悪夢のスライム農業実習

作者:雷紋寺音弥

●汚豚の悪巧み
 うだるような熱気が漂う暗闇の中、怪しげに蠢く無数の触手。
「ブヒヒヒ……。今回のターゲットが決まったでブヒ!」
 今、正に、魔空回廊を開いて好みの女性を襲いに行かんとするオーク達。そんな彼らの下に、ふらりと現れたのは螺旋忍軍と思しき女性。
「あ、あの……どうか、私のスライムも使ってください! きっと、お役に立てると思います!」
 主星に帰る術を失い、今や完全にオーク達の客分と化した、スライム忍者・雷霧だった。
「別に構わないでブヒよ。ただ……誰かに物を頼む時には、それなりの誠意ってやつを見せるでブヒ!」
 スライムを受け取るや否や、オーク達は態度を豹変させて、雷霧の胸元に触手を這わせる。やがて、そのまま顔を赤らめて雷霧が崩れ落ちると、オーク達は改めて魔空回廊の奥へと姿を消した。

●お前が牛になるんだよ!
 蒼く澄み渡った空を、白い雲が飛んで行く。そよ風が高原の草を撫でる中、牧場と思し柵に囲まれた場所で、大きく身体を伸ばす少女達の姿が。
「う~ん、気持ちいい! やっぱり、高原は風が涼しくて過ごしやすいわね」
「農業体験とか、最初は嫌だったけど、慣れると意外と楽しいかも♪」
 校外学習の一環で、農場体験にやって来た女子高生の一団だ。遠くの方で牛が鳴き、なんとも牧歌的な空気が漂っているが……そんな場所に、突如として魔空回廊が開かれた。
「ブヒャッハァァァッ! 見つけたでブヒよぉ!」
「グヘヘヘ……もう、逃げ場はねぇぜ? どうせなら、俺様達がもっと楽しい、最高の農場体験をさせてやるぜぇっ!」
 魔空回廊の奥から、続々と出現するオーク達。悲鳴を上げて逃げ惑う女子高生達目掛け、オーク達は盛大にスライムをブチ撒ける。
「きゃぁっ! な、なによ、これ! 服が溶けてるんだけど!?」
「ブッヒッヒ……。なかなか、良い格好になったでブヒ! 今度はお前達が、牛の代わりに搾乳される番でブヒ!」
 なんとも下品な笑みを浮かべ、触手を振り立ててオーク達が迫る。哀れ、牧場の真ん中では助けを呼ぼうにも呼べず、少女達は成す術もないまま下劣な豚に連れ去られてしまった。

●狙われた校外学習
「本格的に夏を迎えて、デウスエクスの行動も活発になって来ているようですね」
 もっとも、それに合わせて下品な連中まで活発になるのは勘弁して欲しい。そう言って、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)からケルベロス達へ伝えられたのは、服を溶かすスライムを使うオーク達が、校外学習で牧場を訪れている女子高生の団体を襲うとの報だった。
「敵のオークが出現する牧場には、合わせて20名程の女子高生が来ています。全員、同じ色のジャージを着ているので、見間違えることはありませんが……オーク達は衣服を溶かすスライムを持っているので、あまり意味はないでしょう」
 最初から露出が高くなくとも、服を溶かしてしまえば関係ないということだろう。しかし、事前に彼女達を避難させてしまうとオークが別の場所に出現してしまうため、彼女達の避難はオークが出現した後に行うのが望ましい。
「敵のオークは20体。得意な戦法は撹乱です。明確なリーダーはおらず、個々の強さでは皆さんよりも少し劣りますが……その分、統率もなく好き勝手に動く可能性があるので気を付けてください」
 敵は衣服を溶かすスライムを使って来るが、それでケルベロス達の防具が溶けることはない。しかし、敵が触手の先から発射する溶解液はその限りではなく、他にも触手で締め付ける、叩くといった攻撃を繰り出して来るので注意が必要だ。
「唯一の幸いは、敵の使うスライムが、あくまで単なる道具であるということですね。スライムと戦う必要はありませんので、戦闘時はオークの殲滅にだけ意識を集中させて構いません」
 なお、スライムは衣服を溶かすと同時に消えてしまい、戦闘後も残ることはない。持ち帰って調べることも不可能だが、後始末が少しでも楽になるのはありがたい。
「折角の気持ちよい高原に、オークのような下劣な存在は不釣り合いです。それを抜きにしても、彼らの所業を許すわけにはいきません」
 平和な牧場に迫り来る危機から、少女達を守るのに力を貸して欲しい。最後に、それだけ言って、セリカは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
カタリーナ・ラーズグリーズ(偽りの機械人形・e00366)
日柳・蒼眞(無謀剣士・e00793)
ツォーナ・カーン(ツナ狂い・e01315)
アルメイア・ナイトウィンド(星空の奏者・e01610)
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
綺羅星・ぽてと(耳が弱い・e13821)
ネモ・ゴーシュ(放浪絵師・e50439)

■リプレイ

●汚豚のセクハラ実習
 夏の澄み渡る空の下、牛たちが長閑に草を食んでいる。どこにでもある農場の風景。そんな場所だが、今日は普段とは違い、ジャージ姿の少女達で賑わっていた。
「割と珍しいよな。高校でこういうのは」
 遠間から様子を窺いつつ、アルメイア・ナイトウィンド(星空の奏者・e01610)が呟いた。
 女子高の課外授業で農業体験。まあ、確かに珍しいのかもしれないが、それはそれ。実際、そこまで本格的な農作業はせず、どちらかと言えば動物との触れ合い体験の方がメインのようだ。
(「黒い毛並みが夏の陽射しを吸収して……暑いわ……」)
 そんな中、黒猫に変身していた円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)は、ここに来て自らの選択を激しく後悔していた。
 身を隠すため、猫に化けるまではよかったが、この陽射しの下で太陽熱を吸収する黒い毛並みは拙かった。このまま頭が茹で上がって、オークが登場する前に戦闘不能となっては洒落にならない。
 こうなったら、もうあそこにある桶の中の水に頭を突っ込んでしまおうか。思わず、そんなことをキアリが考えた時だった。
「ブヒャッハァァァッ! 見つけたでブヒよぉ!」
「グヘヘヘ……もう、逃げ場はねぇぜ? どうせなら、俺様達がもっと楽しい、最高の農場体験をさせてやるぜぇっ!」
 突然、農場のど真ん中に魔空回廊を開き、中から多数のオークが溢れ出て来た。
 しかも、その手に握られているのは、紛れもないスライム! それも、衣服だけをピンポイントで溶かすという、誰得なセクハラ効果のオマケ付き!
「ここは私達が引き受けた! さあ、とっとと逃げな!」
 手近なオークを問答無用で殴り飛ばし、悲鳴を上げる女子高生達に向かってアルメイアが叫ぶ。キアリも変身を解除して、農場の外へと女子高生達を誘導するが。
「ブヒッ!? あいつら、逃げる気でブヒか!?」
「そうはいかないでブヒ! レェェェッツ、スラァァァイム、タァァァイム!!」
 獲物を逃がしてなるものか。オーク達は一斉にスライムを周囲に撒き散らし、それらを浴びた女子高生達のジャージやケルベロス達の衣服が、瞬く間に溶けてなくなって行く。
「きゃぁっ! な、なによ、これ!?」
「ちょっ……! こ、このままじゃ、裸に……!?」
 運悪く、胸元や尻にスライムの直撃を食らってしまった少女達が、涙目になって衣服の穴を押さえていた。
 このままでは、恥ずかしくて逃げるどころではない。しかし、ここで彼女達を見捨て、オークの餌食にさせてしまうのは戦士の名折れ。
「大丈夫か? 今、安全なところへ連れて行ってやるぜ」
 ここぞとばかりに、日柳・蒼眞(無謀剣士・e00793)が少女達を抱え上げ、一目散に駆け出した。もっとも、その際に掴む場所が悪かったのか、「も、もっと別の場所を持ってください!」という、少女達の悲鳴が聞こえたような気がしたが。
「ぬぐぅぅぅっ! こ、このままでは、獲物に逃げられてしまうでブヒ!」
「こうなったら、誰でも関係ねぇ! ここにいる女どもを、全員纏めて丸裸にしてやるでブヒ!」
 初っ端から目論みを砕かれ、オーク達は早くもヤケクソになって、標的をケルベロスの女性陣達へと変更したようだ。まずは、その邪魔な衣服を溶かしてから襲ってやる。そう叫んで、再びスライムをブチ撒けたが、今度は先程のようにはいかない。
「おぉ、本当に溶かせるんですね!」
「ふ~ん……確かに、ある意味便利ね。下らないこと以外に、使い道なさそうだけど」
 スライムの効果に興味津々といった感じのツォーナ・カーン(ツナ狂い・e01315)に、やたら冷めている愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)。どちらも、スライムを浴びても平然としており、当然のことながら身に纏った防具までは溶けていない。
「私達にスライムは通じないわ。貴方達自身がかかってらっしゃい……。それとも、その触手はただのお飾りなのかしら?」
 ここぞとばかりに、綺羅星・ぽてと(耳が弱い・e13821)がオーク達を挑発した。ちなみに、囮として辺りに衣服を撒いてみたが、特にそれでスライムが何か反応を示すようなことはなかった。
 やはり、このスライムは敵ではなく、『衣服と反応して対消滅する道具』程度の何かなのだろう。なんとも謎な物体だが、今はその正体を考えていても仕方がない。
「豚さん豚さん、農業体験は私達とし・ま・しょー♪」
「オークの皆さん、おにごっこしましょう!捕まえられたら貴方達の勝ちです!」
 ミライが腰を振ってオーク達を挑発すれば、ツォーナもまた便乗してオーク達を誘いつつも逃げて行く。どうやら、効果は抜群だったようで、一部のオーク達は二人を追って駆け出した。
「グヘヘヘ! こいつは、誘い受けってやつじゃねぇのかブヒ?」
「よ~し……お望み通り、とっ捕まえてやるから覚悟しろでブヒ!」
 とりあえずは、これで女子高生達がオークに襲われる心配はなくなったか。だが、それでも未だ農場の真ん中には多数のオークが残っているので、油断するわけにはいかないが。
「ぶひぶひふごふごと、いつも騒々しいねこいつら……」
「まったく……せっかく絵にできそうな場所なのに、絵にも書けないぐらい汚らしいオークに汚されるなんてたまんないよ!」
 カタリーナ・ラーズグリーズ(偽りの機械人形・e00366)が呆れた様子で溜息を吐けば、ネモ・ゴーシュ(放浪絵師・e50439)もまた絵筆を引き抜いてオーク達と対峙した。
 こんな汚らわしい豚どもは、美しい農場に相応しくない。さっさと倒し、綺麗な景色を絵に残しておこう。そんなことを考えながら、触手が蠢く戦場へと身を躍らせて行った。

●イケない搾乳体験!?
 農場に現れた、総勢20体ほどのオーク達。彼らの戦闘力は決して高いものではなかったが、その全てが撹乱に特化しているのは、地味に恐ろしいものがあった。
 触手による締め付けに、ケルベロスの防具さえ溶解し、猛毒により肉体を蝕む謎の白濁液。それらの効果を、全て平常時の3倍近い量で与えられてしまうのだ。
「でえええ!? くそ、最初から飛ばしてきやがって!?」
 案の定、真っ先に敵陣へ飛び込んだアルメイアが、一番最初にオーク達の触手に締め付けられていた。
「ブヒヒヒ……。確かに、お前達の防具にスライムは通用しないでブヒ! でも、こいつはどうでブヒかねぇ?」
「あっ、こらてめぇら!? ええい、離しやがれッ!? んぐぅ…ッ!?」
 四肢を拘束され、満足に動けない状態にアルメイアへと、数体のオークがシャワーのように溶解液を浴びせて来た。その効果を受け、身体に焼けるような痛みが走ると同時に、彼女の衣服もまた溶かされて。
「それじゃ、まずは味見でブヒ! 農場といえば乳牛! 乳牛といえば、乳搾りでブヒ!」
「……っ!? んぁっ!! 揉むな、コラァ!? 何も出ねえって……ひゃぁっ!!」
 胸元に絡み付く触手の先端で、強引に胸を揉まれたり吸われたり。当然、オーク達の期待するような結果にはならないものの、それでも薄汚い豚どもは、執拗にアルメイアの胸の先端に触手を吸い付かせて来た。
「チッ……! やっぱり、何も出ないでブヒ! こうなったら、俺達で乳が出せるようにしてやるでブヒ!」
「なっ……! ま、まさか、ここで犯るつもりなのかよ!? や、やめろぉぉぉっ!!」
 股間を無駄に強調させながら、じりじりと迫り来る下劣な豚。敵の思惑を察し、さすがのアルメイアも顔面が蒼白になった。
 このままでは本当にリアルな意味で、お子様には見せられない展開になってしまう。さすがに放置はできないと、ぽてとが自らの気を飛ばしてアルメイアを拘束から脱出させた。
「ブヒッ!? 貴様、邪魔するつもりでブヒか?」
 もっとも、寸前のところでストップをかけられ、オーク達は御立腹。ここぞとばかりに後ろから、ぽてとの身体に触手を絡み付かせて締め上げた。
「ちょ、ちょっと……! 離しなさいよ!」
「そう言われて、離す馬鹿はいないでブヒ! 心配しなくいても、お前の乳もしっかり絞ってやるから安心するでブヒ!」
 そう言うが早いか、下劣なオーク達の触手が一斉にぽてとの身体に絡み付き、胸元を絞るようにして締め上げた。おまけに、胸の先に触手を吸い付かせ、文字通り搾るようにして襲いかかり。
「んっ……くぅ……な、なにしてんのよ! どこ触って……んぶぅっ!?」
 悶えるぽてとの口目掛け、粘液まみれの触手を突っ込んできた。
「ブッヒッヒ! お前には、これを飲ませて俺達の雌牛にしてやるでブヒ!」
「んんっ!? ひょっ……ひゃめっ……んぅぅぅっ!?」
 溶解液を直接流し込まれ、ぽてとはその場にガックリと崩れ落ちる。生臭い液が喉奥に絡み付き、毒の効果で焼けるような痛みが襲って来た。
 このままでは、本当に貞操が危ない。太腿を這い上がってくる触手の感触に、思わず眉根を寄せて顔を顰めた時だった。
「おっと、そこまでだ! この俺が来たからには、これ以上の好き勝手はさせないぜ!」
 桜の花弁が舞い散る剣戟が一閃。颯爽と舞い戻った蒼眞によって、オーク達の触手が斬り飛ばされ。
「お前達に与える慈悲はないよ」
 カタリーナの繰り出す稲妻の突きが、オークの尻に突き刺さって焼き焦がした。
「うぅ……た、助かった。あっ! ほ、他のみんなは!?」
 喉の奥に残る痛みを堪えつつ、ぽてとが辺りを見回して言った。そう言えば、ミライやキアリ、それにネモやツォーナ達が、一部のオークを引き付けていたような。
「ああ、あいつらか? それなら大丈夫みたいだぜ?」
 そう言って蒼眞が指差す先には、果たしてオークと戯れている4人娘の姿が。もっとも、実際は戯れているというよりも、一方的に殺戮していると言った方が正しいが。
「おーい! こっちこっちー! ……って、ちょっと! どこ触ってんの!!」
 自分から誘っていながら、触られた瞬間にブチ切れて、ネモは死角から生やした角でオークを突く。正面から額をブチ抜かれ、まずは一匹お亡くなりに。
「避難の方も大丈夫そうですし、そろそろ良いですよね……! 我慢しなくて……良いですよね!」
「ん? なんだか知らんが、エッチなことのお願いかぁ?」
 そんな中、触手を切払いながらも両目を輝かせているツォーナの様子に、何かを勘違いしたオーク達が迫って行くが。
「そうね……。HはHでも、harsh(不快)なものをhunt(狩る)する方のHかしら?」
「農業体験……内容は、豚の屠殺ですけどもね!」
 淡々とした口調でキアリがオークの頭目掛けて星形のオーラを蹴り込み、ミライの投げた光の戦輪が触手を纏めて斬り裂いた。

●反撃、屠殺実習!
 最初こそ勢いのあったオーク達だったが、それでもやはり、力量の差は隠せない。
 色々あって、完全に本気モードになったケルベロス達によって、形勢は完全に逆転していた。
「オラァッ! ちょっと地獄を見ていけや!!」
「さっきは、よくも変なもの飲ませてくれたわね! 喉はアイドルの命なのよ! 許さないんだから!」
 散々にやられた鬱憤を晴らすべく、アルメイアやぽてとが大暴れ。ギターを振り回し、急所を狙って蹴りを炸裂させる様は、正に鬼神の如き活躍ぶり!
「セクハラ撲滅! 変態滅却! ハーレム粉砕! 乙女の怒りを思い知れぇぇぇっ!!!」
「ブヒョォッ!! も、悶絶ぅぅぅっ!!」
 ぽてとの脚技で急所を斬り飛ばされたオークが、実に汚らしい汁を撒き散らしながら絶命した。だが、その程度では彼女達の怒りは収まらない。一匹残らず、徹底的に殲滅する。その覚悟は空間さえも歪ませて、オーク達に更なる仕置きをお見舞いする。
「土手っ腹に風穴開けて、牧草の肥やしにしてやるぜ! サヨナラバイバイしやがれ!」
「ブギャッハァァァッ!!」
 時空の歪みを巨大な杭に変換し、アルメイアがオークの腹へと打ち付けた。あまりの気迫に怖気づいたのか、残るオーク達は狙いを他の者へと定めようとするが。
「……これがあなた達の罪なのです。ごめんなさい、死んで」
「悪いけど……わたしはそんな簡単に肌を晒す安い女ではないのよ」
 殆ど死んだ魚のような目をしたミライがオークを殴り飛ばし、同じくキアリが情け容赦ないガトリングガンの一斉射撃を食らわせてハチの巣にして行く。
「ブ、ブヒィ……ブヒィ……。こ、こんな強いやつらがいるなんて、聞いてないでブヒ……」
 気が付くと、オークの群れは既に半壊状態。だが、ここで彼らを見逃す程、ケルベロス達は甘くない!
「さ、ぶんなぐっちゃうよー!」
「ランディの意志と力を今ここに! ……全てを斬れ……雷光烈斬牙…!」
 巨大に描いた自らの拳を実体化させてネモが殴り飛ばせば、蒼眞の振るった刃が稲妻を呼んで触手諸共に敵を斬る。堪らず逃げ出したオーク達だが、そこをカタリーナが狙い撃ち、サーヴァント達が一斉に襲い掛かった。
「ちょっ……! や、止めるでブヒ! 俺は食べても上手くな……ギャァァァッ!!」
 オルトロスのアロンやニモに凝視されたことで全身が火達磨になったオークへ、ボクスドラゴンのポンちゃんが追い討ちのブレス攻撃をお見舞いする。炎に巻かれた醜い豚は、一瞬にして真っ黒焦げの焼き豚に。
 これで、残るオークは後1匹。もはや出し惜しみする必要もないと、ツォーナは嬉々として刃を構え。
「ボクのとっておきです、行きますよ! 剣風……」
 魔力を纏わせた武器を敵の足下に投げ付けて、すぐさま打ち抜くように引き抜けば。
「……昇り竜巻ッ!」
 瞬間、巻き起こる凄まじい大竜巻。天高く巻き上げられたオークは大空の果てまで飛んで行き、やがて遠くの方で小さく輝いて見えなくなった。

●眼福なる記憶
 戦いの終わった農場は、いつもの長閑さを取り戻していた。
 青空の下、牛たちが何事もなかったかのように、のんびりと草を食んでいる。だが、オークに襲われ酷い目に遭った者達は、さっさと帰りたい気持ちでいっぱいだった。
「くそ、青空露出とかそういう趣味はねえ……」
 早々に着替えを済ませ、アルメイアがぼやいている。その隣では、再び暑さにやられたのか、キアリが完全にへばっており。
「……暑い……。かき氷でも食べたいわ……」
 まあ、ここは観光地も兼ねた農場なので、牛乳ソフトクリームくらいはあるかもしれない。
「さて、邪魔者もいなくなったし、牧場をスケッチして帰ろうかな?」
 そんな中、ネモは気を取り直して、スケッチブックに鉛筆を走らせる。その隣では、両手に残る柔らかな感触を思い出しつつ、蒼眞が実に満足気な顔で、青い空を見上げていた。
(「眼福、眼福……。今日の光景は、俺の頭の中に超記憶しておくとするかな」)

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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