魔竜顕現～竜の影を照らす光

■リプレイ

●目指す闇
　目の前で崩れ去りし熊本城。
　その熊本城亡き跡に姿を現わすは、怪しく輝くドラゴンオーブ。
　そして、そのドラゴンオーブの周りに広がる時空の歪みの中へと突入していくドラゴンと、その周囲を守るかの様に現れた、19体ものドラゴンの集団。
「流石……ドラゴン、圧巻です。超怖いです……」
　と、そのドラゴン集団の姿に尻込みするはティオ・ウエインシュート（静かに暮らしたい村娘・e03129）。
　そして、その横で……ドラゴンオーブと竜達の及ぼす力に、手をぎゅっと握りしめながら氷霄・かぐら（地球人の鎧装騎兵・e05716）が頷き。
「ええ……こんな力見たことない……こんなのがお城の下に眠っていたのもびっくりだわ……」
　これほどまでに強いドラゴンオーブの力……それを求めるドラゴン達、というのもなるほどうなずける。
　……しかし、長い事続いたドラゴンとの、熊本城周囲を巡る戦いも……ここが正念場だろう。
「さて、この長い戦いもそろそろ終わらせたい。あいつらには目的の一つも達成させずに帰って頂くのだぜ。その為にも、ここから先には行かせない……！」
　タクティ・ハーロット（重力喰尽晶龍・e06699）が真摯な言葉を零すと、深く呼吸しながらマロン・ビネガー（六花流転・e17169）が。
「そうですね……リターンマッチです！　いや、違いました通行止めですよ！」
　大きく拳を振り上げる。
　そして、ゲリン・ユルドゥス（白翼橙星・e25246）と鞍馬・橘花（乖離人格型ウェアライダー・e34066）、バーヴェン・ルース（復讐者・e00819）も。
「そうだね……色々と今迄あったけど、ここで負けてしまえば、ドラゴン達は大いなる力を手に入れてしまう。そんな事、させる訳には行かないよ」
「そうですね。ここで負けてしまえば、ドラゴン達が調子付くのは間違い無いでしょう。そんな事……させる訳には行きません。オーブ破壊作戦が完了するまで、連携と共にエウロスを足止めしなくてはいけません」
「ーム。これ以上は好きにはさせん。俺たちケルベロスが……な」
　……と、そんな仲間達の言葉に。
「そ、そうですね。魔竜王の遺産の脅威の方が超々怖いです。で、ですから、絶対阻止です！！」
「む。ま、どうにかなるじゃろうて。油断しなければ、な」
　ティオに不敵に笑うマリー・ビクトワール（ちみっこ・e36162）
　その背中に、自分の体より大きな愛用の大斧を抱え、そして……両腕の炎を一層燃え上がらせる。
　……と、ふとマロンが。
「そう言えばこの場所、オーブが消えたら壊れるですかね？」
　小首を傾げるものの……勿論、誰も答えを知る由も無い。
「どうでしょう……時空の歪みは、恐らく破壊されれば消えるとは思いますが……まぁ、何よりも私達の仕事は、ドラゴンオーブを破壊する仲間達の下へドラゴンを向かわせないことです。私達だけではありません……あちらの班も、共に」
　同じエウロスを狙うアンセルム達。
　彼らとの息の合った行動こそが、今回の鍵。
「良し。皆準備はいいんだぜ？　それじゃ……突撃だぜ！」
　タクティの言葉。
　そして、19竜と戦う仲間達の間を抜いて、時空の歪みへと突撃するのである。

●闇の影を阻む
　……そして、時空の歪みの中。
　外からは判然とする事は無かったが、時空の歪みの中は……太陽の光がが差し込む事は無い、一切の動植物も居ない、荒れ果てし荒野だった。
　ただ、アクセントが如く、紫の妖しい光だけが、薄く靄の様に掛かっており……何処か不気味な雰囲気が漂っている。
「……」
　そんな雰囲気に、ゴクリ、と唾を飲み込むマロン……自然と、手に汗を握る。
　そして、その荒れ果てし荒野を進むと……エウロスを発見。
「見つけた……あそこだよ」
　とゲリンが指を指し、エウロスへと近接。
　近接すると共に、彼に向けて初撃掃射。
『ッ……！』
　その翼に僅かな傷を付けると、エウロスは立ち止る。
　そして、ゲリンは。
「また会ったね、エウロス。思いっきり空を飛んだのは初めてだったよ！」
　開口一番の宣言……先の戦いも、エウロスと対峙した一人。
　でも、エウロスはその様な事を大して気にしては居ない。
　しかし、その背後から隆也らの攻撃が立て続けに仕掛けられると……エウロスは、ギロリと睨み付け、身を翻し、攻撃を叩きつける。
　……勿論、その巨躯から繰り出される一撃は、中々の攻撃力……かなりのダメージを食らう。
　その攻撃の隙を突いて、逆方向から攻撃するケルベロス。
「取りあえず、足止め、足止め……さあ、いきます！　効いてください！」
　小声で自分の役目を認識為つつ、叫びと共に轟竜砲の一撃を叩き付けるティオ。
　同時に橘花は。
「術式弾装填、目標基部の拘束を試みます」
　狙い澄ました『特殊拘束術式付与型徹甲弾』の一撃で、敵を足止めする。
　更にゲリン、マリーのメディック陣は、己達にエンチャント付与の目的で、ダブルでスターサンクチュアリによるBS耐性を付与。
　更にマロンも、メタリックバーストを自列に付与し、命中率を高める。
　そして……前衛に立つバーヴェン、タクティ、かぐらが。
「ーム。ドラゴンよ。貴様らの悪行はここまでだ」
「そうだぜ。絶対にドラゴンオーブをお前らの物にはさせないのだぜ！」
「ええ。どうしても得るというのなら、私達を全て倒してからです！」
　三者三様での挑発で、敵の注意を惹きつけようとする。
　が……逆側の方からも同様にエウロスへの挑発。
　両方向からの挑発に、エウロスは明らかに苛立つ。
　……そして、その苛立ちを増長する様に、バーヴェンが。
「せめて祈ろう。汝の魂に……救いアレ！！」
　と『日龍陽光斬』の一閃、更にタクティの轟竜砲と、彼のミミックが愚者の黄金。
　そしてかぐらは、ヒールドローンで前衛へ盾アップを付与し、防御を固める。
　次の刻、両面作戦を継続。
　敵を決してドラゴンオーブへと近づけさせない様。
「うずうずヒラヒラ、花アタックです！」
　『Op.Δ【Flor sin Nombre】』を仕掛け、更なる足止めを付与すると、ティオがフォートレスキャノン、橘花が砲撃ハンマーによる射撃。
　そして、マリー、ゲリンはメタリックバーストを付与し、狙アップ。
　続く前衛、バーヴェンは。
「……このまま倒してしまっても構わないのだろ？」
　と挑発しつつ、斬霊斬の一閃を仕掛けつつも……足止め作戦である事を悟られない様に熾烈な攻撃を続ける。
　そして、かぐらの轟竜砲と、タクティの竜爪撃、ミミックの武装具現化。
　多量のバッドステータスを付与する事で、ダメージよりも、足止め効果を強く付与する。
　……それらの攻撃に対し、流石にドラゴンは。
『……』
　今迄攻撃為ていた咆哮とは逆に身を翻したエウロスは……静かに睨み据えると。
『……殺ス！』
　咆哮と共に、その鋭い竜爪を穿つ、ドラゴンクロー。
　素早い攻撃……身を呈するかぐらへかなりのダメージを与える。
「大丈夫かの！？」
　と、すぐブレイクルーンでマリーが回復を飛ばすと、ゲリンも。
「……熊本城吹っ飛んじゃったけど、だから……もうちょっと付き合ってもらうね……星達と舞踊れ！」
　と、「スカイクリーパー」による回復で、戦線を維持。
　そして、マロンは重ねて『Op.Δ【Flor sin Nombre】』を付与すると、ティオのファミリアシュート、橘花の轟竜砲。
　更にバーヴェンの絶空斬、かぐらのサイコフォース、そしてタクティのマインドソード。
　……確実にダメージを重ねていく。
　そして次の刻。
　エウロスの今度の攻撃は、その尻尾を薙ぐことによるドラゴンテイル。
　多くのケルベロスを一度に攻撃する事で、総じて体力を削り去るが、メディックのゲリン、マリー、さらにはかぐらもヒールグラビティを活用し、戦線を維持しようと尽力。
　そのドラゴンテイルの攻撃から流れる様、逆班に一閃。
　交互に攻撃を受けることでダメージの分散を狙ったものだが……熾烈な一撃は、一発当たれば多大なるダメージを及ぼす。
　でも……自分達の役目は、決してエウロスをドラゴンオーブ班の下へ向かわせない事。
　それを口にはしないものの。
「はっ、それがテメェの実力かよ？　あの大食らいの方がよっぽど脅威だったぜ？」
　タクティはエウロスを貶し、そして立ち回る。
　中衛からマロンのフロストレーザーや、後衛のティオがファミリアシュート、橘花の熾炎業炎砲。
　更に攻撃を受けないタイミングにおいては、マリーも。
「炎よ！　あやつを打ち貫くのじゃ！」
　『ヘル・フレイム』による炎の攻撃。
　そして前衛陣の猛攻に、またも注意を惹きつけ……六刻目、エウロスの攻撃は、タクティへ。
　ディフェンダーの効果もあり、どうにか立ち続けられるが……かなり堪える。
　それを補助する様、逆班の雅也らが挑発。
　……七刻目の攻撃が、雅也、そして真奈の二人を標的にし……耐えきれぬ大ダメージに崩れ墜ちる。
　それに、何処か不敵な笑みを浮かべるエウロス。
　……その不敵な笑みに、僅かな同様を覚えるケルベロス達。
　そして、エウロスとの戦闘開始から八分経過した、その時。
　唇を噛みしめたその瞬間、エウロスの強烈な一閃が放たれる。
　その一閃は、仲間達のカバーリングを抜いて、中衛のマロンに強烈なドラゴンクロー。
「きゃ……っ！」
　苦悶の叫びと共に、その場に崩れ墜ちたマロン……。
　即座にゲリンが彼女を回復するも……ダメージが大きすぎ、立ち上がることが出来ない。
「一気に……厳しくなったね……」
　とゲリンは唇を噛みしめる。
　ケルベロス達は連携攻撃で以て、攻撃を重ねていく。
「……っ！」
　……と、攻撃が一巡した時。
　ほぼ同時に感じるは、言葉では言い表せない、とてつもない力の奔流が、戦場を包み込む。
　その力の奔流と共に、遠くから聞こえるアストライオスらのの咆哮。
「この圧倒的な力の放出は……まさか、ドラゴンオーブが破壊されたと言うのか！　竜十字島のドラゴンの渇望した希望、魔竜王の遺産が……」
「おのれ……許さぬ。魔竜王の遺産を破壊せしものに、死の罰を与えるのだ！！」
　……又、その叫びと共に打ち上がるは、青い信号弾。
　それは、ドラゴンオーブを破壊。速やかに撤退、の合図。
　こちらも、マロンが戦闘不能に陥っている状況……が、そんなケルベロス達へ、エウロスは追撃を仕掛けてくる。
　……その追撃をかいくぐり、時空の歪みからの離脱を急ぐが……エウロスの追撃の手は休まらない。
　……と、その時。
「さあ、一刻も早く脱出しましょう」
　と、マロンを抱える赤煙。
　そして、エウロスを牽制する様、レッドキャップが尻尾を絡みつかせ、追撃を阻む。
　彼らはドラゴンオーブ班の仲間達……彼らが此処に居るという事は……」
「……取りあえず、作戦成功って言った所ですかね？」
　と、橘花の言葉に赤煙は頷く。
「よ、良かったです……！　そ、それじゃあ帰りましょう、絶対！！」
　とティオにタクティも。
「ああ、皆は先に行くのだぜ。俺は一番後ろを守ってみせるのだぜ！」
　と、エウロスの真っ正面に対峙、更にマリーも。
「うむ。ではわらわは……これじゃ！」
　と、アイテムポケットに入れて来た、大量の煙幕を周囲にばらまいて、視界を奪う。
　……そして、どうにかケルベロス達は、敵の追撃を振り切り、時空の歪みを脱出するのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：マロン・ビネガー（六花流転・e17169）  死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年7月20日 難度：難しい 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 6／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 2
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