氷狼竜メルグリオス・イミテイト

作者:紫村雪乃


 その姿は神々しいといってもよかった。
 青灰色の毛に覆われたその身は狼に似ていた。が、背には広げられた翼がある。水晶のように硬く研ぎ澄まされた翼が。ドラゴンだ。
 一瞬見惚れ、すぐにウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)は我に返った。
 凛々しさと優しさをともに体現した美しい娘。『神裏切りし十三竜騎』が一騎である『山吹の竜騎』に連なる一族レイヘリオス家の長女である彼女は眼前のドラゴンを知っていた。いや、噂を聞いたことがあるといった方がよいか。
 氷狼竜メルグリオス・イミテイト。
 氷狼竜将レフィリア・グラキエス主導の元、かつて氷狼竜メルグリオスに仕えていたドラグナー達が儀式が行ったことがあった。目的は氷狼竜メルグリオスを創造である。恐るべきことにドラグナー達は自らに移植された属性を己の体ごと儀式に捧げることにより、氷狼竜メルグリオスの再現を目指したのであった。
 その氷狼竜メルグリオス・イミテイトが目の前にいる。どうやら実験は成功したらしい。
 はじかれたようにウォーグは身構えた。氷嵐のごとき凄絶の殺気が吹き付けてきたからだ。それは眼前の氷狼竜から発せられていた。
 瞬間、氷狼竜は空を翔けた。咄嗟に横に跳んだウォーグであるが、遅い。いや、むしろ氷狼竜の襲撃速度が速すぎるといった方がいいだろう。閃いた超硬質の爪に、ウォーグの胸がざっくりと裂かれた。

「ウォーグ・レイヘリオスさんが、宿敵であるデウスエクスの襲撃を受けることが予知されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はいった。その声に滲んでいるのは焦慮の響きであった。「急いで連絡を取ろうとしたのですが、連絡をつけることは出来ませんでした。一刻の猶予もありません。ウォーグさんが無事なうちに、なんとか救援に向かってください」
「どんなデウスエクスなの?」
 問うたのは豊満な肉体をわずかな布切れで包んだ美女だ。和泉・香蓮(サキュバスの鹵獲術士・en0013)であった。
「氷狼竜メルグリオス・イミテイト。その名のとおり本物の氷狼竜ではありません。ドラグナーです。けれどかなりの強敵と考えた方がいいでしょう」
 戦場となるのは東京近郊の都市。住宅街だ。が、襲撃場所の近くには空き地があるため、実際に戦うのはそことなるだろう。
「強敵、ね。けれど、そんなこと問題じゃないわ。仲間を見捨てることなんてできない。皆もそう思っているはずよ」
 香蓮はケルベロスちを見回した。


参加者
ユウ・イクシス(夜明けの楔・e00134)
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)
比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)
フェイト・テトラ(黒き魔術の使い手・e17946)
ノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)
浜咲・アルメリア(捧花・e27886)

■リプレイ


「信奉と、其の対象と言った所、か」
 輸送ヘリのキャビン内に声が流れた。
 声の主は二十一歳の男である。女と見紛うばかりの美青年だ。が、もったいないことにこの青年、己の美貌をあまり気に入ってはいない。
 ユウ・イクシス(夜明けの楔・e00134)という名のその青年は続けた。
「盲信とは面倒なものだ」
「確かに面倒だよね」
 比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)が人形のように綺麗で表情のない顔を小さく縦に振った。お姫様カットというのだろうか。古風な髪型の良く似合う美少女であった。
 黄泉は思う。面倒であるが故に、恐ろしい、と。
 そう。盲信ほど恐ろしいものはない。盲信者は時として異常な力を発揮し、また異様な執念深さをもっているからだ。
 その盲信の結晶ともいうべき存在に仲間が狙われている。絶対に助けるという思いは、仮面めいた無表情の黄泉の顔からは窺い知れなかった。
「ドラグナーの蠢動が進むというのはー、良からぬ雰囲気ですわねぇー」
 菩薩のように微笑んだ娘がいった。
 フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)。目を閉じた穏やかそうなその姿は優しげだ。が、彼女を見る者の背がぞくりと粟立つのはどういうわけだろう。
「魔龍の事もありますしー、勢いを増しているという事でしょうかー? 少々のご縁ですがー、私も微力ながらお手伝いをいたしましょうー」
「メルゥガ、……メルグリオス」
 花のように美麗な娘が柳眉をひそめた。
 彼女の名は浜咲・アルメリア(捧花・e27886)。仲間が強敵に襲われていると知り、座視して見逃すことができずに駆けつけた少女である。
 アルメリアはゆれる薄紅髪には彼女の名と同じアルメリアの花を咲かせていた。オラトリオなのである。
「奇妙に似た名。もしかすると……ううん。勝手な想像ね」
 アルメリアは苦く笑った。


「まさか、こうして相まみえるとは思いませんでしたね……」
 ざっくりと胸を切り裂かれ、鮮血にまみれたウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)は嘆声をもらした。
 彼女の眼前には神々しいといってもよい姿がある。氷狼竜メルグリオスと瓜二つの存在。氷狼竜メルグリオス・イミテイトだ。
 その氷狼竜メルグリオスであるが。かつてウォーグの先祖達に封印されたと彼女は聞いていた。その後、氷狼竜メルグリオスは復活。その際にウォーグと心を通わせて、現在はボクスドラゴンであるメルゥガとしてここにあった。ももしかすると氷狼竜メルグリオス・イミテイト襲来の目的はメルゥガにあるのかもしれない。ならば――。
「因縁は、ここで断ち切ります」
 ウォーグは氷狼竜メルグリオス・イミテイトを睨み据えた。
 眼前のドラゴンは姿は似ていても、所詮は強力無比なる氷狼竜メルグリオスの模造品である。ドラゴンではなくドラグナーであった。斃せない敵ではない。
 刹那、メルゥガが息吹を吐いた。真っ白な奔流は氷嵐である。
 対するイミテイトもまた凍てつく息吹を吐いた。
「あっ」
 呻く声はウォーグの口からもれた。空でぶつかった氷嵐は一度竜のようにからみあい、すぐにメルゥガを飲み込んだからだ。ボクスドラゴンであるメルゥガは本来の力の十数分の一程度のそれしか発揮できないのだった。
「やってくれましたね!」
 一瞬で闘気を凝縮、それは弾丸としてウォーグは手から放った。撃ち込まれたイミテイトの身から氷片がとぶ。が、ケルベロスごときの攻撃など何ともないといわんばかりにイミテイトは身じろぎもしなかった。
「くっ」
 ウォーグの美貌がゆがんだ。身体の内から警鐘が鳴り響いている。戦士であるからこそ測りうる、相対する存在の実力。ウォーグ一人で勝てる見込みはなかった。
「まずいですね……多分このドラグナー、私が今までに戦ったデウスエクスの中でもトップクラスの相手ですね」
 ウォーグは重い声でつぶやいた。そして改めてイミテイトを見据えた。
 するとイミテイトのアイスブルーの瞳が、ぎろり、とメルゥガを見た。途端、イミテイトは咆哮をあげた。それは、獲物を見つけた歓喜の声か。そのメルゥガは凍りついており、動くことはできなかった。
 瞬間、イミテイトが動いた。蒼白の疾風と化してメルゥガを襲う。
 ギンッ。
 金色の火花が散った。ウォーグの如意棒――竜騎の御旗・聖棍形態がイミテイトの爪をはじいたのである。
 次の瞬間、イミテイトは身を捻った。唸りをあげた尾がウォーグを吹き飛ばす。
 地に叩きつけられたウォーグは苦悶した。衝撃に彼女の肉体が悲鳴をあげている。すぐに動くことはできなかった。
「ウウルルル」
 唸り声をもらし、イミテイトがウォーグを睨めつけた。そして口を大きく開き――。
 次の瞬間、地響きたてて、何かがイミテイトの眼前に降り立った。
 人だ。七人の男女。ケルベロスであった。
「義によって、ウォーグさんの助太刀に参上デース!」
 金髪をポニーテールにした少女がギターをかき鳴らした。『神裏切りし十三竜騎』が一人であり、また『病喰いの白金の竜騎』に連なる一族の末裔でもあるシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)である。
 シィカはびしりとイミテイトに指をむけると、叫んだ。
「狼なのか竜なのかどっちか分からないノーロックには負けないデース!」


「お助けなのです!」
 フェイト・テトラ(黒き魔術の使い手・e17946)が振り向いた。透けるほど肌の白い少年だ。が、これが果たして少年であろうか。輝くばかりの美貌は美少女のそれである。
「癒やしの女神よ、光を」
 フェイトはいった。
 パナケア・フィリア・ポース・ポース。彼が『魔法使いのおじいさん』から継いだ魔法の一つである。
 神々しく輝く女性の姿をした光がウォーグを包み込んだ。すると彼女の全身に刻まれた傷が癒えていった。が、まだ完治には至っていない。
 やや遅れてウイングキャット――すあまが羽ばたき、清浄なる風を送った。血なまぐさい戦場が清められ、メルゥガを閉じ込めた氷が砕かれる。
「暑い中ご苦労なこった」
 八人めのケルベロスが気怠げにいった。風に揺らめく漆黒の髪。その下の目は凍てつく極北の星のごとく冷めている。ノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)であった。
「ドラゴンを崇めるのは好きにすればいいが、番犬達がお前にくれてやるのは、死だけだ」
 イミテイトに告げると、ノチユはよろめきながら立ち上がるウォーグに視線を転じた。
「どうやら無事のようだな。ならいいんだ。さっさと終わらせよう」
 ノチユはゆらりと首を傾げると、
「その為にもアレがどういう代物か、聞いてもいいか」
「はい」
 うなずくと、ウォーグは語った。氷狼竜メルグリオス・イミテイトの何たるか、を。
「なるほどな」
 ノチユはイミテイトに視線をもどした。うなずいたのはアルメリアである。
 やはりそうであった。推測したように氷狼竜メルグリオスとメルゥガとは関係があったのだ。
「あたしがここに来た以上――守るわ。ここは、通さない。磨け、『不語仙』。叢雲流霊華術、弐輪・蓮華」
 アルメリアは体内で気を練り上げた。それを紅色の蓮の花として形成、ウォーグのもとで咲かせた。
 花には無論強大な気が込められている。その気がウォーグの経絡を駆け巡り、彼女の肉体と精神を賦活化した。
 刹那である。世界が白く染まった。
 白き突風、或いは猛吹雪。
 氷狼竜メルグリオス・イミテイトの息吹は、その姿にもよく似た白いモノであった。
 氷か、あるいはもっと違う別の物か……いずれにしても、文字通りに身を切るような寒さを伴って吹き荒れるイミテイトの吐息はケルベロス達を蹂躙した。
 その息吹を切り裂くように、シィカ放つ竜砲弾が、魔竜へと直撃した。
「ボクの熱いソウルを届けるデース! 今日もロックに! ケルベロスライブ、スタートデス! イェイ、イェイ、イェェェイ!」
 シィカがギターをかき鳴らした。響く音色は雷鳴のように世界を震わせる。
 その時、流星のごとく光を尾をひいてノチユが跳んだ。息吹を受けたケルベロスのうち、唯一彼だけが動くことができたのはフェイトのライデル――ライドキャリバーが庇ったからである。
 規格外の破壊力を秘めた蹴りをノチユは放った。が、すぐに浅い、と直感した。その証拠に、イミテイトは悲鳴の一つあげることはない。
「なるほど――」
 ノチユは呟いた。予想通りの怪物である。が、こちらも元より一撃必殺などとは考えてはいない。浅かろうが何だろうが、とにかくダメージをつみ重ねる事。相手の行動を阻害する事。奴を殺すためには、その積み重ねこそが重要であった。
 まさに犬と象の戦い。そんな言葉がノチユの脳裏に浮かんだ。が、それはそれで面白い。こちらはただの犬ではないのだ。象の皮膚すら食い破る強靭な牙を持った犬なのだから。と――。
 フラッタリーの 閉じられた目がゆっくりと開いた。金色の眼光が迸り出る。額の弾痕からは漆黒の地獄が零れていた。
 変わらずフラッタリーの顔には笑み。が、それは菩薩のそれではなかった。般若のごとき不気味な笑みである。
「サア、イッショニ、オドリマショウ」
 フラッタリーから雪片のごときものが噴出された。霊力を帯びた紙兵である。それは意思あるもののように空を舞い、ケルベロスたちのそばで滞空した。
「さて、平時であればこの戦い、存分に楽しめたんだろうけど」
 呟きつつ、黄泉は跳んだ。飛燕のように肉薄。流星の重さをもった蹴撃を叩き込んだ。
「今回の戦いは仲間を助けることなんだよね」
 黄泉はいった。まさにその言葉通りだろう。駆けつけた七人のケルベロス達にはその使命が胸の奥に刻まれている。
 が、その黄泉の思いを粉砕せんとするかのようにイミテイトが身を捻った。唸り飛ぶ尾が、まだ蹴りの反動で空を舞っている黄泉をとらえる。
 爆発。
 そうとしか思えぬ衝撃を撒き散らし、黄泉が吹き飛ばされた。彼方にある家屋に直撃、粉砕してようやくとまる。


「ライデルだけに良い格好はさせられないのですよ」
 世界が一瞬青白く染まった。フェイトのもつαδελ――ライトニングロッドが一億ボルトの稲妻に匹敵する電撃を放出したのである。
 電撃に撃たれた黄泉の身がはねあがった。彼女の体内を駆け巡った電流が細胞を賦活化する。
「経緯はどうでも良い。深く探る必要も無い。禍根が残っているのなら、此処で断ち切るまで――後は、当事者が納得の行く結末を、目指せば良い」
 愛刀である結祈奏を抜刀、ユウは紫電をからみつかせた神速の刺突を放った。が、それほどの一撃をイミテイトは躱してのけた。結祈奏が凍てつくイミテイトの肉体をかすめて過ぎる。
「来るわ、尾の一撃が」
 アルメリアは叫んだ。すでに彼女のイミテイトの動きを見切っている。
 次の瞬間、模造竜の尾が大地を抉った。巨大な壁が大地を破壊しつつ迫ってくるかのような凄絶の一撃。まるで子猫のようにケルベロス達が吹き飛ばされた。ライデルに至っては戦闘不能の状態に追い込まれている。
「ふえぇ……」
 フェイトの口から愕然たる声がもれた。一人を狙った一撃ではないから、それほどの威力はないはずである。それでも同時に五人のケルベロスが吹き飛ばされる様は物凄いの一言に尽きた。
 茫然自失の状態でありながら、しかし無意識的にフェイトはグラビティを発動させていた。それは大好きな人たちを幸せにしたいと願っている彼の心の発露である。
 薬液の雨が降った。濡れるケルベロスたちの傷が消えていく。
「やってくれる」
 ゴオッ、と。氷嵐が吹き荒れ、ユウの手に一振りの槍が現出した。他者と呼吸がずれるのは癖のようなものである。
「氷の狼。否、竜、か。興味が無いワケではない。だが、為すべき事が有る。オマエの氷と、僕の氷。比べてみるのも一興か」
 ユウは槍を放った。氷嵐の破滅的な威力を凝縮した一撃。それは永劫の白き夢にも等しい。抉られたイミテイトの氷の装甲が砕け散った。
「次は熱いやつをきめるデス!」
 シィカは地を蹴った。摩擦熱で生じた炎を地に刻みつけ接近、蹴りをイミテイトにぶち込んだ。さすがにたまらずイミテイトがよろめく。
「オオルゥルル」
 地を踏みしめて態勢をたてなおすと、イミテイトは反撃に移った。その口を大きく広げる。
 シィカたちの視界が白く染まる。これを何と表現するべきか。濁流? 爆風? いや、それでも生ぬるい。シィカたちは凍てつく息吹に蹂躙された。
 すると、すあまが風を巻き起こした。シィカたちの凍てついた身体に生気を吹き込む。
 と、獣が地をすべった。玲瓏たるそれの名はフラッタリー。獣は白銀の鬼となり、氷竜を引き裂いた。
「まだだよ」
 抑揚を欠いた声は氷竜の頭上から響いた。慌てて顔を上げたが、遅い。高空から死神と化して舞い降りた黄泉は、磁針りも巨大な戰斧を氷竜の頭蓋めがけて振り下ろした。
 舞い散る氷片。真夏に生じた雪を払い、ノチユは熱風と化してイミテイトに迫った。
「へぇ、真夏に冷やしてくれるのか。ならお返しに、あっためてやろう」
 ノチユは地獄の業火をまとわせた刃をたばしせた。イミテイトの凍てついた肉体から蒼血がしぶく。
 ノチユはちらりとウォーグを見た。止めを刺せという合図だ。
 きっとこれは相棒と生きることを選んだ彼女がやらなきゃいけないから。そうノチユは思っている。
 同じように思う者はもう一人いた。アルメリアだ。
 より鋭く。その願いを込めて白銀の光を放散する。
「ありがとうございます」
 ウォーグは馳せた。迎え撃たんとするイミテイトが氷嵐を吐く。
 次の瞬間、空で白い竜巻が生じた。別の氷嵐が吹きつけ、イミテイトのそれに喰らいついたからだ。
 一瞬だけ、氷嵐がとまった。が、それで十分であった。
「氷狼竜メルグリオスはもういない。あるのは私の相棒、メルゥガだけです!」
 ウォーグは竜騎の御旗・聖斧形態をイミテイトに薙ぎつけた。
 ガルド流裂破竜闘術奥義『渾闘撃』。己の体内に宿るグラビティを武器に宿し、敵の急所へ叩き込む必殺業である。
 御旗・聖斧形態は竜気をやどし、イミテイトを貫いた。余波である竜の姿をとった衝撃波が天空めがけて翔け上っていく。まるで氷狼竜メルグリオス・イミテイトが天に還っていくように。


 戦いは終わった。
 日常の静寂がもどった地に、響くのはウォーグとメルゥガを労うケルベロスたちの声だけである。
 見つめ合うウォーグとメルゥガ。二人には確かな絆があった。
 そんな彼女たちを少しだけ羨むようにノチユはちらりと見やった。彼に家族はない。デウスエクスに殺されてしまったからだ。恋い焦がれた人も地獄化した姿を疎み、去っていった。
「少し風にあたってから、帰ろう」
 ノチユは孤独な背をむけた。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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