ビフォア・ビカミング

作者:長谷部兼光

●癇癪
「お前巫山戯てんのかよぉ!!」
 身の丈三メートルを超える大男――エインヘリアルは地に伏せる青年の首根を掴み、強引に吊り上げた。
「がっ、はっ……!」
「おらァ! 目ん玉ひん剥いてよぉく見てみろ! 辺りは火の海、恋人は左右に真っ二つ、その上出血大サービスでてめぇの片腕捥いでやったんだぜ? ここまでお膳立てされたらお前……何か不思議な力とかに目覚めて一矢報いるシチュエーションじゃねーのかよ! ああ!?」
 理解不可能な理屈を並べ、エインヘリアルはさも青年が悪とばかりに糾弾する。
 ほんの十数分前まで、青年は四方に散乱している大勢の人々と同じように……平々凡々とした人生を歩んでいた。
 突如として現れた異星人に面罵される理由など、一つとしてありはしない。
「な……何だ? 何を言って……!」
「いやもういいよお前喋んな使えねぇ。ちったぁこっちの気持ちも考えろよ。確かに俺達ゃグラビティチェインを得る為にお前達をぶっ殺さなきゃなんねぇが、その作業が特別面白いって訳でもないんだぜ?」
 エインヘリアルは大欠伸をしながら大剣を振り上げ、無造作に青年を叩きつぶす。

「だから俺は、俺専用の宿敵(おもちゃ)が欲しいんだよ」

●狂者の憂鬱
「何のことは無い。このロブと言う名のエインヘリアル、他者の人生を壊し弄ぶことを何よりの楽しみとする……ただの狂人だ」
 そのような嗜好を持つに至った経緯すら無く、恐らく最初から壊れていたのだろう、と、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)は語る。
 アスガルドでも凶悪犯罪者として『永久コギトエルゴスム化の刑』に処されていた彼だが、そんな彼だからこそ人々に恐怖と憎悪をまき散らす人材としては最適だと地球に解き放たれたのだ。地球で活動するエインヘリアルの定命化を遅延させるための装置と言ったところか。
「宿敵が欲しいなどと嘯くが、青年を狙った理由も粗雑極まりない。道行く群衆の中で『偶然目に付いたから』。誰でもよかったのだな」
 早い話好き勝手暴れ回っているだけに過ぎないが、それでもこのまま放置すればいつか男の望み――襲撃されてケルベロスに覚醒する人間の登場は叶う。
 ……多くのデウスエクス達の手によってそれは既に証明済みなのだから。
 だが、その結果に至るまでに出る犠牲は百や千では効かないだろう。
 少なくとも、今回の襲撃で男は『成果』を得られない。
 戦場となるのはとある都市の繁華街。介入できるタイミングは男がそこに現れ凶行に走る直前。
 夏休みの昼時だ。言うまでも無く周辺は人でごった返している。何かしらの人払い策は必要だろう。
「この男が何処かの誰かの宿敵となってしまう前に、止めなければならん……任せたぞ」


参加者
シナト・ワール(ストーム・e04079)
サイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394)
西院・織櫻(櫻鬼・e18663)
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)
グレッグ・ロックハート(浅き夢見じ・e23784)
一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)
シュラ・ドゥルガー(ディストラクション・e50419)

■リプレイ

●接敵
 突風が繁華街に吹き荒び、道行く人々を竦ませる。僅か数秒程の出来事だ。
 だが、デウスエクスとっては、たったそれだけの間隙があれば十分なのだろう。
 風が止み、人々が目を開けば、エインヘリアル――ロブの姿がすぐ其処にあった。
 ロブは何が起ころうとしているのか認識できずにいる人々を嘲り、掌上に火種を焚く。
 これから始まる地獄の光景を止められる人間など誰一人としてこの場には存在しない。
 ――筈だった。
 だがそうなる前に、それをさせない為に、ケルベロスが此処に居る。
 サイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394)は、呆とする人の波をかき分けて、グラビティを籠めた己の拳を容赦なく、下卑た顔面に打つ。
 絲裁(イトタチ)。翳す手ひとつで『気』に干渉し、『重い鎖で縛られた』『糸を切られた』かのように錯覚させ動きを封じる神経攻撃。本来なら対象へ接触せずとも良い仕組みだが、
「なんだ、見るからに在庫処分のかわいそークンじゃねえか。見飽きたっつうーの」
 この男は随分殴り甲斐があると見た。
「……あん? こっちはてめぇらのお仲間増やしてやろうってんだぜ? すぐにこさえてやるからよ、指ィくわえて黙って見てな」
 静まり返った繁華街に二人の応酬が浸透し、人々は漸く正気を取り戻す。そして次に起こるのは悲鳴と混乱だ。
 落ち着いてくれ、とグレッグ・ロックハート(浅き夢見じ・e23784)が人の波に呼び掛ける。今の状況でも、割り込みヴォイスを用いたグレッグの避難要請は確実に人々の耳へと届いている。が、突如として往来の真中にエインヘリアルが現れたこの状況、混乱が収まるには今暫くの時を必要とするだろう。時間を稼ぐ為にも、そして、後に続く仲間の為にも、この男に二重の足止めを施さなくてはならない。
「身勝手な欲で人の命を弄ぶ……」
 グレッグは戦鎧・戦華に白銀のオウガメタル・穿華を纏い、己が身を一個の武器へと変え、鋭刃の如き蹴りを敵に叩き込んでその機動力を奪う。
 穿と戦。純白の翼を広げ、二つが交わり咲くは稜閃華。
「戦いを望むならいくらでも……確実に潰してやる」
「そうかい。だったらあっちこっちにばら撒くか!」
 ロブは掌中で燃え盛る火を無造作に放つ。火種は空を焦がして大火に変じ、サイガとグレッグ、後衛を呑み込まんと迫り来る。
 周囲の避難が済んでいない。下手に回避すれば想定外の場所へ『飛び火』してしまうかもしれない。
「――ならば此処は余達が引き受けた!」
「ああ。そういうこった!」
 大火が後衛を焼こうとした刹那、一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)とシナト・ワール(ストーム・e04079)が盾となり、火の粉の一片に至るまで受け止める。
「貴様の思う様にはさせぬぞ、この外道がッ! 己の私欲の為に、この様な凶行を行うとは……誰が許そうと、余達が決して許しはせぬ!」
 白は戦旗をはためかせ、オウガメタルが変じた戦馬の上よりロブを睨む。
「はは! 言うじゃないか。百点満点だ。けどまぁ俺の存在とか全く関係なく力がある点に関してはマイナス千点だな。一旦記憶喪失になってから出直して来いよぉ!」
「世迷い事を……!」
 これ以上の問答は不要だろう。白は戦旗を天高く放り、戦馬と合身する。同時、鎧と成った戦馬より放たれる粒子が白のビハインド・百火の超感覚を呼び起こすと、百火は蒼穹に舞う戦旗を念力で捉え、ロブ目掛け投射した。
「はっ、テメェの宿敵が欲しいとかガキか。こっちは真っ当に生きてんだ。ごっこ遊びなら他所でやれっての!」
 靡く戦旗を目印に、シナトは敢然と距離を詰める。
 この狂人に、人の輝きを消させはしない。
「こちとら数百歳は年上だぜ? むしろ敬意を払うのが筋だろうが」
「歳なんざ関係ねぇ。精神(なかみ)の事を言ってんだ。自分より弱い相手にイキってんのは腰抜けのクソガキだってな!」
 シナトはそう啖呵を切って、これが漢の闘いとばかりに超至近距離からヘッドバットを叩きつける。
 当たるかどうかは五分五分と言ったところだったが、スナイパーたちがロブの脚を奪った事が奏功し、想定通り、怒りの矛先はシナトへと向いた。

●全霊
「危険なデウスエクスが暴れていると聞いて来たら――猪か熊にも劣る狂獣か。我が鍛錬を試すに相応しい猛者ならば、畢生の宿敵となり得たかも知れんが……」
 シュラ・ドゥルガー(ディストラクション・e50419)はエインヘリアルの真正面から組み付いて拘束すると、五体を駆使し、物理的に彼の視界を遮る。
「弱い者しか狙えぬ臆病者は屠殺するのみよ」
「てめぇ!」
 私達がこの男の動きを封じている間に退避を、とシュラが再び周囲へ勧告する。巻き込まれるはずだったいずこかの青年はケルベロス達に軽く礼をし、恋人の手を引いて走り出す。その間も、シュラはロブに対する拘束と挑発を緩めない。
「私たちはケルベロスです。落ち着いて避難をしてください」
 ソールロッド・エギル(々・e45970)は拡声器片手に凛とした風を巡らせ、混乱の渦中にあっても余裕のある態度を崩さない。
 ここでケルベロスが慌てる姿を見せれば、敵に利するだけだ。
「今ここにいる英雄、戦う意思を見せる勇士に、奇跡を!」
 それでも心配そうな目でこちらを見遣る子供へ大丈夫だからと笑みを返し、ソールロッドが歌うのは、かつて武器に狂うエインヘリアルと戦ったケルベロス達の雄姿を紡ぐ、英雄の詩。
 此処にも英雄が七人いる。自分はそれを支援するのだ、この一戦ものちに語り継ぐのだと、そんな想いを籠めて詠う。
「『アームズ・マニアクス』……懐かしい話です」
 瑠璃丸、櫻鬼。あの時と同じ二振りを携え、西院・織櫻(櫻鬼・e18663)はエインヘリアルと相対する。
 現状、誰一人として犠牲者は出ていない。事前のルート調査の成果だろう。
「己の為に敵を求めると? 成程、私と似たようなものですね。刃を磨く為には相応しい敵が必要。故に、あなたの血肉も我が刃の糧とします」
 ソールロッドの詩に鼓舞された織櫻は、まず瑠璃丸を引き抜いて黒刃に雷を奔らせ、神速を以て巨躯を貫く。
「殺人狂め。俺はただ、暇っつぶしの玩具が欲しいだけさ」
 ロブは諦め悪く周囲を物色しようとするが、朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)がそれを許さない。
 オウガメタルが前衛へと発した光輝く粒子がロブの目を眩ませ、その間に、環が割り込みヴォイスで誘導していた最後のグループの避難が終わる。
「何が宿敵がほしい、ですか。勝手にあなたの欲望に巻き込まないでほしいのです」
 爆ぜた音。閉所。嘆きと憎悪に啼く鬼。あの時の恐怖は、無力感は、誰にも味わわせたくない。
「ただの外道に成り下がった奴に、これ以上の好き勝手は許さないっ!」
 だからこそ、この男に対しては怒りしかない。
 環は決然とエクスカリバールを構える。
「名も知らぬ誰かのためにか? 物好きだねぇ」
 全力だ。
 全力この男を叩きのめす。

●がらんどう
 接敵より数分。戦場となった繁華街を賑わせるのは、番犬と巨躯の剣戟のみ。一般人が戻ってくる気配も無く、野次馬とて命は惜しいのだろう。そのお陰でサイガには殺界形成に回す筈だった一手番分の余裕があった。
「宿縁に命焦がすヒトを知っている。『念』ってのはおそろしく強い。アンタもまぁ、ガタイの割には小回りが利く方だが……」
 含みを持って嗤うサイガは高々と跳躍し、自由落下と共に加速をつけたアックスをロブの脳天に見舞う。
「確かに、素早い。だが、大層な口を利く割りに、少しでも攻撃を躱そうとする立ち回り――貴様、自分の力に自信がないのか? 違うというなら、正面から懸ってこい。オウガの全力が怖くなければな」
 シュラは発破をかけるようにロブを挑発するが、
「いやはや全くその通り。鬼の相手は怖いから、悪いが避けて通るぜお嬢さん? こんな風にな!」
 シュラへの怒りをすり抜けて瞬刻、ロブは環の背後に回り、躊躇無く大剣を振り下ろす。
 環への奇襲はしかし成功することなく、シュラが寸前バスタードソードで受け止めた。
「おや。そっちが俺の前に立つのなら、結局戦わざるを得ないじゃないか。なぁ?」
「――度し難い、と形容するのも憚られるその性根。いいだろう。その方が遠慮なく私の力も揮えるというものだ」
 奇襲を退けたシュラは、固めた拳を虚空へ振るい、そうして引き起こした凄まじい拳圧が環のダメージを吹き飛ばす。
「猛吹雪にご注意ください、なんてね?」
 治癒の嵐の中に立つ環は、密かにロブの足下へ敷設していた『魂』を竜巻上に撃ちだす。冷却式のグラビティを練り込んだ『魂』は、ロブの体を凍てつかせ、縦横無尽に切り裂いた。
「白さーん!」
「応! 行くぞ百火! 環殿に続くのじゃ!」
 百火が氷嵐越しにロブを金縛る。白自身は『魂』を突っ切って肉薄すると、さらにもう一段震脚で踏み込み、鬼鋼を集積させた右拳をぶつけた。
 嵐の終わり、振るう櫻鬼が飛沫く血液すら悉く断ち、織櫻はただ、静かにロブの四肢を斬る。
「我が斬撃、遍く全てを断ち斬る閃刃なり」
 ケルベロスの連撃を受け、ロブが脱力しているその間、ソールロッドは魔導書にある禁断の断章を紐解いて、シナトの脳細胞に極限の強化を施す。
(「僕の命を救ってくれた聖王女に誓って、彼に敗ける訳には行かない……!」)
 そんなソールロッドの決意を、ロブは全く見透かせない。
「ちっ、これだから覚悟が決まってる奴らの相手は面白くねぇ。今更俺が何かしたところで、歪んだり壊れたりしないもんなァ。やっぱ覚醒(おはよう)から死亡(おやすみ)まで、全部俺監修のヤツが良い!」
 ロブは自分勝手な欲望を吐き出すように咆哮する。
「悪い、ソールロッド。お前に活性化してもらった頭だがよ、コイツの言うことには何一つ共感できねーし理解も出来ねぇ」
 シナトは獣拳をエインヘリアルの胴にめり込ませ、お前はどう思う? とグレッグに訊いた。
「さあな。性根が腐りきった外道の話など聞くだけ無駄だろう」
 グレッグは冷静沈着に言葉を返すが、内心猛るのは非道な敵への憤り。
 性根を叩き直す必要性すら感じない。ただ、早急に潰すのみ。
 火術を潜り抜け、氷気を帯びた右掌で喚く男の口を塞ぎ、その舌ごと時を封じるように……零距離から凍結弾を撃ちだした。

●応報
 大勢は決しつつあった。接敵した際には身軽だった男の動きも鈍りに鈍り、今となっては砂袋とそう大差ない。
 百火の物と思しき無数の緑鎖が何処からともなく飛来し、織櫻が刻んだ雨音断ちの傷痕に巻き付いて、ロブの四肢を拘束する。
「ああクソ! 何だよこれ。縁も所縁も無いやつらに殺されるなんざ、路傍の石っころと同じ扱いじゃねぇか!」
「……それはそうであろう。だからこそ、そうさせないために余達は無辜の人々を守るのじゃ」
 言いながら、白は護るものの無い男の懐に近づく。
「お前に宿敵は不要じゃ……何せ、此処が貴様の死に場所になるのじゃからな!」
 そして、極限まで練り込んだ気とグラビティ・チェインを気脈の中心―――ロブの身体の中央に叩き込む。撃ち込まれた二つの異物は肉体の内側で混ざり合い、反応し、そうして生まれた極大の破壊力が、男の全身を駆け巡る。
「砕け散れ。微塵すらも残らず。度しがたい妄執ごとな」
 内より崩壊が進む男の体へ、シュラは外部からオウガの膂力で思い切り打擲する。
 膂力が吹き飛ばしたのは、その身が抱える因果律。『因』を消されたものがこの世に存在することは能わず、内と外で同時に進む全崩壊(ディストラクション)は、零への消滅を男に宣告する。
 崩れ始める男。それでもなけなしの意地か、未だ剣を繰るだけの気力は残っているらしい。
 男は残るすべての力を絞り、織櫻へ大剣を振り下ろす。が、織櫻は二刀で受け止め火花を散らし、男の剣撃を往なしきる。
「おや。ありがとうございます。今ので脂が落ちました」
 続けて斬霊波を放つ直前に、ちらと二刀を見る。刃毀れ一つ見当たらず、むしろ戦闘前より僅か輝きを増しているだろうか。
 内でもなく、外でもなく、瑠璃丸と櫻鬼が放った衝撃波はロブの霊体のみを切り裂いて、最早拘束が無くとも男の防御はがら空きだ。
「環、行けるか?」
「大丈夫ですよー。グレッグさん!」
 邪気の無い環の応答にグレッグは一瞬口元を綻ばせ、そしてロブを見据えた。
 内より出ずる蒼い炎が穿華に燈り、グレッグは戦場を疾駆する。
「怒りや復讐心で力に目覚める者など、これ以上、決して居てはいけない……それを生み出そうとするあんたの存在自体もだ」
 燃える拳を撃ち込めば、男の右腕は焼失し崩壊が目に見えて早まった。
 環は蒼炎の残光を追いかけて、炎の終点――ロブに至る。
 自分が戦い続けるのは目覚める前の日常に帰るため。
 自分が前に進もうと足掻くのはあの悲劇を他の人に見せないため。
 そうだとも。この男が誰かの啼鬼となってしまう前に――。
「無力な人を徒に巻き込むな!」
 万感の思いを込めて、環はエクスカリバールをフルスイングした。
「絶体絶命の危機に不思議な力に目覚め……ですか」
 ソールロッドは黒のロザリオに触れる。普段服の下に隠しているそれは、今、この時だけ堂々と陽光を浴びて、誇らしげに煌いていた。
 環の持つバールに生えた膨大な数の釘がジグザグに、男の体に潜む悪性(バッドステータス)を増幅させると、ソールロッドはオーラを刃に変え、不可視の斬撃で急所を掻き切って、悪性をさらに加速させる。
「『普通の人』は非日常ではなく日常の中で生きていくのですよ。それはとても素晴らしいことであり、貴方のような者はお呼びではないのです」
「……けどよ。テメェみたいなクソ野郎でも命は命だ。名前くらいは覚えておいてやるよ」
 シナトは空の霊力をグレイブに纏わせ、三度ジグザグにロブを刻む。
「命の取り合いなんざ楽しくもねェが、作業にしたらテメェと一緒になっちまう……だから全力でやってやる」
 全身の傷口から止めどなく噴出する悪性を、止める術は最早無い。
「おいおい、もう死んじまうのか? しかし奇遇だな兄弟、俺も興味あんだよ。宿敵。コイツを殺せば死んでもいい。燃えるよな日々の彩り――そんな」
 刹那。
 サイガの繰るChainは、
「残念。てめえじゃ力不足みてえ」
 呆気なく、男を左右二つに分けた。
「ま、奇遇のよしみだ。俺も覚えといたるよアンタのコト……おうち帰るまでは!」
「……畜生!」
 遂にロブは力尽き、野望と共に消え失せる。
 戦場にヒールを施せば、ロブが存在した痕跡すら、きっと時間と共に薄れゆく。

 故に。
「……なんであろうと殺したんだ。だから、その重みは背負ってくぜ」
 ロブの野望がどうあれ成就することは永劫無い。だが、シナトのその覚悟は、如何仕様もない男にとって、望外の救いと言えただろう。

作者:長谷部兼光 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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