白の純潔決戦~全て捧げて大きく育てて

作者:質種剰

●巫女の侍る庭
 大阪城から程近い住宅街。
 一般人が避難を終えた家屋の中に、今は白の純潔の巫女達が勝手に入り込んでいる。
 そして庭先には、巨大化した熱帯植物のような異様な風体の樹木がそそり立っていた。
「よしよし、いい子ね坊や」
 白の純潔の巫女の1人が楽しそうな声を上げる。
 決して広くない庭では、真夏の暑さだけてない熱気が充満していた。
 女達4~5人の甘い体臭、そして樹木の中心で眠っている赤ん坊の乳臭さ……。
「さあ、坊や、ミルクの時間よ」
「あぁん、次はわたしがあげる番って言ったのに!」
 豊満な肢体に蔓草を引っ掛けただけという全裸に近い女達が、揃って手足を熱帯植物——白の純潔の種子へ伸ばして、入れ替わり立ち替わり彼のお世話をしているのだ。
 白くきめ細やかな肌を惜しげもなく晒し、赤ん坊の鼻先へ白い乳房を差し出す者。
 触手の先端から咲く白い花、そのトラバサミのような牙に噛まれるのも構わず、恍惚として赤ん坊の頬へ唇を寄せる者。
 何本もの触手が重なり合い伸びている幹へ木登りでもするように抱きつくや、懸命に赤ん坊をあやしている者。
 そして、お世話の番を待っている間も、戦闘訓練を行ったり男をオトすテクニックを磨いたりと皆、白の純潔の巫女としての鍛錬に余念がない。
 どうやら、白の純潔の種子へどれだけ情熱的に仕えたかによって、自らの巫女としての格が上がっていく仕組みらしい。
 その為か、白の純潔の巫女達は誰もがすっかり赤ん坊の世話へ夢中になって、次代の白の純潔の力に魅了されているようだ。

●守られし『白の純潔の種子』
「攻性植物の拠点になっている大阪城と、大阪市街地の間にある緩衝地帯にて、鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)殿やシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)殿の調査により、白の純潔事件の元凶と思われる攻性植物が発見されたであります」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
 ちなみに緩衝地帯とは、攻性植物に制圧されているわけでは無いものの、一般人が住むには危険という事で避難が行われている市街地を指す。
「情報によれば緩衝地帯の数箇所で、数体の白の純潔の巫女たちが樹木型の攻性植物を守護するようにして集まっているであります」
 守護されている攻性植物は、事件の元凶である『白の純潔』なる攻性植物の他にも、『白の純潔の種子』と呼ばれる——白の純潔の巫女を増産し、かつ『白の純潔』本体が撃破された場合に新たな『白の純潔』と成長する役割を持つ個体がいるようだ。
「即ち、この事件を完全に解決する為には、全ての『白の純潔の種子』を撃破した上で『白の純潔』を撃破しなければならないであります」
 かけらはそう断じた。
「複数班による隠密行動を仕掛けて、油断している敵達を一斉に強襲して叩く——それが今回の作戦であります」
 どこか一か所でも先に襲撃された場合、他の白の純潔の巫女達へ襲撃の情報が即座に伝わって強襲が行えなくなる可能性が高い。
 その為、『全チームが無理なく同時に攻撃できる』ようにタイミングを合わせて、市街地への潜入を行う。
「特別に時間のかかる行動や隠密行動の失敗などが無ければ、襲撃タイミングの5分前くらいには攻撃可能地点へ到達する事ができますので、その後、タイミングを合わせて強襲を仕掛けてくださいませ」
 大阪城周辺の緩衝地帯では、携帯電話のような無線通信は通じない。
「加えて、狼煙やサイレンなどの方法で連絡をとった場合、隠密行動は失敗となりますので、別のチームとの連絡を取る手段はありません」
 もし、強襲タイミングよりも先に敵が迎撃態勢を整え始めた場合は、どこか別のチームが隠密行動に失敗して戦闘へ突入した可能性が高いので、すぐに襲撃を行って欲しい。
「白の純潔の巫女達はどうやら見習いさんらしくて、数だけは多いでありますが、それほど強敵ではありません」
 全部で5体いて、一軒家の庭で白の純潔の種子へ構いきりで離れないという。
 強襲が成功して敵達を混乱に陥れた場合、戦闘力をも大きく削ぐ事ができるので、戦局を有利に運べるだろう。
 白の純潔の種子は、戦闘力が皆無で一切移動もできないため、撃破するだけなら難しくない。
 しかし、白の純潔の種子が攻撃されると、白の純潔の巫女たちは決死の覚悟で赤ん坊を守ろうとし始める。
 それ故、白の純潔の種子を攻撃するのは、白の純潔の巫女を撃破した後がお薦めだ。
「ですが、白の純潔の種子を守ろうとする白の純潔の巫女の行動を逆手にとるような作戦がおありでしたら、先に白の純潔の種子を攻撃するのもありかもしれません」
 かけらは豊かな胸を張って請け負うと、皆を激励した。
「この戦いが、大阪城に蔓延る攻性植物の拠点を炙り出す切っ掛けになるかもしれません。どうか皆さんご武運を!」


参加者
シェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237)
桜庭・果乃(キューティボール・e00673)
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
パトリック・グッドフェロー(胡蝶の夢・e01239)
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)
人首・ツグミ(絶対正義・e37943)
矢島・塗絵(ネ申絵師・e44161)

■リプレイ


 襲撃タイミングより5分前。
 ケルベロス達は、一戸建ての庭を覗ける生け垣の外側に陣取って、じっと息を殺していた。
(「しかしまぁ、よくこんな近くにいたものだね……灯台下暗しとでも言うのかな、これ」)
 シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)は、迷彩柄のフードつきマントを被って、生け垣の濃い緑色にすっかり溶け込んでいる。
 蒼いロングヘアと吸い込まれそうな瞳が清楚な印象を与える、シャドウエルフの鹵獲術士。
 好奇心旺盛な性格や——本人曰く若干らしいが——どじっこ気質の表れか、実年齢より少し幼く見える愛らしい少女だ。
 武具コレクションをいつまでも飽きずに眺めていられる大の武具好きで、その趣味が高じてか幻想武装博物館の館長を務めている。
(「後4分44秒」)
 音の出ない電波時計で時刻を確認するシル。左手薬指に嵌った恋人との絆、約束の指輪がキラリと光った。
(「デウスエクスとは押しなべて悪。なら、それを育てる行為は大悪でしょうかーぁ?」)
 人首・ツグミ(絶対正義・e37943)は、スニーキングブーツを履いて足音を殺し、更にはOUTER JOINによって気配も殺し、突入の準備万端といった様子。
 日夜悪の粛清に励む正義の味方——を自称するレプリカントの女性。
 どうやら元々ダモクレスだったらしく、洗脳に近い教育によって歪められた性質は、鹵獲術士に覚醒してもなお留まり続けたとか。
 その性根が半端に芽生えた心と混じり合った結果、尚更に狂い果て、『正義』と『悪』の基準は、己の主観100%になったそうな。
(「くふ。何れにしても悪には弁明も、弁解も、弁護も不要。粛々と裁かれるが定め、ですねーぇ」)
 口の中で笑いを噛み殺すツグミは、戦いに血気逸っているのか楽しそうにすら映る。
 一方。
 そうっと生け垣の隙間から巫女達を覗き見るのは日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)。
 しっかり隠密気流を纏っている彼だが、その表情はどこか浮かない。
(「幾ら後々の脅威になるとしても、抵抗出来ない状態の相手を殺すなど」)
 何故なら、彼の信念からすれば、白の純潔の種子討伐は殊更気の進まない行為だからだ。
 それでも種子を今倒す意味とて理解しているからこそ、気乗りしない本心などおくびにも出さず、機内では小檻へおっぱいダイブをかましていた蒼眞。
 音を立ててはいけない作戦故でもあろうが、今回蹴落とさずに見送られた辺り、弄ばれた側も何かしら彼の心境を察知していたのかもしれない。
(「うーん……正直気分が悪い。異形&デウスエクスとはいえ、赤子を手にかける格好かぁ」)
 パトリック・グッドフェロー(胡蝶の夢・e01239)も蒼眞とは多少違う理由なれど、白の純潔の種子を倒す事に抵抗を感じていた。
 優男を通り越した性別不詳の雰囲気とゴシック系な女装故か、喋らなければ男性と気づかれないオラトリオの刀剣士。
 傍目にも柔らかいハニーブロンドの髪と考え深げな黒い瞳が、真っ白な翼と相俟って彼をますますお淑やかに見せている。
 ボクスドラゴンのティターニアは、デフォルメしたかのような狐の尻尾と天使の翼が魅力的で、パトリックとお揃いのリボンを結んでいるのも可愛らしい。
(「オレ、幼稚園勤務や保育士目指してるんだけどなぁ……」)
 渋い顔になるパトリック。府民を脅かす敵といえども、無抵抗な赤子を攻撃する気にはどうしてもなれないらしい。その慈愛の深さはまさに保育士へ適していると云えよう。
(「何ていうか、うん、すごい恰好ね……」)
 氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)も、こっそりと庭を眺めて巫女達の全裸に近い恰好を目撃、傍観者ながらも頰を染めるぐらいに恥ずかしい思いをしていた。
 長い黒髪と円らな瞳、白いワンピースがいかにも控えめで大人しそうな美少女。
 性格は基本的に明るく、真面目さも充分ある故にツッコミ役さえこなす。
 ごくごく普通の家庭に育つも、事故に遭って生死を彷徨ったのち、鎧に選ばれたという鎧装騎兵である。
(「さて、あと2分21秒……いよいよね」)
 かぐらは特製リストウォッチに目をやりつつ、同時襲撃に備える。彼女もまた学生服を着込んだ隠密気流使いであり、生け垣の前に落ち着くまでは念を入れて一行の先頭を務めたものだ。
(「ようやく拠点が見つかったのね。これを倒せれば少しは大阪が平和になるわね」)
 隠密気流で気配を絶っている中、内心ホッと胸を撫で下ろすのは矢島・塗絵(ネ申絵師・e44161)。
 薄い紫色のポニーテールと橙色の瞳が爽やかで快活そうな、オラトリオの少女。
 本人曰く、失伝者の末裔だとは知らずに生きてきたが、趣味で絵を描いていたら偶然ゴッドペインターに覚醒したという。
 また、大きな胸を誇示するかのように露出度の高い服装を常々着ている理由は、サキュバスの幼馴染から実験台にされている事と無関係じゃないのだろう。
(「ええと、巫女達に気取られないよう、音を立てないで奇襲をかける……それに、他のチームと攻撃タイミングがズレないよう、タイミングが来たら全速力で襲撃……だったわね」)
 作戦の詳細を頭で再確認しつつ、塗絵は正確に時刻を合わせた腕時計を見て気合いを入れた。
(「悪いけど、白の純潔にはここで潰えてもらうよ……」)
 シェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237)は、翼を畳んで静かに縮こまりながら、庭の中央で女達からあやされている白の純潔の種子へ冷めた目線を向けていた。
 右腕が緑の燐光眩い地獄と化したオラトリオの少女。
 元はある富豪の家に生まれたお嬢様だったが、デウスエクスの急襲に巻き込まれ家族や右腕を失った過去を持つ。
 日頃から大人しく振る舞うも、言いたい事ははっきりと言う性格で、戦闘中ともなれば苛烈な本性が顔を出すそうな。
(「……どうでもいいけど、あの格好恥ずかしくないのかな……」)
 白の純潔の巫女に興味はなく、種子を倒す事へも躊躇いはないというシェミアだが、ただ一つ、巫女達の破廉恥な装いに対しては、素朴な疑問が湧いたようだ。
(「まさか大阪城近辺に黒幕がいたなんて……絶対に終わらせる!」)
 桜庭・果乃(キューティボール・e00673)は、やはり例に漏れず隠密気流を纏って身を潜めていた。大阪城攻性植物事件の終結を目指して意欲満々といったところか。
 生まれつき螺旋の力を有し、家族と多くの機械に囲まれて暮らしていたレプリカントの螺旋忍者。
 甘いものが大好きで、物心ついた時分から側にいたウイングキャットのたまを大事にしている。
 予め提示された情報による襲撃タイミングを、針の音すらしない時計を見て計る果乃。
 一斉襲撃タイミングまで、後25秒。


(「今だ!」)
 ツグミ、塗絵、果乃へ触れていたパトリック、また、蒼眞やかぐら、シルと固まって潜んでいたシェミアが意識する。
 8人は、時計の秒針が天辺を指すと同時に、素早く生け垣を乗り越えていた。
「きゃぁぁぁっ! 侵入者よぉっ!!」
「嫌ぁっ、誰か助けてぇぇ!」
 白の純潔の巫女達がきゃあきゃあ騒ぎ立てるが、咄嗟にビンタをする訳でもなく、蹴りを入れる訳でもなく、ただただ驚き慌てふためいていた。
 もしかすると、男に助けを求めて媚びる訓練が身に染みついたせいかもしれない。
「ともあれ、居場所がわかったし一気に片づけるよっ!」
 早速シルが、身軽に地面を蹴って高々と跳躍。
 白銀戦靴『シルフィード・シューズ』を履いた足に重力と流星の煌めきを宿して、強烈な飛び蹴りを巫女の肌蹴た胸へお見舞いした。
「……どうせなら胸を堪能したいところだけど、まずは……」
 愛用の斬霊刀を抜き払うのは蒼眞。
 幻惑を齎す桜吹雪と共に、巫女5体へ流麗な一閃を浴びせた。
「さて、いってみましょう〜!」
 かぐらは使い慣れた小型治療無人機の群れを器用に操る。
 ヒールドローン達は一糸乱れぬ隊列を組んで前衛陣の守りを厚く固めた。
「行くぜティターニア!」
 雷の霊力帯びしSadalmelikを構えて、巫女へ肉薄するのはパトリック。
 巫女の透ける白絹ごと巨乳を貫く、神速の突きを繰り出した。
 ティターニアも主の意志に忠実に、白く輝くボクスブレスを吐きつけて、巫女の衣装をズタズタにしてやった。
「想像以上の混乱ぶりね。大分有利になるんじゃないかしら」
 塗絵は、バケツに入った塗料を盛大に撒き散らし、白の純潔の巫女達目掛けてぶっかける。
「嫌っべたべたするぅ!」
 様々な色の塗料に汚されて、身体のべとつきを気持ち悪がる巫女達。攻撃を避けんとする反射神経を上手く削げたようだ。
「地獄が来たよ……悪夢に惑え……!」
 既に胸を真っ赤に染めて痛がる巫女を狙って、鎌を投げつけるのはシェミア。
「引き裂け……! ……これ以上裂ける服があるかな……?」
 蒼き炎獄の裁首の回転した刃が、巫女のほんの僅か残っていた蔓草を腰骨ごと斬り刻み、シェミアの言葉通り衣装を全て足元へ落としてみせた。
 だが、いかにスタイルの良い巫女が全裸になろうとも、当然ながら大怪我をしているだけに、その痛々しい姿を見てなかなか眼福だとは思いづらいところ。
「よし、今のうちにこっそりおっぱいダイブを……」
「……蒼眞、そこまでいくとなんというか、立派だね……変態としてだけど……!」
 だから、血みどろな巫女に対してでさえ隙あらば乳を揉みにいく蒼眞を見れば、シェミアは心底呆れ果てるより他に無い。
「見つけた! もうこれ以上やらせないよ!」
 奇襲するまでずっと観察していた相手を見つけたも何も無いものだが、ともかく飛び出してきたのは果乃。
「吹雪と雷、渦巻けぇーっ!」
 極めて低温の冷気と高圧電流を纏った両腕を広げて、独楽のように高速で横回転。
 右手に握った螺旋手裏剣や左手のチェーンソー剣で巫女の腕や胸を容赦なく斬りつけ、少なくない衝撃を与えた。
 たまは巫女の太ももへ齧りつくように取りついて、前脚の爪をバリバリと立てて引っ掻きながらずり落ちていく。
「さああ、大悪なる存在の抹消を以て、今日も裁きと正義を示しましょーぅ♪」
 ツグミは嬉々とした声音で、全身を覆うオウガメタルを『鋼の鬼』へと変貌させる。
 淡く光る白銀に覆われた拳を力一杯突き出して、巫女の下腹部を白い花咲く蔓草と共に打ち砕いた。
「あぅぅ……」
 何故だか全身火照っていたらしく耳まで赤かった巫女が、あっという間に蒼褪め、果ては土気色の顔になって倒れ、事切れた。


 その後も、順調に白の純潔の巫女を討ち取っていくケルベロス達。
「助け……て」
 巫女が苦悶の表情を浮かべて事切れる中、
「きゃーぁ! あーうー」
 白の純潔の種子だけは、突然周りの人数が増えて大立ち回りを演じているのが面白いのか、楽しそうに笑ってご機嫌だ。
「あんたなんか大嫌いッッ!!」
 混乱の中でもしっかり逆上した巫女が勢いよくビンタをかまそうとした、その時。
 バチィィィィィン!
 咄嗟にシルを庇ってかぐらが巫女の前へ立ちはだかって、仲間の代わりに頰を打たれた。
(「……確か、女の人からビンタを食らった時は、慌てず騒がずにじっと耐えれば相手を圧倒できる……だったかしら?」)
 デウスエクス相手に実践しても意味ないか、と微かに笑うかぐらだ。
「求道の果てに辿り着いた新たな境地……いざ」
 蒼眞はワイルドスペースから小檻と石英の残霊を召喚して『落ちる男』の出撃場面、即ちおっぱいダイブを敢行。
「俺の道はおっぱいダイブ、そして落下と共にある!」
 おっぱいを堪能した挙句小檻に蹴り落とされる定番の光景を再現するや、落下の勢いに乗って巫女の顔面へ激突すると、そのまま彼女の胸に飛び込んで揉みしだいた。
「あぁんっ、嫌ぁぁ助けてぇ、酷い事しないでッ!」
 何分自分らと種子の命を脅かす相手なだけに、白の純潔の巫女としては幾ら蒼眞が夢中になっても嬉しく無さそうだが、嫌がり方に余裕が感じられるのは気のせいか。
「慈愛の想いに溢れた素敵なヒールの実行ですよーぅ♪  誰の想いだったかは忘れちゃいましたけどねーぇ」
 鹵獲術士の力と降魔拳士の力を無理矢理に融合させるのはツグミ。
 今まで喰らった魂や想いなどの残滓と己の魔力を混ぜ合わせ、特殊なエネルギーをかぐらへ浴びせ掛けて、超感覚を呼び起こして頰の腫れを治してあげた。
「催眠増やすのも面白そうだよね!」
 果乃はジャマーの強みを活かして、チェーンソー剣の刃で巫女を斬り裂き、精神の均衡をますます崩そうとするも、残念ながら5割の命中率という賭けに負けて、回転刃は空を切った。
 幸い、たまのキャットリングは巫女の顎を強打したようだ。
「思った以上に他愛もない……ちょっと心が痛むわね」
 複雑そうな面持ちになりつつも、せっせとエクトプラズムを圧縮させるのは塗絵。
 巨大な霊弾を巫女へぶち当てて押し潰し、5人目へもしっかりとトドメを刺したのだった。
「ふぇぇぇええええん!!」
 白の純潔の種子は、巫女が5人全員地面へ突っ伏して絶命するとようやく異変を感じ取ったのか、耳を劈く音量でけたたましく泣き出した。
「魔法と拳術の合わせ技、とくと味わってっ!」
 シルは、恋人と編み出した複合精霊魔法を放つべく、左腕の一点へ闘気と魔力を集束させる。
「龍の気よ、六芒に集いし精霊達と共に、我が腕に集いて撃ち砕きし力となれ! ……龍よ、全てを喰らい尽くせっ!!」
 そのまま種子へ接近すると同時に魔力砲を解き放ち、黄龍の形を成したそれに種子の寝床が如き樹木を喰らい尽くさせた。
「一気に叩いちゃいましょう!」
 かぐらは砲撃形態に変化させたドラゴニックハンマーを全力で振り抜く。
 射出された竜砲弾が真っ直ぐに種子の胴体を貫いて、若葉の色をしたお腹に風穴を開けた。
「ティターニア、来い! オレの耳を塞げ!」
 目を瞑って、ティターニアを肩車するのはパトリック。
 拭えぬ不快感を抱えながらも、無数の残像伴う一閃を白の純潔の種子へしかと命中させた。
(「やっぱり良い気分じゃない。いくらデウスエクスとはいえ、完全に無抵抗の種子を攻撃するのは……」)
 Sadalmelikから伝わる生木を切り裂く感触が、パトリックを暗い気分にさせる。
「心を空に……鋭き刃に……白を刈り散らす刃と成れ……!」
 シェミアは、これで心置きなく種子を集中攻撃できると、蒼き炎獄の裁首を握り直す。
「終わらせる……沈め……!」
 極限まで研ぎ澄ませた魔力を鎌の刃に乗せ、他に類を見ない斬撃を魂ごと放って、ついに。
「フギャァアアアッ!!!」
 白の純潔の種子の息の根を止めた。
「どうだ? これで大阪城奪還できる時が来そうか??」
 安堵か後悔か、ともかく大きく息を吐くパトリックへ、
「その糸口を見つけるのは、これからの自分たちの行動次第でしょうねーぇ♪」
 ツグミが両手を天へ衝き上げつつ応えた。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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