星空紀行

作者:つじ

●take off
 夏も盛り、緑の生い茂る田園風景の中に、今は役目を終えた鉄塔が鎮座していた。
 コギトエルゴスムを抱いた機械が舞い降りたのは、その足元。そこには、四つのプロペラを持つ小型のドローンが落ちていた。
 誰かが操縦を誤ったのか、それともただ捨てていったのか、半ば壊れたそれに、コギトエルゴスムがそっと触れる。
 光と共にヒール効果が発動。周りの鉄塔を、土台のコンクリートを、そして周り転がるゴミの類を巻き込んで、ドローンは修復を遂げた。

 もはや小型とは言い難い身体を得たダモクレスは、プロペラを回転させ、唸りを上げる風と共に、夜空へと飛び立った。
 星の光に紛れ、眼下に見える街の灯に向けて、巨大ドローンは加速する。
 
●flight
「皆さん大変です! 市街地上空にダモクレスが現れる事が予知されました!!」
 ハンドスピーカーを構えた少年、白鳥沢・慧斗(暁のヘリオライダー・en0250)が、ケルベロス達に大きな声で呼びかける。
 話によれば、山間部に捨てられていた電化製品の一つ……いわゆるドローンがダモクレスと化したらしい。
 予知情報から避難は進んでおり、直近の市街地から市民を移す事に成功している。しかし、それも長くは続かないだろう。
「放っておけば、避難用の施設の一つに至り、虐殺が始まってしまいます! 皆さんには、その前にこのダモクレスを撃破して頂きたいのです!!」
 敵は全長10m程の巨大なドローンの姿で空を飛んでいる。地上からの攻撃で倒す事は至難の業と見られるため、今回はヘリオンからの降下作戦が実施されることになった。
「幸い敵の火砲は下を向いているものがほとんどです、上方からのアプローチであれば、比較的安全に接近できるでしょう!」
 敵に飛び乗り、攻撃して破壊する。シンプルな作戦ではあるが……問題は、戦場が市街地上空であるという点だろうか。敵を倒せば墜落は避けられない。人々の避難が済んでいるとはいえ、街中に落とせば甚大な被害が出ると見込まれる。
「とはいえ、解決法が無いわけではありません! おおよそ戦闘開始から10分ほどすると、ドローンは避難の済んだ市街地からまた田園地帯に差し掛かります! ここから避難施設に敵が辿り着くまでの3分の間に敵を仕留められれば、被害は最小限に抑えられるでしょう!」
 上面に取りつかれた場合、このダモクレスは攻撃用の爆弾ドローンや、修復用の小型ドローンを使って状況に対応しようとする。また、複雑な軌道で飛ぶことで、こちらを振り落とそうとしてくるだろう。
「振り落とされてしまった場合、翼を持つ方々でも再度合流する事は難しいと思われます。十分注意し、対策を練っていってください!」
「対策……というと、命綱を持っていくとか、そういうことだろうか」
「どうでしょう、戦闘を行う事を考えると極めて邪魔になるのでは?」
 慧斗の言葉に、五条坂・キララ(ブラックウィザード・en0275)は口元を押さえて考えるようにする。
「確か鎖状の武器もあった、ね? その辺を使ってみようか」
「ケルベロスチェインの事ですか? 確かにそれも一つの手ですね!!」
 ああでもないこうでもないと言い出したキララを引きずり、一行はヘリポートへと向かった。
「僕も、極力敵に近づけるよう頑張ります! その後の事はお任せしましたよ!!」
 信頼を滲ませたヘリオライダーがその後ろに続いた。


参加者
サイファ・クロード(零・e06460)
リサ・ギャラッハ(銀月・e18759)
葛城・かごめ(幸せの理由・e26055)
オリビア・ローガン(加州柳生の伝承者・e43050)
ドロッセル・パルフェ(黄泉比良坂の探偵少女・e44117)
陸堂・煉司(冥獄縛鎖・e44483)
死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)
鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)

■リプレイ

●乗船
 街の夜景を見下ろすそこに、低い唸りを上げてドローンが舞う。通常のものを遥かに超えるサイズのそれに、いくつもの影が舞い降りた。
 空中で身体をくるりと回転させ、オリビア・ローガン(加州柳生の伝承者・e43050)がしなやかに着艦。続けて降下した鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)の体重を受け、機体が揺れる。
「ワーオ! いい眺めデース! いつものヘリオンとはまた乗り心地が違いマスねー」
「乗れるほど大きいドローンにお目にかかれるたぁ、思ってもみなかったぜ」
 眼下の町、そして遮るものなく広がる星空に、二人は視線を送った。
「なるほど、中々の眺めですね」
「まぁ、玄人のオレからすればまだまだだけどな」
「……こんな時でもなければ月見をしたかったですね」
 葛城・かごめ(幸せの理由・e26055)とサイファ・クロード(零・e06460)、そしてリサ・ギャラッハ(銀月・e18759)も無事乗り込むことに成功。言葉の割にサイファの翼も羽ばたくように揺れている。機嫌は悪くないようだ。
「ブンブンと飛び回りやがる。まぁ、いつまでも飛べると思わねぇこった」
 足下の敵に向かって鋭い視線を送る陸堂・煉司(冥獄縛鎖・e44483)の後ろに、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)、五条坂・キララ(ブラックウィザード・en0275)が着地。心なしかふらふらしているキララに刃蓙理が声をかける。
「田園地帯での敵破壊を狙います。五条坂さんも、お願いしますね……?」
「ああ、了解しているとも!」
 飛行経路の予測は既に成されている。方針は明確だ、市街地への被害が最小限になる位置まで保たせ、そこで倒す。
 そのための時間を計測するため、ドロッセル・パルフェ(黄泉比良坂の探偵少女・e44117)は片目を閉じた。
「それでは、作戦を開始します」
「人気の無い田園ゾーンまで、スカイの旅にGOデース!!」
 アイズフォンの画面に、時間表示が浮かぶ。

●夜間飛行
 侵入者、もとい乗り込んできた敵の存在を察知したか、ダモクレスの装甲が一部開き、ドローンが射出される。
「応戦しますね」
「こちらも手を貸す!」
 金属粒子を風に乗せたリサと、テレビウムのフィオナが敵ドローンの前に出た所で、道弘もまた自らの所有するドローンを解き放った。ヒール用のドローンは回復と同時に、その身を盾に敵ドローンを妨害する。
「せっかくの空中散歩だ、邪魔すんなよな」
 接触即爆発と言う無茶な動きをする敵ドローンに身を晒し、サイファがもう一つ、と手を伸ばす。手にしたロッドがスパークし、雷撃が発生。ドローンの群れの一区画を吹き飛ばした。
「イエース! 続けて行きマース!」
 その間隙を縫ってオリビアが跳ぶ。初手から放たれるは大技、『加州柳生殺法:磁巫士・電者』だ。空中に召喚された巨大チェーンソーが振り下ろされ、ダモクレスの装甲をガリガリと削り始める。
「今の内に削っておきたいところですが……」
 同列のドロッセルも呪詛を込めた薙刀を振り下ろすが、装甲に刃が食い込むものの両断には至らない。かなり頑丈にできている、そう実感するが、方針を変えるほどではない。
「無駄に固いな」
「仕方ありません、地道に行きましょう……」
 忌々し気に轟竜砲を放つ煉司に、敵のドローン発進口を鎖で締め付けながら刃蓙理が言う。
 続けて発生する第二波をやり過ごしながら、ケルベロス達は敵の装甲を削りにかかった。
「これは、様子が……?」
 そんな中、機首部分に轟竜砲を撃ち放していたかごめがそれに気付く。
 埒が明かないと踏んだか、ダモクレスが文字通り動きだしたようだ。四基のプロペラの出力がそれぞれに変わり、響く唸りのリズムが変調する。
「わっかりやすいな……全員、備えろー!」
 呼び掛けつつ、サイファが姿勢を低く保つ。警戒すべきは、そう、足元。
 進行方向に対して下面を立て、機体は急制動。そのまま右方向にダモクレスが倒れていく。下から見ている者が居れば、急角度で弧を描くドローンの姿が見れただろう。
「おおおおおっとぉ!?」
「オーマイガッ! ベリーデンジャーデース!」
 急激に傾いた足場に、慣性から吹き荒れる風。機体上はなかなか騒がしい事になっている。サイファは壁歩きを併用してバランスを取り、オリビアは二刀を敵の装甲に突き刺す事で支点を確保、敵の振り落とし攻撃に耐える。
「無茶苦茶な軌道だな、普通なら機体ごとバラバラになりそうなもんだが……」
 ダモクレスであれば大丈夫、ということだろうか。骨装走行法を発動した道弘は接地点を増やして転がり落ちるのを防ぎ、一方でバランスを崩したかごめは、ダブルジャンプで無理矢理身体を押し戻した。
「そろそろ、大人しくしていただけますか」
 かろうじての機体への着地になるが、かごめはそれを活かして、降下の勢いを乗せた一撃を叩き込む。
 ぶん殴られた衝撃で機体がぐわんと一度揺れて、元の軌道へと戻っていく。
「はぁ……もう、ダメかと」
「た、楽しいけどスリル半端ねぇ……!」
 また通常の飛行に戻った事でキララとサイファが息を吐く。
「もう少し、掴まれる箇所を増やした方が良いかも知れませんね」
 そういうと、リサはおもむろに屈み、足元の装甲を引き裂き始めた。素手で。
「リサ君、どうやってるんだいそれ……」
「グラビティを使えばこれくらいは可能だろ」
 ブラックスライムを敵機体に齧り付かせるキララに、こともなげに煉司が言う。そして。
「瘴霧一閃。――呪縛、解放。こういう使い方もありか?」
 冥獄絶刀・瘴。解放された呪詛が、煉司の掌を伝ってケルベロスチェインに流れ込む。通常なら妖刀を形作るそれだが、今回ばかりはしなやかな鎖に沿う。
「……まぁ、悪くねぇ。滅多打ちといこうじゃねぇか」
 振るわれる鞭のようにしなる刃が、ダモクレスを切り刻んだ。

 度重なる損傷を受け、ダモクレス側はまた別の機能を持ったドローンを発進させ始める。クラゲのような見た目のそれは、修理機能を備えているようで、破損個所に至った者から、自らの身体を剥がして傷口を縫合するように動き出す。
「面倒な真似をしやがる……阻止できるか?」
「ええ、邪魔はできます……」
 刃蓙理の手にした白い妖剣が幾度か振るわれ、修復中の箇所に新たな傷が生まれる。
「呪いの死灰が生気を奪う……」
 灰弩螺煤屠。刀身から灰の粉が白く舞い散る。損傷部に塗り込まれるように撒かれたそれは、ドローンによる修理行為に悪影響を及ぼし始めた。
「ここからは任せてくださサーイ!」
 続けてオリビアの愛刀マサクゥル丸がその武骨な刀身で傷口を大きく広げていく。たまらず、というように、ダモクレスの機体が傾いだ。
「――またやる気か」
 状況を察知し、道弘がまた身を伏せる。そのタイミングで、バランスを取る事を放棄するように、左右のプロペラがまた音を変えた。先程とは違い、速度はそのままに左右のバランスを振る変調。機体は前進を続けながらも、振り子のごとく左右に踊る。
 繰り返される極端な方向転換に、複数人の身体が浮いた。
「おっと、ちっぽけな人間に喰らい付かれる気分はどうだよ……!?」
 猛禽の爪のように変形させたオウガメタルで、煉司は敵の機体を掴む。彼のように武装を食い込ませるなどすれば、まだ敵の動きにも耐えられる。だが、そうではない者も居た。
「――ッ!?」
 相対的に浮かび上がってしまったリサとフィオナが視界から消えるのを見て、ドロッセルの表情が引きつる。
 予知で言われていた通り、翼を以ってすら追従が難しい状況、たかが一回跳べる程度のダブルジャンプでどこまで対応できるのか。
「あっぶない――ですね!」
 そんなぎりぎりのところでドロッセルはウェポンエンジンを点火。薙刀ごと我が身を急降下させ、攻撃と同時に再度敵機体に取りついた。そして彼女の奮闘の少々後ろでは、敵に巻き付けたケルベロスチェインで身体を支える者達の姿が。
「あっ」
「えっ」
 しかしそこで、キララの巻き付けていた鎖が外れた。ふわっと体が浮いた彼女と、サイファの視線が交錯したのは一瞬の事。
 これ今から手を出しても間に合わないってか共倒れもあるな――。長いような短いような思考の後、サイファの眼が、切なげに細められた。
「うっそ普通見捨てるうううう!?」
 ドップラー効果を伴いすっ飛んでいく相手を見送り、サイファが目元を拭う。
「……アイツ、見た目は綺麗だしカッコイイのに、口を開くと残念だよな」
「聞こえてる! 聞こえてるからねサイファ君!!」
 あ、落ちてない。
「危ない所でした……」
「その様子でしたら、まだまだ戦えそうですね」
 かごめの伸ばしたオウガメタルの腕、そして怪力無双を発揮した刃蓙理の鎖が、落ちていくキララの身体をかろうじて捕まえていた。
 そして。
「ミァン、やって」
 ずどん、と、急降下してきた白い影が、雷鳴と共にダモクレスの上に衝突する。
 Mian。その召喚された真白の竜の背中には、先程振り落とされたように見えたリサとフィオナが乗っていた。こんな芸当二度は出来ないだろうが、ともかく、また姿勢を安定飛行に戻したダモクレスに、ケルベロス達は一人も欠けることなく立ち向かう。

●星の間
 土行・終式 命怨憎会。ドロッセルの薙刀に合わせ、浮かび上がった怨霊が刃を突き立てる。砕けた装甲の下の機構部が貫かれ、ダモクレスの巨体が傾ぐ。
「あー、そろそろ頃合いじゃない?」
「ええ、とりあえずは……そうですね」
 サイファの言葉に刃蓙理が頷く。これ以上の攻撃は敵の撃墜に繋がりかねない。そう判断した二人はエレキブーストと魂うつしをオリビアにかけて、最後の瞬間に備える。
「んー、惜しいデスネー」
 完全に攻撃する体勢に入っていたオリビアが素振りをする内に、状況は移った。
 これで三度目、プロペラがその音色を変える。
「え、またやるのかい? ほんとに?」
 青い顔をするキララに、刃蓙理が微笑みかける。このまま落下したとして、地面には彼女の形の穴が綺麗に空いたりするのだろうか――。
「カートゥーン!?」
「いえ、別にそんな事は」
 考えていませんよ、と言う前に機体は急上昇を始める。
「ハッ! 危ないデース! イヤーっ!」
「うひゃあッ!?」
 早速投げ出されかけたキララに、オリビアが刀を片方投げつける。刀身は狙い通り、キララの襟元と敵機体を串刺しにし、縫い留めた。ひとまずこちらはそれで大丈夫か、空いた腕を獣化して爪を食いこませたオリビアが、続く敵の動きに口笛を吹く。
 急上昇したダモクレスは、その身体をゆらりと傾かせ、そのままひっくり返るように身体を振る。バレルロールだ。
「ヒューッ、逆さまにまで行きそうデスネー?」
「本気かよッ!?」
 壁歩きは諦め、鎖と共にロッドを叩き込んでサイファが捕まるポイントを確保。そうこうしている内に、やがて天地は完全に逆さまに至る。
「――良い眺め」
 ハンマー二本をドローン射出口に叩き込んでいたかごめが、それを支えに逆さまに立ったまま目を細める。まじかこの娘、とキララが顔を引き攣らせる横で。
「あああああッ、これ、落ち――!?」
「ドロッセル……!」
「それをこっちに投げろ!」
 落下しかけたドロッセルの投げたロープを、煉司と道弘が捕まえ、確保。かろうじて全員生き残る事に成功した。
 突き刺した刀にぶら下がっていた刃蓙理と、リサはすぐに次の動きに移ろうとして――。
「あ、もう一回転来ますね、これ」
「はァ!?」
 勢いそのまま、機体は二回転目に突入した。

 もうひと悶着あったものの、彼等はまた通常飛行に戻ったダモクレスの上に居た。そして、若干ふらふらしながらもドロッセルが片目を瞑る。
「田園地帯上空に差し掛かりました! もう倒してもOKです!」
「今一度、貴女の力を此処に。手伝って、ミァン」
 ドロッセルが刃を振るい、キララがサイコフォースで爆発を起こした。さらにリサの呼んだ竜が雷を降らす。ぐらぐらと揺れながら回復用のドローンを撒くダモクレスの上で、かごめは二本のハンマーとオウガメタル、それらの全てを頭上に掲げた。
 ――ここからは、回復の暇も与えず、繋いだ連携で畳み掛けるのみ。
 組み合わせられたハンマーのヘッドにオウガメタルが絡みつく。俄かに生まれた巨大な鎚は、全てを叩き割る大質量となって振り下ろされた。
「消炭になりなさい」
 ワールドエンドディバイダー。轟音と共に上部装甲が砕け、大小の破片となって飛び散る。赤熱するそれらを、さらに刃蓙理が引き剥がし――。
「よーし、そろそろ決めてやれ、やれるだろ?」
「言われなくても――」
 道弘の合図で彼のドローン達が派手な爆風を広げる。ブレイブマインの威力を乗せて、サイファが『蜘蛛の糸』を展開、敵の可動部を拘束し、抵抗を阻害する。
「好き放題振り回してくれたな。もう満足だろう」
「お空のライドもそろそろ終わりデス。このままヘヴンまで飛ばしマース!!」
 冥獄絶刀・瘴と加州柳生殺法:磁巫士・電者。煉司とオリビアの一撃が、敵の心臓部を切り裂いた。

●流れ星
「やったか……」
「全員無事で何よりでした……」
 煉司が手繰り寄せたケルベロスチェインを腕へと巻き付け、刃蓙理と共に敵の挙動を確認する。
 ひゅぅん、と気の抜けた音がしてプロペラの動きが緩む。敵は完全に機能停止したようだ。作戦通りに事が進んだことに満足気に頷いて、かごめが笑顔を浮かべた。
「ところで、このまま軟着陸してくれるなんてことは……まあ無理ですよね」
「え?」
「は?」
「オーウ……」
 もはや姿勢制御も何もない。激しい攻撃に晒されていた機体は、空中で分解しながらひっくり返り、落ちていく。当然、その上のケルベロス達も連れて。
「だああああああ奇跡よ起これ……オレは、飛べる!」
 こうなっては形振り構ってはいられない。一縷の望みにかけてサイファが背中の翼を広げる。落下を始めたかごめとオリビアも、それぞれバランスを取るように努める。
「衝撃に備えましょう」
「これはこれで良い眺めデース」
「――やっぱ無理だったあああああぁぁぁぁぁ!!!」
「はぁ……空を飛ぶことも出来ない翼はなんのためにあるんでしょうか……」
 もがくサイファの横でリサがこめかみを押さえ、落ちていく。恐らくこの後ミァンを召喚するであろう彼女と、そして刃蓙理も比較的冷静ではある。
「皆さん落ち着いてください、私達はこの程度では死にませんから」
「ああああああちょっとそこ退いてくれたまえ刃蓙理君!!!?」
 衝突事故発生。8割方シリアスキャラのはずの刃蓙理がキララに捕まる。
「え、あの、離し――」
「いやあああああ、ちょっ、助けてください!?」
「やめろ、おい、絡まるだろう!」
 汚い低音を撒き散らしながらドロッセルの放ったロープが、唯一翼飛行の使える道弘に絡みつく。
 少しも緩まない落下速度のまま、ドロッセルはそれまで戦っていた空を見上げる。そこには、こちらの様子を一切顧みないような、美しい満天の星が輝いていた。

 のどかな田園地帯の丘の上、瓦礫と化したダモクレスと共に、勝利を収めたケルベロス達は様々な音色を立てて着地した。
 ――まぁ、大丈夫。ダメージはないから。

作者:つじ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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