綺麗な少女には裏がある

作者:白鳥美鳥

●綺麗な少女には裏がある
 蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515)は、生まれ育った環境も有り、蟻に対して並々ならぬこだわりがある。
 そんなヒアリが森を歩いていると、少し珍しい蟻に出くわした。興味が沸いて蟻の行動を観察していた彼女に、可愛らしい少女の声が聞こえてきた。
「こんにちは。私、あなたに会う運命だったのかしら? それなら地獄行きも覚悟の上、よね?」
 少女は端正な顔立ちで美しく笑うと、ヒアリに襲い掛かった。

●ヘリオライダーより
「みんな、緊急事態が発生したんだ!」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、真っ青な顔をしてケルベロス達に話しかけた。
「実は、蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515)が、宿敵であるデウスエクスの襲撃を受ける事を予知したんだ。勿論、急いで連絡を取ろうとしたんだけど、連絡が取れないんだよ。これは、非常に危険な事態だ。一刻の猶予も無いよ! ヒアリが無事なうちに急いで救援に向かって欲しい!」
 デュアルは状況を説明する。
「場所は郊外の森の中だよ。相手は金髪ツインテールで小さな白い帽子を被っている可愛い女の子なんだ。髪が物凄く長いから、間違いなく一目で分かると思う。……そ、それで……可愛い女の子の姿なんだけどね? 髪の中に顎を隠しているんだ。そして、勿論、それが相手の本性であり攻撃手段だ。……顔が綺麗な分、物凄くギャップの激しい攻撃をしかけてくるよ。また、彼女は螺旋忍軍で素早い。森という地形を上手く使いながら戦ってくる。戦いには十分気を付けて臨んだ方が良いよ」
 デュアルはケルベロス達に切実な声で訴えた。
「ヒアリを救えるのはみんなだけなんだよ。一刻の余裕も無いんだ。だからこそ、ヒアリの事を宜しく頼む。みんななら、彼女を助けてくれると信じているからね!」


参加者
ルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)
アゼル・グリゴール(アームドトルーパー・e06528)
リューイン・アルマトラ(蒼槍の戦乙女・e24858)
園城寺・藍励(深淵の闇と約束の光の猫・e39538)
パール・ランダム(魔法少女ルミナスパール・e53434)
風柳・煉(風柳堂・e56725)
蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515)

■リプレイ

●綺麗な少女には裏がある
「お久しぶり、と言った方が良いのかしら?」
「……お前は、薄葉影・ロウ!」
 蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515)の言葉に、薄葉影・ロウは、にっこりと笑う。
「ふふ、覚えてくれていて光栄よ。……そして、次は無いわ!」
 ロウはヒアリに向かって飛びかかる。一瞬怯んだヒアリを狙った攻撃をシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)が庇いに入った。
「ひありんさん、無事っすか!」
 シルフィリアスとしては、攻撃をしつつ援護に入りたかったのだが、いかんせんロウの攻撃の素早さに庇う事が精一杯だった。
「シルフィリアス、助けに来てくれたんだね。助かるよ」
「シルフィちゃんだけじゃないですよ! ヒアリさんは大切な仲間、絶対にやらせません!」
 後を追う様にルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)、アゼル・グリゴール(アームドトルーパー・e06528)、リューイン・アルマトラ(蒼槍の戦乙女・e24858)、園城寺・藍励(深淵の闇と約束の光の猫・e39538)、パール・ランダム(魔法少女ルミナスパール・e53434)、風柳・煉(風柳堂・e56725)、風柳・煉(風柳堂・e56725)、ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)が駆けつけてきた。
「キミ達……。蟻がとう、力添え感謝するよ」
 特にシアフィリアス、ルーチェ、藍励、パールはヒアリにとって大切な人達であり、彼女達にとってもヒアリは大切な人達だ。そして、共に助けに来てくれたケルベロス達にも感謝してもしきれない。
 その様子に、ロウはくすりと笑う。
「あらあら、随分と沢山お友達が来てくれたのね。でも、私が蹴散らしてくれるわ!」
 そう言うが早いか、ロウの美しい金色の髪の毛が問答無用でパール達に襲い掛かってきた。

●螺旋忍軍の薄葉影・ロウ
「あなたの全身の関節構造がどうなっているのか気になる所ですが……こちらもヒアリさんの救出の為に全力を尽くさせて戴きますよ」
 まず動くのはアゼル。痛烈な一撃をお見舞いすべくロウに向かって襲い掛かったのだが、ロウは森の木々を上手く足場と利用して器用に攻撃に対して木々を足掛かりとしながらかわす。余裕の笑みを浮かべている辺り、彼女にとっては攻撃をかわす事は容易なのだろう。
 ヒアリの様子を心配しつつ、呪詛を込めた美しささえ感じる斬撃をロウに繰り出す藍励。しかし、これもロウは木々を利用しながら跳ねる様にかわしていく。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす」
 そんな中、シルフィリアスはいきなりミニスカドレスの魔法少女衣装に変身を遂げると、彼女の伸縮自在な髪の毛を使って、こちらも髪の束の先端に牙の生えた口を利用してロウを狙う。だが、それも上手い跳躍を使って避けられてしまった。しかし、その攻撃をロウは痛く気に入ったようである。
「あら、あなたの髪の毛も面白いのね?」
 ロウも髪の後ろに顎を隠し持ち、それを攻撃の主軸とする。主軸の攻撃を隠しているロウから見ると、髪の毛を武器に使ってくるシルフィリアの攻撃が面白く映るらしい。
「魔法少女ぷりずむ☆ルーチェ参上です!」
 ルーチェはオレンジ色の魔法少女衣装に身を包むと、そう宣言する。とはいえ、これまでの状況を考えると、既にロウに攻撃を当てる事すら難しい状況が露呈している。
「ヒアリさん達のサポートをしますよ」
 ルーチェは身に纏うオウガメタルからオウガ粒子を放ち、ヒアリ達の集中力を高めていく。
(「ウスバカゲロウ……ねぇ。虫の名を冠するみたいだが意味があるのかね?」)
 そんな事に疑問を抱きつつ、支援を受けた煉はロウに向かって重い蹴りを放つ。当てる事に重点を置いた攻撃は、流石のロウもかわしきれずに直撃した。
「蟻は蟻地獄の天敵だが、僕ら蠱術使い同士においてはそうはいかないよ」
 そう言うと、ドラゴニックハンマーを変形させてロウに向かって砲弾を撃ち込んだ。
 ヒアリは蟻では無いし、ロウもウスバカゲロウでは無いのだが、やはりその名を冠しているだけに因縁は深いらしい。
 続けてリューインはロウに向かって、重い蹴りを叩き込むことに成功する。だが、ビハインドのアミクスの攻撃は残念ながらかわされてしまった。
(「救助のついでに、先輩方から色々学ばせてもらいます! いや、もちろん蟻塚先輩の救助が最優先ですよ?」)
 パールにとっては、ヒアリを含む先輩と呼べる人達が沢山いる。勿論、ヒアリの救出が優先だが、先輩達の闘い方を学ぶ良いチャンスでもあるのだ。そんな彼女は、自身を地獄の炎に包み込み、まずは攻撃力を上げていく。彼女の戦法としては、所謂、当たらぬも八卦、当たったら儲けものといった考え方だ。
 ミーミアは、まずパール達に雷で作られた壁を展開、ウイングキャットのシフォンは狙われたヒアリ達に向かって清らかなる風を送りこんだ。
「シルフィリアスちゃん、ルーチェちゃん、アゼルちゃん、藍励ちゃん、ヒアリちゃん! ミーミアとシフォンの回復だけじゃ間に合わないと思うの! 状況によっては協力して欲しいの!」
 ミーミアの言葉に、声をかけられたメンバーは頷く。ただ、シルファリアスは少し残念そうだ。
「合体魔法ルーチェキャノンは難しいかもしれないっすね。あちし、楽しみにしてたんっすけど」
「ええー!? そんなの聞いてないです!?」
 シルファリアスの言う『ルーチェキャノン』なるものは、ルーチェに魔法を当てて、ルーチェごと吹き飛ばそうと企んでいたものだ。……仮にやってもルーチェに攻撃が当たるだけで終わるのだけなのだけれど。
「ちょっと、何、呑気に話しているの? まあ、私には都合が良いけれど……」
 そう言うが早いか、すっと動くと話していたルーチェに飛びかかり、器用に頭の後ろの顎を使って噛み砕いた。
「こちら側にも攻撃が来ますね……。まずは我々の守備力から上げていきましょうか」
 ヒアリ中心の狙いとは限らないのかもしれない。もしかしたら、ヒアリを最後にとっているのかもしれないけれど。しかし、ヒアリを狙ってくる可能性も高い事には変わりは無い。アゼルはまず、ヒアリ達へとドローンを展開して守りの力を高めた。
「今、回復するね……絶叶永望――――フルフィル・ビギン」
 藍励はルーチェに回復を施す。ある程度、長期戦を覚悟した方が良いだろう。ならば、細目に回復した方が吉だ。
「あちしは、ひありんさんの力を上げるっすー!」
 先程の状態では、ロウに攻撃を当てる事自体が厳しい。それもあってヒアリの援護に回る。雷の力を使って、ヒアリの力を底上げした。
「私は藍励ちゃん達に力を送ります!」
 ルーチェの纏うオウガメタルが輝きを放ち、藍励達にオウガ粒子を放って神経を集中させていく。その間に煉は氷の騎士を召還し、ロウに突撃させた。
「これは、流石に厳しそうだね」
 軽々かわしていくロウを見て、見切りが起きやすい事もありヒアリも作戦を変えていく。持てる蟻の情報を全て束ね、具現化したさせると武器に乗せて切り刻んでいった。ヒアリのボクスドラゴン、センチピードはブレスをロウに向かって放つが、それに対して彼女は高い枝へと跳びあがり攻撃をさけた。
「今までの修業の成果、すなわち火力こそ正義! 輝け、私のフルパワー!」
 当たれば儲けものスタイルのパールはワイルドと地獄化した虹色の翼にグラビティ・チェインを集め、翼と同じ閃光をロウに向かって放つ。光り輝く一撃だが、ロウは枝を蹴り上げ、光が届かない所へと移動しかわしていく。
 ミーミアは現状を見極めつつ、オウガ粒子をシルフィリアス達に重ねる様にかけて、集中力を研ぎ澄まさせていく。一方のシフォンはアゼル達へと清らかなる風を送っていった。
「今頃準備をしても遅いわよ? 私の一番の武器は機動力。……ほら、ね?」
 いつの間にかロウがヒアリの真後ろにいて、急襲を受ける。その攻撃はヒアリに対してまともに直撃した。
「ヒアリン!」
 慌てて藍励はヒアリに回復を施す。
「やはりヒアリさんを狙って来ますね。更に守りを固めていきましょう」
 アゼルはドローンを展開して、ヒアリ達の守りを強化していった。
「なかなか難しいっすね」
 シルフィリアスとしては、出来れば攻撃のタイミングを他の仲間達と合せたい所なのだが、その方法をとるのが難しい。シルフィリアスはもう一度、重ねる様にしてヒアリの攻撃力を雷の力を用いて高めていく。ルーチェも自身とアゼルにオウガ粒子を放って命中率の向上に励んだ。
「とにかく、あの回避の高さをなんとかしないといけないな」
 煉は重く輝く蹴りをロウに向かって叩き込む。
「僕を守る為に来てくれた人達の為にも負ける訳にはいかない。そう、僕にはロウと違って仲間がいる」
 ヒアリは変形させたドラゴニックハンマーから砲弾をロウに向かって叩き込んだ。センチピードもタックルを狙うが、そちらはロウが素早く回避する。まだ、その回避率の高さは失われていない。
「わたしも続くよ。アミクスも宜しく」
 アミクスに声をかけると、リューインは空の霊気を乗せてロウに向かって斬りかかる。更にアミクスは念を送るが、リューインの攻撃を受けながらもロウはアミクスの攻撃に対しては回避していく。パールはゲシュタルトグレイブを回転させながらロウに向かって次々と斬りかかりにかかる。それをロウはかわそうとするが若干遅れ、完全に当たったとは言い難いもののダメージを与える事に成功する。
「やりました!」
 願っていた一撃をロウに喰らわせて先輩達の力になれたと喜びと共に、もっと力になれる様にと心を引き締める。
「もう一回パールちゃん達にかけるの!」
 ミーミアはオウガ粒子をパール達にかけていき、シフォンは清らかなる風をヒアリ達に送っていく。
 ロウの一撃自体はそれ程重くは無い。しかし、回避能力の高さを落としていくのは骨が折れそうだ。
「ふふっ、私を捕まえるなんて無謀よ?」
 綺麗な顔で微笑むロウ。確かに中々捕らえられない現状では、歯痒いが我慢してなるべく長引かせながら、少しずつ捕らえに入るしかない。しばらくは確実に攻撃が当たっているリューインと煉、そしてヒアリを中心にロウの動きを抑えつつ、他のメンバーは守備力や攻撃力、命中率の底上げと回復を担いながらの戦いが続いていった。

●終局に向けて
「きゃあああ!」
 ロウの悲鳴が上がる。アゼルの爆炎の弾丸が次々と撃ち込まれたからだ。
「ふむ、全弾命中しましたね。自慢の回避力が落ちて、こちらの命中精度が上がったと判断して良いでしょう」
「よし、うちも思いっきり行くよ!」
 半ば自分に言い聞かせるように藍励はそう言うと、呪詛を乗せてロウを一閃した。
「くっ、流石に長引くと辛いわね。……でも!」
 そう言ったロウの姿は消え、ヒアリに対して噛み砕く攻撃を加える。
「これ以上の手出しはあちしがさせないっす!」
 シルフィリアスの長い髪の毛がロウを捕らえた。
「シルフィちゃん、ナイスです! 打ち抜け、太陽のビート! サンライト……インパルス!!」
 捕らえられているロウに向かって、ルーチェの相手の身体を麻痺させる拳が叩き込まれる。
「これは痛いぞ、覚悟しろ……」
 煉は黒麒麟というライトニングロッドに過剰な程の魔力を込めると、ロウに向かって漆黒の雷を放った。そこにヒアリのドラゴニックハンマーによる強烈で叩き潰すかのような一撃が入り、センチピードが援護する様にブレスを吐く。
「神々より託されしこの一投、神殺しの一撃を受ける栄誉をあなたに授けましょう。そして真の死をあなたに。……クングニルバスター!!」
 続けて、リューインの投擲が放たれ裁きの雷光が撃ち付けられた。加勢する様にアミクスの金縛り攻撃が襲う。
「先輩方、さすがですね。私も負けてはいられません! 明らかに実力差あるけど!」
 パールのワイルド化と地獄化した虹色の翼に集められたグラビティ・チェインが両腕からオーロラの輝きを持つ一撃がロウに向かって撃ち放たれた。
「ヒアリちゃん、頑張れなのー!」
 ミーミアはヒアリの力を更に強化していく。シフォンは清らかなる風を送りこんでいく。
「こ、ここで負ける訳には……!」
 ゆらりと起き上がるロウ。
「せめて、あなたは道連れに……!」
 ロウがヒアリに喰いかかってくるのをシルフィリアスが庇いに入った。
「大丈夫っすか!?」
「うん、助かったよ。僕は必ずロウを倒す」
 シルフィリアスの言葉の言葉に、ヒアリは礼を伝えつつ気持ちを強く持つ。
 その間に出来た隙を狙って、ルーチェのナイフがロウを切り刻み、煉が漆黒の弾丸を撃ち込んだ。
「今です、ヒアリさん!」
「ヒアリ、いくんだ」
「今だよ、ヒアリン、止めお願い!」
「蟻塚先輩、やっちゃってください!」
 ルーチェ、煉、藍励、パールがヒアリへエールを送る。それにヒアリは頷いた。
「二度目はない」
 彼女の蟻の情報を全て束ねて影を乗せた一撃が、ロウに突き刺さる。その一撃で、ロウはもう二度と動く事はなかった。
 そんなロウの亡骸に、アゼルは冥福を祈って黙祷するのだった。

「キミ達には本当に感謝している。お陰で僕はあいつを倒す事が出来た」
 ヒアリは助けに来てくれた皆に感謝を伝える。
「無事で良かった……」
 藍励は心から安心した顔でそう言ってから微笑んだ。それにヒアリは微笑み返す。
「本当に蟻がとう」
 ヒアリの無事に安心したのか、急に賑やかになり始める。
「ルーチェキャノン、やっぱりやりたかったっすー!」
「それは私に攻撃が当たるだけで二次効果なんてありませんよ!」
 無茶な事を言い始めるシルフィリアスに、ルーチェは必死だ。一方で、パールは目をキラキラさせて色々な人達に話しかけている。
「先輩方、今度色々と教えてもらっていいですか?」
 そんな様子を見て、ヒアリは顔が緩む。大変な戦いになったし、これから先もあるかもしれないけれど、仲間達がいる事を何より嬉しく思うのだった。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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