花の咲く場所は

作者:雨音瑛

●夏の風物詩、の前に
 市街地の川べりにある花火大会会場では、人々がひしめきあっていた。
 浴衣、甚平を纏って待つは、そう、打ち上げ花火。
 開始まであと5分といったところで、巨大な牙が会場へと突き刺さった。
 それが鎧兜を纏ったドラゴンの尖兵、竜牙兵へと変化するまでほんのわずか。
 兵たちは手にした剣を振るい、人々を手にかけてゆく。
「グラビティ・チェインをヨコスノダ」
「グァァァハハハ!!」
「サア、モットダ! モット、カテをヨコスノダ!」
 それから花火は、打ち上げられることなく。
 ただ、いくつもの血の花が地面に咲き誇っていた。

●空に咲かせるために
「とある花火会場に竜牙兵が現れるみたいなんだよね」
 とは、暁・万里(迷猫・e15680)の言葉。
 自身の懸念をもとにヘリオライダーに予知してもらった結果、判明したことだ。
「今からヘリオンで向かえば、竜牙兵が現れる直前には間に合うらしいんだけど――気をつけたいことがあるんだ」
 それは、竜牙兵が現れる前に周囲に避難勧告をすること。もし竜牙兵の出現前に避難勧告をしてしまえば、竜牙兵は他の場所に出現してしまう。そうなれば事件を阻止できず、被害が拡大してしまうことは間違いない。それに、と万里は続ける。
「スタッフと警察には、今回のことは連絡済み。僕たちケルベロスが現場に到着した後は現地のスタッフと警察に避難誘導を任せられるから、竜牙兵の撃破に集中できるってわけだね」
 現れる竜牙兵の数は3体。その全てがゾディアックソードを装備しており、高い攻撃力を持っている。また、戦闘が始まれば竜牙兵が撤退することはないから、包囲など気にする必要はないだろう。
「会場は川べりの花火大会会場。照明も設置されているし、周囲には戦闘の支障になるものはないみたいだ」
 あとは、と万里が微笑む。
「早めに撃破できれば、僕たちも花火大会を楽しめるみたい。ここはご褒美のためにも、人々のためにも、ここでしっかりと竜牙兵を撃破したいところだね」
 空では、昼と夜の色が混じり始めていた。


参加者
春日・いぶき(遊具箱・e00678)
スプーキー・ドリズル(シーファイア・e01608)
月見里・一太(咬殺・e02692)
水無月・一華(華冽・e11665)
暁・万里(迷猫・e15680)
ベラドンナ・ヤズトロモ(はらぺこミニョン・e22544)
呉羽・楔(黎明の薄紅葵・e34709)
丸越・梓(月影・e44527)

■リプレイ

●未だ花火の上がらぬ場所で
「……来ましたね」
 人混みを避けて立つ春日・いぶき(遊具箱・e00678)は、夜空を見上げた。
 星々よりも大きく歪な塊が3つ、花火大会の会場目がけて降ってくる。
 数秒の沈黙、ざわめき。牙は兵となり、剣を手にぐるりと辺りを見回す。が、既に包囲されていると知るや、
「グゥオオオオ! ジャマダテスルカ、ケルベロス!」
「ナラバ、キサマラをタオシテカラウバウとシヨウ!」
「サアドウスル、ワレラとタタカウか!?」
 返答は、弾丸ひとつ。スプーキー・ドリズル(シーファイア・e01608)のリボルバー銃「clepsydra」から射出された深紅の弾丸が、一体の竜牙兵に着弾、破裂する。
「……林檎飴は花火大会の風物詩なんだよ、御味は如何だい?」
「リンゴアメ? ハナビタイカイ? ワレラガモトメルハ、グラビティ・チェイン!」
「セントウのイシ、アリとミナス!」
「カクゴシロ、ケルベロス!」
 骨を鳴らし、竜牙兵たちが剣を構える。星辰のオーラに続き、地固めともとれるヒール。
「覚悟するのはそっちだと思うけど?」
 縛霊手から巨大な光弾を放つのは、暁・万里(迷猫・e15680)。眩い光が戦場を包み込むが早いか、万里はいぶきをちらりと見た。
「わかっています、万里さん」
 笑みを浮かべたいぶきは小さく息を吸い、短い言の葉を告げる。
「生とは、煌めいてこそ」
 前衛を癒す、血に触れて溶けては固まる硝子の粉塵。きらきら光るそれは、すなわち硝子色の盾。
「ありがとな、これで遠慮無く攻撃に回れる!」
 黒い狼――月見里・一太(咬殺・e02692)は礼を述べた後、さて、と竜牙兵たちに向き直った。
「番犬様の出迎えだ! 花火代わりに打ち上げてやるよ骨屑が!」
 拳を打ち鳴らし、一直線。駆け出した一太が繰り出す一撃は、竜牙兵から瞬く間に熱を奪い取る。代わりとばかりに与えられたのは、相応のダメージと、氷。
「太陽を喰らった魔狼の咢、味わってけよ」
 一太が竜牙兵の背後に抜けたところで、水無月・一華(華冽・e11665)が槍を手元でくるりと回した。
「さ、参りますよ」
 穏やかな物言いと、着物の袖にはかすりもしない滑らかな動作。しかしそこから繰り出された回転する斬撃は、竜牙兵3体を一気に薙ぎ払う。
「ベラドンナさん、行けますか?」
「任せて! さあ、行くよ!」
 ベラドンナ・ヤズトロモ(はらぺこミニョン・e22544)はボクスドラゴン「キラニラックス」に声をかけ、竜の槌から砲弾を撃ち出した。続くキラニラックスは、光のブレスで状態異常を増やしてゆく。
 跳躍した丸越・梓(月影・e44527)は、竜牙兵3体を見下ろす。
「戦闘中は一般人に手を出さない、か。良い心がけだ」
 たとえ敵であろうと、敬意は忘れず。急降下からの強い蹴りを喰らって傾ぐ竜牙兵に、呉羽・楔(黎明の薄紅葵・e34709)の歌が怒りを与える。
 また、見いだした陣形で破魔の力を与えたエクス・カリブルヌス(運命の剣・e03062)は、すぐに避難誘導を行うスタッフと警察の元へと急いだ。
 それを見送り、柵夜・桟月(地球人のブレイズキャリバー・en0125)は星の剣で地面に加護の星座を描いた。
「負けられませんね。デウスエクスとの直接的な戦闘以外でも戦ってくださっている方達のためにも」

●それぞれの役割
 竜牙兵の攻撃力は高いが、盾役二人が積極的に攻撃を引きつけることで、全体の被ダメージ量は抑えられている。
 癒し手からヒールも届くが、やはり連続で攻撃を受ければ相応のダメージを喰らうのは確かだ。
 だから、楔は「ブラッドスター」を歌い、前衛の傷と状態異常を消してゆく。
「よそ見しないでこっち向いてくれるのは嬉しいですけど……流石の攻撃力ですね。でも、まだ行けますよね、梓さん?」
「勿論。その為の役割とヒールグラビティだからな。それに、避難も完了したみたいだ」
 そう、気付けば周囲に一般人は一人として存在していない。
 人々の避難が完了したいま、共に前衛で盾役を担う楔と梓が守るべきは仲間のみ。
「なるほど、それじゃ遠慮なく行けるね」
 うなずくベラドンナの前で、キラニラックスが属性注入で回復の補助を行う。対して、ベラドンナの仕事は的確なダメージの蓄積だ。竜の銀鎚を手に、詠唱を開始する。
「私の白の王宮の、鍵を開く。狂った星座。声なき支配者よ」
 召喚するは、狂気の竜の顎。耳を劈く『無音』が解き放たれ、空気が振動する。
 花火が打ち上がれば、似たような振動が辺りに響くのだろうか。
 そう、花火。花火のため、もとい祭りを楽しみに訪れた人々のため。花火よりも派手に散ってもらおうという一華の思惑を知ってか知らずか、万里は竜牙兵へと魔力の篭もった視線を送った。その後は隣の一華に声をかけ、
「一華、行ける?」
「もちろんです。続きますね、万里くん! ――お出でやお出で、さぁさ一緒に参りましょ」
 灯ひとつが合図。夜はさらに深い闇へと姿を変え、白銀の焔だけが妖しく揺れる。それは、惑いへの誘惑。招く白魚の手に誘われる竜牙兵の背後から、一太が迫る。
「これで……どうだ!」
 振りかぶったは一太の拳が、竜牙兵の側頭部を穿つ。軋み、砕けた頭部の日々が全身に行き渡る。骨は砕け散り、粉塵と化した。
 小さく拍手をするのは、いぶきだ。
「お見事です。まずは一体、ですね。僕は一太くんを癒しますね。桟月さんは別の方を」
「承知いたしました、いぶきさん。では、私は梓さんを」
 癒しを担ういぶきと桟月は、ヒールの偏りを無くすべく手分けして動く。消耗が特に大きいのは、怒りで攻撃を引きつける前衛だ。
「この調子で、でも油断はせずに攻めて行こうか」
 エアシューズ「天泣」の具合を確かめたスプーキーが、地面を蹴る。
 花火には劣りもしようが、いま、この場で煌めく流星の輝きと重力は確かなもの。
 蹴りを喰らって地面を滑る竜牙兵は、どうにか体勢を立て直した。
「マダダ!」
「タタカイは、オワッテイナイゾ!」
 加護を破壊する斬撃と、氷を纏わせるオーラの飛来。楔と梓は迷いもせず、味方の前に出る。
 梓はすぐさま裂帛の叫びを上げ、受けた傷と氷を消し去った。
「そうだな――確かに、まだ終わってはいないからな。最後まで付き合ってもらおうか」
 まだ残る腕の傷に一度だけ触れ、梓は竜牙兵を正視した。

●無粋な者の最後は
 ケルベロスが攻撃をし、回復をするように、竜牙兵たちも攻撃をし、回復をする。
 厄介なのは、回復の際に付与される状態異常への耐性だ。
 舌打ちひとつ、一太が竜牙兵に迫る。
「させねえよ」
 音速の拳が、竜牙兵を捉えた。地面を踏みしめ、腰を落として重い一撃を。加護は骨ごと一太の装着したガントレットに砕かれ、大きな穴を残す。
「梓さん、頼んだ!」
 一太の言葉に、わかった、とうなずく梓。
「お前らにやれるのは――手向けの花、くらいだな」
 小さく息を吐いて、梓は影より出し魔物の名を呼ぶ。
「―――シス」
 黒い毛並みに赤い瞳を灯す、巨躯の犬。梓の影から現れた魔物は、魂喰らう魔の陽炎にて竜牙兵を襲う。
 惨殺ナイフを握る楔も、攻勢に出る。
「行きます!」
 骨を抉るナイフの感覚。同時に消える傷の感覚。
 残る二体に畳みかけるケルベロスを支えんと、桟月は花びらのオーラにて支援を行う。
 戦いは佳境。
「こういう時こそ、きっちり仕事をこなすべきだからね」
 竜牙兵にまだ残る加護を破壊しようと、スプーキーは手の爪を超硬化させた。貫き、確かに加護を破壊すれば、竜牙兵が数歩下がる。
「クッ、……バカ、ナ!」
「シカシ、ワレラはヒカヌゾ!」
 竜牙兵は動揺しながらも、中衛へとオーラを飛ばした。
 氷の纏わり付いた頬をそのままに、万里は召喚のための名を呼ぶ。
「遊んでおいで「矜羯羅」」
 呼ばれて現れたのは幼妖狐。ひと鳴き、竜牙兵に命火が灯る。既に灯っていた炎も増え、竜牙兵は打ち上がる前の花火玉のよう。
 ひとつは弾けて、ばらばらに砕け散る。
「よし、あと一体だね。気合い入れていくよ」
 ベラドンナがフェアリーブーツで星型のオーラを蹴り込めば、キラニラックスのブレスが煽るように状態異常を増やす。
 この調子なら、誰一人倒れることなく終えられそうだ。
「皆で、楽しみたいですからね」
 少しの涼が巡ってきた夜にこそ楽しむの夏の醍醐味、花火。それを邪魔するのは無粋以外の何物でも無い。
「何より、僕が癒しを務める以上、誰も倒れさせません」
 大きな癒しを、万里へ。まだ僅かに残る傷を一瞥するのは、一華。
「大人しくしていればいいものを……斬られに来るなんて、ねぇ?」
 斬霊刀「護青」に呪詛を載せ、竜牙兵へと踏み込んだ。滑らかな軌跡は舞にも似て、しかし竜牙兵を決して逃さない。
 刀を鞘に収めると同時に、竜牙兵の上半身がずれ、落ちた。
「あら、まぁ。この程度」
「ケルベロス……コレホド、トハ……」
 ずれた骨は無造作に落ち、砕けた。
 武器を収めた梓は骨の一欠片を拾い上げ、軽く握る。
 これで、現れた竜牙兵を撃破したことになる。紛う事なき、ケルベロスの勝利だ。
「無事に終了、だね。それじゃ、僕は警察と運営スタッフに連絡してくるよ」
 そう言って、スプーキーは人々が避難した方へと歩いて行く。
「では、私はこのへんのヒールを」
「俺は少し離れたところのヒールを担当しよう」
「ではわたくしはお片付けを」
 楔と一太がヒールを、一華が片付けを行う。
 人々の戻りも、花火大会の再開も、きっと間もなくだ。

●音と光の成す花
 轟音、火薬の匂い、空のキラキラ。
 生で花火を見るのは初めてかもしれないという楔は、花火に負けじと目を輝かせて空を見上げている。
「迫力が全然違いますね……! でも、もう少し高いところから見たいかも……」
 きょろきょろと辺りを見回し、楔はひとつの場所を見つけた。人混みをかきわけ、急いで駆け上って。
「うん、ここならばっちり。少し離れてはいるけれど、とてもよく見えます」
 ちりちりと散る花火、大きく散る花火、楕円を描く花火。
 さまざまな花火が、断続的に上がっている。
 やや離れてはいるが花火の見える場所で、梓はひとり骨の欠片を埋葬していた。
「……餞にこういう“花”も悪くねえだろ?」
 奪った命の責任を一粒残さず受け止め、背負う。梓なりの敬意の表し方だ。
 細く立ち上った光が、夜空に鮮やかな花弁を広げる。
 戦闘終了から花火開始までの間に頑張って着替えたベラドンナは、エクスと手を繋いで歩いている。
 ベラドンナの浴衣は、白地に大輪のひまわり、躑躅色の帯。残念なのは、髪を可愛くする時間が無かったことか。
 対して、エクスは紺のしじら織、黒の帯。髪は普段とは違い、前髪を上げての編み込みハーフアップだ。
 エクスがいつもよりかっこいいから言いづらいベラドンナではあるが、
「今日は、先輩のためにとても頑張って可愛くしたので。すごく褒めてください」
 勇気を出して一気に言った。
「……すみません、盛りました。戦闘があったし、とてもはできなかったです。でも少し頑張りました」
 可愛いし綺麗だし、よく似合ってる決まっている。なんてすぐに返答したいエクスではあるが、何せこの人混みと騒がしさ。エクスは、団扇の代わりに持っていた九尾扇で隠してた口元をベラドンナの耳元に寄せる。
「それはまたあとで。……二人きりになったら教えるよ」
 だから、今は空に咲く花を。隣に咲く君の美しさは僕だけが知っていればいい、と。
 囁かれたベラドンナは、すぐに赤くなって黙る。最近のエクスは、上手にベラドンナを黙らせるのだ。
 ずるい、と同時に花火が上がっていて良かった、とベラドンナは思う。
(「だって、私の赤い顔なんて誰も見てないから」)
 繋いだ手の温度が混じるのを感じて、ベラドンナはいっそう花火に見入った。
 空に上がる花火は、いくつも、賑やかに。
「お、たくさん上がってるな」
 焼きそばや林檎飴をお土産に、一太は帰路を行く。
 花火の弾ける音が、夜空に、川べりに響いている。
 その音を風景を、いぶきは救護テントから眺めていた。
「あの形はスターマイン、といいましたっけ」
 急病人の看護をしながら、花火の形に見入る。
 折角のお祭りなのだから、急な体調不良で楽しめないのは悲しいというもの。それに、救護の手は多い方が良い。
「何処からでも楽しめるのが花火、ですからね」
 これも、いぶきなりの楽しみ方だ。テントにやってきた人を見つけ、症状を聞きながら、手当に勤しむのだった。
 竜牙兵の出現前よりも人が増えてきてきる。
 喫煙所でスプーキーを待っていたシド・ノート(墓掘・e11166)は、灰入れに煙草を押しつけた。
「おつかれさま。どこでも変わらず、働き蟻だねスプーさんは」
「そうかな? 夏空と川面を彩る花々も魅力的だが、ここに集った人々の笑顔も、同じくらい煌いて視えるね」
 労いの言葉を受け、スプーキーは川を、人々を眺める。並び歩いて、屋台通りへと至る。ふと上げた視線の先に見つけたのは――射的だ。
「ねぇシド。大きな景品を落とせた方が勝ち、勝った方がビールの奢りでどう?」
 おつかれさまの一杯くらい奢ってあげるのに(あんま金ないけど)、と思いながらも言葉は呑み込むシド。
「はいはい、スプーさんがそうしたいのねいいよ受けて立とうじゃない」
 お金を払い、銃を受け取る。シドとてガンスリンガーの端くれだ、みすみすカモになってやる気はないようで。普段のだらしない雰囲気が消え、視線は本気のそれになる。
 スプーキーも隣で銃を構え、狙いをつける。
 コルクの弾が発射されたのは、ほぼ同時。落ちたのは、猫のぬいぐるみと熊の貯金箱。
「……っし。そんじゃ、ビールご馳走してもらうとしようかね」
「残念。まさかあれほどの大物を狙いにいくとは」
 景品を受け取ったスプーキーが射的の店から離れれば、家族連れが多く目に入る。けれど、もう俯くことは無い。
 彼の視線に気付いたシドは、そっと言葉をかける。
「まあ君が他所様の家族を指くわえて見なくなったなら何よりで。人生なんて花火と一緒でさ。何度でも暗闇に花を咲かせることができるんだよ」
 また、空に大きな花が咲く音がした。
「おー! 綺麗だなー!」
「えぇ、綺麗な花……」
 万里の声に、一華がうなずく。大きな花火は見応えもあって、それに何度一緒に見ても飽きなくて。
 そんなことを考えていた一華は、はっとした表情で万里の見、腕をつんつんした。
「万里くんのが、綺麗ですよ」
 その台詞、このドヤ顔。万里は一瞬きょとんとして、すぐさま爆笑した。
「……はー、笑った笑った。そんなのどこで覚えてきたんだよ。その台詞は女の子が言われる側じゃね?」
「あっ、笑いましたね……! んもう! 笑わないでくださいませ! もー、万里くんったら!」
 拗ねる一華にくすくす笑いつつ、万里は花火に照らされる一華の膨らんだ頬をつつく。
「悪い、機嫌直せって。ほら、色の変わる花火が上がったぞ?」
 その言葉に、一華はぱぁっと表情を変えてまた空を見上げた。
「綺麗ですね、万里くん!」
「一華のが、綺麗だけどな」
「……! んもう! 万里くんたら!!」
 ぱしぱしと腕を叩かれつつ、万里は空を見上げる。
 一瞬の静けさの後、またいくつもの花火が上がった。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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