の自分に、叫ぶ『魂』はあるのだろうか――と。その答えは、直に明らかになるに違いない。
「もう……今度こそ、終わらせなきゃ……!」
「面倒なんだよねえ、ここ。草木のせいで毎回地形が変わるからさ」
 いっぽう、アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)と豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)は、台に叩きつけるようにして広げた地図を丹念に読み込み、地形情報を頭に叩き込んでいる。
 地上は緑に覆われて、どこにどんな敵が展開しているのか全く把握できない。できる事と言えば、元の街並みの地形から大まかな逃走経路をシミュレーションするくらい。
 だが、最後に物を言うのは、そんな地道な積み重ねだと彼女達は知っている。
「本当にしぶとい敵だね。最初の頃は、こんなに手こずるなんて思わなかった」
 大昔の記憶を辿るような顔で、今・日和(形象拳猫之形皆伝者・e44484)が言った。
 彼女が足利の作戦に参加した回数は、実に4回。それもふた月経つかどうかの期間にだ。これまで繰り広げた死闘の数、その度に飲んだ無念の涙は一言では言い尽くせない。
「ま、それも今日でオシマイにしよう!」
 決意とともに、グラディウスを手に取る日和。
 その言葉に応じるように、ヘリオンのハッチが勢いよく開け放たれた。
「さて皆様、参りましょう。今度こそあの攻性植物を――ブッ潰してやる」
「ええ、必ず勝利を掴みましょう。皆さん、よろしくお願いしますね」
 ステイン・カツオ(砕拳・e04948)の言葉に頷いたミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)は、手に馴染ませたグラディウスを逆手に握りしめた。
 現地到着を知らせるブザーが鳴り響き、8頭の猟犬が次々と降下していく。

●グリーン・ダイヴ
 先鋒はアリスと勇名だ。
 強襲型魔空回廊を包み込むバリアめがけて、一思いにグラディウスを振り下ろす。
「貴方達は相も変わらず……この地を蹂躙していくんですね……」
 アリスが語りかける敵、クルウルクの落とし子達は、今も眼下の森で繁茂を続けているに違いない。いつか地球全てを攻性植物の星へと変えるために。
「地球を貴方達の苗床にはさせません……今度こそ、全てを終わらせます……!」
「……もやもやする……ぼくのこころと、じゃすてぃすーが、あつくなってる」
 緑の海を見下ろして、勇名は思う。
 あの下に広がるのは廃墟と化した街。住処を追われ、日常を奪われた人々の悲しみはいかほどだろうかと。落とし子のした事は絶対に許せないと。
「ここは、かえしてもらう。ちからをかして、グラディウス……!」
 グラディウスから迸る光の奔流が、次々と回廊へ降り注ぎ始めた。
 それを見たステインと柚月も、負けじと魂の叫びを込める。
「てめぇの間抜け面も、耳障りな声も、これで最後にしてやる。絶対にしてやる。てめぇら全員根絶やしにしてやる! いつまでも人の街に居座ってんじゃねえ!!」
「商店街は人の営みそのものさ。売り買いして、お金を回して――それを奪うのは、平和な日常を奪うことだ!」
 樹海を闊歩する全ての落とし子へ届けとばかり、柚月はあらん限りの叫びをあげる。
「もう充分だろう! お前らをぶっ飛ばしてこの街の平和を絶対に取り戻す!」
 魂の叫びが、視界を埋め尽くす白光となってグラディウスに収束し、一条の光線となって放たれた。降り注ぐ光線の軌跡は純白の流星にも似て、まっすぐな直線を描きながら回廊の奥深くへと吸い込まれてゆく。
「4回目かあ。ボクもう叫び疲れちゃったよ――なんて、言っていられないんだよね。足利の皆さんの為にも!」
「平穏を踏みにじり、我が物顔で人々の街に居座る攻性植物……貴方達の行い、ケルベロスが見逃すとでもお思いですか!」
 炎と轟音に包まれる樹海。
 日和とミリムはそれを見下ろしながら、研ぎ澄ました心が紡ぎ出す魂の叫びをありったけグラディウスへと注ぎ込む。
「返していただきます! この地に住まう人々のため! 魔空回廊壊れろぉおおお!!」
「ボク達の力は、キミ達のしぶとさを上回る! 今日を足利の解放記念日にするんだ!」
 雪崩のように迫る爆炎と雷光が、樹海に鎮座する魔空回廊を呑み込んでゆく様を、日和はまっすぐに見据えた。
(「次はない。これで終わりにしてやる」)
 そんな揺るがぬ決意を、姶玖亜もまた抱いていた。
「もう変な叫びは聞き飽きたよ。夏休みも終わるし、君達のバカンスも終わりといこうか」
 時折途切れる轟音の隙間から聞こえる落とし子達の悲鳴に、姶玖亜は苦笑を浮かべる。
 せめて最期の言葉くらい、理解できる言語で喋ればいいのにと思いながら。
「足利の地に、お前は要らない。人々の……ボク達の願いに応えろ! グラディウス!!」
 着弾の衝撃で振動する空気に、蛍の髪が激しく揉まれた。幾度も刃を重ねてきた攻性植物『デウスエクス・ユグドラシル』そのものへと語りかけるように、蛍は口を開く。
「気に入らないなあ。本当にあんた達は、どこもかしこも呑み込んでいくね。植物を愛する人もそうでない人も、善も悪もなく構わず……」
 輝きを帯びた蛍のグラディウスが、いま、最後の光の奔流を解き放とうとしていた。
「プラブータの件で良く分かったよ。あんた達はそういう生物なんだ」
 蛍は思う。
 いまケルベロスと攻性植物が真に奪い合っているのは、土地でもグラビティでもない。
 種としての生存競争、その覇権なのだ。
 故に和解はない。どちらかが滅びることで、始めて争いは終結を迎えるのだと。
 ならば自分がすべきことは、ただひとつ。
「根の一本も残さない! 全力をもって、焼き払うよ!」
 光が、解き放たれた。
 光の束はひとつの柱になり、濁流となって回廊を包み込む。
 破裂するバリア。落下していくケルベロス達。
「くるうるく――くるうるく――!!」
 折り重なる落とし子の悲鳴が樹海を振るわせる。
 それは、今まさに滅びゆく者達の慟哭のようだと、蛍は感じるのだった。

●最期の言葉
 全員が無事に着地したのを確認すると、日和は眼前のスモークを凝視した。
 幾度も幾度も、無念を噛みしめて見上げた強襲型魔空回廊の姿は――ない。
「やった……」
「やりましたね。破壊成功です」
 小さく声を震わせる日和の隣で、ミリムが小さくガッツポーズを取る。
「皆の思いが届いたってことだな。よし、行くか」
 グラディウスを収納した柚月の言葉に、アリスと姶玖亜が頷いて走り出す。
「参りましょう……こちらです……」
「ぐずぐずしてると『ヤツ』が来るからね。急ごう」
 ふたりを先導に、ケルベロス達は樹海の外を目指してひたすら疾駆する。
 障害物を薙ぎ払い、妨害する敵を蹴散らし、木々の間を駆け抜ける。
 そして――。
 領域離脱まであと少しという地点に達したとき、ミリムの尻尾が反射的に逆立った。
「皆さん……来ました」
「やれやれ、とことん往生際の悪いヤツだね」
 唸り声で的の襲来を告げるミリムに、姶玖亜は肩をすくめてみせた。
 見逃すはずがない事はよく分かっている。頷き合って陣形を組む8人の前に、『ヤツ』は姿を現した。
 肉食恐竜の骨格標本を蔦で覆ったような攻性植物、クルウルクの落とし子である。
「くるうるく……くるうるく!!」
「行きましょう、撃破あるのみです! サテライトブラスター、スタンバイ!」
 立ち止まっている時間はない。ミッションで遭遇する個体とはまるで異質なオーラを纏う敵を見上げ、ミリムは開戦の狼煙をあげる。
「オーライ……ファイア!」
 天から落とされたミリムの鉄槌は、しかし容易く回避された。反撃で緑の触手が放たれるのと同時、炎をまとう翼でミリムを庇った蛍が、ヒールドローンを前衛へと射出する。
「気をつけて! この敵、速いよ!」
「だったら足止めだね。スキだらけだよ、ほらっ!」
 ビルの瓦礫を蹴って飛び、スターゲイザーを叩きつける日和。大樹の幹のように頑丈な、落とし子の脚がぐらりとよろめく一瞬を見逃さず、柚月と勇名が怒濤の攻撃を浴びせる。
「凍って枯れちまえ! 顕現せよ、コールドロータス!」
「うごくなー、ずどーん」
 過冷却水を浴びて凍てついた落とし子に、ポッピングボンバーのミサイル群が着弾。次々破裂する弾頭が極彩色の花を咲かせ、動きを縫い止める。
 落とし子が回避に優れることを、ケルベロスは過去の戦闘から熟知していた。何度も同じ過ちは犯さない。
 機動力を封じられ、苛立ちの声を上げる落とし子。決して撃ち漏らさぬようケルベロスは慎重に包囲を狭めてゆく。
「くるうるく りむがんと おぐん そーど ほろわろ なうぐりふ!」
「そろそろ日本語覚えろやぁ!!」
 ステインの放った光の矢が、落とし子の額のど真ん中に突き刺さった。鼓膜を振るわす怒りの雄叫びに、敵が自分に狙いを定めた事をステインは悟る。
「こっちですよー! 進歩のねぇおバカさーん!!」
「貴方達のその叫びも……聖王女さまの奇蹟の歌で……打ち消します……!」
 アリスが「想捧」の歌を前衛へと送り始めた。集中力を高める聖歌が、懐中時計を模したアリアデバイスを介して樹海を包み込む。
「くるうるく りむがんと ぐろうす ほろわろ なうぐりふ!」
「意味不明のその叫びは……いい加減飽きたよ。新しいネタはないのかい?」
 落とし子めがけて牽制のダンシングショットを浴びせながら、姶玖亜は口の端を歪める。
 足止めで機動力を奪い去る姶玖亜の心は、しかし屈辱感に包まれていた。
 こんなにも長く、目の前の敵が足利を占領していたという事実。
 そして、それを許した自分の弱さに。
(「そいつを帳消しにするには、ここで君を葬るしかなさそうだ」)
 沸き上がる激情を押さえ込み、冷静な心で弾をリロードする姶玖亜。
 敵の足は概ね縫い止めた。攻撃の矛先も、怒りを付与したステインへと向いている。あとはスモークが晴れる前に倒せるかどうか。火力と耐久力の勝負だ。
「抑えは私たちがやっておく。情け容赦なくぶちのめしてやれ!」
 強靱な顎でステインに噛みつき、樹牙で生命力を吸収する落とし子。ディフェンダーかつドローンの防御支援があってもなお、そのダメージは凄まじい。
 メイド衣装を血に染めながら発動するステインの戦言葉では回復が追いつかず、ミリムと蛍がルナティックヒールと『ヒーリングバレット』でそれを補助する。
 ステインが受けたのは直撃のようだ。傷の塞がりきらない彼女の前方では、日和と柚月が息もつかせぬ猛攻撃を落とし子に浴びせていた。
「縛り付けてやるっ!」
「お前みたいなデカブツは砕く方がよさそうだな!」
 アリスの想捧で上昇した集中力を込めた攻撃が、群れをなして落とし子へと襲いかかる。
 猟犬縛鎖が絡みつき、戦術超鋼拳が骨を砕く後方で、姶玖亜が樹牙に狙いを定めた弾丸を次々と発射した。敵の武器を封じ、ステインの負担を少しでも減らすのだ。
「散々好きなようにやってきた報いを、まとめて受けて貰おう」
「いつまでも……貴方達を地球に居座らせる訳にはいかないんです……!」
 攻撃に転じたアリスのフォーチュンスターが、瞬く間に落とし子の装甲を剥ぎ取る。丸裸に近い状態の落とし子へフォートレスキャノンを撃ち込みながら、
「んうー……スモーク、はれてきた。いっきに、きめる」
 勇名が最後の突撃を促した。
 対する落とし子も保身を振り捨て、注連縄の如き蔓でステインの体を締め付ける。
「くるうるく りむがんと ぐろうす さきゅれんと ほろわろ なうぐりふ!!」
「く……くくっ……必死だなオイ? だったらもう一発くらいやがれ!」
「キティ、お願い……!」
 軋む体に鞭打って、恐竜めいた脚の骨を怪光線で射抜くステイン。
 怒りの咆哮を轟かせる落とし子に、アリスのファミリアがジグザグの爪痕を刻み込む。
「カツオさん、もう少し! もう少し耐えて!」
「ずどーん、ずどーん。もういっぱつ、ずどーん」
 ヒーリングバレットでステインを癒す蛍。ありったけのミサイルを叩き込む勇名。
 落とし子は突進し、跳躍で跳びかかり、尻尾を振り回し、嵐のように大暴れするも、積み重なったバッドステータスの前ではもはや悪足掻きに等しい。
 単体攻撃しか持たない敵の注意を、防御力に優れる味方1人に集中させ、十分な回復支援を用意する。敵の特性を把握した作戦が大きく奏功した結果だといえた。
「後はただ! スモークが切れる前に! 1秒でも早くお前を倒すだけです!!」
 ミリムのディスインテグレートの直撃を頭蓋骨に叩き込まれ、悶絶する落とし子。
 さらにそこへ、
「この場所にお前等は要らない。地獄で先に待ってるといい」
「土になることすら許さねぇよ。塵芥となって消えな」
 姶玖亜のダンシングショットと柚月の氷瀑蓮華が牙を剥いた。
 劫火の如き攻撃が、装甲の剥がれた落とし子の体を容赦なく抉り、吹き飛ばす。断末魔の絶叫をあげて崩れ落ちる落とし子に向かって、左眼を閉じた日和が跳んだ。
「さあ、お別れだ。永久に消え去れ!」
 標的を自壊させる必殺の視線『阿遮一睨』が、矢となって落とし子を射抜く。
「ボクをこれ以上、怒らせるなよ!」
「くる……うる……く……」
 赤茶の眼光が一閃。
 微かに残る気を乱された落とし子は、その一言を最期に砕け散り、土へと還った。

●解放の刻
「つかれ、た」
 樹海を抜けると同時、倒れ込むように眠ってしまった勇名を担ぎ、ケルベロス達は背後に広がる樹海を振り返った。
「勝ったんだね、ボクたち」
「ええ。皆様、お疲れ様でございます」
 日和に頷くように、普段の言葉遣いへと戻ったステインが仲間達を労った。
 商店街を多い、街を覆い、日本中を覆い尽くそうとしたクルウルクの落とし子。その根城たる強襲型魔空回廊は、もはやない。
 戦いの傷は、じきに癒える事だろう。
 足利が再び元の賑わいを取り戻す日が1日でも早く訪れるよう祈りながら、ケルベロスは戦いの場を後にするのだった。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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