ケルベロス大運動会~ブラジルの家庭料理を調査せよ!

作者:沙羅衝

「へえ……。これ、面白そうな企画やな……」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が二つのチラシを見ていた。一つのチラシには、ケルベロスが今準備をしている『ケルベロス大運動会』のチラシだ。
 大運動会の概要はこうだ。何度も行われている『全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)』で世界経済の疲弊のために、面白いイベントで収益をあげようというのが企画の目的だ。
 今回の場所はアマゾン。アマゾンといえばブラジルにある世界屈指の大きさを誇るアマゾン川と、ジャングル。幸いケルベロス達には通常ダメージは無効である。ざっくり言うと、ケルベロス達に無茶をさせて盛り上げよう! そんな企画である。
 そして、彼女が持っているもう一つのチラシには『TV企画のお知らせと参加者の募集!』というタイトルがつけられていた。
「絹、どうした?」
「ああ、リコスちゃんか。って、今度は何食べてるん?」
 絹はひょこっとやってきた、リコス・レマルゴス(ヴァルキュリアの降魔拳士・en0175)の手に持っている串を見て言う。
「ああ、なんでも牛串というらしい。以前行った依頼の時に気に入ったのでな。何本か冷凍して保存しておいたんだ……もぐもぐ」
 リコスはそう言って、牛肉を頬張り、もぐもぐと嬉しそうに咀嚼する。
「串……、アマゾン……。せや、これやな」
 絹はそう言って、片目を閉じてなにやら確認している。そして、リコスを見る。
「リコスちゃん。世界にはな、いろんな料理があるんは、大体分かってきた?」
「そうだな。是非とも地球上の全ての料理を平らげたいものだな」
「実は、そんなリコスちゃんに朗報や! 実は今度ブラジルで大運動会があるんは知ってるな?」
「勿論だ。私も当然参加するぞ」
 リコスはふふりと格好つけて言う。
「実はランチタイムを、ブラジルの家庭でご馳走になれるというTV企画が届いてん!」
「ほう、それは有難いな。是非とも……ん? ぶらじるの料理とは、どう言ったものだ?」
「せやな。例えばそれ」
「ん? 牛串か?」
「そこではシュラスコって言うねんけど、簡単に言うと、いろんな肉を串に刺して焼く料理があったりするで」
 じゅるり。リコスは手に持った牛串の存在をしばし忘れ、自分勝手なシュラスコのイメージによだれが止まらない。
「でもまあ、今回の企画はリポーターや。家庭にお邪魔して、料理を食べさせてもらう。しかも、何が出てくるかは分からんし、当然味の方もチャレンジが必要なものもあるかもしれん。でも、そこはTVの企画。どんなモノでも良いリアクションをして、午後の競技に向かう皆と、TVを見ている皆を盛り上げるっていう重要な……って、聞いてる? リコスちゃん」
 絹の説明中に、既に頭の中はブラジルに飛んでいるリコスを、絹は現在地に戻す。
「ご家庭にお邪魔して、料理をいただく。それだけだろう? ふふふ……任せろ! しゅらすこ! おー!」
 リコスはそう言って、牛串を振り上げ、鬨の声を上げる。
「……まあええか。じゃあ、頼むな。くれぐれも失礼の無いようにするんやで」
 絹はそう言って、張り切るリコスを見送ったのだった。


■リプレイ

●「突撃! おヌシの晩御飯~! 夜じゃないけどー」
 と言って、少しくたびれた民家に飛び込んだのは、ライゼル・ノアール。突然のテレビカメラを向けられ、中に居た若いカップルはあっけに取られる。
「だ、誰だてめぇ!」
 状況を少し把握した男性が、少し凄みを利かせて怒鳴る。だが、ライゼルは臆した様子もない。
「大丈夫! ほら、ただの通りすがりのケルベロスさ! あ、窯があった! ねえ、シュラスコ、食べさせてよ! 文句は鎖が受け付けよう!」
 ニコニコとした女顔の男の突然の注文である。わけが分からないだろう。そこですかさずスタッフが事情を説明した。
「お、おう……。金くれるんなら、かまわねぇ……」
 男性はそう言って奥から大きな串に一塊の肉を刺し、焼いた。
「ほらよ、あいにくマトンしかねえが……特別だぜ」
「わあ! 良い匂いだね! いただきます!」
 ライゼルはそう言って肉にそのままかぶりつく。
「これはいくらでも食べられるね! すごいよ!」
 滴り落ちる肉汁を気にも留めず、一気に平らげた。味付けはシンプルな岩塩のみだったが、それがまた癖になる。

 ライゼルは戴いた後に、きちんと礼を言う。
「ありがとうございました! じゃぁデザートね!」
 その食いっぷりと、無理難題を遠慮なく投げつける彼に、そのカップルは思わず噴出したのだった。

●花と雪
 ヴィヴィアン・ローゼットとアメリー・ノイアルベールはサンパウロの一般的な家庭に来ていた。二人とリコス・レマルゴスが、テーブルの前にちょこんと座っている。
「ねぇねぇ! おねーさん達、ケルベロスなんだって! 僕も大きくなったらなれるかなあ!」
 無邪気な子供の声に、二人の緊張は少しほぐれたようだった。この子達を守る事が出来ているという事が、何よりもうれしかった。
「ほらっできた!」
『わぁ!!』
 少し大きなお皿に一つの料理が盛られて、テーブルに置かれた。
「ヴィラド・エ・パウリスタ。どうぞ!」
「おお! これはうまそうだな!」
 リコスはそう言って、口に運んでは満足そうな顔を浮かべる。
「美味しい……」
「本当! お米と豆とキャベツ、かな。後は豚肉! アメリーちゃん、美味しいね!」
 ヴィヴィアンの声に、こくこくと頷くアメリー。アメリーの表情はいつもと変わらないが、楽しそうな事がヴィヴィアンには分かる。
「ほら、笑顔笑顔!」
「笑顔になっているつもり……ですが、なっていないですか?」
「嬉しそうなのは分かるけど、言葉にしなきゃ!」
「そう、ですね」
 ヴィヴィアンの言葉に納得したアメリーは、料理を振舞ってくれた婦人にぺこりと頭を下げ、
「素晴らしい料理をありがとうございます」
 と精一杯の感謝を表した。婦人はその言葉を聞き、親指を立てて笑顔で応えた。
「それにしてもリコスちゃん、いい食べっぷりだね……!」
「ん? そうか? そうだな。美味いな!」
 リコスはそう言ってまた食べる。その姿を見たヴィヴィアンは、
「こんなに美味しそうに食べてくれたら作った人も嬉しいだろうなあ、見習わなきゃ」
 と呟いた。するとアメリーは、
「わたしも、リコスさんの気持ちの良い食べっぷり。それに、ヴィヴィアンさんの明るい笑顔も見習いたい、です」
 と呟く。
 その言葉にヴィヴィアンもまた嬉しくなった。そして、その婦人に尋ねた。
「あの、このお料理、教えてください!」
 帰っても、この味を忘れない為に。

●蒼い竜人
「何!? 食材を切らしている、だと!?」
 神崎・晟は折角だから田舎の方へと向かい、そしてアマゾン川の奥地にたどり着いていた。辺りはジャングル。そこに居た住民に依頼の話をすると、そう言った答えが返ってきたのだった。
「……そうだな。ならば仕方が無い。食材は自分で確保することにしよう」
 晟はそう言うや直ぐに踵を返し、アマゾン川にダイブした。激しく上がる水しぶき。
(「なんだ……と!?」)
 晟は水の中で目を疑った。
 ざばあ!!
「何も見えんではないか!」
 晟はそう言って水面に姿を現し、濁りの酷さに思わず叫んだ。しかしその時、相棒の『ラグナル』が空中から川の中心部分を指し示した。
「そこかあ!!」
 どどどどどど!
 怒涛の勢いで水面を泳ぎ、一気に潜る。後は勘だ。
「うおおおおおおお!!!!」
 そして飛び出した。その手には彼の体よりもはるかに大きな淡水魚、ピラルクーの姿があった。

「うむ、この魚は焼きに限るか。……しかし、流石に食い切れん、か? いや、いけるか?」
 すると、彼の食いっぷりを見ている子供たちが、じっと見ている事に気が付いた。
「よし、一緒にどうだ?」
 すると、彼の誘いに、子供たちが沢山集まってくる。
「やはり、食事は皆で食べるものだな」
 晟はそう言って、現地の子供たちと食事を楽しんだのだった。

●青い空と賑わいの声
「突撃! お宅の昼ご飯! じゃじゃーん!!」
 藍染・夜がカメラの前で、案内をしている。ここはリオデジャネイロの、一つのマーケットだ。どうやらケルベロス大運動会のパブリックビューイングが行われているようだった。人々はケルベロス達の活躍に歓声をあげていた。彼等はそこで振舞われている食事を求めてやって来ていた。
「おにいさん、おねえさん、おじさま…? ねえねえ、ボクにおいしいものを食べさせてほしいの。いいでしょ……?」
 ミシェル・グランディエが上目遣いで、人々に料理を頼んでいた。すると、その姿にずきゅんと来たお兄さんたちが、我先にと様々な料理を運んでくる。
「これは、エストロゴノッフィですね。嬉しい! 気になっていたんです」
 シィラ・シェルヴィーはその中の一つ、トマトソースで煮込んだ牛もも肉の料理を見て、目を輝かせた。そのままミシェルと共に一口ぱくり。途端に口の中に牛肉のうまみと、生クリームでコーティングされたトマトソースが渾然一体となる。
「ん!」
 その美味に、顔がほころぶ。そのテーブルに夜も座り、同じく舌鼓を打った。

「何やらアイドルのプロが居るな……」
 ティノ・ベネデッタは、その絵になる三人の様子に感心しながら、様々な料理を見てまわる。
「おや、これはトマトソースでも、少しちがうか……」
 ティノはそう言って、お姉さんに一つ頼む。お姉さんが喜んで差し出した料理は、ホカホカの揚げたてチキンにたっぷりのチーズ。そしてトマトソースのかかった料理だった。
「パルメジアーナっていうのさ、お兄さん!」
 成る程、といってがぶりとかぶりつく。
「……なんだか、懐かしい、な。うん」
 そしてまた、一口。噛み締める。
「ティノ。それは、パルメジアーナ?」
「ティアン。ああ、そう言うらしい。だが、故郷の味にも似ている。少し、安心するな」
「家庭料理は家ごとに味が違ったりするのだろう? 食べ比べも面白いかもな」
 ティアン・バはとティノは、そう言って一つのテーブルに座る。
「懐かしいといえば、こういうのを貰ってきたんだ」
 そこへ、比嘉・アガサが一つのパンのようなものを運んで、甘いドリンクと一緒に同じテーブルに置いた。
「ポンデケージョ。実は子供の頃に母親がよく作ってくれたんだ。でも、ブラジル料理とは知らなかったよ」
 ティアンはそれを一口食べる。確りと噛み、よく味わう。
「おいしい」
 そして、しっかりと飲み込んだあと、長い耳をぴくぴくと動かしながらそう呟いた。アガサはその姿をみて、まるで自分が褒められたかのように、嬉しくなってしまう。
「アガサちゃんは美味そうに食うよなぁ」
「やっぱりキソラは肉?」
 アガサの表情を見ながら、テーブルに肉の皿を置くキソラ・ライゼ。
「そうだ、これ飲むかい? 貰ったのは良いんだけど、ちょっと甘くて、ネ」
 キソラはそう言って一つのドリンクをテーブルに置く。すると、それをすっとティアンが引き取る。アガサは甘いものは苦手ではないのだが、少し続いていた様でパスとの事だった。
「さて、こちらのテーブルのケルベロスさん達にうかがってみましょう!」
 そこへカメラを伴ったシィラ達三人が現れる。どうやら、様々な料理を楽しんだ後、全員での合流を決めたようだった。ミシェルはニコニコと満足そうな笑みを浮かべている。
「やはり、賑やかに食卓を囲めるのが一番かと思います。そうだ、皆さんは今日の一番は何でしたか?」
 シィラが唐突に尋ねた。すると、夜が少し考えた後、口を開いた。
「一番は決め難いな。だが、料理も然ること乍ら、皆で食事を囲む。
 この賑やかな時間もまた美味だね」
 美味しさとは、様々な条件も関係している。彼等はそれをまた実感する。仲間と食卓を囲む時、それは至福の時を共有できるのだ。
 夜の言葉を最後に、カメラは止まった。
 ケルベロス達は立ち上がり、自分の皿を片付ける。勿論すでに中身は空だ。
 最後にミシェルが、せーのと掛け声をかけた。その後に続く言葉は感謝の印。
「Muito Obrigado!」
 全員で唱和した後に、ペコリと頭を下げたのだった。

●ヒールと屋台
 浴衣姿の黒住・舞彩はヴィヴィアン達と一緒に家をでてきたリコスに、街中をヒールして歩かない? と誘った。ランチについては、そのついでに戴く事にしたのだ。
「舞彩、そういえば何か食ったのか?」
「いえ、まだよ。リコスは食べてきたのよね?」
「ああ、美味かった」
「どんな料理だったの?」
「……米と豆と肉の料理だ。何という名前かは、食べるのに夢中で聞いていなかった」
「あなたねえ……」
 そんなやりとりをしながら街中をヒールしていると、一つの屋台から、少しガラの悪そうな兄ちゃんが話しかけてきた。
「姉ちゃん達。ありがとよ! そうだ、これ食っていくか?」
 兄ちゃんはそう言って一つの皿を出した。その上には、焼いた白い粉に、何かが挟まれている。
「はっはっは! この辺りじゃ普通の食いモンだ。変なもんじゃねえよ!」
 兄ちゃんはそう言って、笑いかける。
「ほら、タピオカって知ってるか?」
「そりゃあ……。あれでしょ? ドリンクなんかに入っているやつ……」
「そうそう、あれだよ」
「え? この、白いの!? ……焼く? タピオカ?」
 舞彩が少し躊躇していると、リコスは既にもぐもぐと食べていた。
「うむ。面白い食感だな。美味い」
「じゃ、私も……えい」
 折角出された料理を、断るわけにもいかない。舞彩は一口頬張った。
「食べたことはない、食感。でも、意外といけるわね」
 頷き、また一口。
 こうして異国の味を楽しんだ二人は兄ちゃんに礼を言い、またヒールに出かけて行ったのだった。

●あーん
 天変・地異と霧崎・天音はサンパウロの一般家庭にお邪魔する事にした。家に居た家族は突然の訪問に嫌な顔をせず、二人を歓迎してくれたのだった。
「地異さん……。それは……?」
「フェイジャオン、だな。塩味の煮豆、なんだぜ。……食べたい?」
 地異の前には、黒い煮豆があった。恋人である天音の視線に気がつき、地異はスプーンでそれをすくう。
「あーん」
「あーん」
 そして二人は、もぐもぐと嬉しそうに食べあう。
 ごっくんと喉を通した後、またにっこりと美味しいねと微笑みあった。
「天音のやつは、コシーニャって言って、ジャガイモとかキャッサバって言う芋類と肉を混ぜて揚げたもので、まあ、コロッケみたいなもんだな。肉は鶏肉なんだぜ」
 地異が説明すると、天音はこくこくと頷きながら、フォークで刺して彼の口に持っていく。
「あーん」
「あーん」
 その様子をぽかんとした顔で見つめる住人である家族達と、スタッフ。
「あ……。そういえばカメラ……」
 天音は漸く気が付くが、そのいちゃいちゃっぷりを、しっかりとカメラは捉え、全世界に放送される。
「いやー、天音が幸せそうで。オレは嬉しいよー」
 地異はデレデレで、カメラを気にする様子はない。
「え……と」
 天音は改めてと、カメラを真正面から見据え、少し何を言おうか迷った後、口を開いた。
「……なんだかはじめての場所だけど……。ここに居たらとっても楽しい。
 人も温かい……って感じがする……」
 二人を見つめる視線とカメラに向かって、天音は感じたままを説明する。
 その言葉に、周りの一同は、なんだかほんわかした気持ちになり、柔らかな空気が流れた。幸せの空気と言うものは、カメラを通しても伝わるものだろう。
 そして二人はご馳走様でしたと、お礼の後片付けを申し出たのだった。

●ガラナ
「よし、ここに決めたぜ。突撃ランチタイムーー!!」
 峰・譲葉は、来る途中で大量に購入したガラナ飲料の瓶をマイクに見立て、左手には大きなスプーンを持ち、一軒の小さな家に入っていった。辺りはコーヒー畑。のどかな風景が広がっていた。
「どなたですか?」
 すると、奥から少女が出てきた。どうやら昼の休憩の時間のようだった。歳の頃は自分よりも少し下であろうか。スタッフが事情を説明すると、少女は遠慮がちに、
「あいにく、少しのフェイジョアーダしか……」
 と言った。相手がケルベロスだと分かり、自分の分だけでは少ないと直ぐに判断したのだ。その状況判断の力に、彼女は目を細める。
「なら、一緒に食べないか! どうやら一人みたいだし、食事は楽しいほうが良い!」
 譲葉は左手の大きなスプーンを小さなスプーンに取替え、笑う。

 出てきたのは、少し小さな皿に入れられた黒豆と肉の煮込み料理だ。その料理を二人で口に入れる。
 レストランで出てくるような味ではない。だが、その味付けはシンプルでいて、譲葉の心に響いた。
 暫くの間、お互いの身の上話をしながら、笑いあった。
 そしてガラナ飲料で、これからの二人に、と乾杯をした。
『オブリガード』
 という覚えたての言葉を添えて。

●皆美味しく、逞しく!!
「皆様こちらをご覧ください。本日、こちらの素敵な? フェジョアーダという家庭料理をご馳走になるわ」
 スノー・ヴァーミリオンが、カメラに向かって掌を広げてテーブルを紹介する。
「既に物凄い勢いで食べてるリコスも居ますが……レポート頑張るわ……」
 そう、すでにリコスがガツガツと豆を口に運んでいる。スノーはリコスとおそろいの格好をしていた。
「やっぱりリコスさん……凄いね。と、気を取り直してっ。はぁい! こんにちはっ! じゃあ、ボクも早速戴くね!」
 リコスが無言で豆を摂取する姿を見て、若干の不安を覚えながら、瑞澤・うずまきはえいっと、口にスプーンを運んだ。
「う、ウン! あ、味のほうはっ! い、一目瞭然かなっ!?」
 うずまきはそう言って、引きつった笑みを浮かべた。
 その時スノーは、詳しく説明しようと、しっかりと咀嚼を開始していた。だが、営業スマイルを駆使しながらもみるみる青ざめていった。どうやら出来は良いものでは無いらしかった。
「フェジョアーダは代表的なブラジル料理のひとつで、ブラジルの国民食と呼ばれてるらしいな!」
 リーズレット・ヴィッセンシャフトはその三人の様子を見ずにカメラに向かって、料理の説明をしている。当然彼女はまだその料理を口に入れてはいない。
「お味の方はスノーさんとリコスに聞いてみようか! リコスさん、スノーさん美味しい?」
 リーズレットが二人にマイクを向けてみる。
「ああ。なかなかだ。なあ、スノー!」
「え、ええっ! そ、そうですわねっ。いろんな味が染み込んでぇ、美味しい!」
 スノーはいつでもスマイル。だが、ひとたび気を抜けばそれが崩れる。彼女はプロフェッショナルだ。
「豆や豚の部員が沢山入っててコラーゲンもたっぷり! お肌が曲がり角になってきてる三十路の方にも是非お勧めよ!」
 そんな事を早口で口走る。言葉で思考を塞ぎ、笑顔を絶やさないという高等技術だ。だが次の瞬間、スノーはカメラに背を向けてしまう。
「スノーさんごめん。正直良く分からない……。それに、三十路はやばくない? ……じゃあうずまきさん、もうちょい詳しい情報よろ!」
 うずまきはリーズレットの振りに慌ててカンペを取り出す。どうやらそのカンペを隠す余裕は無いようだ。
「この料理は。え~っと塩味だけの煮込み料理で……。
 お豆と豚肉、牛肉……っと、とても具沢山! 塩味だけだからアレンジも出来る様に、スパイスも~!」
 というと、うずまきはおもむろにテーブルにあった赤い実の入った液体の小瓶の蓋をあける。
「ちょっとかけてみましょう♪」
 ぼたぼたぼたー。
「はいっ! リーズレットさん! コラーゲンと、カプサイシン!! お肌ぴちぴち!!!」
 そしてむんずとリーズレットの口に、スプーンを差し出したのだった。
「!?」
 ぴんぽんぱんぽーん。
 皆さん。ブラジル料理は余り辛くは無いですが、唐辛子の種類は豊富です。容量用法を守って美味しくね!

 さあ、大運動会も午後の部ですよ! 張り切ってまいりましょう!

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月11日
難度:易しい
参加:18人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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