赤翼の死神の陰謀

作者:澤見夜行

●ディープディープファング
 月明かりを反射して、その赤い翼が輝いた。
 大きく広げ、羽ばたく。
 赤き翼持つ女性――大振りの鎌をもった――は、そう死神だ。
 人気の無い山里に降り立つと、そばにある青い機械に近づいていく。
 青い機械――否、それはダモクレス。
 死神の帰還に合わせ動き出すダモクレスは、会話など出来ないようだが、どこか動物のような動きで死神を向かい入れた。
 死神は手にした球根のようなものをダモクレスに植え付ける――死神の因子だ。
「お行きなさい、ディープディープファング。グラビティ・チェインを蓄え、ケルベロスに殺されて……私の研究の糧となるのです」
 死神がそう告げると、ディープディープファングと呼ばれたダモクレスが動き出す。
 グラビティ・チェインを蓄えるため。
 そしてケルベロスに殺されるため。
 その行く先は――人の生み出した光溢れる――街だ。


「宮城県大和町に、死神によって『死神の因子』を埋め込まれたダモクレスが向かっているようなのです」
 集まった番犬達にクーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が事態の説明を開始した。
 説明によれば、ダモクレスは全長五メートルの鮫型で、空中を泳ぐように移動して市街地に到着次第、住民の虐殺を行うとのことだった。
「今回の事件は、これまでの死神の因子の事件と、少し違う背景があるそうなのですが、ケルベロスがやるべき事は変わらないのです。
 死神の因子に植え付けられたダモクレスを撃破して、人々を守って欲しいのです」
 続けて敵の詳細情報を伝えてくる。
「敵はダモクレス一体。噛み付きを得意とし、機械仕掛けの触手や、魚雷なども撃ってくるのです」
 こちらのエンチャントをブレイクする攻撃手段を持ち、動きを捕縛したり炎をばらまいたりするようだ。
 戦闘が行われる場所は市街地近郊になる。深夜ということもあり人影はなく、避難誘導の必要性はなさそうだ。ただ側にはすぐ住宅街が広がっている。家屋に損害を出さないような配慮が必要かもしれない。
「他の情報として、死神の因子を植え付けられたデウスエクスは、撃破されると、彼岸花の死の花が咲き、死神に回収されるという特性があったのですが、今回のダモクレスは、そういった特性を持っていないようなのです」
 これまでの事件とは、少し違う。そう感じさせる話だ。
 説明を終えたクーリャは資料を置くと、
「死神の動きは不気味だが、まずは暴走するデウスエクスの被害を食い止めないといけないのです。
 今回の敵であるダモクレス――ディープディープファングが、まるで死神を模したような魚類型であるのにも、何か理由があるかもしれないのです。
 何にしても、やるべき事は変わりません! どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
 ぺこりと頭を下げたクーリャが、番犬達を送り出す。


参加者
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
燈家・陽葉(光響射て・e02459)
巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)
四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)
レスター・ヴェルナッザ(凪の狂閃・e11206)
鏑木・郁(傷だらけのヒーロー・e15512)
村崎・優(未熟な妖刀使い・e61387)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)

■リプレイ

●怪魚型ダモクレス
 宮城県大和町。
 山に囲まれたその中心市街地の入口に番犬達は降り立った。
「深夜三時、流石にちょっと眠たいね」
 作戦会議を終えた後少し仮眠を取っていたリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)は眠気眼をこすりながら呟いた。
「人気の無い深夜を狙っての行動は常套手段だが、今回の死神は少し毛色が違いそうだな」
 照明のスイッチを入れ視界を確保する鏑木・郁(傷だらけのヒーロー・e15512)がそう口を開くと、平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)が手を振り上げて同意する。
「うみゅー。またよからぬことを企んでるのー。なんだかよく分からないけど、きっとよくないことなのー!」
「今回の敵は死神に似た魚型のダモクレスって話だよね。死神の方も今まで確認されてた黒衣の女性じゃなくて、赤翼の女性って聞くし、何を企んでいるんだろう……」
 燈家・陽葉(光響射て・e02459)の言葉にレスター・ヴェルナッザ(凪の狂閃・e11206)は頷いて、
「魚型のダモクレス。どっちつかずの半端者ってとこか。
 悪趣味なガラクタを作ったのはダモクレスか死神か……或いは手でも組んでるか?」
 どんな計画を企んでいるのかは知れないが、何方にせよ今は倒すだけというのならば、単純でいい、とレスターは思う。
(「赤い翼の……私が追っている死神とは別……か……。死神である以上何れ必ず斬ってやるけど……」)
 その為にはまずはこちらへと向かっているであろうダモクレスからだろう。四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)は自身に因縁ある緋華の死神の情報を追い、今ここにいる。今回の相手が目的の死神じゃないとしても、同種族である死神の情報を逃す手はなかった。
(「……調査などをやる柄じゃないが、ほっとけば一般人にも被害が出るし、ここは行くしかない」)
 同様に、死神に間接的に因縁を持つ村崎・優(未熟な妖刀使い・e61387)も不気味な動きを見せる死神を思い、握った手に力を入れると、戦闘を記録するために装備したカメラのスイッチを入れた。
「――差し詰め死神連中が何かやらかそうとし始めてるターンってトコか」
 準備運動をしていた巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)が視線鋭く前を見据える。
 その先に、中空を泳ぐ機械魚が迫っていた。
 現れた、ダモクレス『ディープディープブルーファング』だ。
「ともあれまずはあのサメをブッ壊してからだな。
 オーライ、踊るぜ。オレのダンス見てけよ!」
 ステップを刻む真紀。それを合図に番犬達が武器を構える。
「ギチギチギチィ!!」
 耳障りな歯ぎしりを立てながら、機械魚が迫る。
 死神の因子を埋め込まれたダモクレス、ディープディープブルーファングとの戦いが始まった――。

●機械魚との戦い
 機械魚が縦横無尽に宙を泳ぎ、番犬達に襲いかかる。
 無数に伸びるメカ触手が番犬達の身体の自由を奪い、放たれるサメ魚雷が自由の効かない番犬達に直撃する。
 耳障りな音を立てながら開閉する機械の歯は、強烈な力をもって番犬達の肌を咬みきった。
「素早いようだけど――それなら!」
 奏氷たる薙刀を構え、陽葉が機械魚に接近する。振り翳した槍を超高速で突き込めば、相手の神経回路を焼き切り強力な一打となる。陽葉は止まらず身を捻らせ拳に力を込める。雪と星に共鳴するオウガメタルが陽葉の身体を包み込み、纏い、動きの鈍くなった機械魚の装甲を鋼の鬼と化したその腕で幾度も殴りつける。甲高い金属音を響かせながら機械魚の装甲が拉げていく。
 たまらず間合いを取った機械魚が、無数のメカ触手を伸ばしてくる。
「やらせるか!」「やらせん――!」
 前衛を狙うその触手を郁とレスターが身を挺して庇い受ける。両者共に積極的に前に出て仲間達を庇う姿勢には、幾度も仲間達は助けられる。その度に仲間達から感謝の言葉が投げかけられた。
 触手を防ぎ切った郁は手にした武器を砲撃形態に変えると、機械魚に竜砲弾を雨を浴びせていく。機械魚の速度が落ち始めたのを見れば、さらに目にもとまらぬ早さで礫を飛ばし、多重に足止めを仕掛けていった。
「何を企んでいるのか……知らないけれど……、お前たちの企みが……どんなものでも必ず打ち砕く……」
 瞳の色を緋色に変えて、千里が疾駆する。近くの木々を利用して上空へと飛び上がれば、宙泳ぐ機械魚に肉薄し、”千鬼”を抜き放つ。装甲の接合部分を寸分違わぬ剣閃で切り裂くは、まさに達人の一撃。追撃に二度、三度と切りつけると、機械魚が千里を振り払うように身を暴れさせる。
 暴れる機械魚からの離れ際、空の霊力纏う一撃を叩き込めば、それは傷口を切り開く斬撃となった。
 リズムに乗ってダンサブルに戦う真紀は戦闘に並行しながら機械魚の動き、態様を観察し情報収集を行う。とはいえ、敵機械魚は目に見える情報を発信することはなく、情報収集は現状空振りしてしまっていると言えるだろう。
「オーライ。援護すんぜ」
 仲間達への援護も忘れてはいない。機械魚の噛み付きによって大きなダメージを受けたレスターに向け繰り出すは、二股尻尾の猫又の幻影。
「……ってなんで化け猫のヴィジョンばっか出んだよコレ」
 何故か出てくる猫系の妖パワーに悪態つきつつも、回復は的確に行われていた。
「悪いがここは遊泳禁止だ。勝手に泳がれちゃ困る。
 大人しくしてろ、人食い鮫の――お前の駆除が済む迄な」
 近接混戦を好むレスターが機械魚に肉薄する。怪我を厭わず、場合によっては無茶をも冒すレスターの突撃は脅威だ。己の役割を全うするという意思は強く固い。
 身を捻る勢いままに放つ流星纏う星光の一蹴が機械魚に重力の楔を打ち込む。足を止められた機械魚に、続けて螺旋力をジェット噴射させて突撃すれば、バンカーを持ってその装甲を撃ち貫く。盛大な音を立てて装甲が引きはがれていく。
「バカめ! 逃げられると思ったかー! 喰らえー! 加速度クラッシュキーック!」
 女児な声で高らかに。
 和はその小さな身体で戦場を駆け、機械魚に接近すれば星纏う蹴撃を放つ。重力の楔が機械魚の動きを止めたのを確認すれば、半透明の御業を生み出していく。
 御業は機械魚に向けて大きな炎弾を放ち機械魚を炎に包み込んだ。
 和は動きを止めること無く追撃し、さらなる蹴りを見舞う。この連続攻撃に然しもの機械魚もたまらず間合いを取ろうと後退した。
 そこに優が飛びかかる。
「っ゛ら゛ぁん゛うぅけ゛えええええええっ!!!」
 何を言っているのか杳として知れないが、裂帛の気合いとともに、優の右目から紫の炎がオーラとなって迸る。
 その神速の一突きはまさに暗雲を裂く電煌。優が機械魚に突き刺した『揺るぎなき怒り』を求める黒影の刃から魂までを痺れさせる強大な呪詛が放たれる。
 刃を抜き取ると同時、理力込めた星形のオーラを蹴り込めば、機械魚の装甲が引き剥がされていった。
「大人しく斬られろ!」
 優は両手に握った刃を擦り合わせ音を立てると、放たれる触手を掻い潜りながら機械魚に再度刃を突き刺していく。
「ちょっと! 見える! 見えるって!」
 触手に足を取られ逆さにつり上げられたリリエッタがスカートを押さえながら抗議の声をあげる。恥ずかしがる様は可愛いものだが、機械魚もソレを楽しんでいるわけではない。容赦なく、魚雷の発射口がリリエッタへと向けられる。
 魚雷が直撃――と思われたが、その直前、郁の炎纏う蹴りが触手を叩き、リリエッタを救出した。
「大丈夫か?」
「ありがと。むぅ……死神だけじゃなく、オークみたいな触手もちょんぎってやる」
 リリエッタは担いだバスターライフの銃口を機械魚に合わせると凍結光線とグラビティを中和し弱体化するエネルギー光を二連射する。放ったあとは即座に機械魚へ向け駆け出すと、宣言通り機械魚の背中に取り付いて、視認困難な斬撃でその傷口を幾重にも切り広げ、メカ触手を切り裂いて行った。
 ――戦いは番犬達のペースで順調に進んでいた。
 複数人を巻き込む触手攻撃と魚雷は脅威だったが、そのほとんどをレスターと郁が庇い被害を減らすことに成功していた。
 真紀の回復も的確で、特にダメージの大きいレスターと郁だったが、自ら回復を行うこともなく、攻撃に専念できた。
 行動阻害も有効に機能していて、おかげで攻撃手も的確に攻撃を命中させていた。機械魚の損害は甚大だ。
 真紀と郁は戦闘をしながら機械魚の動きをよく観察していた。
 とはいえ、死神との関係、これまでに戦ってきた敵との大きな差異は確認できなかった。逆に言えば、大きな差異がないことがわかったと言うべきか。
 番犬達は周辺住居にも注意を払い戦っていた。位置取りに注意し、機械魚の攻撃が住宅地へと向かないように配慮していた。その甲斐もあって周辺地域に大きな被害はでなかった。
 番犬達は宙泳ぐ機械魚を追い詰めていく。
「オーライ。逝かせてやんよ、大紅蓮」
 回復が十分と判断した真紀が、攻撃に回る。リズムに乗って敵味方どちらも魅了するダンスを魅せ、その勢いままに放つは二重の螺旋氷縛波。一撃目に放たれた氷結の螺旋は敏捷さを感じさせる勢いで機械魚を包み込み、その身体に氷を植え付けていく。つづく二撃目に放たれるは真紀のグラビティによって属性の変わった氷結の螺旋。頑健な力強さで機械魚を巻き込み、その傷口に新たな色違いの氷を与えていった。
 暴れる機械魚がその牙を剥く。しかし陽葉を狙ったその牙はレスターによって敢えなく阻まれる。
「硬い魚は三枚に下ろすのも一苦労だ。
 捌いた所で食えねえのは間違いないが」
 手にするは、嘗て”無風”と呼ばれた竜の骨。
 レスターは自らの腕に噛みつく機械魚を、大きく身体を回転させて引きはがすと、勢いままに蹴り飛ばす。即座に追いかけ無骨乍ら扱い易いその大剣を振りかぶれば、右腕の地獄の炎を纏わせ、叩きつける。鋭き眼光のレスターの一撃が機械魚のヒレをたたき折った。
「これでどうだー! なんか凄いぱーんち!」
 和が可愛い声で腕を振りかぶる。やればできるという信じる心が魔法となって和の拳に宿る。将来性を感じる一撃を機械魚に叩き込むと、両の腕を空へと高く伸ばした。
「うにゅらー! 智の重みを喰らえー!」
 和の全知識が頭上で一冊の本に錬成されていく。分厚い辞典を彷彿とさせる本が完成すれば、両の腕を振り下ろす。その動きに錬成された本がリンクする。落雷の速さにまで加速した質量伴う一撃が機械魚の頭(?)に直撃した。当然ながら本の角だ。
 拉げた装甲ままに、機械魚がサメ魚雷を発射する。爆炎が優とリリエッタを包み込む。
「大丈夫? リリが炎なんて吹き飛ばしてあげるよ」
 溜め込んだオーラを優へと放つリリエッタ。炎が消えたのを確認すれば優が機械魚へ飛び込んでいく。機械魚が反応して優へとメカ触手を伸ばす。
「援護するよ。……食べれる場所なさそうだけど、冷凍して出荷してやるよ」
 リリエッタの放つ凍結光線が、優の進行を阻む触手達を凍結し薙ぎ払っていく。その最中を優が疾走し、黒き影の弾を放ち牽制する。勢いままに機械魚へと肉薄すれば、黒影の刃を機械魚に突き立てた。溢れ出る呪詛が、再度機械魚の神経回路を破壊し機能不全に陥らせていく。
「僕達の力、見せてあげよう!」
 陽葉がグラビティを高めれば、生み出されるは信を置く仲間の残霊。長い銀髪を靡かせて赤い瞳の残霊――クーデリカが陽葉と残霊達の身体能力を強化し、同時に陽葉が矢を放ち機械魚を牽制する。
 疾駆する残霊――ピンクの髪の春撫が目にもとまらぬ拳による連撃で機械魚の動きを止めると、真紅の残霊――カトレアが刹那の呼吸で踏み込み手にした剣で一閃する。
 四人による連係攻撃は絶大なダメージを機械魚に叩きつけた。
「これで――どうだッ!」
 郁が機械魚に接近すると、その足に炎纏わせ激しく叩きつける。蹴り飛ばされた機械魚が、逃げ延びようと後退を始めるが、追い駆ける郁が機械魚の構造的弱点を見抜く一撃を痛烈に叩き込む。
 激しい音を立てて小爆発を繰り返す機械魚が、追い詰められたイタチのように最後の攻撃を放つ。だがその攻撃の悉くを郁がその身を盾に防ぎ切れば、もはや機械魚に打つ手はなかった。
「――さあ、お前も糧になれ……」
 千里のつぶやきに、装備したナノナニックハンマーのナノナノぬいぐるみが、やる気漲る表情を見せる。
 千里は一足飛びに機械魚へと肉薄すると、卓越した技量からなる一撃を見舞う。切り裂かれた装甲の先に機械魚の心臓部が見えた。
「気づいたときにはもう遅い……さよなら」
 千鬼流伍ノ型――弓を引き絞るように引いた刀、刹那一息のもとに機械魚の心臓部に突き立てられる。鋭き突きは単純な刺突ではなく、反発する重力エネルギー塊が流し込まれている。
 引き抜き、妖刀”千鬼”を鞘へと納めれば、エネルギーの奔流に耐えきれなくなった機械魚が、轟音を立てて爆発した。
 死神の因子を植え付けられたダモクレス『ディープディープブルーファング』はそうして番犬達に撃破されたのだった。

●勝利の後
 爆散するディープディープブルーファングを番犬達は慎重に観察していた。
 死神の因子を植え付けられたデウスエクスは、死の間際彼岸花を咲かせ死神に回収されるという特性を持っている。
 今回の敵はそういう特性をもって”いない”とされていたが、真実どうなるか確証を持っていなかった。疑り深いのだ。
 慎重に様子を窺い、何が起きても対処できるように準備する。油断なく、隙を見せず。
「何も起きなさそうだねー」
 特に用心していた和が、爆発も収まり完全に沈黙した機械魚の残骸を前にそう言葉を零す。
 慎重に近づいて残骸を見回すものの、コレといって目に付く所はない。……死神の因子とやらも見つけることはできなかった。
 番犬達が残骸の前に集まり、様子を窺う。足で小突いたり、手で触れて見てもそれは何の変哲もない残骸だ。
「それじゃどうするか。調べるか?」
 郁の提案に、カメラで撮影していた優が頷いて、
「危険がなさそうであれば、残骸を持ち帰って分析に回すのが良いんじゃないかな」
「それが良いだろうな。ここでは調べられることにも限度がある」
 レスターが同意すると、他の仲間達も同意するように頷いた。
 番犬達は手分けして機械魚の残骸を調べ、めぼしい物を拾っていった。
「むぅ……眠いよ」
「……こんなもんだろう。そろそろ帰らないか?」
 眠い目を擦りながら念入りに調べていたリリエッタを見て、粗方調べられただろうと帰還の提案をする郁。
 手に入れた残骸からなにかわかれば良いのだが。期待と不安の入り交じった感情を抱えたまま、番犬達は被害のあった箇所をヒールするとその場を後にした。
 動かなくなった機械魚の残骸を、月は静かに、いつまでも照らし続けていた――。

作者:澤見夜行 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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