魔竜顕現~血戦

作者:長谷部兼光

●待ち望んだもの
 十九体の侵空竜が命を捧げ、廃墟に現出するのは禍々しくも煌く大きな宝玉。
 ただ、存在するだけで時空すら歪める強大な力の塊。
 誰が見紛うだろう。
 それこそ竜達が探し求めていたモノであり、
 これこそ竜達に希望を齎すモノ。
 即ちその名……『ドラゴンオーブ』
 故に三竜を従えたアストライオスは翼を大きく広げ、時と空の狭間を翔ぶ。
 廻天竜ゼピュロスを欠き、儀式に失敗しようとも、決して退く訳にはいかぬ。
「ドラゴンオーブが万が一にも奪われてしまえば……。この戦いに、ドラゴン種族の存亡がかかっているのだ!」
 オーブを必ず、我らの手中に!

 アストライオスが時空の歪みの中に消えた後。
 オーブの力か、姿を失くしたはずの侵空竜(コギトエルゴスム)は魔竜に変じ、
 新たな躰を得た竜達の咆哮は天地を揺るがす。

 そして。
 熊本城跡は竜がひしめく魔境となった。

●総力戦
「先の戦い、勝ちか負けかで判断するならこちらの勝ちだ。廻天竜ゼピュロスを撃破し、竜十字島へのオーブの転送を防いだのだからな」
 ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)は語る。
 しかし、ドラゴンオーブが出現した以上、竜達がむざむざと逃げ帰る理由は無く、こちらとしてもソレを放置する理由はない。
 ならば死闘が続くのも道理だろう、と。
 ドラゴンオーブは『時空の歪み』のような空間を生み出し、その内部を禍々しい力で満たそうとしている。
 その力が充ちた時、ドラゴンオーブから魔竜王の後継者となるべき、強大なドラゴンが生み出されてしまうという。
 これを阻止する為には、アストライオスと三竜を追って時空の歪みの中に突入し、ドラゴンオーブを奪取、或いは、破壊しなければならない。
 しかし、時空の歪みの周囲には、ドラゴンオーブの力で出現したと思われる『十九体の強大なドラゴン』が侵入者を阻止すべく待ち受けている。
「作戦の大まかな概要はこうだ。十九体のドラゴンを抑え、時空の歪みの内部に突入、アストライオスら強大なドラゴンと対決し、ドラゴンオーブを奪取或いは破壊する……とな」
 無茶で無謀とも思える作戦だが、成し遂げるしか道はない。
 ドラゴンと相対すると言う事は、そう言う事なのだ。
 作戦の最終目的はドラゴンオーブを奪取或いは破壊。
 まず、突入する為には、ドラゴンオーブを守る十九体のドラゴンに対して攻撃を仕掛けて、突入する隙を作る。
 その後、突入したチームが帰還する退路を守り抜く必要もあるので、十九体のドラゴンと戦うチームの支援は必ず必要だ。
 更に、先に突入した、覇空竜アストライオス、喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースへの対処もしなければならない。
 この全てに対応した上で、初めてドラゴンオーブの奪取、或いは破壊に手が届く。
「残された時間はそう多くない。自分達が何をすべきか……見極めて行動しなければ成功は得られないだろう。送り出すことしか出来ないが、お前達ならそれが出来ると、そう信じているぞ」


参加者
ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)
ルルド・コルホル(廃教会に咲くイフェイオン・e20511)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)
アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)
エストレイア・ティアクライス(オーダーメイデン・e24843)
アレックス・アストライア(煌剣の爽騎士・e25497)
中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)

■リプレイ

●東の五番目
「そう言や気になってたが……フィアールカ。始末書でも書いてて遅れたか?」
 ルルド・コルホル(廃教会に咲くイフェイオン・e20511)が、刺付き鉄球を所在なさげに玩びながら、直前に現地入りを果たしたフィアールカ・ツヴェターエヴァ(赫星拳姫・e15338)へそう問うと、
「ちーがーうーのー。別動隊だったのー」
 フィアールカは口を尖らせ、拗ねる様に反論した。
 悪友同士の、いつものやり取り。
 長閑なものだ、と互いに思うが、自チーム――東の五番目にはまだそうするだけの余裕があった。

 歪んだ空。震える大地。
 魔竜の暴威は嵐の如く吹き荒び、相対するケルベロスはその火勢に曝されながらも、突入班の、ドラゴンオーブの破壊を信じて耐え凌ぐ。
 ……そんな光景が熊本城跡の四方で始まって、二十数分。
 オーブを巡る血戦は、佳境に入ろうとしていた。
「信号弾は――無し。アビス、そちらの様子は如何?」
 ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)は光の翼を広げ、空中より戦場の東半分を窺い、
「ん。こっちも今の所は大丈夫みたいだね」
 アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)も同様に、軍用双眼鏡を覗いて西半分を監視する。
 魔竜ハート・バイターと交戦していたチームより赤の信号弾が上がり、八番目の支援班が助勢に向かってしばらく経つが、以後、救難要請は上がらない。
 うれしい誤算と言えるだろう。二十五分が近づいて、未だ健在の魔竜担当班は十九班中十一班。彼らの奮戦は、支援班の想定以上だった。
「地球の興廃此の一戦に有り……だが今は、動かざること山の如しか」
 右の眼に地獄を燈し、ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)はただ只管に時を待つ。
 もしかするともう自班の出番は無いかもしれない。だが、このまま魔竜担当班が倒れないのであれば、それが最良だ。
 現時点で待機中の支援班は二つ。しかし竜を相手に此方の戦力が余るとも思えず……不測の事態に対する備えは怠れない。
「とはいえ、見ているしかないのも歯痒いっすねぇ……」
 中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)は魔竜達を睨む。
 あれの元が侵空竜なら、先の戦いで憐が自爆を許してしまった個体もいるのだろう。
 それを思えば悔恨の念は尽ないが、だからこそ今は逸る心を自制し、冷静に行動しなければならない。
「余裕がある、か。もしかすると……」
 アレックス・アストライア(煌剣の爽騎士・e25497)はふと考察する。
 もしかすると、現状投入された戦力だけでも魔竜数匹を撃破し、首魁であるアストライオスを撃破し、オーブを入手すると言う大欲張りの『大成功』を達成することも可能だったのかもしれない。
 だがその為には緻密な連携が必要で、それを成すためには何より時間が必要だった。
 アレックスは頭を振る。ケルベロスが選んだ作戦は、揺らぎの無い、最も堅実なモノだ。
 これ以上を望めば、まず確実にどこかで何かが破綻していただろう。
「皆様! あちらを!」
 そうアレックスが結論付けたと同時、エストレイア・ティアクライス(オーダーメイデン・e24843)が時空の歪みを指差し叫んだ。
 その先に居たのは、突入班。使命を果たし、現実世界へ戻って来たのか。
 ……だが、それにしては様子がおかしい。彼らの顔に喜色は無く、むしろ蒼白で、さらに複数の怪我人を抱え、しきりに後方……時空の歪みを警戒している。
 信号弾の打ち上げを忘れるほどの何かがあった、皆がそう直感した刹那、突如として時空の歪みより発せられた膨大な『力』があらゆる戦場を塗り潰す。
『力』は異様と呼べる程に禍々しく、そう感じる以上、人にとって益の有るものではないのだろう。
 それを証明するかのように、『力』を浴びた魔竜は巨大化し――戦況は、想定外の領域へと突入した。
 そして、極めつけの、どうしようもない『想定外』が時空の歪みより現れる。
 ……覇空竜アストライオスと、喪亡竜エウロス。その躰は魔竜同様、体長が二倍弱に膨れ上がっていた。
 消耗した突入班が彼らを振り切る術は、無い。
「行きましょう、皆様! 私達に出来る事をしに!」
 エストレイアの言葉に頷き、ケルベロス達は疾駆する。
 彼らを救出できるのは、戦力を温存していた最後の二班しかいない。

●激怒
 喪亡竜が突入班に肉薄し、屠り去ろうとした刹那、彼方より二つの星が瞬いて突き刺さり、竜の動きを一瞬止めた。
「チッ、マジかよ……!」
 ルルドは思わず舌を打つ。蹴撃の感触で理解した。
『これはもう』『どうしようもない』
 仮に、現状最も技量(レベル)の高いケルベロスを八人揃えたとしても太刀打ち出来ないだろう。
 足止め以前に、少人数で相対していい敵ではない。
「だが、何としてもオレ/我達が此処で止めなければならん……!」
 雷霆を竜の体に撃ち付けたウォリアもまた悟った。以前交戦した時よりも遥かに力が増している。恐らく、その時の記憶と記録は全く当てにならない。
 地獄が迸り、ウォリアの顔面を兜の如く覆う。攻撃が命中したのは、突入班達が彼に蓄積させた傷の影響と、そもそも此方の存在が眼中に無かったからだ。
「もう大丈夫……後は任せて」
 突入班への殺気を隠さぬ喪亡竜。アビスはそれを遮るように喪亡竜の前に立つ。
 前衛にドローンの防護陣を構築し、そしてアビスは竜を見た。
 喪亡竜が纏うオーラは夜闇よりもさらに暗く。しかし首側面にある眼にもよく似た器官は陽の如く赤々と発光し、何よりその貌は憤怒に染まり、猛っていた。
 ……恐らく、突入班はオーブの破壊に成功したのだろう。仮に竜達が勝者であったなら憤怒の形相を浮かべたりはすまい。
「お見事でしたっす! 早く行って下さい、後は俺達が引き受けるっす!」
 憐は突入班を労い、無事を喜びつつも竜槌を大砲に組み替えて、喪亡竜を牽制した。
「悪い。それと――」
「助かったんだよ!」
 そして、撤退する突入班のメンバー、アルシエルとスノーエルの声を背に受け、ケルベロス達は死線を超える。
 ――また、何処かで。と、再会を願う彼らの言葉は、この血戦から生還するための太い太い命綱だ。
 だが、そんな人間の決意など喪亡竜は理解しない。竜はこちらの存在を気にも留めず、再び突入班を追い立てようと動き出す。
「シカトこいてるんじゃねえっす! 俺達が倒してやるから掛かってこいっす!」
 ならばその意思捩じってやろうと憐は竜を強く挑発し、それに続けてボクスドラゴン・フレイヤの属性を受け取ったファルゼンがライフルのトリガーに指をかける。
(「力で及ばずとも、せめて一泡噴かせてやりたいが……」)
 可能ならば、帰還した突入班のダメージを癒したいと思った。
 或いは、強化前の魔竜が相手ならばそれも出来たろうが、怒り狂う喪亡竜の眼前では命取りになりかねない。
 故に、手順を一つ、繰り上げなければならなかった。
 挑発と光線に行く手を阻まれた喪亡竜が、ようやく此方へ顔を向ける。
 オーブの破壊が『ケルベロス』と言う集団の成果なら、怒りをぶつける相手は誰でも良いと、そう気づいたのだ。
「こんなの! ただのやつ当たりだわ! 私達を殺したって、もうオーブは還ってこないのに!」
 アビスのボクスドラゴン・コキュートスの支援を受けたフィアールカは、宵が迫る空へオーロラの如く煌く粒子を散布し、前衛の超感覚を呼び覚ます。
「――アア。ソウダトモ。ヨクモヤッテクレタナ番犬共。コノ惨状、モハヤ貴様ラノ命程度デハ贖エヌ」
 ミミック・スームカのエクトプラズムを事も無げに躱しながら、喪亡竜は静かに哭いた。彼の憤怒を考えれば、酷く冷めた声音のようにも思う。
 ……フィアールカの言は、戦略的に全く正しい。仮に彼らがダモクレスなら、敗北を悟ったその瞬間に即時撤退していただろう。
 しかし。
「ダガ、疾く消滅(キ)エヨ。ケルベロス。ソノ存在、芥ノ一片スラコノ世二残̪シテハ置ケヌ!」
 ケルべロスは文字通り、竜の逆鱗に触れたのだ。
「連なれ剣よ、導きの翼となれ!」
 逆鱗に竦んでいる暇はない。エストレイアの光翼から形成した光翼剣は、星乙女の導きだ。剣はルルドに付随して、彼の命中力を引き上げる。
 既に勝利が確定した戦場。それでも自身の命を賭して拾うのは、仲間の命だ。
「ティアクライスのエストレイア、参上です! どうぞ、どのようなオーダーでも!」
「だったら。生きて還ろう。全員で……!」
 アレックスの命に応え、オウガメタル・騎士の霊帷子は光り輝く。放出された粒子は、ウイングキャット・ディケーの羽搏きに乗って後衛に巡る。
 何もこの場で喪亡竜を倒す訳では無い。数分間の足止めなら……やり様はある筈だ。
 喪亡竜の体を這う黒鎖が無限無尽に広がって、一つの慈悲なく前衛を侵す。
 陣形による減衰が意味を成していない。意識を手放してしまいたくなるほどの痛覚と撃毒が容赦無く……ケルベロス達を蝕んだ。

●喪い、亡くす
 竜の背に生える蜘蛛脚の如き骨棘が伸長し、それら全てが雲耀の速度で後衛に降り注ぐ。後衛達を斬り刻んだ骨棘は、さも当然と言わんばかりに開いた傷口から生命力を収奪する。
「ルルドさんっ!」
 スームカが寸前盾になることで、骨棘より逃れたフィアールカはルルドに回復を施そうとする。が、
「いや、良い。俺に構うな。前衛(まえ)に回せ」
 ルルドはそれを拒む。例えメディックの回復を受けようとも、次の一撃は耐えられないだろう。都合よく喪亡竜が痺れてくれる気配も無い。
 故に、毒花竜の血が染み込んだククリを握り、可能な限りその力を削ごうと喪亡竜を華舞裁つ。
「本当にいつまでもしつこいね。一体、何時になったら終わるのかな……?」
 竜達との闘争に、まるで終わりが見えてこない。
 何処かのタイミングでアストライオスを撃破できていたのなら、状況は大きく変わっていたのかも知れないが……過ぎた話だ。
 フィアールカから光の盾を受け取ったアビスは、氷る縛霊手の指先から溜めた気力を撃ちだして、エストレイアを癒す。
 ファルゼンはそんなアビスの横顔をちらりと眺めると、爆破スイッチアプリを操作し、前衛をカラフルな爆風で彩る。
 現状、全ての竜は健在だ。仮にここで仲間を逃がすために暴走しても、待ち受けているのは……。
 突入班の無事を確保し、自分達も極小の損害で退避する。その引き際を見極めなくてはならない。
「突入班の帰り道……もう少しです……もう少しだけ……!」
 己の負傷を顧みず、エストレイアは前衛にドローン群を広げた。
 攻撃に手を割くだけの時間は無い。
 ただ、誰一人倒れないようにと全能力を治癒に回す。
 そうしなければ、確実に持っていかれるだろう。
「やれやれ、全く。『東の五番目』がここまで大事になるとはな……!」
 アレックスは守護者たる慈愛の輝きで、前衛を蝕む毒を浄化する。
 愛武器である星降の剣をここで振るう機会は終ぞなく……だが、いずれすぐにやって来る。
 なんとなく、そんな予感がした。
「全てに目配りしてやるべき事をやるっす! 悔しがるなら身体を動かすっす!」
 憐が温存していたエネルギーも、喪亡竜との交戦を経てゼロに近く。
 それでも力を振り絞り、黒の両眼から青白の光線を奔らせた。
 光線は空を貫いて竜を撃ち、その巨体を僅か揺るがせる。
 たったの『僅か』。しかし、ここまで積み重ねて初めて得られた『僅か』だ。
 ウォリアはその隙を見逃さない。地獄の炎を全身に纏いながら素早く相手に喪亡竜に飛び掛り、自身が有する総ての戦闘経験と、研ぎ澄まされた野生的な直感(センス)を神火侍装【火廣金】に過積載し、本能の一撃を叩き込む。
「オレ/我達八人の終焉は、決して貴様ではなイ!」
 竜が身じろぐ。ウォリアの一撃はついに喪亡竜を一歩退かせ、
 ――だが。
「虚シイモノダ。オーブヲ喪イ、廻天竜(トモ)を亡クシ、得ラレタものがタッタコレッポッチノちからトハ」
 喪亡竜が、叫ぶ。
 天を裂き、地を揺るがし、音波だけで此方の鼓膜を破らんとするほどの大咆哮(シャウト)。
 それの意味するところは、つまり。
「モウ、良イ。滅ビヨ。小サキ者共」
 作戦の初めからここまでの時間をかけて、多くのケルベロス達が彼に付与した呪縛の大半は……。
 今、この瞬間に消し飛んだ。

●突喊
 足止め開始から四分。これ以上はもう耐え切れない。正真正銘のデッドラインだ。
 退かなければならない。だが、この喪亡竜が簡単に逃がしてくれるだろうか。
 どうすればいい。どうやって撤退すればいい。
 思考の坩堝に陥りかけたケルベロス達の眼前、四体のサーヴァントが、此方を護る様に喪亡竜へ立ちはだかる。
 ……『それ』しか道は無いだろう。だが、皮肉な話だ。四竜の元へ辿り着く為に取った戦術を、四竜から逃げるために使わなければならないとは。
「フレイア。回復だ」
 ファルゼンは『熱』のこもった掌でフレイアの背を叩き、
「コキュートス……せめて、この盾を」
 アビスは幾重にも重ねた六角形の大きな氷の盾を、コキュートスの周囲に展開した。
「スームカ! 遠慮はいらないの! むしろあの竜、吹っ飛ばしちゃって!」
 フィアールカはサーヴァント達へ花のオーラを託し、スームカはやる気十分に具現化した武装を振り回す。
「騎士たる輝きで、皆を守らんッ!」
 アレックスがヴァルキュリアの輝く翼を広げた。ディケー達を包む翼の温かな輝きが、遍く傷を癒やす。
「ごめんな。ディケー。けど、後は……任せた」
 寓話に出てくる騎士のように。ディケーが凛々しく頷くと、四体のサーヴァントは戦場を駆け抜けて、喪亡竜へ突喊する。
「オノレ! 羽虫共ガ! 我ガ憎悪ヲ遮ルカ!」
 喪亡竜の想定外……だが、体長も、戦力も、彼我の差は絶望的だ。一分、いや、数十秒持てばいい方だろう。
 サーヴァント達が紡いだ数十秒。決して無駄には出来ない。

 全力疾走するケルベロス達の真横を、喪亡竜のブレスが掠めた。
「振り返るナ! 蹴躓けばそこで終わりダ!」
 ウォリアの左眼が燃え盛り、道なき道を照らす。
 悪路を踏破し、瓦礫を行く。
「本当の本当に、生きてるだけで丸儲けって奴っすね!」
 叫びながら、憐は周囲を見る。確認する限り人影が無いのはほっとするべきか、急ぐべきか。
 ルルドは拳を強く握った。これではどちらが勝ったのかわかったものじゃない。この借りは、必ず。

 そしてケルベロス達は走り、走り、疾り……。
 エストレイアは遂に足を止め、肩を大きく上下させる。
 時間をかけて息を整え、ようやく顔をあげると――満面の笑みを浮かべた。
「お待たせ……しました!」
 死線の終わり。
 ケルベロス達は喪亡竜を振り切り、他班との合流を遂げたのだ。

作者:長谷部兼光 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月20日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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