ミッション破壊作戦～螺旋を操る忍達

■リプレイ

●支配地域で興行を行う忍び？
　現地へと向かうヘリオン。
　今作戦に参加した若いケルベロス達は行き先を伝えた後、移動時間を活かして作戦を練ることとなる。
「螺旋忍軍がプロレス、ねぇ。忍べよ！　忍ならよ！」
　ヘリオン内でも、帽子を被ったままの水無月・鬼人（重力の鬼・e00414）。
　普段からやる気のない素振りを見せる彼だが、クレア・ヴァルター（小銀鬼・e61591）の広げた現地の地図を見つめ、戦闘区域から素早く抜け出せるルートを確認する。
　今回は、プロレスラーを思わせる敵との交戦とあって、オウガの武道少女である彼女はリングコスチュームのような衣装で依頼に臨む。
　なお、ここにも、忍んでない忍びが１人。
「レセプションパーティの会場に、マスクマンが居るようでござるしな」
　ブロンド忍者、カテリーナ・ニクソン（忍んでない暴風忍者・e37272）も地図を見下ろし、脱出経路を予め確認する。
「螺旋忍者のゲートはもうないけど、放っておくわけにはいかないからね」
　白ウサギのウェアライダー、因幡・白兎（因幡のゲス兎・e05145）も、ミッション参加者が多く集まる地点へのルートを仲間達へと地図で指し示す。
「一発破壊の確率は、僕の中では五分五分だと思うんだよね」
　この一回で破壊できればそれは嬉しいことだが、白兎は失敗も織り込み済みでこの作戦に当たっていたようだ。
（「できればヘリオンからじゃなくて、正面から乗り込むようにして魔空回廊破壊をやりたいっすけど……」）
　仲間達の話を聞き、黒髪のレプリカントの青年、篠・佐久弥（塵塚怪王・e19558）がそんな願望を抱くものの。
　正面から決闘状を叩きつけ、挑発で引き付けられたらさぞ格好いいだろうが、敵の抵抗勢力に群がられて先にグラディウスを奪われては元も子もない。
　さすがにどの危険と秤にかけると、佐久弥も断念せざるを得なかったようだ。
　そこで、現場到着のアナウンスが機内に鳴り響く。
　一見好青年にも見える中村・憐（生きてるだけで丸儲け・e42329）がそれを聞き、自信満々な態度で立ち上がって。
「おし、思いっきりグラディウスを叩き込むっすよ！」
　中性的な外見をした巫術士の少女、ノーヴェ・アリキーノ（トリックスター・e32662）も頷きつつトレーニング用の重りを手足に装着し、体重が通常時の２倍になるよう調整する。
　これで、少しでも威力が高まらないかとノーヴェは考えたのだろう。
　準備を整え、ヘリオンの真下にある強襲型魔空回廊目掛けて降下していく。
　そんな中、廃材で構成された左腕を持つ卜部・泰孝（ジャンクチップ・e27412）が飛び出す前にコイントスを行う。
　景気付けにと考えてコインをキャッチした泰孝だったが、示したのは……裏。
　そのコインを再び掴んだ泰孝はグラディウスを手にし、ヘリオンから飛び降りていったのだった。

●魂の叫びをぶちまけろ！
　ケルベロス達が降下するのは、兵庫県神戸市三宮。
　とある小説家のレセプションパーティ会場に現われている強襲型魔空回廊へと、ケルベロス達はその破壊を目指して飛び込んでいく。
「長々と占領しやがって……！　人様の星の文化に感化されてるんだったら、物騒なもんで脅しながらやるんじゃねぇ！」
　その先陣を切るのは、鬼人だ。
「それにな、悪役レスラーってのは、正義の味方にやられるのが常なんだぜ。だから、貴様もその慣例に則らせてやるよ！」
　ここぞと叫ぶ鬼人はグラディウスを振り上げ、魔空回廊を包むバリアを切り払う。
「グラディウス起動、我流ぅ剣術！　鬼砕き！　ぶち壊せ！」
　鬼人が魔空回廊へと強く輝く刃を突き立てると、眩い光が周囲を包み込んだ。
「神戸市三宮を牛耳るヒールレスラーめ。お主の悪行も、今日限りで終わらせるでござるよ！」
　――人々を誑かし、観客にするのもここまで。
　グラディウスが発した雷光に紛れ、カテリーナがまだリングの準備も整っていない会場に向け、降下する。
「今こそ真紅に染まるマットに、マスクを剥がれたお主を沈めてくれようぞ！」
　カテリーナが突き刺した刃により、更なる光がこの場の人々の目を灼いていく。
「何で、何で、魔空回廊開いたんっすか、あんた！！」
　続き、佐久弥がこの地の螺旋忍軍に呼びかける。
　――正直、興行を行っているだけなら、問題ないかもしれない。
　そう何度も思った佐久弥だったが、ここには簡単に止めることが出来ない魔空回廊という脅威がある。
　これ潰さねば、セレブをカモフラージュにして、螺旋忍軍勢力がいつどれだけの脅威をこの地へと送り込んでくるか分からないのだ。
「個人的に、この人キャラが好きなんすけど。だからこその苛立ちを全て込めて、魔空回廊を壊すっす」
　佐久弥の刃もまた光を発し、魔空回廊に刺さると同時に激しい爆炎を巻き起こす。
　混乱する人々がどよめく中、ケルベロス達がさらに魔空回廊を強襲する。
「経済を、人々の営みの力を螺旋忍軍の好きにさせてたまるか！」
　ケルベロスウォーでの経験もあり、白兎は経済に着目して叫びを上げた。
「お金は正しいところに使ってこそ、だよ！」
　白兎が突きたてた刃によって爆炎が巻き起こる中、『楽しい試合を、戦いをしたいなら私達で付き合ってやる』と、クレアが飛び込んで。
「けど、パーティ会場に螺旋忍軍など、安心して宴を楽しむことができないじゃないかー！」
　――一般人を巻き込むかもしれない試合など、今日でお仕舞い。
　本音をぶちまけるクレアのグラディウスが強く輝く。
「この地にリングを作るのは、これで終わりだ！」
　魔空回廊に突き刺さり、さらに大きな爆炎が巻き起こる。
「いつもは片手で扱ってるグラディウスを両手で扱う事により、１００万パワー＋１００万パワーで２００万パワー！！」
　ノーヴェはどこかの超人プロレスで聞いたような言葉を叫びつつ、横回転していく。
　倍に調整した体重をかけて４００万パワー。それに、いつもの３倍回転を加えれば……。
「セレブオブブラック、おまえを上回る１２００万パワーだーーっ！！」
　あるロボ超人を思わせる動きで、ノーヴェは魔空回廊へとグラディウスの刃を抉り込んで行く。
　直後、周囲へと勢いよく濃いスモークが噴き出す。
　今度は泰孝が煙に紛れ、上空から迫る。
「……此処に住む面子や小説家の為に、なんて器用なことはできねぇ」
　それでも、泰孝は１つだけ決まっている事実があると告げた。
「オレは此処の回廊を今回でぶち壊す！」
　そして、ケルベロスとしての報酬、知人に成功を報告して小遣いもゲットする。
「その目的の為、今ここでオレに壊され、地域を解放しやがりやがれぇええ！」
　彼は煩悩と欲望にまみれた叫びを上げ、グラディウスを真下へと振り下ろす。
　光る刃は、これで７度目。
　ただ、魔空回廊には多少のヒビが入っても、さほど大きな崩壊を起こすようには見えない。
「一般人のレセプションに潜り込んで間接侵略を仕掛ける螺旋忍軍ども、直接だろうが間接だろうが侵略は俺達ケルベロスが決して許さないっす！」
　それでも、憐が最後に魔空回廊の破壊を目指し、飛び込む。
「お前達の居場所は無い、砕け散れ！　魔空回廊！」
　突き立てられた８本目の光る刃がなおも雷光を、爆炎を、そして、スモークを発したが。
　…………。
　何事も無かったかのように動き続ける魔空回廊。
　対して、８本のグラディウスの光は完全に消えてしまったのだった。

●螺旋忍軍、セレブオブブラック
　――作戦失敗。
　それを想定していた白兎はすぐ、撤退へと考えを切り替える。
　すでに華麗に着地していた鬼人もグラディウスをベルトに挟み、スモークの中から現れるスーツ姿のマスクマンに向けて抜いた刀を突きつけた。
「私と戦う気か、ケルベロス！　ならば私も、全力で相手をせねばなるまい！」
　螺旋忍軍、セレブオブブラックはすぐさま、忍法、白き密林の術を行使する。
　するとスモークの中、突如プロレスのリングが姿を現す。
　その間にノーヴェは全身の重りを取り去り、カテリーナ、佐久弥が周囲に呼びかけ、観客にデウスエクスの存在を示して避難を促す。
　もっとも、このスモークの中では、身動きすら取れないだろうが……。
「さあ、上がって来い。ケルベロス！！　我ら螺旋忍軍セレブオブブラック派と、貴様らの決着は、正々堂々リングの上でつけようではないか！」
「このリングがお前の墓標だ！」
　決着はリング上でとセレブオブブラックが声を上げれば、革紐でグラディウスを身体に縛り付けた憐がリングコスチュームを纏い、ノリノリな態度でリングに上がる。
「我が名は、ケルベロスマスク。プロレスで地球を侵略から守るヒーローだ！」
　戦線布告した憐に続き、クレアもまたリングに飛び乗って。
「忍軍のプロレスの力、見せてみろぉ！」
　マスクの下で口を吊り上げたマスクマンは、猛然と螺旋の力と共にラリアットを繰り出してくる。
　敵の一撃を受けるのは、ルチャリブレの新顔として立ち振る舞う憐だ。
　あまりの破壊力に服を破かれながらも、一度リングに張り倒された憐は高く跳び上がってドロップキックをマスクマンへと叩き込む。
　プロレスであれば場を盛り上げたいところだが、生憎とスモークが消える前に戦いを終わらせねばならない。
「くれてやる、拾いな」
　リングへと、黄鉄鉱で構成された偽りの金貨を投げ飛ばす泰孝。
　それにマスクマンが気を取られているうちに、白兎は仲間達へとオウガ粒子を飛ばして援護に当たっていく。
「プロレスに付き合う気は無いが、殺し合いなら付き合ってやるよ」
　それに包まれた鬼人が飛び込み、正面から「越後守国儔」で敵の体を正面から切り裂く。
「ショーマンシップなんか、期待されてもな」
「ぬっ、貴様……」
　反論の時間は与えず、コーナーポストに立っていた佐久弥が高くジャンプし、相手へと突撃していく。
「天より降り来る天ツ狗――万物喰らい万象呑まん」
　宙を舞う彼はロープを使って加速を続け、一振りの大剣を手に炎血を噴霧し、その爆圧でマスクマンを叩き潰す。
「おおっと、そこを動くなマスクマン！」
　そこで、カテリーナが相手へと呼びかける。
「さもなくば、お主のベッドの下の……マスク？　どのマスクも……、洗い替え用のマスクとは、敵ながら清潔さん！」
　セレブオブブラックは寝るときまで、変装を意識しているのだろうか。
　実際のところ分からないが、敵はなぜか苦い顔をしているようにも見える。
「うぬ……」
「ぐふふ……、隙だらけでござるよ？」
　カテリーナが怯む敵に笑いかけて前にクレアが飛び出す隙に、ノーヴェがカードを使って召喚した御業で初撃を受けた憐のカバーへと当たっていく。
「さぁ、これがオウガの肉弾戦だ！」
　クレアは大きく腕を振りかぶり、敵に拳を叩きつける。
　少し煽られたセレブオブブラックだったが、すぐに上体を起こして４の字固めを仕掛けてきた。
「ああぁぁぁぁッ……！！」
　苦悶する彼女は首を振りながら声を上げるが、敵は力を弱めようとはしない。
　すかさず、憐が降魔の力を込めたサマーソルトを繰り出す。
　なんとかクレアはそれに助けられてセレブオブブラックから逃れたが、締め上げられた体には痺れが残っていたようだった。

　三宮北野坂に設置されたリングの上では、ケルベロス達とマスクマン、セレブオブブラックの決闘が繰り広げられていた。
　ディフェンダー２人が相手の技を受けつつ抑えに当たる中、メンバー達もまた技を仕掛けていく。
「目には目を。レスラーにはレスラーを……ってね」
　その仲間達の負担を軽くすべく、白兎は仲間達の服をグラビティによって前線メンバーに合わせてリングコスチュームへと換装させていた。
　真正面から鬼人が無名の斬霊刀で斬りかかっていき、ある程度敵が怯んだと見たカテリーナが「対デクスエウス用高周波苦無」を煌かせ、敵にトラウマを植え付けようとする。
　それでも、近接特化の敵の一撃は脅威。
　気を抜けば、こちらの方があっさりとリングに沈められかねない。
　ノーヴェも相手の攻撃を危惧して回復に専念し、カードを使って呼び出した御業の鎧で仲間達を包み込んでいく。
　仲間達が気を引く隙を突き、布陣として前に出ていた泰孝が攻め入る。
「いくぜ、マスクマン。そっちもレスラーならコッチのグラインドファイア、受けきってみやがれ！」
　堂々と自らが使うグラビティを宣言し、泰孝は派手にジャンクアームを回して勢いをつけ、ステップを踏みつつ跳び上がって燃え上がる一蹴を叩き込んだ。
　間髪入れずに佐久弥もオウガメタル「体現装悟」でその身を包み、ダブル・スレッジ・ハンマーを相手の頭上から叩きつけていく。
「ぬううっ、観客の皆様、我に力を！」
　その身に引火した炎と、肌を凍らせる感覚に呻くセレブオブブラックが周囲へと呼びかける。
　スモークで外からは見えぬはずのこのリングだが、少なからずいる彼のファンが力を与えているのだろう。
「はぁはぁ……、耐えてっ！　勝つっ！！」
　だが、ここまでマスクマンの猛攻に耐えてきたクレアが敵の言葉から観客を意識しつつ、見栄えを気にしてトドメの一撃を仕掛ける。
「これで、どうだぁー！！」
　グラビティで作り出した銀の角をクレアは打ち出し、マスクオブブラックへと何度も突き刺していく。
　同時に、憐もダメ押しにと相手目掛けてレッグラリアートを放つ。
「ぐおおおっ……！」
　後のめりに倒れ行く、セレブオブブラック。
　そいつが完全にリングへと沈むと、憐は握った右腕を上げて勝利のポーズを取ってみせたのだった。

●速やかに離脱を
　螺旋忍軍、セレブオブブラックを退けたケルベロス一行。
　ともあれ、この場がスモークに包まれているうちに、離脱せねばならない。
「速やかに撤収しよう！」
　仲間と共に、リングを降りるクレア。
　彼女が持参した地図が示すルートを元に、カテリーナはミッション攻略中のケルベロスと合流をはかる。
　憐も仲間と歩調を合わせてこの場を離れ、ノーヴェが早くも別のケルベロス達と接触し始めていたようだ。
「今度はパーティ、私も参加したいな」
　クレアは、この場の敵へと呼びかける。
「なんなら、『プロレス』やってもいいぞ！！」
「本当なら、破壊してから大運動会をアピールしてみたかったね」
　それを聞いていた白兎は本音を漏らしながら、戦線を退いていく。
　恋人から貰ったロザリオを手にし、しばし見つめていた鬼人。
「終了報告は別の機会になりそうだな」
　次こそ、恋人へと無事に報告できることを祈りつつ、鬼人は最後にスモークの中へと身を隠していったのだった。

作者：なちゅい	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年7月21日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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