縞々バトラー

作者:天枷由良

●またしても浜辺
 夜更けの浜辺に壊れたバーコードリーダーが捨てられていた。
 なぜ、と尋ねたくなるが、それは置いておこう。
 大事なのは未来の話。
 このバーコードリーダーが、デウスエクスになってしまう未来の話だ。
 原因は例のごとく、コギトエルゴスムに蜘蛛のような足を生やした小型ダモクレス。
 今宵の獲物と見定めたガラクタにしがみついて、いちにのさんでちょちょいのちょい。
 機械的なヒールで、あっという間にバーコードリーダーを己の一部に変えてしまう。
 そして出来上がったのが。
「…………」
 何とも寡黙な、人型のダモクレス。
 科学の法則も吃驚の変化だ。
 しかし、もっと驚くべきはダモクレスの外見。より正確に言うと、その頭部。
 どことなく冴えない中年男性を思わせる顔の上が――ものの見事に、黒の縞模様で彩られていた。
 バーコードだ。それは紛うことなき、バーコード頭だった。
 なぜ、と問いたくなるが、そこは触れずにいよう。
 大事なのは未来の話。
 このバーコード頭が、人を殺しに向かってしまう未来の話だ。

●ヘリポートにて
「――という怪談を作ってみた、なんてお話ではなくて?」
「残念ながら予知された未来なのよ。残念ながら」
 エルモア・イェルネフェルト(金赤の狙撃手・e03004)の言葉に、ミィル・ケントニス(採録羊のヘリオライダー・en0134)は苦笑すら浮かべられていなかった。
「読み取る機械から読み取られる模様を生むとかね、ほんとにもう、ダモクレスのくせにユニークなことしてるわよ、ええ。機械も夏の暑さでおかしくなったのかしら?」
「電子機器に熱は大敵ですわ。まあ、わたくしのような新世代型レプリカントなら何も問題ありませんけれど」
「……そうなの?」
 新世代型レプリカントってなんだろう。
 気になるところであったが、ヘリポートに漂う温い空気が予知の解説を優先させた。

 ケルベロスたちが倒すべき敵はダモクレスであり、戦場は夜の浜辺である。
 人の気配はなく、人が紛れ込む余地もない。ケルベロスたちは現場に降り立った後、件のダモクレスと戦うだけでいい。
「それで、そのダモクレスについてなのだけれど」
 端的に言って、姿はバーコードハゲの中年男だ。
「グレースーツ風のカラーリングをした身体に、どういうわけか人毛らしきものが生えているわ。それを真横に流して……あの、縞々模様をね、作ってるのよ」
 予知を伝えるにしても、バーコードハゲとはさすがに言いづらいのだろう。
 ミィルは歯切れ悪く語り、ケルベロスたちに理解を求める。
「見た目はさておき、戦闘能力もちょっと特殊で……右腕から赤い光線を放って皆の能力を読み取り、一時的な複製体を作り上げて攻撃してくるわ」
 複製の精度も強度も高いものではなく、存在していられるのは一度攻撃するまでのごく僅かな時間。しかし、ケルベロスたちの固有技能ですら読み取られる危険がある。誰がどのようなグラビティを用いるのか、把握しておいた方がいいだろう。
「加えて自己修復機能と……頭部模様の読み取りによる召喚攻撃も行うわ。此方の攻撃は劣勢になってからでないと使わないようだけれど、さすがに奥の手とか最終手段と呼べるほど強力なものではないわ。戦闘中の回復さえ怠らなければ、大丈夫でしょう」
 外見にも能力にも翻弄されることのないようにと付け加えて、ミィルは説明を終えた。


参加者
大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)
ミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728)
エルモア・イェルネフェルト(金赤の狙撃手・e03004)
嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283)
赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584)
九十九折・かだん(スプリガン・e18614)
クララ・リンドヴァル(本の魔女・e18856)
平・輝(サラリーマン零式忍者・e45971)

■リプレイ


 ざざん、ざざんと繰り返される波の音に紛れて、砂上を歩むハゲ一人。
 心なしか丸まった背中が、酷使と酷暑に疲れ果てたような哀愁を漂わせている。ともすれば、そのまま海に身を沈めてしまうのではないかと心配したくもなる姿だが、幸か不幸かハゲは人でなく――ハゲが人でなしとかそういう事ではなくて――新生したばかりのダモクレスであった。
 そう、あれはハゲだがダモクレスなのだ。閑散とした浜辺を彷徨く寂しげな足取りも、飢えて彷徨う獣と同義。人里に辿り着いたなら、凶悪な本性(とうひ)を露わにハゲしい虐殺を繰り広げるだろう。
「一般人に危害加える前に、私たちが退治してあげる!」
 赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584)の声が、やや離れた岩場より響く。
 正義の味方が颯爽と現れるなら、やはり多少高くなっている辺りが丁度よい。
 これからお前を倒すのだと言わんばかりに、ずびしと敵を指し示す緋色。側には七人のケルベロスとライドキャリバーが一機佇み、そこから伸びるLEDライトの光が、敵の姿を浜辺に際立たせ――。
「うおっまぶしっ」
 予想以上の反射に晒された平・輝(サラリーマン零式忍者・e45971)は、すぐさま明かりを落とした。
 奇しくもダモクレスと近しい頭部を持ちながら、輝はぴっかり、いやうっかり忘れていたようだ。人工的な光を受け止め遮るに、あのヴェールは薄すぎて何ら意味を成さない。
「過度な刺激はよくありませんからね……これはしまっておきましょう」
 輝はライトを収めて、まじまじとダモクレスを見つめ直す。
 それにしても見事なバーコードハゲである。あれをバーコードハゲと呼ばずして何と呼ぼうかと言うほどの、完璧な縞模様。もしくは、すだれ状とでも言うべきか。
 上司には唯々諾々として従いそうな寡黙さといい、人生そのものを示すかのような灰色のスーツ風ボディといい、社会からは駆逐されつつある猛烈な企業戦士っぽい匂いがする。
「……お得意さんだったのかな……?」
 ぼーっと考えた末、九十九折・かだん(スプリガン・e18614)はそんな結論に至った。
 あながち間違いでもないかもしれない。きっとダモクレスと同化したバーコードリーダーの何処かに、毛根を代償として成果を上げる悪魔と契約を交わした、現代の武士に関わる何かがあったのだ。


 そんなことはさておき。
「“不変”のリンドヴァル、参ります……」
 岩場から敵に向かっていく仲間を見送りつつ、クララ・リンドヴァル(本の魔女・e18856)が魔導書を開く。
 同時にダモクレスも、ゆらりと接近を始め――。
「ロケットパンチャー!!」
 機先を制して、ミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728)が巨大な拳を撃ち放った。
 余剰部品を活用した対巨大敵用の一発は岩場から緩い放物線を描き、微かな月の光を眩く返すダモクレスの頭部にクリーンヒット。その威力を存分に発揮して薄毛を彼方に飛ばしていく。
 なまじ人に似ているからか、敵の姿は無頼の輩に襲われた被害者に見えなくもない。
 しかし、そこはピカっても、もとい腐ってもダモクレス。ハゲ散らかした頭部からは想像もつかないほどスタイリッシュに己の運動エネルギーを制御すると、体操選手ばりのひねりを加えて着地。すかさずケルベロスとの間合いを詰めに走り出す。
 そしてその最中、腕時計を見やるくらいの自然さで右腕を上げ、おもむろにミステリスへと狙いを定めた。
 ――来る。そう心構えをするよりも早く、赤い光線が夜の浜辺を走る。まるで宇宙船から放たれるトラクタービームのように広がったそれは、ミステリスの頭から爪先までを余すことなく照らし尽くしていく。
 じっと浴びている意味もない。早く抜け出そう。そんな考えが過る前に光は止んだ。
 そして赤光の終息は、同時に用意が整った証でもある。
「○□♪×☆♯♭%&!!」
 押し黙るばかりだったダモクレスから、言語化に難儀する電子音が鳴り響く。
 直後、再び右腕から伸びた光が一人のサキュバスを形作る。
 全身の殆どが濃淡で差を付けた赤色で構成されているが、それは紛れもなくミステリス・クロッサリアの複製体(レプリカ)だ。
「これが、スキャン・モードK……!」
 今初めて知ったかのように呟きながら、エルモア・イェルネフェルト(金赤の狙撃手・e03004)が小型無人機の大群を手早く最前線に散らす。
「――――」
 一方でミステリス・レプリカは無言のまま、口だけを開閉させつつ巨大な拳の発射態勢を整える。
 目標は勿論、本物のミステリス――と、本来ならばそうなるはずだった。
 しかし悲しいかな、ロケットパンチャーは有効範囲が狭い。そして後衛に位置する相手にまで射程を伸ばすような機能は、レプリカにもダモクレス自身にも備わっていない。
 やむなく、ロケットパンチャーの照準は大斧を担いで接近してくる男へと向けられた。
「……くだらねーサルマネの代償は高くつくぜ」
 撃つなら撃て、と言わんばかりの豪胆かつ無謀な態度で、男――嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283)は前進を続ける。
 ならば撃とう。足下から徐々に薄くなりつつあるレプリカは、消滅する前に己の顕在理由を果たすべく、いよいよ巨拳を軛から解き放った。
 そのままレプリカ自身が消え失せていく中、ロケットパンチャーは小型無人機を蹴散らして真っ直ぐに飛んでいく。
 対するタツマも、大斧を振るえるように構え直したが進路は変えない。双方の衝突は誰の目に見ても明らかであり、ただ一人で癒し手を務めるクララが治癒の用意を、模倣された当事者であるミステリスがライドキャリバー“乗馬マスィーン一九”を庇いに向かせようと動く。
 ――しかし。
「躯体番号SRXK-777、スーパージャスティ参上」
 直撃寸前、赤いマントを翻して軌道上に割り込んだ大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)が、真っ向から巨拳を抱え込むようにして受け止めた。
 接触の拍子に力の向きが変わり、秋櫻はタツマの脇を滑っていく。大量の砂を巻き上げながら何処まで行くかと思われたそれは、拳の方に限界が訪れたことで終わりを迎え、先程降りたばかりの岩場近くに秋櫻だけが残される。
「……ふむ。話に聞いていた通りですね」
 ミステリスへと目を向けながら、秋櫻は事も無げに言って四肢や肉体の調子を確かめた。
 両上腕や腰部に損耗があるようだが、戦闘続行に支障はない。事前の情報共有と、それを活用した装備選択が奏功したのだろう。
「ですが中々に強力でした。確かに巨大敵との戦いで用いれば、大きな戦果を上げられるに違いありません」
「あらそう。やっぱり細々とした相手には向いてないのよね、アレ」
 至極真面目な感想に頷くミステリス。
 そして秋櫻は守りから攻めに転換。自らの足が浜辺に残してきた跡をなぞるように駆けていく。
「貴方の――」
 ちらり。語りだして間もなく視線を敵の頭頂に向け、大した反応は見せずに戻し。
「頭髪に関しては同情致しますが、此処でスクラップです。そして正義は絶対に負けません」
 淡々とした語り口とは裏腹に、ぐっと間合いを詰めてから片脚一閃。機人であるとはひと目で信じがたいほど鍛えられた肉体から放たれる蹴撃が、冴えないダモクレスの脇腹を凹ませる。
「あなたがダモクレスである以上、これもやむないことですので……!」
 持たざる者ゆえの共感でもあるのか、輝が申し訳なさそうにしながらも飛び蹴りで続いた。
 ハゲしい動きに自らの頭部も気になるが、それ以上に衝撃で揺れるダモクレスの頭部から目が離せない。一瞥どころか百瞥くらいくれてやったところで後ろ髪引かれる想いに耐えて離れれば、後方からクララがオウガ粒子を放出。敵の眩しさとは違った綺羅びやかな輝きで、前衛陣の強化と秋櫻への治癒を一纏めに行った。
「……」
 沈黙を保ったまま、クララは自らの元より飛び立った銀色と敵の行方を見守る。
 少々特殊な相手だが、所詮は劣化コピーを繰り返すだけの機械。敵の魔術を強奪して成り立つ鹵獲術士の身からすれば、大した存在でもないように感じられる。
 そうして思案する間に、とうとう敵の間近に迫ったタツマが空中から斧を振り下ろす。
 技でなく力による一撃は、狙い通りに頭部へと当たった。
 しかし弱卒なら両断してしまいそうなほどに強烈な刃は、僅かな毛髪の乱れを作っただけで押し返されてしまう。
 ならばと、続けざまに振り回されたかだんの鉄塊剣、そして緋色が繰り出した達人の一撃は、胴体にまた新たな凹みを作った。
 どうやらハゲがハゲたる最重要ポイントのハゲ頭は、とかく頑丈に作られているらしい。
「……面白ぇじゃねえか」
 壊しがいがあるというものだ。
 タツマは斧に変わって、オウガメタルで包んだ片腕を振り上げる。
 だが、超鋼の拳でも頭部は砕けない。
 代わりに毛髪が滅茶苦茶乱れた。
 ハゲの目の色が変わった。


 ケルベロスたちから必死に逃れたハゲがゼリー状の物質を取り出す。
 それを頭に塗りたくり、続けて櫛状の部品で梳く。
 秩序なき世界が、また新たな規律で統一されていく。
「――――」
 無言ではあるが、一仕事終えたその顔は何となく満足気にも見えた。
 みっともないとか、そこまでハゲたならいっそ剃り上げてしまえとか、人は容易く言うものだが。やはりバーコードハゲにはバーコードハゲの理念があるのだ!
 多分。

 ……かくして。
 大きく間合いをとったハゲは、スキャン・モードHによる自己修復機能を終えた。
 しかしハゲは孤独。回復に手番を割く間、その隙を埋めてくれるような同志などいない。
 緋色のライフルから氷結光線が放たれたのを皮切りに、ミステリスのフォートレスキャノンと輝のサイコフォースがハゲを勢いよく煽る。整えたばかりの毛髪が微かにそよぐのを見下ろしながら、秋櫻が美しい虹を纏って急降下してくれば、飛び蹴りが打ち当たった直後の敵を、かだんがチェーンソー剣でズタズタに切り裂く。
 さらには無傷な仲間ばかりの状況に鑑みて、クララも攻撃へと転じた。
 魔導書を手に、ハゲの意識を精神世界へと閉じ込める。人気のない夜更けの図書館で、謎の大男から執拗な追跡を受けるという毛根が死に絶えるような体験を擬似的に味わわされてから現実へと返った時、ハゲは機械らしからぬ怯えを滲ませながら何故か頭を撫で始めた。
 抜けてないか心配になったのだろうか。
 身体の傷もさることながら、心にも傷を……いや、ダモクレスには心などない。ならば乱れた毛髪を気にする仕草も、ただ刻まれた行動規範の一つでしかないはずだ。
 なんと悲しい――。
「ダッセェ髪型ですわね!」
 全くそんな空気ではなかった。
「ご覧なさい、わたくしの縦ロールを! これが三下ダモクレスと新世代型レプリカントの違いですわ! おーっほっほっほ!!」」
 大袈裟な素振りで自身の金髪を揺らし、エルモアは高笑いを響かせながらグラビティ中和弾を撃つ。
 負けじとダモクレスも赤光を放ち、レプリカを作り上げた。
「――――!」
 エルモア・レプリカは無音だが、それでいてなお騒がしいと分かる仕草をしつつ、四方に鏡のようなものをぶちまける。
「ああっ、あのグラビティは! そしてあの美しい女性は!?」
 ――知っているのかエルモア!? なんて、ヒゲでハゲの厳しい男が言ったような幻覚が見え聞こえたがさておき。鏡は特殊な兵装の複製で、それを撒くのも当然複製。
「……ああ、卓越した技量で扱われるカレイドとコピーされたわたくしでしたか」
 なら美しいのも当然である。そう言いたげに笑みを見せた後、しかしエルモアは本物に勝る輝きではないと断じて、自らも特殊兵装“カレイド”を放つと反射レーザーによる攻撃を行った。


 それから神妙な面持ちで、敵の様子を伺う者が一人。
 輝である。度々触れてはいたが、輝も頭頂が寂しくて眩しい人。けれども「平シャイン」なんて呼ばれたって怒らない、精神的タフネスを有する大人。
 しかし戦いの最中、溜まりに溜まったものを発散せざるを得ない状況が訪れた。
「虐げられし者達と毛根の怒りを……その身に受けてみよ!」
 月の輝きが輝の頭部に宿る。どん、と腰を落として構えれば、怒髪天を衝くという言葉を具現化したように、凄まじい光線が頭の天辺から伸びていく。
「うおっまぶしっ」
 誰かが言った気がする。
 ともかく、光線は一直線にダモクレスを飲み込んだ。
 LEDライトを跳ね返した頭部だって、こればかりは弾けない。
 ダモクレスは、なすがままで何とか持ち堪える。そして他のケルベロスからの波状攻撃をも凌ぎつつ、赤光を輝の元へと送る。
 必然、現れるのはハゲ・レプリカ。輝の顔をした新星にケルベロスたちは息を呑む。
 長射程の技で狙うは当然オリジナルだ。力を溜め光を溜め、模倣された毛根の怒りが全力で放たれ――。
「やらせません」
 再び射線上に割り入った秋櫻を、つるっとまるっと飲み込んでいく。
 すぐさまクララが回復用の脳髄賦活に備え、輝も改造スマートフォンでのほんわかエピソード投稿を用意。
 だが、光の消えた後に立つ秋櫻はと言えば、一歩たりとも後ずさりはせず。
 むしろ前に飛んでいた。ブースターの出力を最大に、腕部と脚部のリミッターを外し、自身を呑んだ光をも超えるような速度でレプリカの残滓を吹き飛ばしながら、敵を打ち砕かんと殴る蹴る殴る蹴る。
 たまらず引き下がって、ダモクレスは赤光の標的に秋櫻を選ぶ。
 それだけ凄まじい連撃ならば、コピーしても相応の威力を有すのだろうと仄かに期待したのかもしれない。
 しかしかだんに行く手を遮られて、秋櫻・レプリカはやむなく連撃を打つ。
 拳を胸に打ち当て、刃の如く鋭い蹴りを腰に見舞い、消滅するまでの僅かな間ながら連打連打連打。
 それを、かだんは全て受ける。受けて――なお、微動だにせず。
 少なからずダメージはあるはずだが、かだんの調子は変わらない。一方で傷だらけのダモクレスは、それほど長く持ちそうにない。
 その証拠に、ダモクレスは自らの頭部を読み取る。
 現れたのは巨漢の格闘家。頭にバーコードの印字されたそれは、どうやらレスラーのようであったが……特別馴染みのあるものでもなさそうだ。
 格闘家はどすどすと走り、やがてかだんと組み合う。体格では二回りくらい大きな相手を苦もなく受け止め、ツノの大きさを誇るシカのように一瞬ばかり闘志を垣間見せたかだんは、力勝負に打ち勝ってそれを真後ろに放り投げる。
「終わったな。……くたばれ!」
「ひっさつ小江戸ビーム!」
 半ば勝利を革新しつつ、タツマが圧縮結晶化したグラビティ・チェインを、緋色はビーム状にした川越市原産グラビティ・チェインを叩き込む。
 あわれハゲ爆散。後には毛の一本も残らなかった。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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