ケルベロス大運動会~進め! ケルベロス探検隊!

作者:河流まお

 恐るべき侵略者・デウスエクスの猛攻が続く日々!
 そして、この侵攻を辛くも阻止するケルベロス達の活躍ッ!
 だがしかしである!
 この戦いに伴う地味に大きな問題は、実はすぐそこまで差し迫っているのだった!
「まずはこのグラフを見て頂きたいのです!」
 そう言ってモニターの電源をピコッとする笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)。
 映し出されるのは、どこまでも右肩に下がってゆく不吉な折れ線グラフ。
「じつは、度重なる『全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)』より、いま世界経済は大きく疲弊してしまっているのです!」
 ドンッ! と擬音を背負いそうな、深刻な表情でねむ。
 ざわ、と激震が走る会議室。
 そういえば、最近お野菜が高すぎてヤバいと思っていたところである。
 一体どうすれば……と頭を抱えるケルベロスの面々。
「そこで、世界中のみんなが幸せになれる素晴らしいアイディアがあるのです!」
 まるで救済の天使のように微笑むねむ。
「この経済状況を打破する為、おもしろイベントで収益を挙げようという事になりました! それが、このケルベロス大運動会なのです!」
 ドンッ! と拳を振り上げるねむ。
 モニターに『大運動会開催後の試算』という項目が新たに生まれると、死の谷底に沈んでいた経済状況を現す折れ線グラフがグングンと急上昇してゆくッ!
「お、おお……!」
 なんだかよくわからないがとにかくすごい!
「世界中のプロモーター達が、考えたけど危険すぎて自粛していた『ハイパーエクストリームスポーツ・アトラクション』の数々を持ち寄り、開催国でスポーツの祭典を行う事になったのです! それがケルベロス大運動会!」
 危険とか自粛とか不吉な単語が聞こえた気がするが、ケルベロス達にツッコませる間を与えず、そのまま畳みかけてゆくねむ。
「第3回の開催地には、ブラジルの『アマゾン』が選ばれました!
 広大なアマゾン川と鬱蒼たるジャングルで、様々な種目に挑戦してください!」
 これで経済問題も解決です! と微笑むねむ。
 そして「皆さんの協力で!」と横に大きく書かれた折れ線グラフは天井を貫いてカンスト領域へ。
 ……あれ、なんか断りにくい空気じゃねコレ。


 退路を断たれたケルベロス達にねむが詳しい説明を開始してゆく。
 ピッとモニターが切り替わって表示されるのは――。
「密林サバイバル特番! 秘境アマゾン・ケルベロス探検隊!」
 毛筆のような力強い字体である。背景にはロマンあふれる顔で探検隊らしきおっさんが遠くを見ている映像。
「まず、ヘリオンからアマゾン川流域の密林にダイブして頂きます!
 ええと、スタートがこの辺りで、ゴールはここですね!」
「……」
 それは6日くらいかかりそうな距離であった。ケルベロスの身体能力ならばもう少し短縮できるかもしれないが、少なくともピクニック的な感覚の距離ではないことは確かである。
「あ、ブラジル政府から支給品がありますのでお配りしますね」
 そういってねむが薄っぺらい袋を手渡してゆく。
 水とか食料が入っているのかと期待したものの、袋を開くとそこにはサバイバルナイフ一本のみであった。
「あの、これ……」
 入れ忘れかな? と淡い期待を抱きつつケルベロスの一人が呟く。
「すごいですよね! それ、ひとつひとつのみなさんの銘が刻印されているんですよ! 紛失しても名前が書いてれば安心ですよね!」
 いやそんなことはどうでもいいよ! 水と食料が入ってねぇよ!
「というわけで、密林をサバイバルしながら、運動会会場を目指してくださいね!
 あ、テレビクルーがすぐ後ろをついてきて撮影しますが、手助けはしてくれません!
 頼れるものはみなさんの知恵と勇気と、仲間との絆なのです!
 危険動物との遭遇、食料の確保、寝床の確保、サバイバル料理など、番組を盛り上げつつ、運動会会場に向かってくださいね!」
 そう強引に締めくくり、ねむはケルベロス達にぺこりと一礼するのだった。


■リプレイ

●旅立ち
「日本の皆さーん! ぴえりんは今、アマゾンの奥地に来ていまーすっ!」
 ヤケクソ気味にカメラに向かって可愛いポーズをとるネットアイドルのぴえり。
 続いて、カランコロンと下駄を響かせながら、カメラの前に姿を現す狐面の少女。
「けひひっ、木々と河がつづら折りなす秘境。隠蔽されし密林の秘密とは……!」
 どこか神的な雰囲気を纏うこの少女の正体は一体――!?
「って、あっつい! 蒸れる!」
 速攻でお面を外す玲。キャラ崩壊はええよ!
「ここが次のグラウンドか……。何かえらく自然豊かじゃない?」
 サッカーのユニフォームを着こんだレインが周囲を見渡す。
 服装の場違い感がハンパないが、賢島組は全員サムライブルー。
「ん? この服を着ればいいのカ?」
 ウルスラが胸を纏っていた布を捲り上げてユニフォームに着替えようと――。
 って、早くもテレビ放送終了の危機。
「ちょ、ウルスラ。ちゃんと更衣室で着替えなって」
 危ないところで鬱金おねえさんがウルスラを引っ張ってゆく。セーフ!
 なお今舌打ちしたロリコン野郎は正座するように。
「ところで対戦相手はどちらに? サッカーと聞いて来ましたが……」
 ユニフォームの上に黒マントを羽織ったクッソ暑そうな服装で英世。
 乗るべきヘリオンを間違えてしまったのか賢島組。
「ア~アア~~っ♪」
 密林に響き渡る奇声!
 メリーナが蔦を伝って猛スピードでドップラー効果してゆく! 順応早いな!
「あ゛~~~っ!?」
「メ、メリーナァッ!?」
 なんか画面外から何か悲鳴が聞こえた気がするがきっと気にしたら負けだろう。
「うーむ、こりゃ試合会場まで歩いていくしかなさそうだなァ」
 やれやれと顎髭を撫でながら十蔵。
 急げ賢島組。きっと対戦相手のチームが会場で待っているぞ。

「ん、ではこれより湖上都市アマゾン猛レース開催なの」
 開会宣言をするフォン。
『湖上都市』はどのチームが一番最初にゴールできるかでひと勝負するようだ。
「一番乗りを競うの? 負けない」
「やった! ルージュやエルナといっしょのチームだね!」
 準備運動をしながらのノーザンライトと、無邪気に微笑むフィー。
「団長として良い所を皆に見せるよ! さぁ、スタートだ!」
 ルージュの号令と共にレース開始!
「いくぞムギ! ウオオオッ!」
 初っ端から全力疾走の筋肉チーム! 予想通りだよ!
「ちょ……6日間の行程だよ! 二人ともペース考えてるの!?」
 心配するエルナの声を漢たちは置き去りにして――!
「心配無用! 俺達の筋肉はアマゾンの密林にだって負けやしない!」
 燦々と輝く太陽に汗が弾ける! 筋肉が躍動する! ナイスバルクッ!
「ア~アア~!!」
 蔦を掴んで、密林の樹々の間を縦横無尽に飛び移ってゆく筋肉チーム!
 だが!
「ア゛―――ッ!」
 なんか森の奥で悲鳴が響いた気がするが、きっと気にしたら負けだろう。
 てか既視感すごいな。
「さて、じゃあ私達はマイペースに進ませてもらうか」
「……そうだね。いい教訓ができたし」
「ん、まずは食材探しなの」
 縁の言葉にノーザンライトとフォンは素直に頷くのだった。

 さて、初っ端からトラブっている組もあれば、ちゃんと円陣を組んで準備を整えている組もいる。
「さてさて! いざ、出発です!」
 シルクの言葉に「おー!」と応じるエブリデイ☆マジックの仲間達!
「どんな冒険があるのかワクワクだ」
 期待に胸躍らせるラルバ。
「理科教師の名において、必ず生き延びてみせます!」
 キラーンと眼鏡を輝かせる公子。
「ボクもサバイバル漫画を読んでイメージトレーニングはバッチリです! これはもう余裕ですね!」
 胸を張るシェリン。おいやめろそれは失敗フラグだ。
「くっふっふ。森林ならばウチのホームグラウンド。皆様がリタイアせぬよう、ウチがサバイバル知識をお授けしましょう」
 同じく自信満々のオガミ。
 まぁ実際、樹海の洞窟で育ったというオガミはこのチームのエース的存在かもしれない。
「受講料はお安くしますので」
 って、金取るのかよ!
「楽しみねとっても。アナコンダと遭遇したらぴょんぴょん縄跳びするのよ」
 メアリベルは絵日記を胸に大冒険の夢を膨らませてゆくのだった。

「ヒャッハー! ローカスト調査隊現地入りだァ!」
 世紀末から来たような奇声を発しながらザベウコ。
「密林の樹海に謎の地底人発見!? 謎の昆虫人間を見た!? 現地の住民から目撃情報を得た我々はその聖地の調査に乗り出すが……!?」
 そして、手慣れた様子でレポートしてゆくウィリアム。
「ウィリアムの旦那! 定命化したローカストの生き残りがアマゾンにいるなんてスゲー情報どこで得たんでやんすか!?」
 興奮を冷めやらぬ様子の仁。
「――ふふ。私も友人から聞いた話なのですけどね。ですが、ある筋からの有力な情報らしいですよ?」
「もし本当に発見しちゃったら、ピューリッツァー賞もらえるでやんすかね!?」
 テンション爆上げの仁にニヤリと微笑むのは日出武。
「フッ、その時は我々『奇跡の村』の名が世界に轟くことになるでしょうねぇ……!」
「よーし、調理担当は任せておいてヨ!」
 ペスカトーレがナイフをビシッと掲げる。
 そんなテンション高すぎる男共を複雑な表情で見つめているのは美緒。
(……えらいことになってしまった)
 以前、ちょっとした時に「アマゾンの奥地に新種族とかいるかも!」と口走ってしまっただけなのに――。
「さあ! 我ら、宇原場探険隊! 密林の奥地に潜むという謎の……えーと、何だっけ? ともかくそれを調査するため現地へと向かうのだった!」
 そして、探検隊服を着たコロルが栄光への第一歩を踏み出す。
 『奇跡の村』いざ出発だァァアッ!

●道中
 さて、出発から一夜が明け。各自、本格的な探検が開始されてゆく。
 そのいくつかを見てゆこう。

「うーむ、今回は一人旅のつもりだったのだが……」
 動物の友を駆使して危機回避をしてきた晟。
 カラフルな鳥・オニオオハシと、ギョロ目の猿・モノスに懐かれてしまい、ちょっとした桃太郎状態へと突入。
「あとは犬だけか……」
 ふむ、と考え込む晟。
 揃えてどうする。

「ちゃんとゴールまでたどり着けるのかなぁ……」
 額の汗を拭いながら歩くヴィヴィアンと、その恋人の鬼人。
「ま、なんとかなるさ。まずは一緒に蔦と細い枝を集めよう」
 鬼人は闇雲に密林を突き進むのではなく、サバイバルナイフを使って木製の道具を手際よく作ってゆく。
「ふわ~、すごい……!」
(あれ? でもこれ、あたしができることないかも……)
 感心しながらも沈みそうになるヴィヴィアン。
 そんな彼女の心境を察したのか鬼人は一考。
「あとは魚とかキノコでも採れればな」
「え、キノコ? まかせてー! こんなこともあろうかと、食べられる植物とキノコを暗記してきたの!」
 よしきた! と、気合いを入れ直して立ち上がるヴィヴィアン。
 その表情豊かな彼女に、鬼人も微笑むのだった。

 密林の中を進む特科刑部局。
「暑っついですね~。ああ、日本に残してきたお酒が恋しいです」
 アマゾンはとにかく暑かった。
 少し歩くだけで汗が噴き出てくる。
「まーまー、とばちゃん、たまには森林浴もいいんじゃん? それに、我がチームには切り札が揃ってるし」
 楽雲の言葉を受け、四つん這いの姿勢でいたアリシアが振り返り、天真爛漫の微笑みをみせる。
「アリシア、もり、そだつ、した! しってる、たくさん! まかせる、して!」
 くんくんと地面のにおいを嗅ぎ、川がある方向を探ってゆく狼少女のアリシア。
「かわ、あっち」
「さっすがアリシアちゃん! よーし、行こっか!」
 歌を口ずさみながら進みだすベルベット。
「これもう勝ち確でしょ! ……ん? 皆どうした?」
 突然、蛇に睨まれた蛙のように動きを止めた仲間達。
 それを怪訝に思いながら楽雲。
「――?」
 仲間の視線を追って頭上を見やれば――。
「キシャァアアア!」
 樹上に巨大なアナコンダの姿が!
「うおあああッ!?」
「ちょっ、蛇を連れてこないで下さい! あ、そうだ! こんなときのベル殿でした!」
「ごめんアタシ蛇だけはどーしても苦手なのー!!」
 頼みの用心棒が逃げ出し戦線は崩壊。
 悲鳴が密林に木霊するのだった。

 お次は黒猫旅団の皆さん。
「説明! ナイフ連打で生き残れ! さあ、オレについてこい野郎ども!」
 雑過ぎる説明を終えて颯爽と先頭を行くキサナ。
「冒険がボクを呼んでいる! きっと遺跡があったりするんだ!」
 夜野少年はロマンに理解がある模様。将来有望である。
「これとか食べられそうだよね」
 暗夜はみんなのためにと腕一杯にフルーツを抱えてゆく。
「あんまり遠くに行きすぎないようにしてくださいね」
 ハラハラとした様子で尾守兄弟を見守るアウラ。
「支給品はナイフ一本。かの珍獣ハンターも驚きの企画だな?」
 そして、列の最後尾を行くのはディークス。
 うだるような暑さを耐え忍びながら歩き続けると、やがて日も落ちてくる。
「今日はこの辺りで寝床を確保しよう」
 沈みゆく太陽を見ながら明日以降の進む方角を考えるディークス。
「では、テント作りますね」
 よし、と腕まくりして野営の準備を進めるアウラ。
 テントと言っても木の葉を敷き詰めたり、枝を折り曲げて屋根にするような簡易なものだが、ここに集めてきた食材を並べればそれなりのものになる。
 だがその時――。
 まず異変に気が付いたのは暗夜。
「あれ? なんかあちらで黒い影が動いたような……」
 それはまるで黒い絨毯が足元から迫ってくるような光景だった。
「アリだー!」
 悲鳴と共に混乱に包まれる探検隊!
「う、うろたえるなっ! オレがなんとかしてやろーじゃねーか!」
 キサナが蟻の大群に向けてナイフ連打! 焼け石に水!
「物理的な闇は久しぶりに見たな」
 仲間を助け出して木々の上に避難するディークス。
「ああ……テントが蟻の群れの中に……」
「みんなで集めたご飯も……」
 アウラと夜野が涙声を漏らす。
 あゝ無情。
 道中、このようなトラブルが次々と探検隊に襲い掛かってくるのだった。

●大河
 4日目。
 密林を抜け、目の前がひらけると、そこには世界最大の河川・アマゾン川の雄大な流れが広がっていた。
「おお……アマゾン川は母なる恵みの水源! よーし、ここはボクがやらせ一切なしのガチサバイバルで、視聴率をがっぽがっぽ稼いでやりますよ!」
 おもむろに服を脱ぎだし海パン一丁になる東西南北!
「待て、シホウ! ヒキニートが外に出てテンション上げすぎると大抵ロクなことにならないぞ!」
 鬱金が止める間もなく東西南北は悠久の大河へダーイブ!
「死ぬ気か!? シホーウ!!」
 そして、やがて訪れるのはわりと予想通りの出来事。
「ああ! しほーがピラニアに! いいやつを失くした……」
 追悼しながらもピョイっと釣り糸を垂らしてゆくレイン。
 やれやれ、と肩を竦めるのは要。
「しほう君。ちゃんと危険を見越して『かもしれない行動』しないとダメでしょー」
 そして、レインが釣ったピラニアをじっと見つめる要。
「ピラニアは生でも行けるかもしれない」
 あ、この人もダメっぽい。
 昨日怪しいキノコを食べてダウンした十蔵さんの姿から何も学んでいない模様。

 さて、このアマゾン川を前に行動を起こすのは他のチームも同じ。
 素潜りで巨大ナマズと格闘し、激戦の末これを捕獲した沙門!
「どうだ、フィアールカ! 多少は痛むが何とか捕らえたぞ!」
「え!? ナマズ!? ナマズ獲れたの!?」
 野草図鑑を放り投げて、ひゃっほーいと、諸手を上げて喜ぶフィアールカ。
「ハラショー!!」
 魚肉GET! まともな食事は久々だァ!

「目指せ大漁! シェリンさん、頑張りましょうね!」。
「がんばりましょう、えいえいおー!」
 シルクとシェリンが気合を入れて釣り竿作りを開始。
 古海先生が水を濾過している間、釣りで食料を稼ぐエブリディの面々。
 そして――。
「私にいい考えがある」
 キリッとした表情で和奈。
「まず魚をたくさん釣って。それでワニさんと仲良くなる。そして、みんなでワニさんの背中に乗りながら川下りする」
 なるほど妙案である。
「もしワニと仲良くなれたらオレも遊びたいぜ」
 ちょっと尻尾噛まれそうで怖いけど、とラルバ。
 果して奇策は成るか。成功のカギはどれだけ魚を確保できるかにありそうである。

「ついに辿り着いたな……! 現地住人から仕入れた情報では、この場所に伝説の巨大エビが潜んでいるとのことだぜ!」
 海老といえばこの男ラティクス!
「……随分静かだけど、本当に巨大エビなんているの?」
「そもそも、これまでの道中で現地の住人に遭う機会なんて無かった気がするのだが……」
 半信半疑のクラリスとグレッグ。
「フッ、現地の人とメールのやり取りをして事前に情報収集していたのさ!」
「途端に胡散臭くなったわ……」
 アリシスフェイルが肩をがっくりと落とす。
 とは言え、せっかくここまで来たのだ。
「きっといるよ! さぁ捜索開始だ!」
 先陣切るノルに続いて川辺で巨大エビ探索を開始する旅団のメンバー達。
「うーん、この……生暖かい感じ」
 素足で踏み入れた川底の土は、なんとも言えない感覚である。
「皆、気をつけてくれ……ヤツは獲物を水中に引き込むらしい……」
 おま、そういうことは早く言えよ。
「ぐわー!!」
「ノルーーー!!」
 騒然となる川辺!
 まさか本当に巨大エビが実在したとでもいうのか――!!
 ……。
 まぁ尺が無いのでサクッとネタ晴らしすると、ノルは水底にあった窪地に脚を取られただけだった。
 でも、巨大エビの伝説もあながち嘘ではなかったようで――。
「どうやら、その場所にザリガニの巣があったようだね」
 ノルの脚から大ザリガニを引き剥がしながら医療班の熾月が一言。
「……わー、すっごく大きい」
「すげぇ! このデカさはマッカチンだな!」
「え、真っ赤……なんて?」
 感嘆するクラリス。少年のように瞳を輝かせるスバル。そして聞きなれない単語に首を傾げるアリシスフェイル。
「ザリガニじゃねえか!! くそ、騙された! おいしくいただくしかねえ!!」
 結局食べるのかよ!

「あいてて、昨日は酷い目に遭ったぜ……」
 服を脱いで、川へ水浴びに入ってゆく少年。
「あーもー、蛇に噛まれたところ腫れてじゃん……」
 ぷっくりと腫れたピンクの赤らみを撫でるエル。
 白磁のような肌。
 形の整ったおヘソがとても美しい。
 男の子だから別に放送されても問題ないはずなのだが――。
 この背徳感は一体なんだ!?
 傷口を洗い流してゆくエルだったが、その血の匂いを嗅ぎつけてピラニア達が背後から迫る。
「ギャーーー!」
 響き渡る悲鳴。
「ん? なにか悲鳴が聞こえた様な」
 川辺で捕らえた蛇を丸焼きにしていたカタリが呟く。
 恵みの大河・アマゾン。だがしかし恩恵を受けれるかどうかは運次第でもあるようだ。

●雨
 5日目。
 強烈な大雨がアマゾンに降り注ぐ。
 叩きつけるようなスコールの中、雨宿りできそうな洞窟を発見し、逃げ込んだツカサと焔。
「服がびしょ濡れね……乾かさないと身体に悪いわ」
 艶やかな仕草で濡れた髪をかき上げる焔。
「え!? あ、うん……そ、そうだね」
 しっとりと雨に濡れて、浮かび上がった男と女の身体のライン。
 ザーッと絶え間なく続く雨音。
 肩を寄せ合って暖を取る二人。
「なんか、ちょっと恥ずかしい、かな……」
 こうしていると、互いの鼓動がハッキリと感じられる。
 かつてないほどの良い雰囲気だと焔は確信に至る。
 だが――!
「あ! 今、なんか洞窟の奥が光らなかった!?」
「ええー……」
 盛大にずっこける焔。
 いまそんなことどうでもよくない!?
「なんだったんだ、あの輝きは……!? まさか密林に眠る古代の黄金植物だとでも言うのか!?」
 冒険心に火をつけて洞窟探検に乗り出すツカサ!
 緊急特番『秘境アマゾンの密林に古代黄金樹を見た!』はツカサ隊員からの続報が入り次第放送予定である!
「え~……」
 魂抜けそうな吐息と共に、仕方なくツカサを追いかける焔であった。

●最終日
 昨夜の大雨が上がり、森は瑞々しい生命の輝きで満ちていた。
 6日間の旅を経て、様々な経験をしてきたケルベロス達。
 やがて樹々を抜けて、小高い丘から地平の先を見渡せば、そこには――。
「ゴールだ……」
 一直線で進んだつもりが、散々迂回をする羽目になった零次が思わず呟く。
 いや、特別な思いを抱えるのは彼だけではない。
 その胸に去来する『旅の思い出』は人それぞれである。
 猛獣との死闘。
 仲間と共に囲んだ食事。
 満天の星空……いや、あるいは――。
 なんにせよケルベロス達は、ほぼ全員が6日以内に行程を終えて無事運動会会場に辿り着いたのだった。

 そう、ほぼ全員。

「ついに見つけた……この洞窟こそが黄金郷エルドラドに続く遺跡よ!」
 サバイバルそっちのけで古代遺跡探しする千里と、
「未知なる世界に体一つで挑む! ワクワクせざるを得ません!」
 共に地下へと続く道を進むラリーと、
「はぁ~……お友達とはしゃぎ合うお嬢様マジ尊い」
 その忠実なお世話役リリーナを除いて――。
 果してノブ旅探検隊はどんな経緯で会場に間に合ったのか!?

 それを語り切るにはあまりに時間が足りない。
 いつかまたの機会に、ということで。

作者:河流まお 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月11日
難度:易しい
参加:61人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 10
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