ぺんぺんの逆襲

作者:志羽

●ぺんぺんの逆襲
 とある賑やかな海辺――の、傍の人気のない茂みの中にそれはぽいっと放置されていた。
 まぁるいシルエットの、ペンギン。否、電動式ペンギン型カキ氷機だ。
 それに向かってぴょんと飛び跳ねたものがある。機械で出来た蜘蛛の足のようなものがついた小型ダモクレスだ。
 それが取り付いたカキ氷機はみるみる膨れ上がっていく。
 瞳をびかっとひからせ、ふしゅりと冷たい息を吐くその表情はどこかやさぐれていた。
「ぺーんーぺーんー!」
 それを裏腹にかわいらしい声をあげつつ、ずももと立ち上がったそれは人ひとりより大きいペンギン。
 ぽこっと空いたお腹の部分からはしょりしょりとカキ氷をつくりながら、それはゆっくりと歩み始めた。

●予知
「現場、海の近く……」
「これはちゃっとやっつけて遊んできていいっていうやつよね」
 だよね、とザザ・コドラ(鴇色・en0050)の言葉に頷いたのは影守・吾連(影護・e38006)だ。
 二人に話始めるよと夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は声をかけ、集まったケルベロス達へと向き直る。
「ということで歩くペンギンが出ます、カキ氷機的な」
「ぺんぺんと呼びましょう」
「うん、ぺんぺんと呼ぼう」
 どういうことか、というと。
 とある海水浴場近くの茂みに、不法投棄された電動カキ氷機があり、それがダモクレスになってしまうのだという事なのだ。
 幸い、まだ被害も出ておらず浜辺に出てきたときに戦い仕掛ければ、誰も傷つくことなく終われるという事なのだ。
「ダモクレスはツギハギのペンギンで」
「ぺんぺん」
「ぺんぺん」
 と、声を揃えた二人に負けてか、イチも言い直す。
 敵のダモクレス――通称ぺんぺんは元々の形をその姿に残しているのだと。
 大きさは体長2メートル程度。よたよたとゆっくりとした動きで移動してくるという。
「お腹の部分がカキ氷作るところで。そこから削らないままの氷を放ってきたりとか、そういう攻撃をするっぽい」
 敵としては油断をしなければ特に問題なく倒せる。
 海岸には海水浴客も見られるが、出現は朝の早い時間だ。その時間、敵の現れる場所周辺は立ち入り禁止にしておくので周囲に注意したりは特にしなくて良いとイチは続けた。
「さながら、ぺんぺんの逆襲だね」
 不法投棄された怒りをひとびとに――という事だがそれを向けさせるわけにはいかないのだ。
 必ず撃破してきてほしいとイチはケルベロス達へと託す。
「あとは……終わった後、海を楽しんで来たらいいと思うよ」
 海で泳いだり、浜辺でビーチバレー。
 もちろん海の家もある。昔ながらのがやがやした座敷にあがる感じの楽しげな場所もあるのだが、ちょっとおしゃれな、ウッドデッキにソファが置いてある海の家もあるのだとか。
「やだ、このおしゃれなところでパフェとか片手にまったりとか贅沢時間……」
 と、ザザはスイーツも美味しそう! とはしゃぐ。もちろんカキ氷もあるようだ。
「海水浴場だから泳ぐのも良いし、好きに過ごしてきたらいいんじゃないかな」
 場所は海水浴場、そのまま遊んで帰らずにはいられない。
 ぺんぺん倒して、海で遊んで帰ろうと吾連は笑って紡いだ。


参加者
小早川・里桜(焔獄桜鬼・e02138)
鉄・千(空明・e03694)
茶菓子・梅太(夢現・e03999)
上里・もも(遍く照らせ・e08616)
輝島・華(夢見花・e11960)
エルピス・メリィメロウ(がうがう・e16084)
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)
影守・吾連(影護・e38006)

■リプレイ

●遭遇、ぺんぺん
 まだ少し、暑さ本番と言うには早い時間帯、ケルベロス達は件のダモクレスと、対峙した。
「夏だ! 海だ! 海水浴だー!!!」
「ぺん!」
「というか……やさぐれてても可愛いよね、ぺんぺん」
 ずずんと立つダモクレス――もとい、ぺんぺんを前に小早川・里桜(焔獄桜鬼・e02138)は魔力を集中させる。
「紅蓮猛火に呑み込まれろォ!」
 紅蓮、桜の花弁の如き焔がぺんぺんを包み込む。
「ぺんぺんは元からあの顔なのかな……もっと可愛らしい顔だったのかな……」
 気になる、と茶菓子・梅太(夢現・e03999)は零す。
 しかし、何はともあれ。
「悪さをするのは、いけないよ」
 走り込んだその脚には流星の煌めきと重力の力を。
 花の咲いた、箒のようなライドキャリバー、ブルームが走り抜ける。
 ブルームの主、輝島・華(夢見花・e11960)はきらきらと、オウガ粒子を後衛の仲間へと送る。
「ぺんぺんがやさぐれる原因を作ったのは私達ですが、これ以上好きにはさせませんの」
「ぺんぺん、捨てられたのはつらかったな。けど、逆襲を許す訳にはいかないのだ」
 電光石火の蹴りを鉄・千(空明・e03694)が放てばぺんぺんの身を撃つ良い音。
「うん、不法投棄されてたのは可哀想だけど人に危害を加えるなら見過ごせないよ!」
 ぺんぺんとの出会い――その切っ掛けを作った影守・吾連(影護・e38006)は海辺の平和とお楽しみの為に地を蹴った。
「安らかに眠ってもらうよ、ぺんぺん!」
 その足に流星の煌めきと重力の力。畳み掛けられる蹴りはぺんぺんを確実に鈍くさせていく。
「ペンペン……! とってもかわいいのよ……!」
 でも、見た目に惑わされずがんばるのとエルピス・メリィメロウ(がうがう・e16084)はぐるると喉奥ならして唸る。
「ペンペン負けないのよっ!」
 そのエルピスの唸り声、その威嚇はぺんぺんを震えさせる。
 そんな、震えるさまもどこか愛嬌があってかわいい、ような気もしなくもない。
「ぺんぺんカワイイ」
 でも、とユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)はまず仲間達への援護を。
「海で早く遊びたいから、ソッコーで殲滅よ」
 ぽちっと推した爆破スイッチ。カラフルな爆炎は仲間達を鼓舞する。
「お前の攻撃を受けるために私はシロップを用意してきた!」
 ピーチ、ブルーハワイ、コーラほかたくさん!
 我が防御に隙は無し! と、高らかと告げた上里・もも(遍く照らせ・e08616)は、気付いた。
 ぺんぺんのお腹の部分、しょりしょりとカキ氷は削られているが、受け止める器がない。
 というより、あれは食べられるのか――という視線を霊犬のスサノオは向けている。
「ぺんぺんめ!」
 シロップ手に持ったまま、ももは流星の煌めきと重力の力を以て飛び蹴り、スサノオが地獄の瘴気を見舞う。
 そしてザザ・コドラ(鴇色・en0050)も、この後の為に皆の援護を。
 ぺんぺんも攻撃されるがままではなく、攻撃をしかけてくる。だが、ぺんぺんは幸いにも、ケルベロス達にとって手間取るような相手ではなかった。
 まだ夏の日差し本番になる前に、ぺんぺんとの戦いは始まった。

●逆襲の終わり
「ぺん!」
 ぺんぺんが声をあげつつ攻撃しかけてくる。
 だがその傷はザザが黄金の果実の力でもって癒していく。
 その間に半透明の御業を喚び、里桜が放つ炎の弾丸。
 それはぺんぺんの身の上で燃え上がる。
「ぺんぺんをぺんぺんする!」
 ももはドラゴニックハンマーを振り上げる。ドラゴニックパワーを噴射し、加速した勢いで振り下ろせばごいんと鈍い音がした。
「はっ! これじゃぺんぺんするじゃない!」
「痛そうな音が……」
 その音を耳にした華は、ぺんぺん、思いのほか堅いのですねと零す。
 そしてその間にも、手からケルベロスチェインを躍らせ皆の援護もかねて守りを固めていた。
 ユーロもぺんぺんの懐へ。全身を覆うオウガメタル、その力を借りて放つ拳の一撃はその装甲を貫く。
 続けて黒槌振り下ろしたのは千。進化可能性を奪う一撃がぺんぺんを襲う。
 そしてぺんぺんの動きを一層狭める為に梅太は手元のファミリアロッドの姿を変じた。
 梅太の元から飛び出したファミリアはダメージ与えるとともにぺんぺんに今かかっている阻害を増やしていった。
 続けて接したエルピスは電光石火の蹴りを。
 急所を射抜く一撃は迷いなくその場所を貫いていた。
 そしてエルピスが離れた瞬間、ぺんぺんを貫くように放たれた雷がある。
 吾連が放ったその雷は怒りを糧としたものだ。
 ケルベロス達からの攻撃を受け、ぺんぺんもやられてばかりではないのだが、火力が段違い。
 ぺんぺんは追い詰められていた。
「ぺん! ぺぺぺぺぺんっ!」
 ぽっかりあいたお腹から氷塊一つおとし、ぺんぺんはそれをごくっと飲み込んだ。
「ぺーんー!」
 そして吐き出す吐息は凍えるもの。その冷たさに凍え、手足は痺れたような感覚に。
 けれどその吐息を、千は受け止め皆の為に好機を作る。
「吾連、今なのだ!」
「了解。行くよ、千!」
 千の声に合わせ、吾連は魔力を紡ぐ。
「――常夜で眠れ」
 生み出すは数多のフクロウの幻影。音も無く、一斉に吾連の元から飛び立った幻影たちは死へと誘う呪いをその爪で刻み付けていく。
「ペンペンが氷ならこっちはビーチバレーで対抗なの!」
 炎は熱いけれど、とエルピスはサーブを受けるように、滑り込むようにペンペンの懐へ。
 その足には地を滑る摩擦で得た熱。その脚で攻撃を仕掛ける。
「Shall We Dance? ……ってね!」
 けれど今日はダンスじゃなくてカキ氷! と言いながらももが繰り出す死の舞踏。慈悲無き輪舞――という素早い動きの攻撃にぺんぺんはついてこれない。
「危ないかき氷作りはもう終わりだよ、ぺんぺん!」
 エクスカリバールを振り上げ、その装甲を里桜は剥ぎ取った。
「さあ、よく狙って。逃がしませんの!」
 回復の必要のない今、華も攻撃を。
 掌の中に魔力で生成された花弁。その花弁の一片は小さいが、ぺんぺんへとひらりと舞い、狙い定めて切り刻んでいく。
「迷って、戻って、囲まれて、そしてアナタはいなくなる」
 続けて、渦巻状に弾幕を見舞ったのはユーロだ。
 ぺんぺんの進行方向を遮るように放たれたそれが進む方向を奪っていく。
「ごめんな。千達が相手してあげるから、おやすみして欲しいのだ」
 指一本の突き。
 千のその指は、ぺんぺんの気脈を断つ。するとぺんぺんの動きは鈍くなり、まるで石となったようにぴたっと動きが止まった。
「……おやすみ、ぺんぺん」
 良い夢を、と梅太は紡ぐ。
 ぺんぺん見つめれば、夢を見たいような幻覚が。それはその精神蝕む悪夢。
 その悪夢に抱かれ、ぺんぺんは瞳閉じ、がらがらと崩れていく。
 その様子を見つめる千の傍に吾連は立って。
 動物好きな優しい女の子の千。思うところがあったのかもしれないなと思ったのだ。
「千、大丈夫?」
「だいじょぶだぞ!」
 心配してくれる吾連へと、千は笑顔を向けた。
 人を傷つけることなく、どこか憎めなかったやさぐれ顔のぺんぺん――ダモクレスは倒されたのだった。

●夏の浜辺で
 ということで。
 ぺんぺんの弔いも終わりケルベロス達を待っていたのは――真夏の、海。
 じわりと肌を焼く日差しは夏ならではのものだ。
 海へ勢いよく走っていく里桜とデフェール。
 ウォーターガンを手に互いに狙い合って、水をかけあって。とにもかくにもはしゃぎまくって笑いあう楽しいひと時。
 一通り遊び終えたらお腹もすいてきて、二人で海の家へ。
「里桜は何食うんだ?」
「焼きとうもろこしとか食べる! こういう所で食べると、より一層おいしく感じたりするよね」
 そう言いながらまず里桜の目についたのはかき氷。
 どれにしようかと迷う間もなく目についたのはひとつだ。
「あ、かき氷くださーい! メロン味!」
 メロン味のシロップ、その色を見て里桜は笑む。
「デフェの翼とかの色って、ついつい選んじゃう」
 と、さらっと当たり前のように紡ぐ里桜。それを耳にしたデフェールは。
「……デフェ、顔赤い? メロンのかき氷、おいしいよ?」
「……って里桜、お前なぁ……照れんだろーが。ばーか」
 照れながら仕返しだとデフェールも頼む。
 それは桃とイチゴ味半分ずつのかき氷。
「桃! イチゴ! ハーフ&ハーフ、コレが天才の技!?」
 そう言って瞳輝かせる里桜にデフェールはふふんと笑って。
 桃が里桜の髪の色、イチゴが瞳の色と返せば、里桜の頬の色は赤く染まる。
 照れろ照れろとデフェールはが笑うのに里桜もつられる。
「来年もまた海で遊びたいね!」
 幸せだなと思う笑みと一緒に、来年の事も思う。
「ヘーイももおねーさーん! ちゃんとしててガチなカキ氷機準備しましたでよウラー!」
 業務用かき氷機、それに角氷も台車に乗せて物九郎は浜辺へ。
「ってなんでももおねーさんシロップ準備済なんスか」
 そう言ったものの、すぐにその理由に思い当たる。もものやろうとしたことはお見通しだ。
「あー! さては敵の攻撃からして喰おうとしてたんスか!」
「そりゃかき氷機と戦うんだからシロップくらい用意したさ! 戦闘中に使う暇全然なかったけど!」
 どん! どん! と目の前に並べて、というわけでとももは物九郎の方を振り向く。
「シロップどれがいい? 一通り買ってあるよ」
 そう言いながらお任せでいいよねーとしょりしょり物九郎が削った氷にシロップを。
「おすすめは~ブルーハワイと~」
 と、青色シロップに。
「イチゴ味を混ぜて~紫色にして~」
 赤色シロップ混ぜて紫色。氷にかける前に準備完了。
「あとメロン味とマーブル模様にして~ポイズン味~~~!!」
 それを合わせてかき氷へ。
 見た目にあまりよろしくないそれだが、勿論作ったからには食べる。
 それを食べつつそういえばと今年の水着の話。
「水着コンなー、今年はどうしましょっかなー。ももおねーさんはー?」
「アマゾンは日差し強そうだし虫刺されも怖いから、なんか羽織ろうかなー」
 ポイズン味、なかなかと思いながらふと物九郎は思う。
 体表に呪紋。それをアートっぽく配列したらとよさげな気配。
 不思議な色のかき氷を手に、ももにこうしたら案外クールでしょうかやと問えば。
「えっ、マーブル模様? 次のかき氷はクールに?」
 仕方ないなぁとポイズン二つ目が生まれる気配。
 シャチ型の浮き輪をもってユーロはルリィと海へ。
 まずユーロが浮き輪にのってルリィがそれを押す。
「ユーロ、交代よ」
「それなら一緒に乗りましょ、お姉様」
 そう言って二人で乗ろうとするけれど、ひっくりかえって。
 と、水着の紐に尻尾で悪戯しようとするのをルリィは姉の威厳を保とうと頑張ってみるが、遠くから見ればそれははしゃいでいるようにみえるだけだ。
 そして、海の上での戯れ楽しんだら日焼けする前に海の家へ。
「カキ氷食べたい。苺シロップに練乳かけて、アイスものせて」
 そういうユーロにルリィはそうねと頷いて。
 ふたりで一緒に座って、デラックスなカキ氷をおいしくいただく時間。
 折角海に来たのだから、と白のフリルビキニで華は浜辺へ。
「ザザ姉様、よろしければ一緒に泳ぎませんか?」
 まったりも良いですが、という誘いにザザは折角海に来たんだものねと一緒に。
「ザザ姉様は泳ぎは得意ですか?」
「ふ、普通、かな?」
 そう言いながらもザザは浮き輪装備がばっちりだ。その様子に華は小さく笑い零す。
「私はあまり……なので。夏本番の前に要練習ですね」
「そうね、練習、しましょ!」
 海で泳ぎの練習。その様子をブルームとジィジは並んで見守る。
 そしてそれに疲れたらおしゃれな海の家へ。
 二人の前には海をイメージしたパフェ。
「泳いだ後の冷たいもの……至福の時間ですね」
 それに、と華ははにかむ。
「こんなおしゃれな所で過ごすなんて大人に近づけたみたいです」
「大人になるなんてすぐよ、すぐ!」
 大人になったらお洒落なお酒もあこがれよねとザザは言う。
 それは華にとってはまだ先だけれど、確かに憧れ。
「大人になったらお洒落なお酒、飲みにいきましょ、華ちゃん」
 それまでは、お洒落なスイーツで満足を。
「ふふふのふー、ペンペンと一緒にあそんで準備万端なの」
 エルピスはボールを手元で遊ばせ、ヒノトに負けないのよと宣戦布告。
「このビーチバレーも絶対に勝つもん。おなかもすかせるのよ!」
 この日のためにたくさん走って遊んで準備してきた。負ける気は勿論なく。
「準備に余念がないだろう事は当然予想してたぞ」
 ヒノトはエルピスに不敵に笑って返す。その勝負、受けて立つと。
「へへっ、面白え。俺だって今日は勝ちに来た! 真っ向勝負といこうぜ!」
「ふふふのふー、ワタシからで良いかなあ? 必殺サーブ撃つからみててほしいの!」
「まずはお手並み拝見、必殺サーブを受けてみようじゃないか」
 それ! と遠吠えをしサーブを打ってくるりと一回転。
「……!」
 そのサーブにどうにか追いついて返せば、すぐさまエルピスは攻撃に。
 自然とヒノトも笑み浮かべ、流石だなと紡ぐ。
「それでこそ俺の相棒だ!」
 そう言ってヒノトは必殺の一撃と予告を。
「狐の本気を見せてやる! はあッ!」
 高く跳び、高い打点からネット際を狙ってスパイク。
「狼の本気って所なのよ!」
 それを転がり込んで、エルピスは受ける。
 一進一退、そんな勝負にいつの間にか観客も増えていた。
 ボールを受けて、放って。
 沢山遊んだら海の家へ。
 お腹を満たしながらするのは、次はいつ海にいくという話。
 笑いあう、二人の尻尾は同じように楽しかったと揺れていた。
「吾連と遊ぶぞ! 海までかけっこである!」
 水着に着替えて海へと駆け出す。その瞳に楽し気な色をにじませ、千は尻尾を揺らしていた。
 その手にはウォーターガン。
「千、いざ尋常に勝負だ!」
「負けないぞ吾連! 勝負である!」
 ばしゅっと放った水弾。けれどそれを翼でガードする吾連。
「むむ、翼でガードとはなかなかやるのだ……」
「翼を使って水をガード……って、うわっ、やったな!」
 と、褒めつつばしゃりと尻尾で水かける千。ぱしゃんとかわいい音たてて、吾連の顔めがけて飛沫を。
 すると反撃と吾連も尻尾でばしゃんと大きな音たて、水を高く跳ね上げた。
「ぷわー! 尻尾の反撃も手強い!」
 笑って目いっぱい遊んだら、お腹も減って海の家でごはん休憩。
「吾連は何にする? 千は焼きそばかな」
「千は焼きそばかぁ、俺は…カレーとラーメンで悩むなぁ」
「カレーもラーメンもいい……」
「そうそう、焼きとうもろこしも外せないね!」
「焼きとうもろこし!!」
 それは鉄板であるな! と千な瞳輝かせ、翼と尻尾もその気持ちを表し動いている。
 迷ったら色々頼んで、そしてわけあえばどれも美味しい。
「お仕事お疲れ様……ぺんぺん可愛かった?」
「うん、ありがとう。ぺんぺん……は、ちょっぴりこわい顔だったよ」
 少し見てみたかったやもというメロゥに、こんな顔、と梅太は目尻をちょっぴり、指で釣り上げて。
「……ね? ……こわいでしょう?」
 けれど、その真似にメロゥは肩を揺らして笑う。
「全然怖くない、むしろ可愛い……彼氏が」
「む、むっ。……か、かわいくないですー」
 戯れまじり。二人での話は何でも楽しい。
 波と戯れながら歩けばひんやりとして気持ちいい。
 梅太はメロゥへと視線向ける。
 今日も、とびきりかわいい。水着もだけれど、はしゃぐ姿が眩しくて瞳細めた。
「……お嬢さん、写真を一枚いいですか?」
 スマホを向けてそう言えば。
「……彼氏さんもいっしょだったら、撮ってもいいです、よ」
 ふふと梅太は笑い零し並んで一枚。そっと寄り添うように距離は縮まる。
「そういえば、メロと海で遊ぶの、はじめて……やも」
「去年は海に行く機会がなかったものね」
「この先も、はじめてを一緒に楽しみたいね」
 梅太とならたくさん楽しめるわとメロゥは紡ぐ。
「……じゃあ、まずは今日を思い切りたのしまないと」
 そう言って梅太はメロゥの手を取り、いつもと変わらぬ笑み向ける。
「ね、梅太……今日はいっぱい遊びましょうね」
「うん、いっぱい遊ぼう」
 夏の思い出つくり。今日は、今年のひとつめ。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 2
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