●
日本三名城と呼ばれたかつての姿も今は無く。
侵空竜エオスポロスの自爆によって、瓦礫と化した熊本城。
その城跡に怪しく輝くドラゴンオーブが姿を現す。
「あのドラゴンオーブこそ、我らドラゴンの希望。絶対に守り抜かねばならぬ」
覇空竜アストライオスの言葉に喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースが頷きを返す。
脈打つようにして、ドラゴンオーブから漏れだす『時空の歪み』。
次第に大きくなってゆくその異空間に4匹の竜は臆することなく飛び込んでゆく。
さらに自爆した侵空竜エオスポロスのコギトエルゴスムが、ドラゴンオーブの力によって、新たに強大なドラゴンの姿を与えられ、ドラゴンオーブを護るために動き出す。
時空の歪みに消えた4竜。
そして、その前に立ち塞がる19匹の巨竜。
人と竜、互いの存亡に関わる戦いが、今始まろうとしていた――。
●
集まったケルベロス達にセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が概要を語り始める。
「熊本城で行われたドラゴンとの決戦は、辛うじて勝利する事が出来ました。
過半数の侵空竜エオスポロスの撃破に成功し、廻天竜ゼピュロスの撃破にも成功した事で、覇空竜アストライオスは出現した『魔竜王の遺産、ドラゴンオーブ』を竜十字島に転移させる事に失敗したのです」
しかしながら……と険しい表情で言い淀むセリカ。
「ドラゴンオーブは『時空の歪み』のような空間を生み出し、その内部を禍々しい力で満たそうとしています。
もし、その力が充ちた時、ドラゴンオーブから魔竜王の後継者となるべき、強大なドラゴンが生み出されてしまう事が予知されています」
場が騒然となる。
地球を滅亡させるほどの力を持った魔竜王、その『後継者』。
その誕生がどのような意味を持つのかは、簡単に想像が出来ることだった。
「これを阻止する為には、時空の歪みの中に突入し、ドラゴンオーブを奪取、或いは、破壊する必要があります。
既に時空の歪みの中には、覇空竜アストライオス、喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースの4竜が突入しており、すぐに後を追う必要があります。しかし……」
再び言い淀むセリカ。もはや悪い報告を聞くのにも慣れてしまいそうな、そんな心持ちのケルベロス達である。
「時空の歪みの周囲には、ドラゴンオーブの力で出現したと思われる『19体の強大なドラゴン』が侵入者を阻止すべく待ち受けています」
「門番ってところか……」
呟いたケルベロスの一人にセリカは頷く。
つまり、この作戦は――。
「まず19体のドラゴンを抑え、別同部隊が時空の歪みの内部に突入、アストライオスら4体のドラゴンと突入班が対決し、ドラゴンオーブを奪取或いは破壊する、という作戦になります」
まさに机上の空論といった内容である。
セリカもそれを重々理解しているのか苦々しい表情のまま――。
「危険かつ成功率の低い無謀な作戦となりますが、現状、これ以上の作戦は存在しません。
皆さんの力を、どうかお貸しください」
その後、具体的な作戦について語り始めるセリカ。
まず作戦の大目標は『ドラゴンオーブの奪取或いは破壊』。
そして、それを為すためには、まずドラゴンオーブを守る19体のドラゴンに対して攻撃を仕掛けて、時空の歪みに突入する隙を作る必要がある。
その後、突入したチームが帰還するための退路を守り抜く必要もあるので、19体のドラゴンと交戦する班の支援が必ず必要になってくるだろう。
更に、先んじて時空の歪みの中に突入した覇空竜アストライオス、喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースへの対処も必要になる。
その全てに対応した上で、ドラゴンオーブの奪取、或いは破壊を目指すことになる。
「皆さん、自分達のチームが何をすべきなのか、良く相談して、作戦を成功に導いてください」
ケルベロス一人一人の瞳を真っ直ぐに見つめるセリカ。
「危機的状況ではありますが、皆さんで力を合わせればきっと、状況を打破する大きな力となるはずです」
ケルベロス達の背を見送りながら一礼するセリカ。
「どうか、宜しくお願いします」
参加者 | |
---|---|
神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777) |
西水・祥空(クロームロータス・e01423) |
アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587) |
君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801) |
岩櫃・風太郎(閃光螺旋の紅き鞘たる猿忍・e29164) |
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591) |
ベルベット・フロー(白紙灰燼のパニッシャー・e29652) |
尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130) |
●次元の歪みへ
定刻。
茜色に染まる空の下、瓦礫の中を駆け抜けてゆくケルベロス達の姿がある。
「先行班のみんな、大丈夫かな……」
必死に走りながらもアトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587)は心配そうに表情を曇らせる。
すでに周囲では先行班と19体の巨竜の熾烈な闘いが繰り広げられている。
この戦いをゆっくりと眺めている暇など無いわけだが、走りながらも視界の隅に映るその戦況はケルベロス側のやや劣勢のように見える。
アトリの言葉に西水・祥空(クロームロータス・e01423)が静かに呟く。
「……彼等は私達を信じて魔竜を抑えてくれています。ならば私達も、彼等の力を信じましょう」
この作戦は時間との戦いだ。ドラゴンオーブへ辿り着くのが遅くなれば、それだけで仲間達を危険に晒すことになる。
「今は、脇目も振らずに走るしかない、か」
苦境の仲間達をもどかしい思いで見つめながらも、神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777)は己の務めを果たすために速度を上げてゆく。
「目標は覇空竜アストライオス……。厳しイ戦いになるコトは間違いないだろうな」
作戦内容を反芻しながら君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)。
(かつてのワタシには、誰かを守れる力が無かった……。だが今なら)
隣のビハインド『キリノ』に一瞬だけ視線を送り、瞳に静かな決意を固める眸。
「あれが『次元の歪み』で御座るな! いやはや、実に面妖ッ!」
前を走る岩櫃・風太郎(閃光螺旋の紅き鞘たる猿忍・e29164)が仲間達に振り返り、覚悟はいいかと問うような笑みを浮かべる。
応じて頷くのは相棒であるベルベット・フロー(白紙灰燼のパニッシャー・e29652)
「ここまで来たら、やるっきゃないよね!」
怖くないと言えば嘘になる。
だがそれでもベルベットは己を奮い立たせて叫ぶ。その心に呼応して噴き上がるのは地獄の炎。
「皆さん、気合い十分のようですね」
武器でもある愛用のベースギターを構えたウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)が仲間を鼓舞するために即興で弦をかき鳴らす。
そして、日本の命運を賭けた戦いを前に楽しげに微笑むのは尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)だ。
「よっしゃ、次元の歪み突入だ! 頼りにしてるぜ、皆!」
空間に空いた大穴へ一丸となって飛び込んでゆくケルベロス達。
●異空間
眩暈の様な感覚と共に、景色が一瞬で塗り替わる。
「――!」
視界にバッと広がるのは荒涼とした大地の姿。
「……ここが」
空に太陽は無く、紫色の怪しい光が薄く靄(もや)が薄ぼんやりとこの世界を浮かび上がらせている。
「次元の歪みノ内部なのか」
周囲を見渡しながら眸。
そして、祥空もこの異界の光景に感嘆交じりの吐息を一つ。
「なんとなく暗い坑道のような場所を想像していたのですが――」
靄がかかっているせいでそう遠くまでは見通せないが、ここが相当に大きな空間であることは間違いない。
「えと、動物も植物も全く見当たりませんね……」
眼前に広がる停滞と滅びの世界。
これまで色々な場所を旅してきたアトリであるが、これほどまでに生命感のない場所は初めてである。
「不気味な場所だね……月の表面にでも迷い込んだみたいだよ」
ベルベットもキョロキョロとしながら感想を漏らす。
「……この荒涼たる大地がどういった成り立ちで形成されているのか。
考察は尽きないところですが、今は先を急ぎましょう。
そう離されてはいないはずです」
ウルトレスの言葉にケルベロス達は頷くのだった。
●接敵
ケルベロス達が探索を開始すると、すぐに四竜の痕跡を発見することが出来た。
どうやら敵もドラゴンオーブの正確な位置までは掴めておらず、探索しながら進んでいるようだ。
「これなら追いつくことが出来そうだな」
皇士朗のその言葉は現実のものとなる。
探索開始から8分ほど経過したころだったか、ケルベロス達は荒野の先に四竜の姿を発見したのだ。
そして、発見はそれだけではない。
「お! なんかデカい光が見えるぜ!」
広喜の指し示した方向を見れば、強大な力を感じさせる大きな光が立ち昇っている場所があった。
恐らく、あの場所にドラゴンオーブがあるに違いない。
だが同時に、四竜たちもこの光の存在に気が付いたようである。
「ここで足止めするしか無いようで御座るな!」
マフラーを口元に寄せて『言霊銃AMATERASU』を構える風太郎。
「よ、よーし……今こそ決戦ですね。ビクトリーのB班! いきましょう!
全員で、全員で生きて帰るんですっ! 」
ドラクロワの絵画のようにビシッとライトニングロッドを掲げるアトリ。
「「「おうッ!」」」
それぞれの武器を掲げて応じるB班のケルベロス達。
次元の歪みの内部。
荒廃した大地にて、地獄の猟犬と魔竜の戦いが開始される。
……ところで、ビクトリーってBだっけ。
●戦闘開始
対覇空竜アストライオスは2班。
アトリの言葉通り、打ち合わせではこちらがB班だ。
A班と連携し、アストライオスを取り囲むケルベロス達。
「よくぞここまで追ってきたものだな……人間共よ」
ケルベロス達を睥睨しながら翼を広げるアストライオス。
覇気を漂わせるその背中からは、微塵の隙も感じることが出来ない。
「大人しく道を譲らぬのならば、此処で散るがよい!」
先手を取って動いたのはアストライオス。
横薙ぎの裂爪が中衛陣へと放たれる!
「――ッ」
常人を遥かに凌ぐケルベロス達の動体視力を以てしても、その爪を捉えることは叶わない。
恐らく回避は期待するだけ無駄というものだろう。
「なら、徹底的に耐えきるまでだ。俺はそう簡単には壊せねえぞ」
ディフェンダーとして仲間を庇う広喜が、負傷しながらも楽しげに笑う。
ふだん自分自身のことを「壊すしか能がねえ」と評価している彼であるが――。
例えば、今回のように『その力』は誰かを護るためにも使えるのかもしれない。
まぁ、『心』を得てまだ間がない彼がそのことに気が付くのは、もうしばらく時間がかかることなのかもしれないが。
「広喜、共に行こウ」
そして、チームの盾として共に並び立つのは眸。共に信頼を寄せあう二人だけあってか、その連携の練度は高い。
「バイタル測定……」
状況を即座に判断し、柔軟に行動を切り替えてゆく眸。
彼がその手袋を噛みながら引き脱がすと、眩いばかりの金色のコアエネルギーが掌に集約されてゆく。
「波長ヲ合わせる。Refined/gold-heal……承認」
パズルのピースにも似た、噛み合うような感覚。
傷ついた広喜の心拍数とコアエネルギーの波長が合い、強力な生命回復作用を引き出してゆく。
さて、B班の戦い方は『防御』を最重要視し、1分でも長くアストライオスをこの場に足止めしようとするものである。
それはつまり、ドラゴンオーブへと送り出した仲間達を信じ、耐え凌ぐ戦い。
「さて、最強のデウスエクスと名高い竜族に、おれの力がどれだけ通用するか……。試させてもらうぜ」
刀を抜き放ちながら皇士朗。
曾祖父から祖父、そして父から皇士朗へ。彼の一族に代々受け継がれてきた技の数々。
それは世代を超えて継承されてきた、修練の結晶だ。
「未来願う命の灯よ、暗黒に抗う破邪の星よ、今ここに輝け!」
正眼に構えられた刀から邪気を退ける青白い炎が立ち上がる。
『布瑠魂剣舞(フルタマノケンマイ)』。皇士朗が紋を描き出すと仲間達の傷が癒えてゆく。
「史跡・熊本城を破壊したドラゴン――」
祥空の金眼の奥に湛えられるのは静かな怒り。
自爆で木っ端微塵となった熊本城。
仮にヒールで復旧させたとしても、相応に幻想が混じり、かつてとは異なる姿になるのは避けられないだろう。
もし屋根に銀杏の花でも咲いたら目も当てられない。
「……特に指揮官である貴方は、一泡吹かせてやりたいと思っていたのですよ」
早々と巡ってきたこの機会を幸運に思いつつ、祥空の射撃が開始される。
祥空の言葉に力強く頷く風太郎。
「うむ! 熊本城を打ち壊した意趣返しでござる!」
メタリックバーストを展開し、集中力を研ぎ澄ましながら敵を狙い撃ってゆく風太郎。
そして、狙撃手として後方から敵を観察してゆくのはベルベット。
「まずは敵の能力を見極めないとだね」
きっと今回の戦いだけではドラゴンの攻勢は終わらない。この死闘を次の戦いに繋げるためにも、ベルベットは生きて作戦を成功させなくてはならない。
「大切な仲間、守りたい人達……。皆を守るために、全力をかける! それが私の戦いだから…!!」
千雷が降り注ぐ荒野の中をアトリは駆け抜ける。
その姿は、傷を負いながらも、痛みに耐えて飛び続ける渡り鳥のようである。
「旅人達への守護をあなたに……!」
深手を負った仲間達の元へと駆け寄り、『旅人達への守護』でその傷を癒してゆくアトリ。
「みんなで帰るためなら、私、何だって出来るから!」
以前は自我希薄気味であった彼女。ケルベロスになってからの様々な経験が彼女を成長させたのか。
「小賢しい人間共めが」
一方、ケルベロス達を一瞬で蹴散らすつもりであったアストライオスは、その目論見を外されて苛立つように牙を鳴らす。
「お宝を横取りするようで悪いが、こっちももう形振り構ってられんのでな」
感情を込めない淡々とした口調でウルトレス。
そもそも彼にとって、感情を表すのに『言葉』というものは遠回りが過ぎる。
もっと『直感』で感情を表現する術を、ウルトレスは知っている。
内に秘めたベースギターを激しくかき鳴らし、重低音を響かせてゆくウルトレス。
「我が作戦で多くの同胞達の命を散らせてきたのだ……こちらとて失敗は許されぬ。ここは通らせて貰うぞ」
敵も指揮官として背負うものがあるらしい。目に焼き付くほどの天雷を放ちながらアストライオス。
「譲り合うことが出来ないならば、互いに多くの言葉は必要ないだろう」
竜達にとっての希望は、人間達にとっての絶望。
二つの種族の運命を分ける表裏一体の遺産(オーブ)。
つまるところ、この戦いは正義と正義のぶつかり合いなのだ。
ゆえに『力』で決するより他はない。
「Ape&Fire一世一代の大勝負! 相棒、準備はいい?」
ベルベットの問いかけに、歌舞伎役者のように見得を切って応じる風太郎!
「心配御無用! 然らば参る!」
敵の巨体を足場としながら、怒涛の連携連打を撃ち込んでゆく風太郎とベルベット!
「拙者が――!」
「アタシ達が――!」
駆け上がってゆく先は敵の喉元。
二人で力を合わせれば、互いをこうして支え合えば、きっとドラゴンにだって負けはしない!
それを証明するためにッ! 渾身の力で撃ち抜く!
「「地獄だッ!!」」
響き渡る轟音と共にダブルアッパーカットが炸裂し、その衝撃で敵の巨体が僅かに地を離れる。
「――ッ」
瞳に怒りを滾らせながら、反撃の雷ブレスで大地を焼き尽くしてゆくアストライオス。
●崩壊
戦闘開始から数分が経過し、徐々に戦闘不能に追い込まれる者が出てくる。
「……防御に徹してなお、この圧力ですか」
「なんて強さなの……!」
額を血に染めながら祥空とアトリが呟く。
「撃破を狙って攻めを重視していれば、一瞬で崩されていたかもしれませんね」
ヒールドローンを弦のコードで操作しながらウルトレス。
回復不能ダメージの累積云々というよりは、敵の高い攻撃力がケルベロス達の回復力を大きく上回っている状況か。
それだけ敵が抜きん出た強さを持っているということだ。
「……我が身は鋼にして、不撓の盾なり」
雷撃を受けて膝をつきそうになった皇士朗だが、その意志が肉体を凌駕し寸前のところで踏みとどまる。
その脳裏に縁ある人々との思い出が浮かぶ。
(――これが走馬燈ってやつか)
布瑠魂剣舞を放ちながら皇士朗は小さく笑う。
いや、皇士朗だけではない。敵の圧倒的な実力を前に、皆が皆、満身創痍の状態である。
「危ねえッ!!」
眸に向けられた横薙ぎの爪撃を咄嗟に庇う広喜。
「ッ!」
首、胸元、腹の三カ所が一気に引き裂かれ、倒れる。
「広喜ッ!」
眸が必死に呼び掛けるが、喉を裂かれたのか広喜は荒い呼吸で応えるのみだ。
敵の攻勢はなおも続く。
「オオォオオッ!!」
その腰の爪をアンカーとして使い、身体を固定し、特大の雷ブレスを吐くアストライオス。
地を薙ぎ払う雷撃の前に、ケルベロス達が倒れてゆく――。
「く、これまでか――」
と、皆が死を覚悟しかけたその時。
「ね、ねぇ皆! あれ! あの光はもしかして――」
ベルベットが声を上げたのはドラゴンオーブ班が向かった方角から、とてつもない力が解き放たれてゆくのを見たからだ。
「この圧倒的な力の放出は……まさか、ドラゴンオーブが破壊されたというのか!」
呆然とした様子で呟くアストライオスは、やがて牙を軋ませながら怨言を絞り出す。
「竜十字島のドラゴンが渇望した希望、魔竜王の遺産が……。
おのれ、許さぬ!
魔竜王の遺産を破壊せしものに、死の罰を与えるのだ!」
慟哭と共に残りの三匹に呼びかけ、ドラゴンオーブ班を迎撃しにいこうとするアストライオス。
「させるか!」
最後の力を振り絞り、これを命懸けで阻む足止め班。
そして、力の奔流の中から逃れるように、ドラゴンオーブ班のケルベロス達が駆け寄ってくる。
「ドラゴンオーブは破壊した! 撤退だ!」
開けた退路にドラゴンオーブ班が走り込む。
足止め班もこれ以上は無理と判断し、共に撤退を開始する。
「追ってきるよッ! みんな、急いで!」
背後を確認しながらアトリが叫ぶ。
狂乱に染まるアストライオスとエウロスが背後から迫ってきている!
「オマエを置いて、行けるものカ……!」
広喜を抱えたまま走り、敵に追いつかれそうになる眸。そこにドラゴンオーブ班だったケルベロスの一人がフォローへと入る。
「余計な事やもしれぬが、わしにも手伝わさせてくれんか」
「……! すまない。頼む」
死に装束を纏うドラゴニアンの男に頷き、その肩を借りてひた走る。
そして――。
永遠のように長く感じる帰路に、ようやく終わりが見えた。
「出口だ!」
足止めに成功し、ドラゴンオーブを破壊するまでの時間を稼いだB班。
「……外の戦況はどうなったのでしょうね」
傷ついた身体の最後の力を振り絞りながら走る祥空。
「飛び込んだ先で敵が待ち構えている可能性もありますね」
あまり想像したくありませんが、前置きながらと怖いことをいうウルトレス。
「今は信じるしかないで御座るな! いざ覚悟を決めて、飛び込めッ!」
祈りながら、ケルベロス達は次元の歪みの出口へと身を躍らせるのだった。
作者:河流まお |
重傷:尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年7月20日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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