緑の喧嘩両成敗

作者:塩田多弾砲

「テメーら、わざわざオレらに負けに来るとはゴクローなこったなぁ」
 学ランを着た、ガラの悪い十数人の集団。
「ザケた事言ってんじゃねーゾ? オレらが負ける? アタマ悪すぎで笑えねーっての」
 それに対峙しているのは、同じくガラの悪い顔と姿の連中。わざと着崩したブレザー姿の彼らは、少ない語彙で相手をひたすら威嚇する。
 やがて、それぞれの集団の中から……一人づつが進み出て来た。
「おい。オレらにビビって逃げるンなら、今の内だ。ほれ、ビビりのヘタレが無理すんなって」
 学ラン側から出て来たのは、頭髪をリーゼントにしている少年。
「ヘタレ? 自分の事言ってンじゃねーぞバカが」
 そしてブレザー側からは、金髪の少年。
「気合と根性入った最強のオレらは、何があってもビビらねーし逃げもしねえ! 今からテメーらボコって、オレらのパシリにしてやっからな」
「パシリ? ああ、オメーらがオレらのパシリになってくれるのかよ。上等だ!」
 その二人は、互いにメンチを切り合い……殴り合いを始めた。
「要は、不良同士の『喧嘩』……っつーか、『決闘』ッス」
 黒瀬・ダンテが、君たちへと情景を説明していた。
 茨城県かすみがうら市。ここでは近年、若者のグループ同士での『抗争』事件が頻発していた。
 だが、たかだか悪ガキどもの小競り合いならば、警察の仕事であってケルベロスが出張る必要はない。問題なのは……この決闘者が『攻性植物』。……デウスエクスだったのだ。
「こいつら、グループ同士でお互いにケンカ売ってるわけッスが……どうもこいつら、攻性植物をクールだ、みてーに思ってるようで」
 攻性植物。この植物のデウスエクスは他の動物に寄生し、無尽蔵に繁殖する事を目的としている。
 そして、ダンテが見た不良少年二人……リーゼントと金髪の二人は、攻性植物に寄生『させていた』というのだ。
「不良どもが、刺青やらトゲ付きのアクセをファッションにしてるように、あのデウスエクスを取り込む事がカッコいい……みてーに考えてるようで。ま、こいつらの性根はともかく、その後が問題ッス」
 デウスエクスを寄生させることで、この不良たちは、とてつもない力を手に入れてしまったのだ。
 行き過ぎた力を有した彼らが、決闘だけで満足するはずはない。必ずここから……無責任に周囲を巻き込んで暴れまわり、被害が出るに違いない。
 そして、それ以上に警戒すべきは……これを繰り返していくうちに、『攻性植物で構成された、巨大集団』が形成される事。
 この決闘に勝つと、負かした相手の不良グループを傘下に収める事ができる。つまり……勝っても負けても、不良グループは人数を増やし、それだけ規模が大きくなるわけだ。
 当然、構成員の中には攻性植物が。
「このまま放置してると、決闘はあちこちで行われ……勝っても負けても、デウスエクスの強力で巨大な『組織』が出来上がっちまうッスね」
 そうなる前に、何としてでも阻止しなければならない。
「で、皆さんはこの植物と植物との決闘に乗り込み、割り込む事になるッスが……連中が決闘を止めて共闘し、皆さんに向かって来たとしたら。二体を相手にしなきゃあならないッス。最低でも一体は確実に撃破できるように、注意する必要があるッスね」
 もちろん、理想は二体とも倒してしまう事だが。しかし、このデウスエクスはかなり強力。二体で向かってこられたら、かなり苦戦するだろうとの事。そして、不良はしょせん不良であり、戦士ではない。自分が不利になったら逃走する可能性もある。
 確実に倒すためには、戦い方や立ち回りに創意工夫が必須。いかに戦うか、思案のしどころだろう。
 分断させるか、片方だけを集中攻撃するか、あえて両者を戦わせ消耗または勝負が付いたところを……という作戦もあるだろう。
「こいつらの能力ッスが、肩口から蔓草を伸ばして締め上げる、右腕をハエトリ草の様に変形して噛みつく、左腕の甲の部分に花を咲かせ、そこから光線を放つ……の、三つッスね」
 両者とも外観は多少異なるが、その三つの能力は同じだという。
「ともかく……一体だけでも確実に倒さなきゃあ、攻性植物は組織化し……大変な事になるのは確実ッス。皆さん、どうか参加をお願いするッス!」


参加者
ネル・アルトズィーベン(蒼鋼機兵・e00396)
眞山・弘幸(ドラゴニアンのブレイズキャリバー・e03070)
パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)
シャーロット・ノーラン(スノーフレーク・e04982)
草壁・渚(地球人の巫術士・e05553)
ブランネージュ・ヴァイスブリーゼ(白雪風の幻影・e17167)
アゼリア・アブセンティア(デスペラード・e17684)
天城・命(レプリカントのウィッチドクター・e18976)

■リプレイ

●ケンカ上等!
 人気のない廃工場の裏。そこはちょっとした広場になっており、周囲には放置された資材が積まれていた。
 そこに集まった、二つの集団。彼らはそれぞれ、同じ服装をしていた。
 片方は、昭和に逆行したかのような学ランにだぶだぶのズボン。
 片方は、着崩したブレザー。
 集団のそれぞれからは一人が進み出て、互いに向き合った。
 学ラン集団からは、髪をリーゼントにした不良少年。
 ブレザー集団からは、やや長く伸ばした金髪の不良少年。
 その二人を囲むようにして、周囲の不良少年たちは大きく円を描くように立った。
「……まったく」
 レプリカントの少女、ネル・アルトズィーベン(蒼鋼機兵・e00396)は、そこから少し離れた物陰に隠れながら、呆れつつため息をついていた。
 隠密気流の効果で、不良どもはこちらの存在には気が付いていない様子。そうとは知らず、彼らは互いに罵りあい、愚にも無い言葉をぶつけあっている。
 やがて、「ザケてんじゃねーゾ! 殺す!」「殺されんのはテメーらだボケが!」などという会話内容が聞こえてくると……。
 その言葉を事実に変えんとばかりに、進み出た不良少年二人の姿形が変化し始めた。
 変化はすぐに終わった。十と数秒で怪物めいたその姿に……おぞましき攻性植物をまとったその姿を、その場にいる人間に見せつけていた。
 それぞれの集団の不良少年たちは、異形となった自分たちのリーダーを見て「マジスゲー!」「超イケてるぜー!」などと賞賛の言葉を。
「うわー……悪趣味ネー」パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)のつぶやきに、シャーロット・ノーラン(スノーフレーク・e04982)が静かに相槌を打つ。
「全くだよ。ほんと、何を考えてるのかぼくにはわからないね」
 言いつつ、シャーロットは油断なく物陰から不良少年たちを見つめる。変身を終えても、彼らは中々戦わない。顔と顔を突き合わせ、互いに虚勢を張り、威嚇を続けている。
「……ったく」
 呆れたガキどもだと、眞山・弘幸(ドラゴニアンのブレイズキャリバー・e03070)も溜息を。
「はぁっ、頭悪いとしか言えないね」草壁・渚(地球人の巫術士・e05553)がそう言うのを、ブランネージュ・ヴァイスブリーゼ(白雪風の幻影・e17167)は聞いた。
 彼女の、渚の言う通り。自分から進んで化け物になりたがるなど、全く理解もできないし短慮としか思えない。その根性を叩き直してやりたいが、今はまだその時ではない。うんざりしつつ、軽薄な威嚇を続ける二人と、周囲で囃し立てる集団へと、目を向けた。
 彼女ら、ケルベロスの立案した作戦。それは『互いに戦わせ、潰しあったところで止めを刺す』。
 確実に二体の攻性植物を倒すためには、その力を半減させる必要がある。ならば、まずは両者で潰しあってもらおう。
「本当に、面倒ね」心の中でそうつぶやいた天城・命(レプリカントのウィッチドクター・e18976)は、不快な声が響くのをただ静かに受け流していた。彼女の近くに控えるウイングキャットのソラも、それに賛同するかのように小さくにゃあ……と鳴く。
 そして……不良少年同士の喧嘩が、ここに始まった。

●ケンカじゃ済まねえ!
「……ムカつく、わね」
 アゼリア・アブセンティア(デスペラード・e17684)もまた、命同様に不快感を覚えていた。
 自分の命を懸けて、アゼリアは戦ってきた。戦うに足る理由があるからこそだが、目前の愚行を見ていると『自分はこんな奴らを助けるために、命を懸けたのか』という虚しさすら覚えてしまう。
 リーゼントの学ラン側不良が蔦を伸ばし、相手の身体を締め上げた。それを金髪ブレザー側不良は、右手ハエトリ草の牙を用いて引きちぎる。
「効かねーよ、クソが!」
「テメーマジぶち殺す!」
 そして、こんな最中でも互いへの威嚇と、自己顕示だけは忘れない。わざわざ自分はスゴイとばかりに、いちいちガッツポーズやら威嚇のポーズやらを取りつつ、周囲にアピールしているのだ。
 周囲の不良少年たちも、それを見ては囃し立て、、騒ぎまくっている。
 アゼリアと命、そしてケルベロス達はそれを見て、先刻までの不快感の正体を知った。彼らは『幼稚』なのだ。
 おそらく、彼らにとって攻性植物に寄生される事は、新しいオモチャを手に入れた事と大差ない。『幼稚』ゆえに、理解せず、理解しようともしない。その無思慮さ、その愚かさは、まさに不快の極み。
『リーゼント』が、蔦を引きちぎったお返しにと、左手を構えた。その腕の甲にある花のつぼみが開くと……そこから光弾が放たれる。
 すんでのところで『金髪』は交わすも、その後ろに積まれていた鉄骨が弾かれ、崩れ落ちた。
 逃げ遅れた学ランとブレザーの数人が、脚を下敷きに。
「い、痛え! いてえよ!」
「そんなとこにいるからだ、バーカ!」
 仲間が怪我をしても、彼らは知った事かと無視。目前で面白い事が起きてるのに、マヌケの心配なんかしてられるか。
 そして……勝負がついた。
『金髪』側が蔦を伸ばし、『リーゼント』の身体をがんじがらめにしたのだ。そのまま右手のハエトリ草の牙で、『リーゼント』に噛みつく。
『リーゼント』から、悲痛の声が響いた。
「い、いてえ! 離せ! 離してくれ!」
「離すかよバーカ! そのまま死ね!」
 懇願を嘲った『金髪』は、ハエトリ草の右腕を噛みつかせたまま……『リーゼント』を地面に何度も叩き付けた。そのたびに苦痛のうめき声が聞こえてくるが、『金髪』は狂ったように笑いながらやめようとしない。
 とどめとばかりに、大きく振りかぶった。その時。
「!? ぎゃあああっ!」
『金髪』のハエトリ草が、『リーゼント』の身体を離した。
『リーゼント』の左腕の花から光弾が放たれていたのだ。それは『金髪』の顔を直撃していた。
 たまらず地面に倒れ、転がる『金髪』。
「痛え~、痛えよ~! 助けてくれ~」
 先刻の威勢の良さはどこへやら。情けない声をあげるそいつは、数分前とまるで別人。
「ああ、助けてやる……わけねえだろバーカ! このまま俺が殺してやる!」
 地面を転がる『金髪』に、リーゼントは容赦のない蹴りをくらわしていく。今度は彼の方が狂ったように哄笑していた。
 やがて、『金髪』の身体に足を載せ踏みつけつつ……『リーゼント』は両手を広げ、プロレスラーや格闘家の真似らしいポーズを決めた。
「オレって最強? 強すぎて自分がマジこええぜ」
 その様子に、学ラン集団は大はしゃぎ。そしてブレザー集団は悔しげ。
 そして、ケルベロスは不快度が最高潮に。

●実戦の実践!
「!? 誰だてめーら!」
 ネルが放ったフォートレスキャノン。それを受けた『リーゼント』は、ぐらつくが……なんとかそのまま立ち続ける。
「俺たちか? 悪ガキを叱りに来た大人だ」
 声に返答し、弘幸が反対方向から現れる。それとともにシャーロット、ブランネージュ、渚もその姿を現した。
「んだあてめえら! ぶっ殺されてえか!」
「ざけてんじゃあねーゾ!」
 周囲の不良少年たちが、『数はこちらが上』とばかりに凄む。が、ケルベロス達にとってはそんな虚勢は全く無意味。
 そして悪ガキといえど、彼らは常人。この戦いに巻き込むわけにはいかない。
「はいはーい、此処から先は立ち入り禁止ヨ♪」
 パトリシアが、キープアウトテープで彼らを隔離する。彼女の豊かなボディに目を奪われ、不良どもは立ち止まった。
「大人しくしてたらご褒美あげちゃうカモ♪」
 あげるつもりはないけどネ……と、心の中でパトリシアは付け加えた。
「てめーら、ぶっ殺す!」
 が、それを見て気に食わないとばかりに『リーゼント』は飛びかかろうとした。半ば正気を失ったかのような口調は、徐々に人間らしさを失いつつあるような咆哮へと変化しつつあった。
「!?……っ、がはっ! て、てめーっ! 何しやがった!」
 だが、すぐにその足を止めた。身体が小刻みに震え、動きがぎこちなくなる。
「……どうやら、効いてきたようだな」ネルが小声でつぶやく。彼女の言う通り……『リーゼント』はフォートレスキャノンのパラライズの効果を受け、動きが鈍くなっていた。
 その隙に、不様に横たわっていた『金髪』が立ち上がる。
「? へっ、へへ、助かったぜ」
 先刻までの威勢の良さを、どこかに置き忘れたかのように。『金髪』は、その場から逃れんと駆け出した。
 が、
「すとーっぷ! そこまでー!」
「止まりなさい!」
「逃がしません!」
 ビシ! と指先を向けたシャーロットと、携えたリボルバーをクルクルっと回しているブランネージュ、そしてライトニングロッドを手にした渚……三人のウィッチドクターの少女たちが、『金髪』の前に立ちはだかった。
「覚悟はいい? あんたの未来……撃ち抜くわ!」
 ブランネージュのそのセリフに、ひるんだ『金髪』だったが。
「どけ! このクソどもが!」
 相手は三人とも女性。弱い相手と見なした『金髪』は、すぐに威勢の良さを取り戻し、自身の蔦を伸ばした。これで叩きのめしてやる。それで逃げて、もう一度タイマン張って……。
 そんな都合のいい事を考えていた『金髪』だが、彼は自分が判断ミスした事を認めざるを得なかった。
 最初は、渚。
「『ライトニングボルト』!」
 彼女から放たれた電撃が、蛇のように宙を舞い『金髪』へと直撃する。
 痺れが全身を苛み、『金髪』は思わず立ち止まった。
 次に、ブランネージュ。ガンマンよろしくクルクル回していた拳銃を素早く構え……。
「ふふん、私の幻影を……見せてあげるわ!」
 言葉と共に、銃口から弾丸を……『連射』した。
「『幻影のファニングショット』!」
 圧倒的リロード、圧倒的連続銃撃。圧倒的スピードによる、圧倒的速射。
 ただの小競り合いだけで、自分を強者だと思い込んでいるに過ぎない『金髪』は、その攻撃の前に蔦を全て撃ち抜かれ……自分の虚勢の心すらも撃ち抜かれた。
 こんなの……勝てるわけが……ねえ! 勝てる気が、しねえ!
 パニックに陥った彼は、右手のハエトリ草を展開し、振り回す。が、
「あつあつのお灸だーっ! くらえー!」
 シャーロットの次なる攻撃……『ブレイズクラッシュ』の炎の一撃が放たれた。
 高熱の炎の舌に、全身をくまなく舐めつくされ……『金髪』は悟った。自分が完全に敗北した事を。

●弱すぎんだよ!
 いとも簡単に『金髪』が倒されたのを見て、『リーゼント』は多少の戸惑いを覚えたかのように周囲を見回していた。
「ざ、ザケんな! 殺すぞ!」
 貧困な語彙で凄み、彼は左腕を構える。花が開き……光線を放つ体勢を整える。
 が、後方からの銃撃が、彼を襲った。肩口に激痛が走り、『リーゼント』は困惑の表情を浮かべた。
 視線の先には、バスターライフルを手にしたアゼリアの姿が。
「バカにつける薬は無い……って言うけれど、あるなら欲しいところだわ」
 そう言いつつ、仲間や敵方の不良たちへと一瞥している彼女の姿が見えた。
「って、てめえ!……ぐわっ!」
 改めて花から光線を放とうとするも、また別の方向から電撃が。
「…………」
 無口なるレプリカント、命の放ったライトニングボルト。その直撃を受け、更なる痛みが『リーゼント』の身体に刻み込まれる。
 それは、彼のプライドをも大いに傷つけた。
「チクショー……どいつもこいつもザケやがって! 殺す!」
 いつものように、声を張り上げた『リーゼント』だが。
「……『殺す』しか言えねぇのか、テメーは」
 目前に進み出た弘幸の姿を認め、息を飲んだ。
 その言葉は、静かに『リーゼント』に響いた。声を張り上げているわけではないのに……迫力がまるで違う。怒りを腹に貯めたかのようなドスの効いた口調は、まるで背骨に氷を詰められたかのように、『ゾッ』とする何か、凄味のある何かがあった。凄味を感じさせるだけの何かを。
「う、う、うるせえ! テメーなんかオレがボコってやる!」
 その凄味に恐怖を覚えた『リーゼント』は、先刻の喧嘩同様に蔦を伸ばした。それでがんじがらめにして……と考えての事だが、そんなお粗末な攻撃を、弘幸は軽く回避する。
「ひっ……!」
『リーゼント』は気付いた。距離を取っていた……と思っていたら、いつの間にか瞬間移動したかのように、懐へと接近された事に。
「避けられるもんなら……」
 そして、その左足が、紅蓮の業火に包まれている事も見た。
「……避けてみな」
 それを聞き、右腕のハエトリ草の牙で受け止め砕こうとした『リーゼント』だが。
 炎を纏いし蹴撃の前に、『リーゼント』はハエトリ草の顎を砕かれ、右腕もへし折られ、その全身に打撃と火炎とを叩き付けられ……放物線を描いて地面に叩き伏せられた。
『零距離業火』をまともに受け、不良少年はもう動けなかった。そして……思い知らされた。
 自分たちが今までやって来た事など、ただの遊びにすぎない事だと。

●反省しろ!
「どうやら、終わったようね」
 命は安堵しつつ、面倒くさそうにつぶやいた。
 彼女の視線の先には、力なく横たわる悪ガキ二人。
「悪く思うな。……過ぎた力は、身を亡ぼす事になる」
 ネルは、横たわっている『リーゼント』と『金髪』に言い放っていた。二人ともぼろぼろではあったが、かろうじて生きている。シャーロットのメディカルレインが、二人の生命をかろうじてつなぎとめていたのだ。
「宿主チャーン、生きてるゥ?」
「ま、怪我治した後で、いい風が吹くといいわね」
 パトリシアとブランネージュが声をかけるが、それに答えるだけの気力は二人には残って無さげ。おそらくは、今後悪さをする気力も潰えただろう。
 そして、他の悪ガキたち。彼らは全員がひとところに集められ、説教されていた。
「ホント信じられないわ、敵に手を貸す奴等がいるなんて……って、聞いてる!?」
 そんな彼らへと、アゼリアは説教していた。彼女の怒気と殺気の前に、全員が怯えきっている。
「ええ。流石にこれは、擁護のしようがありません。どちらも頭が悪い……としか言いようが無いね。頭が悪いから、こんな事をしてしまったんだろうけど」と、渚も付け加える。
 渚に続き、弘幸も彼らへと言葉をかけた。
「おい。お前ら……他に攻性植物を持っている奴はいないか?」
「い、いえ。持ってないッス」
 全員が、同じ返答。
「それじゃ、今回の攻性植物はどこで手に入れたの?」
 次はブランネージュが問う。
「わ、わかんねえッス。偶然生えてたのを見つけた、とかで」
 これもまた、同じ返答。はっきりしない答えではあったが……少なくとも、今回の暴走は止められた。
 この後、たっぷりと悪ガキたちにお灸をすえたケルベロスたちは……その場を後に。
『二度としない』という彼らの言葉を、信じたいと思うケルベロスたちだった。

作者:塩田多弾砲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年11月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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