涼流そうめんパーティー!

作者:澤見夜行

●流しそうめん機ロボ発進!
 不法投棄された粗大ゴミの山の中を蜘蛛のような小型ダモクレスが走る。
 胴体の宝石めいたコギトエルゴスムがきらりと光る。お目当てのお宝を見つけたように。
 くるくると回るウォータースライダー。行き着く先は潮流を生み出すプール。
 颯爽とソレに乗り込む小型ダモクレス。
 機械と融合し、ヒールによって形を整えていく。
 元の大きさから肥大化したそれは、エンジンを入れるようにモーターを唸らせる。
 プールに溜まった雨水が汲み上げられ、ウォータースライダーを流れていく。
「ソーメン! ソーメン!」
 怪しげな呪文を響かせながら、流しそうめん型のダモクレスがゴミ捨て場から発進した――!

「流しそうめんは良いですよね。こう大人数でわいわい食べれる感じが鍋に似て」
 蕎麦やうどんではこうはいかないと、京極・夕雨(時雨れ狼・e00440)がうんうんと頷く。
「あーいいよね、流しそうめん。あれこれ薬味をのせてスルッと食べる。最高だよ~。
 考えてたらお腹空いてきたかも、そうめん食べたいなぁ」
 酷暑だというのにマフラーを巻いたユズカ・リトラース(黒翠燕脚の寒がり少女・en0265)そんなことを言ってると、慌てた様子でクーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が入ってきた。
「大変なのです。町で流しそうめんが暴れるみたいなのです」
「噂をすれば、なんとやらですね」
 クーリャによれば、不法投棄されていた流しそうめん機がダモクレスになることが予知されたようだ。
 このまま放置すれば多くの人が虐殺されてグラビティ・チェインを奪われてしまうだろう。
「なら、サクッと倒して皆でそうめんでも食べに行こう!」
 ユズカの提案に皆が頷いた。
「ダモクレスは一体なのです。生まれたばかりで対した強さはないのですよ。でも水を掛けてくる攻撃とかしてくるので、濡れちゃうのだけ気をつけてくださいなのです!」
 戦闘地域は山中の舗装された道路上だ。人影もなく避難誘導の心配もないだろう。
「それではさっさと倒してそうめんパーリーにしましょう」
「そうだね! 流しそうめん楽しみだなぁ」
 夕雨の言葉にユズカは頷く。緩んでる頬を見ればわかるように、すでにそうめんのことで頭がいっぱいだ。
「ふふふ、油断せず頑張ってきてくださいなのです」
 楽しげな番犬達を見守るクーリャはそうして送り出すのだった。


参加者
福富・ユタカ(慕ぶ花人・e00109)
京極・夕雨(時雨れ狼・e00440)
霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284)
アルナー・アルマス(ドラゴニアンの巫術士・e33364)
アイカ・フロール(気の向くままに・e34327)
エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)
霧隠・佐助(ウェアライダーの零式忍者・e44485)
茅宮・火奈(赤眼護剣・e56465)

■リプレイ

●倒せ! ソーメンロボ!
「ソーメン! ソーメン! イッツ、ソーーーメン!!」
 轟々と水が汲み上げられ、ウォータースライダーを流れていく。
 足を生やした流しそうめん型のダモクレスが、陽気な呪文を唱えながら素麺――もといグラビティ・チェインを求め町に迫ろうとしていた。
 対峙するは(腹を空かせた)十一人の番犬達。
「ソーメン! ソーメン!」
「ソーーーーメン!!」
 若干テンションのおかしい福富・ユタカ(慕ぶ花人・e00109)とアイカ・フロール(気の向くままに・e34327)そしてサーヴァントのぽんずが神に祈るでもなく呪文を叫ぶ。
 二人と一匹の瞳には水の上を流れる素麺の姿が見えているようだ。大丈夫ですか? 涎が垂れそうですよ?
「二人ともテンション高いですね……」
「そういう夕雨殿はテンション低いね」
「相手の情報を教えて貰っているでしょう。水に濡れるのは嫌なんですよ、マジで」
 京極・夕雨(時雨れ狼・e00440)が心底げんなりしたように声を漏らす。
 情報にはまるで夕雨に狙いをつけたかのような攻撃手段が書かれていた。相手をずぶ濡れにして恥ずかしがらせる攻撃。こんな攻撃あったのかと思うけれど、あるんですねこれが。
 濡れるのがとても嫌いな夕雨にとって、もはや天敵と言っていい敵を前に、手にした傘を持つ手を震わせた。
「まあ! なんて大きいのかしら! 人が流されちゃいそうだわ」
 アルナー・アルマス(ドラゴニアンの巫術士・e33364)が目の前で身体を揺らすソーメンロボの感想を漏らす。人が流されそうという言葉に反応して、
「ふおおお、なんだかアトラクションみたいです!? 流される? 流されちゃうのです?」
 と、眼を輝かせながら声を上げる霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284)は、しかし脇に素麺セットを準備し、手には濃縮タイプのめんつゆボトルを持っていた。間違いなくお腹は空いてる。
「でハ、手早く止めて差し上げテ、そうめんパーティーと致しましょうカ」
 テンションの高い面々を見守るエトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)は実に大人だ。皆が濡れても良いようにと、タオルを沢山持参していた。
「水浴びからのソーメンパーティー。実に夏の風物詩っすね。わくわくっすよ!」
 楽しい事が大好きで、どんなノリにでも乗っかっていくスタイルである霧隠・佐助(ウェアライダーの零式忍者・e44485)にしてみれば、こんなイベントは逃す手はないと言ったところか。
「う、後ろは任せて下さい。よろしくお願いしますね」
 気弱で引っ込み思案、戦いもどちらかと言えば苦手な茅宮・火奈(赤眼護剣・e56465)だが、仲間を守るために今日も頑張る所存。真面目です。
「よーし、食べるぞー! ソーメン! ソーメン!」
 このクソ暑い中マフラーを巻いてる超寒がりのユズカ・リトラースもテンションが高い。下ろし立ての水着を中に着込んで水濡れ対策もバッチリだ。
 番犬達の声に気づいたのか、陽気に身体を揺らしていたソーメンロボが番犬達を睨めつける……が、見た目の可愛らしさもあって迫力がない。
 轟々と水が流れ出す。立ち向かうもの全てを流してしまいそうな、そんな気迫を見せているつもりだが、彼(?)の攻撃方法は水を掛けることだけだ。
「さあみんな、ソーメンを頂くでござるよ!!」
 気が急いているユタカの声を合図にソーメンロボとの戦いが始まった!

 戦いは番犬達の一方的なペースで進むのだが、その様相は夕雨を除けば水遊び感覚だ。
 敵の放つグラビティたるや、本当に水をぶっかけるだけである。
「くっ! なんて水量でござるか。おかげで和服がびしょびしょでござる。――だがしかし、拙者、下には水着を着ているでござる。無駄無駄でござるよ!」
 水を被りながらグラビティで反撃するユタカ。
 最初は一人水着を着用してお遊び気分だと恥ずかしがったが、いや実に奇遇、同じような考えの仲間が幾人かいたのだ。そうなれば、恥ずかしさはどこへやらあとはもう水を被りながら突撃を繰り返すのみである。
「ハッ! アイカ殿と佐助殿がびしょ濡れ!? 水も滴るなんとやらでござるか! 可愛い! イケメン!」
 仲間に目移りするユタカは、たぶん一番この戦いを楽しんでいるに違いなかった。
「私にお任せです! 鬼天竺鼠なので濡れてもへっちゃらです!」
 ユーリは仲間を庇いながら水を全身で浴びていく。もうそれは上から下まで大変なことになっているが、本人はお構いなしだ。
「だ、大丈夫ですか、霧鷹さん。そ、その服が……」
「ん、平気平気! いきますよー!」
 火奈の心配も当然と言ったところか。盛大に水を被るユーリの服は透け透けだ。ユーリ本人はまるで気にしないようだが、周りは目のやり場に困るところだ。この場にいる男子三人が必死に視線を逸らす。
「ふおおお、すっごい水シャワーです!」
 ソーメンロボへ突撃中に浴びる水攻撃。あまりの水量に吹き飛ばされ兼ねないが、それもアトラクションのようで楽しい。水を被りながら繰り返されるユーリの攻撃でソーメンロボの被害は甚大だ。
「夏の昼間に水浴びとハ、実に涼やかなのですヨ」
 そう言いながら爽やかに仲間を守るのはエトヴァだ。メイン参加者男子枠でディフェンダーのエトヴァとしては、極力仲間が水に濡れるのを防ごうと、堅実に立ち回っていた。
 特に水濡れを嫌う夕雨に目を配り文字通りその身を盾に守っていく。
「……大丈夫ですカ?」
「ドキッ! キュン! (ポッ)……ありがとうございます」
 なんて場面が行われたかどうかは想像にお任せするとして、積極的にキュアを行うエトヴァの活躍は十分すぎる物と言えるだろう。
「もう! またびしょ濡れになってしまったわ! 服が透けて……うぅ、恥ずかしい!」
 メディックとして仲間の濡れ透け具合の対応に追われるアルナー。仲間の回復を頑張るあまり、自分にキュアするのが後手に回ってしまう。
「キュアでなんとなく乾いてるようにも思えるけれど……どういう理屈なのかしら?」
 アルナーの言うように、盛大に濡れた対象にキュアをすれば、突然水が引いたように乾いていく。これはもうグラビティによるものとしか説明ができないが、そう言う物として対応していくしかないのだ。
「……おどうぐばこも濡れると恥ずかしいのかしら?」
 アルナーが視線を向けると、目を逸らすようにサーヴァントのおどうぐばこがそっぽを向いた。真相は……おどうぐばこの口の中だ。
「ふふ、ぽんずもうすぐですよ。もうすぐ待ちに待った流しそうめんができるのです。ソーメン、ソーメン……」
 目を回してそうな物言いで素麺への愛を語るアイカ。彼女は正気だ。
 ぽんずとともに仲間のサポートに徹し、多様なグラビティで仲間を支援する。
 はっきり言ってしまうと、アイカとぽんずは真実、素麺を食べるためにこの場に来た。食べることが大好きな二人にとって、今この街の平和を脅かそうというダモクレス存在は二の次、ついでに倒しに来たと言って良いだろう。世界を守るケルベロスも、三大欲求である食の欲求には勝てないのだ。食いしん坊万歳。
 そんなアイカの後ろにはとっても真面目に戦う火奈がいた。
「星眼流免許皆伝、茅宮火奈。守るべき方たちの為……参ります!」
 戦場を疾駆し、捻る身体に流星を纏えば、重力の楔を叩き込む。勢いままに腰に携える刀を抜き放てば、美しい軌跡を描く剣閃が走る――。
 こう書くととてもシリアスだが、彼女もまた水に濡れて服装はびしょびしょだ。『スクール水着』を装備しているとは言え、羞恥心を呼び起こす敵の攻撃に顔を赤らめながら、一生懸命に攻撃を繰り出す。気弱で引っ込み思案な彼女にとっても天敵と言えるのかも知れない。
(「……水着装備しててよかった……」)
 普通の服で恥ずかしい目にあってたら、まともに戦えなかったかもしれない。しっかりとした準備は効果覿面だ。
「男は水に濡れたって恥ずかしさはないっすからね! 女の子達に代わってバシバシ攻撃するっすよ!」
 行動阻害を増加させながら戦う佐助は、それはもう見てる方が恥ずかしくなってしまうほど濡れ透けだが、本人はお構いなしだ。
 気合一閃、サーヴァントのクノと共にソーメンロボへ攻撃を仕掛ける。
 その頭の中は、アイカやユタカに負けず劣らずソーメンまみれだ。夕雨も含め気の合う仲間達だが、考えてることが同じな感じ、仲の良さがよくわかる。
「夕雨ちゃん、ユタカちゃん、アイカセンパイ、ソーメンコンボいくっすよ!」
「おー!」
 なんかよく分からないコンビネーション技が生み出されるが、こういうのはノリと勢いが大事なのがよくわかる。連続攻撃を決めた四人は夏の陽射しに良く合う爽やか笑顔だ。
「超絶寒がりな私は、たとえ夏の強い陽射しの下であっても、冷たい水を浴びるのは死活問題。ここは慎重に立ち回っ……ぎゃー」
 こそこそと後衛で立ち回っていたユズカだが、残念ながら水濡れから逃れることはできない。盛大に水をぶっかけられブルブルと震える。
「うぅ……寒い、マフラー重い……水、怖い……」
 一撃で戦意喪失するユズカは役立たずだ。下に着込んできた水着とは一体なんだったのか。
「皆さん大丈夫ですか! 支援させてもらいます!」
 エトヴァの家族であるジェミ・ニア、そして手伝いにきたフローネ・グラネットもサポートとして戦いに参加する。ジェミは破壊力を高める爆風を生み出し、番犬達を支援すると、体力の削れた者へ溜めたオーラを受け渡し回復する。
「ありがとうジェミ。おかげで助かりましタ」
「もう少しだね、がんばろうエトヴァ」
 水に濡れながらも仲の良い二人に、番犬達はほっこりするのだった。
「ふぅ……ふぅ……」
 さて、ほぼ全員が水に濡れている中、一人緊張の綱渡りを繰り返し立ち回っている者がいた。夕雨だ。
 濡れるのが嫌な理由は色々ある。
 なんだか息苦しくて気持ち悪かったり、濡れた髪が重くて頸椎をもっていかれそうになったり、それらが中々乾かないといった理由だ。なるほど確かに、夕雨ほどの髪の毛であれば、サーヴァントのえだまめがするように身を震わせて水を弾くことは難しいだろう。
 そんな訳で、彼女はこの戦いに誰よりも真剣に――命をやりとりするように――臨んでいる。
 叩きつける全力のグラビティは確かな手応えを感じさせる。夕雨の一撃を受けてソーメンロボは大きく体勢を崩し倒れ込もうとしていた。
「よし……止めです――!」
 相手の体力の減少を見て、トドメへと掛かる。しかしその時、追い詰められたソーメンロボが我武者羅に水を放った。
「あっ――!」
 不意の一撃は躱す術を持たない。だが、夕雨に水がかかる直前、割り込む影があった。ユタカだ。夕雨を抱きかかえるようにして水から守る――!
 相棒が嫌がることを良しとしないユタカの心優しき行動。胸を鼓動が突いた。
「夕雨、無事か?(拙者優しいだろう?)ん? どうしたそんな目で見て――」
「ユタカさん…………いや、そんなびしょ濡れで抱きつかれると濡れるんですが」
 身を挺した行動だが、目を細める夕雨の視線は冷たい。
 大きく息を吐き出す夕雨は、一気にテンションダウンの不機嫌だ。プルプルと拳を振るわせる。
「え、拙者悪くないよね!?」
「はぁ……まあずぶ濡れにならなかっただけマシとしましょうか。とにかくまずは――」
 冷たく燃える左目がソーメンロボを捉える。
「祈りは済みましたか?」
「ソ……ソーーーメン!!」
 ダモクレスが神に祈るかどうかはともかく、悲痛な叫びを残したソーメンロボは怒りに震えた夕雨の一撃を持って爆発四散した。
 後に残されるのは、手頃なサイズの流し素麺器だけだ。
 高く暑い陽射しの下、戦いは終わりを告げるのだった。

●流しそうめんの夏
「はっはっはっ! 上流区域は拙者が頂いた!」
「あっ、ずるいですよユタカさん」
 戦い終わって、近所で有名な流しそうめんのお店を借りた番犬達。そう今日はこのために集まったといっても過言ではない。
 持ち寄った薬味と具材は豪華だ。テーブルに並べ好きに取れるようになっている。
 割った竹の中を流れる水。その中を素麺が勢いままに流れていく。
「んー……! 冷たくて美味しい!」
 日本の良き文化、尊いと感動しながら流れる素麺を食べるユタカはタマゴをトッピングしている。
「この肉味噌も美味しいですよ。どうですか?」
 夕雨のオススメにしたがい肉味噌を追加して食べる。味噌の塩辛さと肉の旨味が素麺にマッチし、とても美味しい。
「くっ、なかなか上手く取れませんね」
 そういう夕雨は実に楽しそうだ。濡れたことでさっきまで不機嫌だったのが嘘のよう。
 掬い取った素麺はえだまめと半分こ。様々な薬味やトッピングを使って味を変えながら楽しんでいた。
「アルも『やくみ』を持ってきたわ。
 あげ玉と…あと味さっぱりのカボスよ!」
 そう言うアルナーは好き嫌いのない偉い子だ。
 下流の方で流れてきた素麺を拾い上げ、美味しく食べる。
「おそうめんてたまにピンクとか緑の色のがあるわね。
 アルの所に回ってきた事ないのだけど、どんな味がするのかしら?」
 美麗五色は唐糸の如く美し。素麺の中に混ざる色つきの麺は最近は五色の物も増えてきている。
 色つきの理由としては冷や麦との区別のために用いられていることが一般的だ。天然の素材を使うものは色が付いていても味に変化はないが、素材によっては味がついているかもしれない。
 何はともあれ、アルナーくらいの年齢だと色が付いてるだけでもテンションが上がるというものだ。流れてくる素麺に一喜一憂しながら、楽しく美味しく食べていく。
「皆さん! すりゴマと生姜おろしを用意しました! 濃縮タイプのめんつゆも予備で置いておきます!」
 戦闘開始前しっかり手に握っていた濃縮タイプのめんつゆをテーブルにおいたユーリは、自らおろし金でしょうがを擦り下ろす。
 しょうがの爽やかな香りが広がる中、掬い取った素麺をめんつゆにつけて一気に啜る。
「うおォン、お素麺美味しいです! カボスの酸味Ver! 次は玉子で意外とあっさりツルツル! 次の肉味噌がこってり濃厚!」
 手を変え品を変え、一度にいろんな味が楽しめる。めんつゆがなくなれば用意しためんつゆを継ぎ足して、お腹が膨れるまで美味しく頂ける。
「んーやっぱり美味しい!
 シンプルにめんつゆオンリー。玉子入れても美味しいし、梅やしそなんて天才じゃないですか!」
 待ちに待った素麺を頬張りつつ目を輝かせるアイカは、もはや食べるではなく飲んでいる。
 頬を押さえながらニコニコと『飲む』姿は見ている者の食欲をそそる。素麺を掬う手も素早く正確だ。食いしん坊万歳。
「ぽんずもどうですか? 美味しいですか? 美味しいですよね!」
 抱きかかえたぽんずも美味しそうに素麺を食べる。このままではまた一段とぽっちゃりしてしまうかもしれないが、きっとデウスエクスと戦う――運動――をしているから大丈夫なのだろう。
 そんなアイカぽんずコンビの隣には家族水入らずなエトヴァとジェミが素麺を食している。
「こう来たら、こう! 素早く流れに向かってこう!」
「ジェミ? とても頼もしいですネ。
 流れに向かっテ……こうですネ?」
 マイ箸持参な二人は素麺を掬う素振りを欠かさない。その甲斐あってか流れてくる素麺を的確に掬うことが出来る。ジェミは沢山とれた素麺をエトヴァにお裾分け。
「……ジェミのお蔭ですネ」
 照れるジェミと分けっこしながら二人で食べる。
 水飛沫が舞う、流しそうめんはひんやりと涼しい。
「涼しげで良いよね」
「涼やかで気持ち良いですネ」
 ネギや生姜を入れながら、二人は微笑み合いながら素麺を楽しむのだ。
「ソーメンソーメン、ソーメンメン! 食べるっす!」
 呪文を唱えながら佐助が箸を伸ばす。
 佐助の用意した薬味は海苔だ。大量に用意された海苔の香りに食が進む。
「つゆにも海苔を入れて、ソーメンにも海苔をかけて……うん美味い。
 味変にわさびもちょこんとのせて……うん美味い」
 自分好みの素麺を楽しんだら、次は皆が用意した薬味に挑戦だ。
 玉子にかぼすに肉味噌に。揚げ玉をいれればまた美味し。
 どんな味にも合うとかソーメンまじ半端ないっすと、佐助もニコニコ流しそうめんを楽しんだ。
「この光景。夏の風物詩ですね」
 こんなに大人数で流しそうめんを楽しむのは初めてという火奈。プールにまで流れ着いた素麺を掬い上げながら口へと運ぶ。
「……うん、やっぱり冷たくて美味しいです」
 そういう火奈の好みは氷でしっかり冷やしたものだ。プールには氷も流れ、キンキンに冷やされている。
 少しずつ薬味を加えながら、冷たい素麺を啜る感覚は、暑い陽射しの夏にしか楽しめない贅沢だ。
「ふっふっふ、ここで登場するのはゆずそうめん! それー流れていけー」
 ユズカが真打ち登場と言わんばかりに自分の分身を流していく。ゆずの練り込まれた素麺はまたひと味違った味を与えてくれるだろう。
「んー! 美味しい!!」
 ――水濡れで大変な目にはあったが、夏の暑い陽射しを忘れこうして素麺を楽しむのは至極の贅沢だ。
 番犬達は、楽しみながら食せる流しそうめんを、心ゆくまで楽しむのだった――。

作者:澤見夜行 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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