魔竜顕現~天に届け

作者:つじ

●神鳴
 戦いの痕、というにはそれは無惨に過ぎただろう。
 エオスポロスの群れの自爆により、熊本城は完全に倒壊、瓦礫の山と化していた。
 今、代わってそこに鎮座しているのは、怪しく輝く宝玉……ドラゴンオーブだ。
 空間歪みによるものか、ケルベロス達を近寄らせず、解析する間もなかったその光の効果は、間もなく現れた。

 瓦礫に埋もれたコギトエルゴスム、自爆したエオスポロス達のそれが、突如輝きを取り戻す。
 雷鳴と共に現れたのは、元のエオスポロスとは明らかに違うもの。
 黒い鱗に包まれた体躯は力強く、その表面には行き場を探すように紫電が脈打っている。

 ゆっくりと立ち上がったそれは、空に向けて咆哮を上げた。
 
●バベル
「皆さんお疲れ様です! 熊本城で行われたドラゴンとの決戦は、辛うじて勝利する事が出来ました!!」
 集まったケルベロス達に、白鳥沢・慧斗(暁のヘリオライダー・en0250)が大きな声で呼びかける。
 先日の戦いでは過半数の侵空竜エオスポロスの撃破に成功し、廻天竜ゼピュロスの撃破にも成功した事で、覇空竜アストライオスは出現した『魔竜王の遺産、ドラゴンオーブ』を竜十字島に転移させる事に失敗したのだ。
「とはいえ皆さんもご存知でしょうは、まだ予断を許さない状況です!」
 現れたドラゴンオーブは『時空の歪み』のような空間を生み出し、その内部を禍々しい力で満たそうとしているようだ。そしてその力が充ちた時、ドラゴンオーブから魔竜王の後継者となるべき、強大なドラゴンが生み出されてしまう事が予知されている。
「これを阻止する為には、時空の歪みの中に突入し、ドラゴンオーブを奪取、或いは、破壊する必要があるのです!」
 既に時空の歪みの中には、覇空竜アストライオス、喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースの4竜が突入しており、すぐに後を追わねばなりません。
 しかし、時空の歪みの周囲には、ドラゴンオーブの力で出現したと思われる『19体の強大なドラゴン』が侵入者を阻止すべく待ち受けているという。
「この19体のドラゴンを抑え、時空の歪みの内部に突入、アストライオスら強大なドラゴンと対決し、ドラゴンオーブを奪取或いは破壊、そして大勝利!!
 ……と、このようなプランになります!!! ぶっちゃけ危険かつ成功率の低い無謀な作戦となりますが、現状、これ以上の作戦は存在しません!!!!」
 恐らくは申し訳なさ半分で、ヤケっぱちのようなセリフをヘリオライダーが吐く。
「というわけで、またもや厳しい状態になりますが、皆さんの力をどうかお貸しください!!」
 概要は上記の通り。そこでここに集まった班が担当するのは『魔竜ワード・ブレイカー』の迎撃となる。時空の歪みに突撃するチームと同時にこの個体に攻撃を行い、突入を援護するのが主な役割だ。
 とはいえ、役割は突入が撤退してくるまでの間……最大で30分続く事になる。
「19体のドラゴンは目の前の敵の排除に成功すると、他のドラゴンの救援に向かうという連携を行います。ゆえに1か所でも崩れると、連鎖的に全戦場が崩壊してしまうでしょう!」
 ワード・ブレイカーは覇空竜アストライオスに勝るとも劣らない戦闘力を持っており、少人数のケルベロスでの撃破は不可能だろう。
 しかし幸い、生み出されたばかりであるからか、一人でもケルベロスが健在であるのならば、その場で戦い続けるという行動を取る為、倒せずとも時間を稼ぐことは不可能では無い。
「仲間のケルベロスの支援も期待できますが、可能ならば、突入班の帰還までドラゴンを抑え続けられるように作戦を練っていきましょう!
 支援チームの作戦によっては、戦力を集中してドラゴンの撃破を狙う作戦が行われる場合もあるので、その場合は、支援チームと力を合わせてドラゴン撃破を行ってください!」
 多分打ち合わせすごい大変ですけど、と慧斗が注釈を加える。
「厄介な、危機的状況であることは分かっていただけたかと思います。ですが、これも前作戦で懸命に戦ってくださった皆さんのおかげで勝ち取れたチャンスです! どうか、皆さんの手でモノにしてください!!」
 拳を握り締めてそう伝え、慧斗は一同をヘリオンへと誘った。


参加者
篁・悠(暁光の騎士・e00141)
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)
星野・優輝(戦場は提督の喫茶店マスター・e02256)
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)
シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)
軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)

■リプレイ

●ワード・ブレイカー
 ドラゴンオーブを守るように、19体の魔竜が立ち上る。それらの一つ一つを食い止めるべく、ケルベロス達はそれぞれの相手へと挑みかかっていった。
「言砕く竜災、か。こんなところでお目にかかるとはなぁ」
 軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)は、目の前にした竜の姿にそう呟く。響くのは雄叫びと稲妻、立ち上がった黒竜の名は、『ワード・ブレイカー』。雷撃を操る魔竜である。双吉のルーツの片側、母方の血族は、ずっとアレへの対策を進めていたようだが……因果は不思議な形で結ばれたようだ。
「食い止めてみせよう! 当方に迎撃の用意あり!」
「方針は足止め、ですね」
「此処から先は通しませんよ……!」
 篁・悠(暁光の騎士・e00141)とテレサ・コール(黒白の双輪・e04242)、そしてシア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)がそれぞれに武器を手に、敵の眼前に立ち塞がる。それは、突入班を狙う魔竜の注意をそらすため。
「粉々に砕いてゴミの日に捨てられないのは残念だけど、此処は任せて先に行け~って中々出来る体験じゃないしね」
「……突入班が上手くいってくれるといいんだが」
 水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)と星野・優輝(戦場は提督の喫茶店マスター・e02256)の視線は、自然と駆け抜けていく突入班に向けられた。
 今回の作戦では彼等突入班が本命ではあるのだろう、だが、それを支える仕事もまた必ず要るもの。
「彼等の帰還まで食い止めてやるさ」
「このままあいつらの思い通りなんかにはさせないからな。皆で危機を乗り越えよう!」
 バイザーを下ろした霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)とハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)の言葉に、一同は決意を新たに頷いた。
 目覚めたばかりの魔竜は、目の前の邪魔者達に襲い掛かる。巨体が震え、咆哮が世界を揺らす。
「くるぞ…!」
 そして幾筋もの青白い閃光が、一斉に『魔竜ワード・ブレイカー』の身体から放たれた。

●天を割る雷
 その雷は神の御業。言語、文明すらも引き裂いてきた濁流の如き雷が、ハインツの持つ黒いライオットシールドの上で跳ねる。バチバチと激しい電光を上げたそれは、盾の持ち主である彼にも多大なダメージを与えた。同列のカイト、ライドキャリバーのレジーナらもそれは同様。だが、当然それを反撃の起点として、ケルベロス達は動く。
 ハインツが立ち塞がった事による死角を駆け、自らも紫電を纏った悠が仕掛ける。
「行くぞ!」
 二刀を用いて刻まれた十字に、双吉がガトリングガンで爆炎弾の色を乗せる。
 麻痺と炎、それを付与するための攻撃がされている内に、ハインツとシアはケルベロスチェインの陣を展開して守りを固めに入った。
「大丈夫でしたか?」
「ああ、どうってことないな」
 痺れる腕を振っているハインツの様子から、実際にそうとは思えないが……先のエウロポロスと比較しても、出力の差は歴然だ。
「注意していきましょう」
「ああ……だが、この程度!」
 方向転換に伴い振り回された尻尾を、カイトが退けるついでに戦術超鋼拳を叩き込む。
「事前の話の通りなら、行動は読みやすいしね」
 合わせて金属粒子を展開する蒼月の言うように、強敵とはいえこの魔竜はまだ目覚めたばかり。本調子とは言えないためか、行動の傾向は分かりやすいものになっている。
 遅れてテレサのヒールドローンが前衛をさらに固め、優輝が情報からの蹴撃を仕掛けていく。
 ケルベロス達の取った方針は、純粋なダメージよりも付与するバッドステータスを重視しつつの耐久戦だ。しかし、固めた守りも巨大な敵の前で維持する事は中々に難しい。暴風の如く、振るわれた前肢がさらに前衛を切り裂く。そのさ中にありながらも前へと踏み出し、カイトは敵に氷塊を叩き込んだ。
「燃えるが良い!」
 砕けた氷塊から炎が生じ、敵の身体へと燃え移る。起点を探るようにしながら、一同は魔竜の体力を削りにかかった。

「頼んだぜチビ助!」
 ハインツの散布した紙兵が、結界の如くケルベロス等の前に広がる。それを飛び越えた霊刀、咥えた刀を一閃。魔竜の鱗に傷をつける。
 怒る竜に応じ、身体の表面を電撃が奔っているように見える。行動傾向として、一定のダメージに対して敵は回復と言う防衛行動を取る。連撃でそれの誘発も狙い所だが……。
「これが私たちの、とっておきです!!」
 テレサの装備したジャイロフープからパルス砲が放たれ、優輝は菊とリンドウに似た攻性植物で敵の足を絡め捕る。
「無駄にでかいだけあるねー、しぶといな」
「諦めずに参りましょう、皆さんの事、信じていますよ……!」
 シアが再度サークリットチェインを張るのに合わせて、蒼月とボクスドラゴンのたいやきも回復に回る。
 巨体は未だ、揺らいでいない。

 雷のブレスが一帯を包むのに合わせて、シアをはじめとしたメンバーが懸命に回復を行う。しかしそれでもなお、壁役を務める者達の体力は一刻一刻、大幅に削られていた。
 崩壊の時は、ほどなく訪れる。疲弊した前衛への雷撃を察知し、カイトがその意を決した。
「その痛みも、悲しみも、俺が壊してやる――迷砕の氷華!」
 同じ前衛に立つ者達をまとめて癒し、そのまま彼は、魔竜に向けて高々と声を上げる。
「なんだ、人間達に足止めを喰らっている気分ってのはどうだ?」
 明確な挑発。万全であれば見向きもされないだろうが、この目覚めたばかりの魔竜であれば、十分に目はある。
「ちまちま薙ぎ払う事だけしかしてなくて時間だけ稼がれてるんだ。本当は一発でなんとか出来る筈なんじゃないのか?」
 そして、その煽りの言葉の効力を、敵の眼光から確信し、カイトは狙い通りだと笑って見せた。
「……舐めてる相手に舐められてるってのは、相当だぞ?」
 不敵な笑みを浮かべたカイトの上に、巨大な前足が振り上げられる。重い体に反し、素早い動きで放たれたそれは、カイト一人を確実に戦闘不能に追いやった。
 疲弊した状況では、どう考えても耐え切るのは不可能な重い一撃。だがそのおかげで、他のメンバーはこのターンの被弾を避けられている。
「無駄にはしません! さあ、癒しを」
「これで大丈夫だ、あと一歩頑張ってこうぜ! トイ、トイ、トイ!!」
 シアの振り撒く花吹雪と、ハインツの黄金の蔦が戦線を立て直す。さらに、チビ助もまた前衛に進み出る。
「形質投影。シアター、顕現!」
「さぁさぁ、世にも不思議な猫のワルツご覧あれ~」
 双吉のブラックスライムが黒い悪魔を作り出し、蒼月の幻術がそれを援護する。
「もらった!」
 絶空斬。駆けこんだ悠の斬撃が、敵の傷を、炎を、さらに大きく煽り立てた。
「敏捷性を意識した攻撃の方が当たりやすい、狙っていくぞ!」
 そして、続く仲間の連携から外れた位置で、敵の様子を観察していた優輝がそう声を上げる。力任せのものよりも、理力に寄ったものよりも……攻撃を仕掛けようとすれば、僅かながらにその傾向が読み取れるだろう。
 だが、それは状況を打開するものとなり得るか――。

「しかしまあ、一辺倒にバラバラ攻撃をばらまくだけなんて、図体でかいだけの木偶の坊だな!」
 続く戦闘の中、ハインツの叫びがこだまする。挑発の言葉で注意を引きながら、他の仲間達とは逆方向に回り込み、彼はまた黒盾を構えた。傷付いた身体をどうにか運んだ彼の方へ、青く輝く魔竜の瞳が向けられる。
 値踏みするようなそれで、じっと小さな対象を見つめ、ゆっくりと咆哮をあげる。
「こいつ……!」
 開いた顎からは大音声と、溢れ出る稲妻がそこら中に走り、スパーク光を上げ続ける。
 それを止めるように放たれたケルベロスの攻撃を、竜は尾の一薙ぎで弾く。畏怖せよ、とでも言うように、魔竜は盾の向こうのハインツを睨んでいた。
「判断が遅いぜ、木偶の坊!」
 既に倒れたチビ助を、カイトを思えば。そして勇者としての矜持を思えば膝を折るわけにはいかない。一歩、前に出たハインツの姿を忌々し気に魔竜が睨む。瞬間、激しい雷撃が彼の身を打ち据えた。
「――っ!!」
 空間が破裂するような音が一度。そして、ハインツはそこで力尽きた。
「……私も前に出ます」
 倒れた彼を戦線から退かせて、テレサが前へ。しかし単純に数の減少は、そのまま戦況に響き始めた。
「雷とか偉大なものを纏っときながら、やってる事は下っ端でも出来るお使いじゃないか」
 次に敵の前に立ち塞がったのは、蒼月だった。これ以上の広範囲攻撃は戦線の崩壊を招く。ならば、やる事は一つだ。稲妻で削られ続けた我が身を最後に。
「見た目だけで実力は下っ端同等?もしくは上が無能? どっちだろう」
 満面の笑みで蒼月は語る。
「――どっちにしろ、僕らの相手ご愁傷様だね」
 後は任せたよ、と。振り返る暇はもうない。怒りに燃えた魔竜の眼光が輝き、蒼月の上に巨大な稲妻が降り注いだ。
 轟音と、眩い光が止んだ後には焼け焦げた匂いが残る。
「ッ……早く、彼を!」
「ああ。……よくやってくれた」
 優輝の声が響く前に、駆け付けた悠が力無く横たわる蒼月を後方へと運ぶ。
「言葉は通じてるってことだろうけどよ……」
 倒れた彼に代わって前に出た双吉が歯噛みする。挑発に乗ってくるという事は、こちらの言語を解しているのだろうが……せせら笑うでも怒りを述べるでもない、一切口を利かないこの魔竜の様子はある種不気味だ。
 だが、こうして戦ってきたことでようやく、積んだ効果が実を結ぶ。一時的に機能不全に陥ったか、敵の全身を覆っていた青白い光が弱まり、雷撃を放つことなく収まる。
「今だ――!」
 優輝が轟竜砲を撃ち放ち、双吉のガトリングによる炎を援護する。
 しかし、唸り声と共に身体を丸めた魔竜が、全身にまた雷を纏った。帯電に使った時間は1分。それで敵の傷が、急速に塞がっていくのが分かる。
「おのれ――」
 振出しに戻る、とまでは当然いかない。だがこの調子で振り払われては、前線の維持さえ怪しくなってきた頭数で、バッドステータスを積み上げ続けるのは至難の業だ。

 今度こそは、全力で守り切る。そう決めていたシアは、傷付く仲間を少しでもカバーすべく施術を試みる。その願いは、しかし咆哮を上げる魔竜の前では困難なものへと姿を変える。以前も今も、彼女が手を抜いたことなどなかったはずだ。それでも。
 また崩れ去る気配を察し、テレサは身に着けた静電気対策グッズを見せつける。
「しかし、意外と雷は使わないのですね。自身の雷に自信がないのであれば賢明な判断です。……私には効きませんので」
 当然そんなもので電撃を防げるわけもないが、それが逆に、敵の大いなる不興を買うのに成功している。
 放たれる天からの一撃に、テレサが膝をついた。
「――正念場だな」
 戦況を鑑み、悠が呟く。ここまで人数が減れば、逆に敵の列攻撃の効率はかなり落ちる。既にポジションを移動済みの悠が前衛を、双吉が中衛を務める形だ。自然と、敵の攻撃はより効果的な方へ、スナイパーとメディックが位置した後列へと偏る。
「受けよ! 荒ぶる雷の暴雨! 神雷ッ! 光雨ッ!!」
 紫電を纏わせたままに悠が高速で駆ける。放つ雷撃の雨は、魔竜の鱗に突き刺さるが、その動きを止めるには至らない。ゆえに。
「――愚劣なる魔竜よ! いたずらに力を振るい続ける事は、市井へ己が愚かさを知らしめるだけだと知るがいい! 人それを「蒙昧」と言う!」
 あえて身を晒すようにして、敵に剣を突きつける。不遜なそれに、魔竜は巨大な腕を振り下ろす事で応えた。
「この状況では、もう……!!」
「ああ……!」
 無念さと、微かな焦りの混ざったシアの声に優輝が頷く。当初予定していたボーダーラインを割った。
 想定された30分には未だ届かない。ならば、撤退を考える時だ。
 天に向かって赤い信号弾が上る。状況次第だが、これを見た味方はすぐに駆け付けるだろう、が。
「Iri!」
 魔竜側がそれを待つような事はない。撤退すら不可能な状況を少しでも避けるため、双吉そう叫んで、単身時空の歪みの方へと走った。
 かつて言語を破壊したとまで言われる竜。ならば世界共通の言葉として作られたエスペラントは、格好の標的になるのではないか。果たしてそれが功を奏したのか、単にオーブを守る役割によるものか。魔竜は双吉のみに狙いを定めた。
 輝く眼光が双吉を捉える。
「くっ――!」
 稲妻が奔った。

●時間
 赤い閃光弾が上がって、双吉が倒れた直後。時間にすれば戦闘開始から26分。
 瞬間、時空の歪みが大きく周囲を揺らした。
「あれは……」
 優輝が送った視線の先、生じた裂け目から飛び出してきたのは、先に突入していったケルベロス達だった。作戦はどうやら成功、『魔竜ワード・ブレイカー』をここに釘付けにする任務は、無事遂行できたと言って良いだろう。
 しかし。空間の歪みから出てきたものは、それだけではなかった。
「おい、これは……」
「まさか、魔竜が?」
 周りで同じように魔竜と戦っていた者達が、仲間に警句を飛ばす。
 溢れ出てきた謎のエネルギーの影響を受け、『ワード・ブレイカー』を含めた魔竜達が、全て巨大化を始めたのだ。
「力が流れ込んでいる?」
「まだでかくなる気かよ……!」
 瞬く間に、その力を増す魔竜達。膨れ上がった体は、既にこれまでの倍の体長を有していた。内の力を示すように、『ワード・ブレイカー』もまた先程とは比べ物にならない威力の雷撃を周囲に放ち始めた。
「……一度退きましょう」
 このまま戦ったところで、勝ちの目はないに等しい。シアをはじめ、ケルベロス達は一時の撤退を選んだ。
「脱出できた突入部隊が、きっと情報を持ち帰っているはずです」
 シアと優輝は傷付いた仲間達を応急処置し、特に負傷の大きいハインツと双吉を抱え、その場を後にする。
「仕方あるまい。勝負は……預けたぞ!」
 傷を押さえながら、悠がそう宣言する。
 決着の時は、近い。

作者:つじ 重傷:ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606) 軋峰・双吉(黒液双翼・e21069) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月20日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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