「祭りです! 魂を根底から奮い起こす、エキサイティングな祭りを開宴するのです!!」
金髪のオラトリオは、両の手を勇壮に振りかざすと、良く通る渋い声で劇場を震わせた。威風堂々と、全力の笑顔を以て。
「今日はまた、ものすごくエネルギッシュだね」
緑の髪をしたエルフが、嬉しそうに二階席から声を飛ばす。
「人は鏡。力は伝播するもの。ならば私は今こそエネルギーを滂沱の滝として奔流させましょう!!」
アモーレは、翼をブワサァッとはためかし、今にも飛び上がりそう。
「凄い気合いだ……! 会場は熊本だよね?」
「彼の地に暮らす人々は、今、活力を必要としています。今こそ祭りの時なのです! 右手に愛を! 左手に友情を! 心に慈しみを! 世界に幸せを! いざ人々に笑顔を!」
その声は、優雅に、力強く、真剣さを秘めて、劇場に雄雄しく響き渡ったのだった。
●
「今回のコンセプトは、派手に! 賑やかに! です。
会場は屋外。時刻は夕暮れ時から夜にかけて。会場の設営、資材の搬入は、既に滞りなく済んでおります。手際よく作業にあたって下さったスタッフの皆様には感謝を!
さて、皆様の参加ですが、これは大きく分けて二つの選択を用意させて頂きました。
1つは、お客様として祭りを楽しむ選択。
1つは、仕掛け人側として祭りを楽しむ選択です。
どちらでも構いません。彼らも、我々も、皆が共に楽しむための祭りです。己が魂に準じ、最も楽しめる選択をお選び下さい。
では、次になにをやるかですが、
こちらも大きく分けて、二つとなります。すなわち、出店とアトラクションです。
出店は、的当て、金魚/ヨーヨーすくい、型抜きなどの遊戯や、焼きそば、タコ焼き、かき氷などの飲食。お面やサイリウムなどの物品をふるまって頂きます。対価は戴きません。
アトラクションは、神輿巡業、屋外コンサート、サイン会などで活躍していただきます。そして――、
メインは中央会場での火祭りとなります」
「火祭りっていうと、やっぱり?」
透明な瞳がアモーレを見つめた。
アモーレは優しく笑う。
「できるだけ派手にやりましょう。楽しく! 賑やかに! 笑顔で! 勇敢に生きた人々の心に焼きつくように!」
茜色に空が染まる頃。ピ~ヒャラドォンッ!! 祭囃子と力強い太鼓の音が響き渡った。
始まる。祭りが。熊本の地に。
●
こちらは泰地が開くカレー屋台。スパイシーな香りと泰地の上腕三頭筋が爆発している。
「2つ、おねがいします」
少年が嬉しそうに顔を出せば、
「あいよ! オウマ式ビーフカレー2っつー!」
具だくさんのビーフカレーが純白の白米に惜しみなく注がれていく。
「熱いから、気を付けてな!」
目の前に差し出された芳醇なカレー。そして、隣人力溢れる泰地の笑顔。
「うん!」
少年は満面の笑みを浮かべ、母親の元へ嬉しそうに駆けて行った。
「こっち4っつー」
「こっちもー」
この香りと愛想の良さで、カレー屋台は大盛況だ。
そしてこちらは、絢爛豪華な飴屋台。
繊細で大胆な飴細工を提供するのは、ラガーマン体系の3人集。【穆】。
加えてスタッフだろうか、一心不乱に飴細工を練り上げていくイケメンの姿もある。
「ちょっと大げさになっちゃったかな?」
穣が呟けば、
「いや? アモーレの誕生日だし、豪華な位が丁度良いって」
巌がニヤリ。
「うわー、すごーい。きれー」
店の前には、つぶらな瞳をキラキラ輝かせる少年少女達。
目にも止まらぬスピードで練り上がっていく龍や蝶の飴細工に、ググ―っと引き込まれている。
「な?」
「そうですね」
屋台の前では、穣デザインの旗を掲げた陽治が、甚平姿で若い女性たちに囲まれていた。
「凄い。芸術品みたい」
「甘~い」
見本に持っていた飴細工は一瞬で捌け、
「すごい人気だ。代わりをくれ」
店と外を往ったり来たり。
「ちょっと待ってろよ」
巌と穣は額に汗を浮かべながら、
「手先には自信があるんだ。鍛冶屋の本領を見せてやるぜ!」
林檎や苺のフルーツ飴が、二人の手の中で練り上がっていく。
続けて練り切り鼈甲飴。二人とも実に器用だ。
「美しい。幸せの形をしていますね」
イケメン君もチラチラ見ながら顔をキラキラ。
ふと、巌が思い出したように陽治に声をかけた。
「そうだ陽治。妙齢のブロンド美女と子供連れの女性が来たら、連れて来てくれないか?」
「ん? じゃあ、少し回ってくるか」
人ごみを潜り抜け、ようやくフゥと息をつく。
もの凄い熱気だ。あの人もあの人も、キラキラキラキラした目を輝かせて、楽しそうな限り。
熊本に笑顔が戻っていく。少し、胸に込み上げるものがあった。
……巌。穣。この屋台にして良かったな。
二人の顔を見れば、想いは同じようで。笑顔に包まれ幸せそうに笑っていた。
陽治の顔もついつい綻び、さーて二人に熊本名物でも手に入れてきてやるかーと伸びをする。
そして気づいた。
「ブロンド美女はともかく、子連れの女性はちょっと多すぎないか?」
どうしたものかと振り返れば、巌が嬉しそうに誰かと話をしているのだった。
ヒュッ! トンッ!
こちらはレカが開くダーツ屋。
背筋のシュッとしたご老人がヒュヒュヒュとダーツを中心に収めていっている。
「まぁ! お上手ですね!」
「かっかっか。これでも昔は婆さんとカツサンド片手に駐屯地のダーツホールに通ったもんじゃ」
「素敵な想い出ですね」
差し出された景品は、ゼリーの詰め合わせ、水饅頭、西瓜を模したどんぐり飴。夏らしい物が並ぶ。
「それと、ブルに当てた方にはラムネ瓶を追加贈呈です!」
「婆さん、青春の味じゃぞ」
「嫌ですよ、この人は」
老夫婦はご機嫌で店を後にした。
優し気な瞳で見送るレカの前に、今度は緑のエルフ。
「水饅頭の匂い!」
「遊んでいきますか?」
「勝負しちゃう?」
「勝負しちゃいますか!」
二人が弓と手裏剣を取り出したところで、隣の射的屋から歓声が上がった。
射的屋に居たのは黒の甚平に身を包んだ銀のエルフと、濃紺の浴衣を粋に着こなす銀のサキュバス。ヴィルフレッドと炯介のコンビ。
事の始まりはこうだった。
前の依頼について話を弾ませ歩いていると、ふと目についたのは射的屋の姿。
「炯介、射的で景品落とした数競わないかい? あっでも僕元ガンスリンガーだから圧勝しちゃうかも? ふっふーん!」
ドヤッドヤで挑戦を仕掛け、
「奇遇だね。僕も元ガンスリンガーとして、その勝負、受けて立とう」
悠然と受けられた。
おもちゃの銃にコルクを詰め詰め。まずはヴィルフレッドが大当たりっぽい竜の置物にピシャリ。
しかし重すぎて落ちず。
続いて炯介も当てるが、やはり落ちず。二人は顔を見合わせる。
視線の先では店主が音にならない口笛を吹いていた。
「そういうことか」
炯介がやれやれと首を傾げれば、
「闘争心に火が付いちゃったぜ……小銃しか扱ったことがないと思ったら大間違いだ……!」
ヒャッハー! 銀のエルフはフルスロットル。
二人、流れるような動作でお菓子の箱を次々と弾き飛ばしていく。
ギャラリーは割れるような歓声。店の親父はアワワと手を咥える。
そして左右から箱を散らしきり、最後に中心。竜の置物を二人同時にダブルアタック。
ユランユラン。竜はしぶとく揺れ――、
クルン。ポテ。
ついに力尽きて地に落ちた。
思わず二人はハイタッチ! ドヤッ!
場外の観客も大盛り上がり!
ただ一人、店主だけが珍奇な表情を浮かべていた。
「……でもこれってアリ?」
結局二人はチョコレート菓子だけを貰い、その場をクールに去ったのだった。
茶色いマスコットが、のたのた歩いていた。
「熊本祭りナウ」
中の人はクリームヒルデ。片手にスマホを持って、来れなかった人たちのために配信中。
盛り上がってる場所に突撃し、話を聴いたり視聴者からの意見をぶつけてみたり、レポーターのよう。
少し休憩。着ぐるみから姿を現す銀髪美女。明日本気出すと書かれたシャツが印象的。
「クマから美女が出た!」
「クマがナマケモノに進化した!」
少年たちは大盛り上がり。
「お姉さん、歌唄う人?」
「ん。聴きたいの?」
「うん!」
まぁ、ちょっとくらいなら良いかな。
――2時間後、演歌の女王メドレーで攻めるゆるキャラの姿が、野外ライブ会場にて発見されたという。
「あれ?」
銀髪のレプリカントが藤模様の高級浴衣に身を包み、かき氷屋を探している。
とはいえ、綿飴やリンゴ飴にも興味津々。食べ歩きながら、風鈴の音に耳を傾けたりして。
メイカは祭りに沸く熊本の地を、ゆっくり散策した。地元の人とついつい会話に花を咲かせたり。
そしてようやく見つけた。かき氷屋。
目の前で、涼やかな熊本名産みかんシロップがトプトプと、シャリシャリの氷を溶かしていく。
一口含めばそれはもう、目が覚めるような柑橘の味が口いっぱいに広がって、
「この風味本当に素晴らしいです、夏はやっぱりカキ氷ですね……♪」
メイカはウットリ夢心地。
丁度、夜空に花火が咲き始めた。
――この風情。あぁ、良いなぁ。
夏の夜長が更けてゆく。
お爺さんお婆さんの一団が、祭りの流れに目を細めていた。緑茶をゆったりすすりながら、寛いでいらっしゃる。
実はこの方々、祭りに行きたくても一人では行けない方々だったりする。
シルディが手を尽くし、専用スペースにご招待したのだ。
「エイサ! ホイサ!」
勇壮に神輿が通り過ぎる。方々の頬にも興奮の紅が差した。
「お茶菓子の匂い!」
丁度、緑のエルフも通りかかり、
「いいところに!」
そのまま合流。二人で皆の話し相手になる。
先達たちの口からは、想いが堰を切ったかのように止め処なく。膨大な時の流れが零れ出す。
時に笑い、時に泣き、二人は幾たびの人生を追体験した。
話し手たちの顔には満足感と感謝が揺れる。
この空間だけは、あらゆる時代の祭りに包みこまれているようだった。
そんな先達たちの横では、沈黙の魔女がスペースを作っていた。
体長を崩した人たちのための休憩所兼、救護スペース。
インテリっぽくみえる眼鏡をかけて、リティ先生が艶やかにお待ちかね。
むしろ、リティ先生目当てで、困ったご老体たちが門前市を成している。という説もあるが、有事の際には手伝ってくれるのでむしろありがたい。
熱中症。脚の怪我。食べ過ぎ。ちらほら患者が訪れるが、リティ先生の前では瞬時に解決。元気を取り戻していく。
ふと、少女と目が合った。
「おかぁさん」
今にも泣きだしそうな顔をしている。あぁこれは迷子ね。
アイズフォンを起動し、心当たりを募ってみる。幸い見つかったようだ。
どんな悩みもササッと解決。リティ先生は大活躍だった。
こちらはカップル。
紺地に縞の浴衣を着た兄ちゃんが、薄い紫色の浴衣に赤い帯の、おっとり彼女の手を引いている。戦利品だろうか。頭には黒猫のお面の姿。
「おー、賑やか! 活気が有って良いなー」
雅也の目に、神輿や、駆けまわる子供たちの姿が映り、
「さ、さすがお祭り……誘惑が……誘惑が沢山なのです……!」
影乃の目に、娯楽屋台と食べ物屋台が映っている。
影乃のお腹がクゥと鳴いた。
「食い物行くか」
カラッと笑う雅也に、影乃はコクコク。
熱気の中を離れないように、シッカリと手を握り。
恋人たちは一匹の魚のように祭りの波を泳いで渡る。
落ち着ける場所に腰を下ろした時、二人の腕には戦利品。
影乃の手にはたこ焼きとリンゴ飴。
「ま、雅也君は……何か買いましたか?」
「焼き鳥といちご味のかき氷、あと綿アメ。一緒に食べようぜ」
シェアするように、戦利品を広げる。
「はい、雅也君……あ~ん」
トロットロのタコヤキが、雅也の口の前に差し出された。
パクッ。
とろけるように甘いなこれは……。ああ、違う。美味いなこれは。
「影乃も、あーん」
トロットロのタレが滴る焼き鳥。
ぱくっ。
とろけるように甘い……。じゃなくて、美味しい……。
甘々なひと時が過ぎてゆく。
ヒュッ……ドォンッ!
夜空に光の花が咲いた。
「わ、花火……。綺麗だね……」
「おー、こっちも凄いな! やっぱ祭りの〆は花火だよな……」
赤、黄、緑。夜空が震えるたびに、世界も色付く。光に照らされ色を変える愛しい人の姿もまた新鮮。
雅也はそっと影乃の手を優しく包み、
「来年も、また一緒に来ような」
吐息がかかるほどの距離で囁いたのだった。
音が響く。
響いたのは、花火の音か、それとも。
さて、舞台は火祭りの会場へと移る。
祭りの中央部に用意された篝火の周りに、100は下らない人々が、背筋を伸ばし後ろ手に棒を持って待機している。
そんな中、変な汗をかいてる男が二人。ナザクとシグリットである。
二人は連れ立ってこの祭りに参加した。しかし――、
((なんで初対面の相手と一緒に???))
疑問はぬぐえない。
人見知りに対する試練か何かか、コレは。
目が合った。ぎこちなく笑い合う二人。
――だが、まぁ、たまにはこういう出会いも嫌いでは、ない。
シグリットが腹を決めると、ナザクの方も、
――この地でこうして再び祭りが開催されるなんて、とても喜ばしい事だからな。四の五の言わず楽しむとするか。
二人とも吹っ切れたように笑みを贈り合った。
瞬間、目の前で火の粉が天を衝くように舞い上がった。
「イッツ! ショータイム!!」
黄金のオラトリオが天に羽ばたき、
「「「「うおおおおぉぉぉぉっっっ!!!!!」」」」
会場は割れんばかりの熱気に包まれる。
始まる。炎の宴が。
「……うーん、こう熱気が篭ると思い出すなぁ」
思いに浸るのは、恭志郎。剣道着姿が板についている。
親友の呟きを聞き、記憶の渦をすくうのは、鳴龍衣装に身を包んだ征夫。
溶岩ゴーレム戦。友が見せた悲壮な覚悟、強さと優しさが記憶の淵に蘇る。
同時に、恭志郎の脳裏にも浮かぶ。罪悪感に苛まれる自分に対し、多くは語らず背中を預けてくれた親友の姿。
戦いの記憶は熱気と共に。
「いざ、祭りの時です!!」
陽炎で揺らぐ篝火から、金のオラトリオが舞い降りた。
演武。虚空に紅蓮の炎を撒き散らし、力強くアモーレの炎が宙を焦がす。
そして紅蓮は交わり伝播する。
続いて恭志郎。鮮やかに紅蓮の剣舞を舞い踊り、
「……俺達で決めるなら、やっぱりアレ、かな?」
「技でも人を楽しませられるってのも見せますか」
恭志郎の太刀が、征夫の太刀に力強く烈火の炎を纏わせた。炎をうねらせ征夫は高々と跳躍。
――斬ッ!
ブワッ!
花吹雪のように天空を包んだ火の粉に、会場から感嘆の息が零れる。
二人もまた、紅蓮の中に敬愛する親友を感じ、息を呑んだ。
炎の伝播は続く。人から人へ。生命のリレーのように、焔は次へと灯される。
緊張の面持ちでナザクとシグリットは自分の番を待っていた。
命の炎はナザクに渡り――、
炎を纏って舞い踊る。
会場の目は全て炎に注がれる。感じる。気持ちの昂り。この場の一体感。熊本の人々の笑顔。それは込み上げるものとなって胸に飛来する。
――名前しか知らんこいつとも、演武を共にやり切ったら生まれる仲もあるかも……。
想いを込めた炎が今渡される。
と思ったが、ひょい。シグリットの棒が逃げた。
瞳を見つめれば、無理無理無理無理。小刻みに首を振り、できないアピール。
ナザクはフフッと笑い。
そいやぁッ!
力強く炎を点火。
ギャアアアッ! シグリットは必死。炎ができるだけ自分から離れるように振るい――、
「あ」
「あ」
その手から、炎の棒がすっぽ抜けた。
時が止まったようにシグリットは天空を見つめた。降りてくる。紅蓮を振りまく凶器が。舞う様に回転しながら。美しい……というか、誰か助けてくれ。
疾風の踏み込みがあった。シグリットの眼前で黄金の髪が滑らかに舞い。クルリ。紅蓮の棒が円を描き、
力強く、火棒を篝火の中に叩き込んだ。
同時に、自身の左手にあった火棒を優しくシグリットに握らせる。
「ショータイム!」
金色のオラトリオは、そのままナザクと数号打ち合い、視線を恭志郎と征夫へ。
得心顔で二人も踏み込み、疾風の剣劇。紅蓮の共演に、会場は湧きに沸く。
ドドンッ!!
パラパラパラ!
地鳴りのような花火が天空に大輪を咲かせ、祭りは最高潮を迎えたのだった。
「うおおお。凄かったな!」
興奮冷めやらぬ瞳で、ラルバはリンゴ飴片手にレスターを見つめた。
「ああ。美しかった」
共に瞳に火を灯し、紅蓮の余韻に浸りゆく。
ラルバは友人が優しい目をしていることに気がついた。目線の先には熊本の人々がいる。
――わかるよ。
「熊本で戦った時、市民のみんながみんな、自分の命が危なくても助け合ってた。あの時はみんな必死だったけど、今はみんな笑ってて……助けられて本当によかったって思うぜ。みんな生きてるからこうやって笑えるんだ」
「市街戦には参加できなかったけど報告書は読んだ。死に直面した過酷な状況の中、自分より弱い者を懸命に守ろうとする一般人の勇敢さと、奔走するラルバ達に打たれたよ。ヒトは弱いけど強いね」
二人は今日の祭りを通し、たくさんの市民と話し、笑い、通じ合った。
苦労も聞いた、悩みも聞いた、そして幸せも。
一人一人、やはり誰もが濃密な人生を歩んでいる。それを再確認した。
今、同じ時を楽しむ人々の、なんと誇らしいことか。
「これからも、みんなの笑顔、護っていきたいな。もちろん、仲間やレスターもな」
「彼らがいるから俺達ケルベロスが戦える。俺も……ラルバや皆を守る為に、戦い続けるよ」
二人は互いに決意を胸に、熊本の地を踏みしめる。
そして辿り着いた場所は――、
「アモーレ、誕生日おめでとうな!」
「キミにも世話になった。これからもよろしく」
舞台裏。火祭り参加組の4人とアモーレが、会話に花を咲かせているところだった。
ラルバの手からはリンゴ飴。レスターの手からはチョコバナナが贈呈される。
アモーレはパッと顔を輝かせると、お礼を述べて優雅にスイーツを愉しみ始めた。
「チョコを片手に僕も登場!」
ヴィルフレッドと炯介だ。
「と、なると、お茶も必要ですね」
レカとハニー。
「飴細工もあるぞ」
【穆】の三人も駆け付けた。
「誕生日オメデトウ!」
雅也と影乃。
その次も、その次も、続々と仲間たちが集結していく。
「アモーレさん、28歳のお誕生日おめでとー!」
最後にやってきたのはシルディ。
地元の人の協力を得て厳選した、涼し気な巨大スイカケーキをテーブルにドドンッ。
「皆で食べよー!」
祭りの夜が更けてゆく。
そして、最後に渡された巨大なプレゼント。
藍の女優が渡した箱には、煌びやかな衣装と台本が包まれていた。
「もし宜しければ、ご一緒に軽い一幕の芝居を?」
「ファリャですか」
台本『恋は魔術師』を見た瞬間に飛び出た言葉。鞠緒の瞳が嬉しそうに揺れる。
実はアモーレ、ファリャの、とりわけ『火祭りの踊り』が大好き。
周りを見渡せば、友人たちもワクワク顔。
「私の舞踏は激しいですよ?」
「負けませんわ」
話は決まった。
野外ライブ会場に飛び入りエントリー。
スポットライトを浴び、炎に揺れる舞台で、二人の俳優が情熱の限り舞い踊る。
見ていた仲間たちも、次々に乱入。夜を焦がしていったのだった。
そして、炎の役で揺れながら、ナザクがハッと呟いた。
「しまった。また、指輪のことを聞けなかった!」
夢のような一日が、熊本の地を照らしていた。この日、人々に灯った炎は、これからを生きる篝火として輝き続けることだろう。
作者:ハッピーエンド |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年8月23日
難度:易しい
参加:20人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 1
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