白の純潔決戦~気ままに暮らす白の純潔の巫女達

作者:なちゅい

●白の純潔の種子と白の純潔の巫女
 大阪府内大阪城周辺。
 住宅街はすでに人々の避難が完了しており、一般人の姿はない。
 ただ、とある庭付きの住居内には、女性らしき数人の人影がある。
 庭に生えた人間の背丈程度しかない樹木上部には籠があり、その中には奇妙な姿の赤ん坊の姿がある。
「よしよし……、いい子ね」
 樹木のそばにいる女性達が交替で赤ん坊をあやし、その相手をしていた。
 彼女達は人間ではなく、この地域に勢力の中心を置く攻性植物である。
 女性達、『白の純潔の巫女』が庭の赤ん坊『白の純潔の種子』の世話しつつ、この場で共同生活を行っていたのだ。
「ここで一気に蔓触手形態になって……」
「もっと、扇情的なポーズをとったらどうかしら?」
 種子の世話から外れた巫女達は他勢力との戦いを想定した戦闘訓練を行い、あるいは如何にして男性を誘惑するかという方法について談義し合う。
 和気藹々とした雰囲気で、それぞれの一時を過ごす攻性植物達。
 ケルベロスとして襲撃するならば、これ以上ないチャンスと言えた。

 攻性植物の拠点となる大阪城周辺。
 大阪城と大阪市街地の間にある緩衝地帯において、調査を行っていた鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)やシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)らが白の純潔事件の元凶と思われる攻性植物を発見した。
「緩衝地帯は、攻性植物の制圧は免れているけれど、危険もあって一般人が退避している場所だね」
 ヘリポートでは、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が説明を行う。
 情報によれば、緩衝地帯の数か所で、数体の白の純潔の巫女達が樹木型の攻性植物を守護するように集まっているのだという。
 守護されている攻性植物は、事件の元凶である『白の純潔』という攻性植物と、『白の純潔の種子』と呼ばれる、白の純潔の巫女を増産している。
 加えて、『白の純潔』本体が撃破された場合に、新たな『白の純潔』と成長する役割を持っているようだ。
「だから、攻性植物の目論見を潰す為には、全ての『白の純潔の種子』を撃破した上で『白の純潔』を撃破しなければならないよ」
 今回の作戦は隠密行動を行い、油断している敵を強襲する事が作戦成功の第一歩となる。
 どこか一か所が襲撃されると、他の白の純潔の巫女達に襲撃の情報が伝わって強襲が行えなくなる可能性がある為、『全チームが無理なく同時に攻撃できる』ようにタイミングを合わせて、市街地への潜入を行うことになる。
「特別に時間のかかる行動や隠密行動の失敗などが無ければ、……襲撃タイミングの5分前くらいには攻撃可能な場所へと到着できるはずだよ」
 その後、タイミングを合わせて強襲をかける様にしたいが……。
 大阪城周辺の緩衝地帯では、携帯電話のような無線通信は通じない。
「また、狼煙やサイレンなどの方法で連絡をとろうとすれば、隠密行動は失敗となってしまう。だから、別のチームと連絡を取る手段がない状況だね」
 もし、強襲タイミングよりも先に敵が迎撃態勢を整え始めた場合は、別のチームの何処かが隠密行動に失敗して戦闘に突入した可能性が高いので、すぐに襲撃を行ってほしい。
「白の純潔の巫女は見習いのようだね。数が多いけれど、それほど強敵では無いはずだよ」
 全部で4体おり、庭で1体は種子の子守を、他3体はその近場で語らいつつ戦闘訓練を行っている。
 戦いとなれば、子守1体と他1体がクラッシャー、残り2体がメディックとして行動してくる。なお、ポジションごとにグラビティは異なるようだ。
「もし、強襲が成功して相手が混乱すれば、戦闘力が大きく削がれるはずだよ」
 これをうまく利用し、敵を撃破したいところだ。
 また、白の純潔の種子の戦闘力は皆無で、移動もできない為、撃破するのは難しくない。
 しかし、白の純潔の種子が攻撃されると、白の純潔の巫女達は決死の覚悟で赤ん坊を守ろうとし始める。
「だから、白の純潔の種子への攻撃は巫女撃破後を推奨するよ」
 ただし、白の純潔の種子を守ろうとする白の純潔の巫女の行動を利用する作戦があるのならば、話は変わる。
 うまく、状況を利用できるのであれば、先に白の純潔の種子を攻撃するのもありかもしれない。
 一通り説明を終えたリーゼリットは、参加を決めたケルベロス達へとこう告げる。
「事件解決もそうだけれど、大阪城の攻性植物達を攻略するきっかけとなるかもしれないよ」
 ともあれ、現状を打破する為にも作戦の成功をと、彼女は現地に向かうメンバー達に頑張ってほしいと声援を送るのだった。


参加者
四乃森・沙雪(陰陽師・e00645)
日生・遥彼(日より生まれ出で遥か彼方まで・e03843)
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)
ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)
比良坂・陸也(化け狸・e28489)
神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)
ライスリ・ワイバーン(自爆猟師・e61408)

■リプレイ

●襲撃作戦決行
 大阪府大阪市内へと降り立つケルベロス達。
 攻性植物に支配された地を、陰陽師の青年である四乃森・沙雪(陰陽師・e00645)は前にして。
「大阪決戦、こっちもこっちで大事、頑張りましょう」
 熊本でドラゴンとの戦いが一区切りした直後だが、他勢力だってジッとしてくれない。この地の攻性植物だってそうだ。
「ここで、「代替わり」でもしようというのかしら? これは面倒ですね……」
 機械の半身を持つ、神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)は敵の行動に厄介さを覚える一方、あわよくば大阪城奪還の為の足がかりになると意気込む。
「ここまで誘惑されての事件が多すぎましたし、そろそろ根本的に何とかしたいところですね!」
「何時までも、都市のド真ん中に拠点構えられても困るの」
 佐祐理に言葉を返す、ぼんやりとした表情をしたノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)は攻性植物勢力にご退場願う支度をと考え、この場にやっていている。
「動物変身して潜入すんのも二度目だよな。ノーザン」
 変身すると人間の言葉が喋れなくなるので、今のうちにと青髪の少年、神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)が問う。
「二度目? わたし、煉と行ったとき以外にも、何度か」
 そんなノーザンライトは狼のウェアライダーなのだが、動物変身した際に犬扱いされるのがコンプレックスとのこと。
「犬扱い……は確かに凹むな」
 同じく、狼のウェアライダーである煉はヘリオン内で時刻を合わせた銀時計に視線を落としつつ、狼へと変身する。
 こうして、体が縮むのがこの能力の長所ではあるのだが……。
「えー、可愛くていいじゃない。ワンちゃん可愛いよ」
 低空飛行していた姉、鈴の髪飾りをつけたオラトリオ、神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)は2人……2匹というべきか、を優しく撫でる。
「いや、姉ちゃん。俺はカッコいいって言われてぇんだよ」
 たまらず、煉は一旦変身を解き、種族の違う実の姉へとツッコむ。
 ノーザンライトも撫でないでと目で訴えかけつつ、どんよりとした雰囲気をかもし出していたのだった。

 各所へと他チームが散らばる中、こちらのチームも目的の家の周囲へとメンバー達は展開し、潜伏の為に移動する。
 佐祐理は予めヘリオン内でアイズフォンを使い、時刻を合わせた腕時計で正確な時間を確認していた。
 隠密気流を使って物陰に隠れ、気配を断つ沙雪もまた連絡手段がない状況とあって用意した時計を使い、時間を合わせようとする。
 こうした対応は、無線通信が通じない影響で全チームメンバーが行う。
 比良坂・陸也(化け狸・e28489)も狸のウェアライダーではあるが、彼は変身せずに隠密気流のみ使う。
 周囲の草木に触れて音が出ないようにと、陸也は注意して進んでいた。
 視線の先で普段どおりに過ごしている攻性植物……白の純潔の巫女達。
 それもあって、事前に皆と入念に認識を確認したこともあり、近所のお姉さんといった雰囲気を抱かせる日生・遥彼(日より生まれ出で遥か彼方まで・e03843)は、手巻きの懐中時計に視線を落として。
(「計画通り、5分後ね」)
 周囲に気配を溶け込ませつつ、遥彼は慎重にかつ迅速に潜伏地点へと向かう。
 こちらはアナログ時計を所持する、巨漢の竜派ドラゴニアンのライスリ・ワイバーン(自爆猟師・e61408)。
 彼はしばし、どうすべきかと逡巡してしまう。
(「赤ん坊と子供を守る母獣か……。何か気が進まないな……」)
 巫女が守るは、赤ん坊の姿をした白の純潔の種子。
「う……、やはり……駄目か」
 成長すれば人に害なす存在となるとわかっていても、割り切れない部分がある。
 ライスリは種子を攻撃しないと、決めていたようだ。
 近場では、鈴、煉姉弟と、ノーザンライトは固まって潜伏する。
 身を乗り出すように中の様子を窺う鈴やノーザンライトを、狼の姿をした煉が体を張って制した。
 そのノーザンライトは、煽情的なポーズを語り合う巫女の姿に苦虫を噛み潰したような顔をして。
(「あれじゃあ、人間と変わらない」)
 正直、巫女を倒すことに対し、種子よりも抵抗心を抱く彼女は殺す覚悟の為にと一呼吸する。
(「人の真似事をしようが、あいつらは侵略者だ」)
 ただ、同じ狼の姿の煉がそんな風に、意思疎通をはかっていた。
 あの家だって、避難した元の住人がいる。
 人の家に踏み入って我が物顔で闊歩する盗人に、容赦などはいらない。
(「こんな事で覚悟が鈍ったりしない。むしろ、怒りが強まったかな」)
 そして、それ以上に攻性植物へと敵意を見せていたのが鈴だ。
 以前の依頼で、攻性植物に娘を奪われた両親の無念の表情が脳裏に焼きついている。
 ――奪ったもので、幸せそうにしてるのが許せない。
 刻々と過ぎ行く時間。
 打ち合わせの時刻までは、もうすぐ。

●白の純潔の巫女達
 時計が指し示す襲撃時刻。
 全チームのケルベロス達が一斉に動き始める。
 隠密気流を解いた佐祐理が最速で襲撃を行うも、まずは仲間達の為にと黄金の果実を光り輝かせていく。
「「「!?」」」
 突然発せられた光に、驚く白の純潔の巫女達。
 注意がそちらに逸れていることもあり、ノーザンライトにとっては格好の的だ。
 相手の布陣はすでに、判明している。
 彼女は別の妖精弓を重ねる形で魔動機械弓「ミルキーウェイ」を引き、談笑していた1体目掛けて漆黒の巨大矢を射放っていく。
「きゃあっ!!」
 その矢に肩を射抜かれた1体は、全身に僅かな痺れを覚えていた。
「な、なに……!?」
「何かが襲ってきたわ!」
 攻性植物、白の純潔の巫女の見習い達は突然のケルベロスの襲撃に、大きく混乱していた。
 どうやら、攻性植物達はこちらの素性すら把握できていない様子。
 沙雪は敢えて名乗りを上げずに飛び出し、刀印を結んだ指で神霊剣・天の刀身をなぞる。
 印を四縦五横に切り、指先に力を集めて形成した光の刀身で、沙雪はもう1体の回復役へと斬りかかっていった。
「鍵の妖精は恋をした……」
 腰につけた携帯照明の明度を気にかける陸也がさらに、詩編を媒介にしてその物語の一説を紡ぐ。
「それは王への叛逆の物語。これはただ、その残滓」
 言葉に応じて表れたのは、物語に登場する邪視を持つ鍵の妖精レイラス。
 金と銀、ヘテロクロミアの妖精は青き月の光と共に現れ、一瞥を送ってから姿を消す。
 物語にて王すら縛りつけた邪視は、相手を……巫女を強くその場に縛りつける。
 右往左往する巫女達へ、遥彼は怪しげな笑みを浮かべて。
「えぇ、えぇ。貴女方が種子へ注ぐ愛以上の愛を、私が与えてあげるわ」
 煽情的なポーズを語っていた巫女達の話を耳にしていた遥彼は、そんなものがなくとも愛があれば全て解決だと語りかけて。
「さぁ、私と愛し愛され――その血を啜り愛ましょう?」
 彼女は相手へとウイルスカプセルを投げ飛ばし、回復役を牽制していく。
 相棒のボクスドラゴン、リューちゃんことリュガと共に、鈴は襲撃を行う。
 鈴自身の御業が相手を捕え、リューちゃんが浴びせかける属性ブレスによって縛りつける力を強めていく。
 神白姉弟からの視線を受け、動くノーザンライトが古代語の詠唱を開始して。
「石像にして、通天閣のビリケン様の隣に飾る」
 彼女が発射した石化光線に射抜かれた巫女が腰の辺りを石としてしまうと、煉が間髪入れずに素早く伸ばした蒼星狼牙棍で相手の腹を強く突いていく。
 完全に出遅れた白の純潔の巫女達は蔓触手を伸ばし、または大きく咲かせた花から破壊光線を発射してくるが、事前情報の通りに巫女達の戦闘力は大きく削がれている。
「急上昇、急降下爆撃機に如く! ゼロ距離の全力ファイヤー!」
 ライスリはそれらの攻撃を抑えながらも急上昇し、突撃急降下して相手目掛けて全力で竜の吐息を吐きかける。
 その爆風を利用して、悠然と元の位置へと戻るライスリ。
「はぁ、はぁ……、あなた達、ケルベロス、ね……」
 爆撃を受けた巫女はすでに全身をボロボロにし、荒々しく息をしていたのだった。

●全力で白の純潔の巫女達を叩け!
 襲い来るケルベロス達に応戦する白の純潔の巫女達。
「態勢を立て直すのよ!」
 ケルベロスは種子に注意を向けていないこともあり、巫女達は一行の本当の狙いに気づいてはいない。
 メンバー達は混乱からなかなか立て直らぬ攻性植物達を、全力で攻め立てていく。
 相手の足止めを考えていた佐祐理だが、装備の難もあって用意してきたグラビティで攻撃を繰り返すこととなる。
 途中、佐祐理は相手に捕食形態とした攻性植物を食らいつかせて。
「同じ『植物』に攻撃される気分は、どうですか??」
 薄笑いをする彼女に、食らいつかれた巫女も苦しげな表情を浮かべる。
 自らの体から収穫した果実の光で、巫女は自身の回復へと当たっていた。
 だが、攻め立てるケルベロスが敵の回復など見過ごしはしない。
「祓い給い、清め給え、熾炎、業炎、急急如律令!」
 己の身に御業を宿す沙雪は、印を切って炎を発射していく。
 炎は大きく燃え上がり、巫女の体を焼き焦がす。
 ただ、相手の体力がじりじり減っていくのすら待たず、陸也は振るった瓢箪をファミリアへと変化させ、巫女へと襲い掛からせる。
「そん、な……」
 ついに意識を失い、回復役の1人が崩れ落ちる。
 なおも、ケルベロス達の攻勢は止まらず。
「その愛に抱きしめられて……、泣き叫ぶ赤子の様に私を享受しなさい」
 弱ったもう一人の回復役へと、遥彼が歪んだ愛情を囁きかける。
 彼女の妄執からは何人たりとも、逃れることはできない。
 ――大丈夫、怖いのは最初だけ。きっとすぐに、この愛に溺れてしまえるわ。
 愛で縛られる巫女は、言いようのない苦しみに悶える。
「さぁ。光届かぬこの愛の中で――安らかに眠りなさい」
 遥彼の重すぎる愛に耐えられず、巫女は泡を吹いて崩れ落ちてしまった。
「なんとしても、ケルベロスを……!!」
 2人となってしまった見習い達はフェロモンを振り撒き、さらに大きく咲かせた花を捕食形態として食らいつかせてくる。
 前線でそれらの攻撃を抑えるライスリは近距離で相手へと組み付き、火力役の意識を引きつけていた。
 その最中、彼は白の純潔の種子を盗めないかと試みていたが、そう簡単にはいかない。
 矢面に晒されるライスリは自らの傷の深まりを感じ、背後にカラフルな爆発を巻き起こして士気を高め、なおも敵の正面へと立ち塞がる。
 また、その前衛陣をケルベロス側の回復役、鈴がリューちゃん……箱竜リュガと支える。
 属性インストールでのリューちゃんの属性インストールと合わせ、鈴は相手の攻撃の時を凍結させる空間を作り出す。
「空間に咲く氷の花盾……皆を守ってっ!」
 突然咲く氷花の盾に、敵からは驚きや戸惑いの声が、味方からはその隙を生かした気合の叫びやグラビティを構える声が飛ぶ。
 九字を唱えていた沙雪も、その1人だ。
「鬼魔駆逐、破邪、建御雷! 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!」
 彼は刀印を結んだ手で印を四縦五横に切り、指先に力を集めて形成した光の刀身で、火力役へと斬りかかった。
 さらに、陸也が後方から、掌から発する竜の幻影より攻性植物へと炎を浴びせかけていく。
 その間も、陸也は攻性植物の援軍が来ないかと周囲への警戒を怠らない。
 ただ、結局援軍などは訪れず、ケルベロスが巫女達を押し切る形となる。
「姉ちゃん!」
 火力の1人がよろけたのを見て、煉は姉を呼ぶ。
「レンちゃん、いくよ!」
 神白姉弟は相手の両サイドから同時に、攻性植物へと仕掛ける。
 魔を食らいし、降魔真拳の奥義『天星狼牙』。
「これが俺(わたし)達の絆っ!」
 鈴と煉、2人の右腕に宿る白い光と蒼い炎が狼の咢を象り、左右から同時に巫女を襲う。
 走り抜けた奇跡に閃光と爆炎が起こり、敵を燃やし尽くしてしまった。
 1人、また1人と倒れる仲間。残る巫女は自分以外が全員やられたことを察する。
 さすがに自分だけとなれば、彼女の意識は種子へと向かう。
「これ以上、させはしませんわ!」
 うろたえながらも、見習い巫女は種子を守るべく立ち塞がる。
 その行動は見習いでしかない彼女に逃げ場などない為か、あるいは種子を守る母性があるからなのか……。
 巫女は蔓触手を伸ばし、前に立つ佐祐理の体を捕える。
 相手はそれでアドバンテージを取ろうとしていたようだが、遥彼がすかさず花びらのオーラを舞わせ、佐祐理を蔓触手の拘束から解き放つ。
「なっ……」
 驚く敵へとノーザンライトが獣化した足に重力を集中し、攻め入る。
「獣撃踵落とし」
 巫女の頭上へと跳躍した彼女が相手の脳天へと踵落としを食らわせていく。
 ただ、僅かに浅く、相手を倒しきることができない。
 そこに、先ほどの反撃にと佐祐理が割り込み、レプリカント化された右目で相手を見つめる。
「Das Adlerauge!!」
 そこから高出力でレーザーを発し、巫女の体を射抜いてしまう。
「も、申し訳、ありま、せ……」
 最後の巫女も意識を失い、その場へと倒れていったのだった。

●交錯する想い
 全ての白の純潔の巫女が倒れ、残されたのは白の純潔の種子のみ。
 それに、煉は怒りを燃え上がらせて。
「んな姿で俺らを惑わすな、緑の悪魔。燃え散れ!」
 ドラゴニックハンマーに地獄の炎を纏わせた彼は力の限り、その種子を叩きつけて行く。
「雷切っ!」
 沙雪は神霊剣に雷の霊気を纏わせ、一閃させる。
 続き、魔導書を手にする陸也が招来した混沌なる緑色の粘菌が相手の体に侵食し、悪夢を見せ付けた。
 相手は抵抗できず、ただ泣き叫ぶのみ。
 ライスリが黙って見つめるのを遥彼は気がけながらも、殺神ウイルスを撃ちこむ。
「これ以上、人の姿になったら、罪悪感に耐えられない」
 さらに、ノーザンライトが石化光線を放ち、種子を石へと化してから土に還そうと考える。
 止めが刺されたことをしっかりと確認した陸也。後に、悪影響が出ないかと警戒していたのだ。
 直後、沙雪は不浄払いの意味を込め、弾指を行う。
 ライスリは家の敷地の外、土がむき出しとなった部分に穴を開け、石となった種子の残骸を埋めていく。
 ――留まる事なく、あの世へ行け、哀れの子よ、ここで寝ろ、永遠に。
 彼によって作られた墓には、そう刻まれた。

 何はともあれ、この場の作戦は成功した。
 佐祐理は今なお、攻性植物に支配された大阪城の方角を睨んで。
「奪還の可能性がこれで出ると良いのですが……」
 今後の敵の動き次第ではあるが、その可能性を信じて彼女は仲間と共にこの場から撤収するのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。