ケルベロス大運動会~前夜祭のカーニバル

作者:のずみりん

 ケルベロス大運動会。
 激闘極まるデウスエクスとの戦い、都度重なる『全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)』で疲弊する経済の活性化を目的とした世界的興行イベントも今年で第三回を迎えた。
 栄えある第三回の開催地は南米、アマゾン。ケルベロスたちを待ち受けるのは、広大なアマゾン川と鬱蒼たるジャングルに世界中のプロモーター達が持ち寄った『ハイパーエクストリームスポーツ・アトラクション』
 そしてリオのカーニバル! ……カーニバル?
「はい。リオのカーニバルです。ケルベロス大運動会の前夜祭として八日から十日の期間で特別開催するそうです」
 もちろんソフィアも参加します。と、ソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)はいつもの調子で、しかし大胆にそう言った。

 リオのカーニバル……謝肉祭は二月に開催される南半球の夏祭りだが、実は八月の開催もけして珍しいものではない。
「イギリス、ノッティングヒルのカーニバルもそうですし、日本でも八月の行事ですね。今年は世界的に温暖な気候ですし、深くは考えなくて大丈夫でしょう」
 そもそもからして、リオのカーニバルは歴史と同じくらい懐深い。
 リオのカーニバルと言えば有名なのはサンバダンスだが、それ以外にも中欧由来のポルカ、南欧のタンゴの影響を受けたマシシ……多民族国家ブラジルを象徴するほどのダンスと衣装、音楽が華やかに舞い、歌い、奏でられる。
「特にサンバにはサンバビスタ……サンバをこよなく愛する人という言葉があったり、一年をかけてカーニバルのために準備、練習をするプロチームもあるそうです」
 本場のカーニバルはメインストリートだけにとどまらない。大小のパレードがあらゆる通りに溢れ、ストリートバンドが歌う。
 プロアマ老若男女を問わず、恥も外聞も捨てさって熱狂できる、街のあらゆる場所を会場とした世界最大の祭典、それがリオのカーニバルだ。

 あるサンバビスタは言う。
『カーニバルには人の喜怒哀楽全てが詰まっている』
 と。

 期間こそ短いが、前夜祭ではカーニバルの魅力全てが楽しめるだろう。
「カーニバルはハイパーエクストリームスポーツと同じくらい、ケルベロスたちを待っている、そうです」
 ストリートには出店が並び、ブラジルの屋台料理を楽しみながら、花形の踊り子たちを観戦することもできる。
 音楽、踊りに自信があるなら現地のダンサーたちに挑み、共に踊るのもいい。観光客向けに衣装を扱う店も多く、なんなら飛び入りでの参加だって可能だ。
「古来、カーニバルには『厳粛な神事前の、鬱憤晴らしの馬鹿騒ぎ』という意味合いもあったそうです。大胆に、普段を出さない自分を出して、大運動会への備えとするのも、いいのではないでしょうか」
 淡々と語るソフィアの言葉は、何処か熱を帯びて、自身に言い聞かせるようにも聞こえた。


■リプレイ

●オーラ・ケルベロス!
『オーラ・ケルベロス!』
 空港へ響く陽気な異国の声に、リュシエンヌ・ウルヴェーラ(オラトリオのウィッチドクター・e61400)は目を輝かせ、ウリル・ウルヴェーラ(ドラゴニアンのブラックウィザード・e61399)の手を握る。
「聞きなれない言葉と、音楽。うりるさんと初めての、おおきなお祭り!」
 海外旅行は初めてというオラトリオの少女をウリルは愛しくなでる。ロビーは小さく、外はすぐにもカーニバルの世界。
「カーニバルには人の喜怒哀楽全てが詰まってる……だっけ」
「今回のこの盛り上がりは運動会だから、というのもあるのかな?」
 手を繋ぎ横切る二藤・樹(不動の仕事人・e03613)とヒメ・シェナンドアー(白刃・e12330)も圧倒された様子で呟く。
 きっとこれも自分たちが護った平和。戦いはまだまだ続くけど、今は二人の思い出を。ヒメはつないだ手を握り直し、ウリルたちの眺める街へと溶け込んでいく。
「うりるさん! 美味しそうなお店がたくさん! 何か食べましょう!」
 一方の二人……道行く人々の姿ゆえか、さかんに手を引くリュシエンヌへウリルは食べながら見回ろうかと通りの屋台を伺う……少女が目を輝けせたのは、突き立てられたダイナミックな固まり肉。
「うん、シュラスコが気になるかな」
 訪れた店先では、同じケルベロスだろうか? 注文を受け、今まさに運ばれる肉が目前、大胆に削ぎ切られていた。

「遊鬼は肉か」
「うむ……これは花より団子で目がいってしまうな」
 盛りつけられた皿と、カイピリーニャのグラス片手の差深月・紫音(死闘歓迎・e36172)に朧・遊鬼(火車・e36891)は苦笑する。
 このシュラスコ、量り売りで時間無制限。肉だけでなく、魚介に果物、何でもありだ。
「地元では昼から夕方まで過ごしていく人もいるそうですね」
「そら剛毅だな。二人は何か食べるか?」
 真田・結城(銀色の幻想・e36342)は、自分はパステルが……と売り子に頼み、小話に笑う遊鬼と分け合い、味わう。男三人、【三銃士】。
 勿論、飲み食い騒ぐは男たちばかりの権利でもない。
「踊りに見惚れるのも良いガ、出店の料理も見逃せないゾ! 右も左も食べたことのない料理ばかりだからナ!」
 目移りする屋台村に、獅識・千夜(喪われた歌声の先に・e45069)は物部・帳(お騒がせ警官・e02957)を引っ張っていく。
「ものすごい熱気ですねー。あちらでもこちらでもパレードが、っとと……こんな一面もあったのですね、貴女は」
「なニ、きちんと公私を分けているだけの話ダ」
 そして私用である以上遠慮は不要……ならばと帳も切り替える。
「あちらの屋台に、ブラジル風餃子というのがありましたよ。アレを肴に、カシャーサを一杯……強い酒ゆえ気を付けて、屋根の上でパレードを……というプランで如何でしょう?」
「ありがたイ。私はそもそもこういった祭りというものに触れる経験が少なくてナ。ここは是非ともエスコートを頼ム」
 帳の提案に、千夜は是非もなく乗ることにした。

 帳の誘った屋台にも先客の姿。
 パステルを興味深そうに眺める大粟・還(クッキーの人・e02487)と【太陽の騎士団】の面々の姿。
「この、パステルという料理は初めて見ますね。揚げ餃子みたいなものでしょうか……あ、あとこの焼きパイナップルも」
「オーラ! 最初は移民が始めたって聞くね、日本の人!」
 盛られた揚げ餃子風のブラジル料理を見遣る還の目前、肩に乗せたウイングキャットの相棒『るーさん』がぱくり。慌てて彼女も一つぱくり。
 形はよく似ているが、さくりとした皮はパイ生地だろうか? 具の粗挽き肉も歯ごたえよく、餃子とはまた異なる味わいだ。
「春巻のようで、イタリアのカルツォーネのようでもある。何事も先入観とは、異なるものだな」
「そちらの屋台は楽器? あ、ベルーカも食べます?」
 返事にポコンと鳴った太鼓はご愛敬。ベルーカ・バケット(チョコレートの魔術師・e46515)はパステル、そして通りの人々にしみじみと思う。
「半裸で羽根を背負ったダンサーさんばっかり、と思っていたのである」
「うん、日本のメディアでの印象があったが、実際は男性や民族衣装を着た女性等も踊っているのだな」
「日本のお祭りとはまた違った趣があります……異文化交流、というか」
 ベルーカの感想にシヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)と【太陽の騎士団】の仲間たちが頷く。熱気に汗をぬぐい、ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)はバンジョーを一つ鳴らし。
「ちなみにあちらの通りで、貸衣装もやってるそうですけど」
「……さすがにあの露出度の高い衣装は人を選ぶな」

「きらきらキレーなおようふくばっか、り……ミズギみたいだね?」
 そのシヴィルの見やった貸衣装店。花守・鈴(星鳴・e44251)の感想は年相応にストレートである。
「……でも、ああやって堂々と踊ってるのは綺麗だしカッコいいわよね、サンバ衣装」
「さすがに着るのは勇気がいるけど……こっちのバイアーナって民族衣装?」
 セレス・アキツキ(言霊の操り手・e22385)は少し前向きに、キアラ・カルツァ(狭藍の逆月・e21143)は少し言葉に衣着せつつ、【狭藍】の仲間たちは食べ歩きの傍ら、たちよった貸衣装を物色する。
「そう。北ブラジルの……サンバの母とも言われる民族衣装」
 地元の人らしき店員が言いながら一回りすると、花咲くようにスカートが開いた。
 露出は少なく、上品なかわいらしさのドレスはマイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)たちを魅了したようだ。
「白は鈴ちゃん、セレスは水色とかどうかな!?」
「キアラおねーちゃんとセレスおねーちゃんはテンシさんみたいだし、マイヤおねーちゃんはヨウセイさんみたいだよ!」
 店員も交え、かしましく花開く衣装談義。マイヤのボクスドラゴン『ラーシュ』も一緒に、お揃いでカメラの前に勢ぞろい。
『オーラ、ブラジル!』
 パシャリと落ちるシャッター、それと時同じくした歓声。
「パレードが出るぞぉぉぉー!」
 歓声と笛の音が一際祭りを盛り上げた。

●いざ、サンボドロモ
「これがブラジルの祭りってやつかい……!」
 茶野・市松(ワズライ・e12278)も声を飲み込む絶景がそこにあった。
 リオ最大のパレード会場、サンボドロモ・ダ・マルケス・ジ・サプカイ。大通りを丸ごとのステージは、リオのサンバビスタの聖地である。
「この通り全てがパレード専用たぁ、すっげー派手だな! 日本の祭りも賑やかだけどよ、こいつァ……」
「ふふ、けど、趣は違っても根っこはおんなじね……ほら」
「あれは」
 火照った体にアサイーアイスのカップをあて、市松と歩むオルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232)が示す先にはエキゾチックだけれど、馴染のある風景。
「祭りに車……嗚呼、ねぶたかい?!」
 古今東西のモチーフに飾られた山車はカーニバルの花形。無性にビールと、そして躍りが恋しくなる。
 続く踊り手たちを見れば、なお一層。
「陽気に歌って踊って、疲れた体と心をすっきりさせちゃいましょ~! 曲目はこの日のため、夜なべして編曲しました『殲剣の理・サンババージョン』!」
「【quatre☆etorir】も、カーニバルに突撃です!」
 先陣を切るのはユノー・ソスピタ(守護者・e44852)たち【カナートス】の仲間と、弾き語る北斗・アンジュリーナ(はっちぽっちがーる・e47963)の陽気なリズム。それに負けじと続くはガールズバンド【quatre☆etorir】のロゼ・アウランジェ(アンジェローゼの時謳い・e00275)たち。
「華やかに歌い踊ろう! 『華と笑と☆歌と恵と』アマゾンアレンジに続いては新曲『L.W.Q.』お披露目だよっ!」
 ヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)の声に歓声が応える。
 四人が纏うグリーン&ピンクのフリルで飾ったアマゾネス風のビキニアーマー、ピンクイルカを飾った衣装もあざやかに、槍を模したマイクが儀仗のように宙を舞う。
「今年の夏もカト☆エトの夏! 歌って踊って、たくさんの人に元気を届けたいな」
「いつもよりちょっとワイルドでいつも通りきらきらのわたしたちをごらんあれ☆」
 ヴィヴィアンは神崎・ララ(闇の森の歌うたい・e03471)と、ロゼは遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166)との『にじいろミューズ』へ。
 オラトリオの彩る薔薇と翼がリオの風になびくなか、パートは再び【カナートス】へ。
 統一感ある乙女たちの晴れ姿に対し、男性の龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)も交えた対照的な多様性が舞台にまた花を咲かす。
「どうどう? のあ上手に踊れてるー?」
「あぁ、あの踊りも良い感じだな。アンジュリーナも、流石に演奏が上手い」
 隆也の差し出した手に揺稀・ほこり(カササギ・e46760)と沢渡・のあ(ネコの手・e45212)、ウイングキャット『メイ』も加わり、可愛らしい衣装がサンバのリズムでぴょんと跳ねる。
 多少リズムを外しても、そこは情熱と勢い。漏れ出す情熱はリオ最大のステージにも収まらない。

「何も考えずにひたすらハッスルってすごい! 面白い! あと葵ちゃんが艶っぽいっ!」
「あはは、絶対それ勢いで言ってますよねっ! あ、ちょっと待ってくださいっ」
「勢いで言ってるけどホンネやで!
 一つ向かいの通り、露店で見学していた流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)も熱気に負けた一人、いや引っ張り込んだ二羽・葵(地球人もどきの降魔拳士・e00282)と二人。水着の上にシャツ、パーカーをひっかけた四角い男とラフな女が通りを跳ねる。
 その姿はまた、別の誰かを勇気づけて。

「滴る肉汁、喉ごし溜まらないね……折角だし、私達も踊っちゃう?」
「うん、テンション上がるの何かわかる……皆、楽しそう」
 実はお酒はあまりダメという遠矢・鳴海(駄目駄目戦隊ヘタレンジャー・e02978)も、気にしていた須々木・輪夏(翳刃・e04836)も心が軽くなる。
 あの踊る人たちのように、大胆に、普段出さない自分を出して――。
「そう、ね。なるみと一緒に踊りたい。でも踊りってあまり知らないから……わたしにも教えて」
「たはは、こんなで良ければ、喜んで♪」

●カーニバルの昼と夜
 楽しい時はあっという間。
 紅々と落ちるリオの夕日が、レオンハルト・ヴァレンシュタイン(医龍・e35059)とアーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)、二人の浴衣とオルトロス『ゴロ太』を染めていく。
 危機の連続に失いかけた穏やかな時間を取り戻し、食べ歩くのは幸せの味。
「ほれほれ、アーティ殿もあーんじゃ」
「あ、あ~……んっ」
 口に入ったのはパステルかシュラスコか、よくわからないほど幸せ過ぎる二人の様子をゴロ太が尻尾を振って笑っている。
「祭はまだ始まったばかり、我らのデートのゆくえをご期待じゃぞ!」
 何となくカメラ目線。二人の振り返る路上はまた少し風景を変えた。
「あっ、ほら、パレードがやってきましたよ!」
 コシーニャ……ブラジル風コロッケを食べ合っていたフローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)とミチェーリ・ノルシュテイン(青氷壁の盾・e02708)も振り向いた。
「パレード……観ているだけでなんだか力が湧いてきますね」
 料理を味わいながら眺めるパレードに、思い出がまた一つ増えていく。

「ムギさん、あの……おひとつ、どうぞ」
「じゃ、じゃあいただこうかな……うん、紺のも美味いよ」
 思い思いに頼んだシュラスコを食べ比べながら、ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)と羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)は少し初々しく、触れ合った手をそっと繋ぐ。
 通りの人々、華やかなパレード。一切れを飲み込み、ムギは意を決して紺を誘う。
「私たちもこんな風にダンスを楽しみたいですね」
「大丈夫、一緒にならきっと楽しく踊れるさ」

「姫貴と2人で踊るのなんて~これだけで楽しいね~」
「確かに……わっ……私も緋霈と一緒に踊れたりするのは、嬉しいわ……っ」
 慣れないサンバ衣装に四苦八苦で踊る遠野・姫貴(魔ヲ狩ル者・e46131)、出雲・緋霈(歪みの道化師・e33518)はそのだけそうな胸元を抱きとめ、そっと戻して微笑みをかわす。
「ん~……本当に姫貴はスタイル抜群で~……自慢の彼女さね~」
 真っ赤な顔の姫貴と相方に降り注ぐ歓声。
 そんな二人を隠すよう飛び入ったのはエルバート・アーヴィング(二親喰らい・e46758)と小野・雪乃(光と共に歩む者・e61713)のペア。
 執事服と法衣姿、二人が舞うのはマシシの元となった情熱のタンゴ。磨き上げた二人の舞が人々を魅了し、フィニッシュを決める。
「オブリガード(ありがとう)!」
 驚愕、そして拍手に包まれた会場、差し入れられる軽食をありがたくいただき、一礼すると通りへと。
「このチマキ、甘いのと塩味のがある……食べてみて?」
 洗練のダンサーから恋人の顔へと戻っていく二人。
 入れ替わり、続いていくのはエキゾチックな着物姿だ。
「ほわぁぁ! カーニバル凄いんよ、綺麗な衣装で凄いねなんよ……ほわ、他の衣装さんに負けてへん?!」
 ハイな様子の巽・椿姫(ちいさな椿の匣姫・e22536)を見守り、鈴代・瞳李(司獅子・e01586)は差し出した手を彼女に委ねる。
「凄く似合ってるし、椿姫が着ると周りの綺麗な衣装にも負けてないぞ」
 出来る踊りは社交ダンス程度という瞳李だが、椿姫に委ねた手はすぐにコツを掴み、雅やかに舞う二人へと再び拍手が響き渡った。

「かぁーっ、やるねぇ! 何だかこんな祭りの熱気、中てられちまうよなァ!」
「なんだい? やっぱりまだ参加してみたいって思うのかい?」
 そんな通りを眺めるブリュンヒルト・ビエロフカ(活嘩騒乱の拳・e07817)の酒と違う火照りの様子に、英・虎次郎(魔飼者・e20924)はこれ以上は情熱的すぎると半笑い。
「なにせ、あそこで踊る誰よりセクシーで可愛い子が隣にいるんだぜ?」
「ははっ、こんな風に眺めるのだって楽しいし、気分は浮かれちまう。それが惚れた男となら、尚更だぜ?」
 酒場のバルコニーに吹き込む風が、二人の熱を冷かした。君の瞳に完敗。乾杯。

●大運動会・アテ・マイス!
 月も落ちて、日がまた昇る。
「どない感じやー? ええ感じに記事になりそ?」
「くふふ、おかげさまデ、取材がすごーく捗りまシタ!」
 早朝のシュラスコ屋台を楽しむリング・ファーバカステル(その身を焦がすは皮衣・e34658)の手元には鉛筆文字とスケッチいっぱいの取材メモ。
 ねぎらう伽羅・伴(シュリガーラ・e55610)の手には揺れる思い出の石製ショットグラス。
「樹剤も一段落で……せっかく来たのですカラ、一緒に踊っていきまショウ!」
「せやねぇ、折角の機会やし、踊ってみよか?」
 早朝の街で、少し落ち着いた空気がまた動き出す。

 少し空いた夜明けの空へ、レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)とラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)は手を繋ぎ飛んだ。
「空から見る祭り、地上で見るのとは全然違うな」
「なかなか飛び出すのも大変だったね。けど、情熱と原色に彩られた街を一望するのは特別な気分だ」
 踊りはそこまで詳しくない二人だけど、楽しむ人々の姿だけで気分は高揚してくる。親友二人、この空を訪れられてよかったと思える。
 見下ろすリオ、ドナ・マルタの通りにはレスターの知った姿もあった。

「あっ」
「ん?」
 コンスタンツァ・キルシェ(スタンピード・e07326)は振り返る見知らぬ踊り子に安堵し、少し落胆した。
 鮮やかな赤髪、金の瞳はキルシェが衣装を借りた宿敵と似ているけれど……違う。
「へぇ……よく似た宿敵が、ね」
「ライラ……出会い方が違ったら友達になれたっすかね……?」
 けれどそれも縁だろうか。
 一期一会。ふと漏れた想いに、気のいい踊り子は付き合ってくれて……ほんの少し、心は解れた気がした。

 神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)の奏でるカヴァキーニョが、ドナ・マルタ展望台を流れていく。
 かのコルコバードの丘の中腹に位置するここは、リオの街を一望できる穴場の一つだ。
「所用で訪れたことはありますけれど、近辺も随分と変わってみえます」
「麓はは最近まで有名な悪所だったらしいな」
 カサッシャと料理を堪能する空木・樒(病葉落とし・e19729)と、ソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)のやりとりに、一区切りした晟が一言付け加える。
「それほど……?」
「ええ。まぁ、わたくし自身も、かもしれませんが」
 今なら、この人々の喜怒哀楽を守りたいなどとも多少は思える。きょとんとしたソフィアに、ほんのり頬を染めて樒は微笑む。
「そうだな……さて、二日目の馬鹿騒ぎだ。私も出店を網羅にいってみるとするかな」
「……晟殿も、踊るのですか?」
「踊らないよ!?」
 ソフィアの呟きに晟がよろめく。祭りも大運動会まだ始まったばかり。
 アテ・マイス。次は大運動会でまた会おう。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月11日
難度:易しい
参加:53人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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