仮面少女の挑戦

作者:雷紋寺音弥

●忌祭への誘い
 長雨の時期を終え、夏の気配が深くなって行く季節。
 少しばかり早い夏祭りだろうか。山の麓の街からは、どこからか囃子の音が聞こえてくる。その音色に誘われるようにして、黒須・レイン(海賊少女・e15710)が小路に足を踏み入れた時だった。
「……ん? 妙だな、風が……?」
 突然、寒戻りしたかのような冷たい風がザッと吹き、周囲の音が一瞬にして止んだ。訝しく思い、大通りに出てみれば、確かに屋台はずらりと並んでいたのだが。
「誰も……いない?」
 気が付くと、そこには誰もいなかった。店の商品まで置いて、いったい人々はどこへ行ってしまったのか。そう、レインが考えた瞬間、彼女の足元に1枚の仮面が転がって来た。
「なんだ、これは? ……仮面、か?」
 それは、どこにでもありそうな、縁日の屋台で売られている玩具の仮面。それが転がって来た場所へと顔を向ければ、そこに立っていたのは一人の少女。
「……っ! 貴様は!?」
 外観こそ人間に近いが、しかし目の前の存在がデウスエクスであることを、レインは直感的に察知した。そして、今のこの状況が、目の前の少女によって作り出されたということも。
「私は仮面職人……。あなたには……私の仮面は勿体ない……」
 残念だが、力無き者は、ここで死ね。それだけ言って、仮面職人を名乗る少女は、問答無用でレインに襲いかかって来た。

●試しの仮面
「召集に応じてくれ、感謝する。夏祭りを控えた東北の街で、黒須・レインが宿敵であるデウスエクスの襲撃を受けることが予知された。なんとか連絡を取ろうとしたんだが……生憎、タイミングが擦れ違ってしまったようだ」
 このままでは、遠からずレインは敗北する。そうなる前に、なんとしても彼女を救出して欲しいと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、自らの垣間見た予知について語り始めた。
「レインを襲うのは、クリーティエという螺旋忍軍の女だ。一見して、地球人の少女にしか見えない外見をしているが……その力は、紛れもないデウスエクスものだから油断するなよ」
 そんな彼女は、仮面職人の二つ名を持つ螺旋忍軍。故に、攻撃にも多種多様な仮面を用い、おまけに螺旋忍軍らしく俊敏な動きを得意とする。
「敵の武器は、鬼神と妖狐、それに弁天といった3種類の仮面だな。この仮面を被ることで、自らの身体に様々な力を降臨させて、そのまま攻撃に利用して来るぞ」
 鬼の面を被れば凄まじい膂力を発揮してあらゆる加護を打ち砕き、妖狐の面を被れば怪しげな妖術で相手を惑わす。そして、弁天の面を被れば様々な災いを浄化した上で、自らの傷も回復させる。
 俊敏な動きと相俟って、なかなか戦い難い相手だろう。動きを封じたと思っても、一瞬にして体勢を整えられてしまう可能性もある。状況を引っくり返されても慌てずに対処し、適格に相手の動きを捉えるための術が要求されるのは言うまでもない。
「今から行けば、レインが敵に襲撃される瞬間に介入することができる。余計な邪魔が入るのを嫌ってか、敵が先に街の人間を追い払っているみたいだからな。合流したら、後は戦闘だけに集中してくれて構わない」
 敵の狙いが何であれ、ここでレインを死なせるわけにも行かない。なんとしても彼女を救い出し、仮面職人の野望を打ち砕いて欲しい。
 そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)
アイリス・フィリス(アイリスシールド・e02148)
アイビー・サオトメ(アグリッピナ・e03636)
ヴォイド・フェイス(ボトムスアウトロー・e05857)
ガロンド・エクシャメル(災禍喚ぶ呪いの黄金・e09925)
白銀・ミリア(白銀の鉄の塊・e11509)
黒須・レイン(海賊少女・e15710)
カンナ・プティブラン(男装妖剣士・e46592)

■リプレイ

●一之巻・鬼神
 夕暮れ時の街中を、生温かい風が吹き抜ける。無人の出店に置かれた風車がカタカタと音を立て、風鈴の音色が物悲しげに鳴り響く。
「あなたには……力を与える価値はない……。だから……欠陥品は、早く消えて……」
 それだけ言って、仮面職人クリーティエは黒須・レイン(海賊少女・e15710)へと向かい歩を進める。自ら作った鬼の面を取り出し被った瞬間、その外見からは想像できない程の力で、レインの身体を殴り飛ばした。
「……見苦しい。さっさと死ねば、苦しまないで済むのに……」
 盛大な音を立てて屋台に突っ込みながらも立ち上がろうとするレインへ、クリーティエは侮蔑するような視線を送る。その言葉通り、二人の間にある力の差は圧倒的。とてもではないが、1対1で勝てるような相手ではないが。
「力無き者は死ね、か。……ならば試して見るといい! 私の力をな!」
 それでも、ここで黙って殺されるわけにはいかないと、レインは髑髏の仮面を取り出し立ち上がった。
 まともに戦って勝てないことは解っている。しかし、一矢も報いぬまま殺される程、軟な世界で生きて来たわけでもない。
「お前は私がここで倒す。刺し違えてもな。仮面屋と同じ所に行くといい……!」
 どうせ最後になるのであれば、出し惜しみはなしだ。最悪、自分が自分でなくなろうとも構わない。そう、心に決めて、飛び出そうとするレインだったが。
「……っ!?」
「戦う君は美しいってカ? Ah、マスクだけっどもそうじゃネェ? ステッキーな海賊ガールのために俺様参上!」
 突然、上空から降り注ぐガラクタの嵐。石ころに鉄屑、そして空薬莢や拳銃のパーツだろうか。何やら、やたら物騒な部品を礫代わりに撒き散らし、降り立ったのはヴォイド・フェイス(ボトムスアウトロー・e05857)。
 とりあえず、その辺にあるものを全て投げ付けてやろう。威力は二の次、要は見た目だ。あまりに突拍子もない乱入の仕方に、さすがのクリーティエもしばし言葉を失っていた。
「……誰だか知らないけど……不愉快」
 顔に着いた泥のようなものを拭いながら、ようやくそれだけ言ってヴォイドを睨み付ける。だが、救援に駆け付けたのは彼だけではない。クリーティエが新たな仮面を装着するよりも早く、今度は天より伸びる一筋の虹に乗って、アイリス・フィリス(アイリスシールド・e02148)が強烈な蹴りを放った。
「そこまでよ! 私の妹を狙ったことを、後悔させてあげる!」
「……新手、ですか? しかし……」
 もっとも、今度はクリーティエも、そう簡単に奇襲を許すほど甘くはなかった。
 虹の降り立つ場所を察知し、間髪入れずに攻撃を避ける。なるほど、さすがは俊敏さに定評のある螺旋忍軍。これはなかなか面倒な相手だが、これで終わるはずもなく。
「理屈がどうだろうが、レインさんに危害が及ぶなら、排除します」
 炸裂する竜砲弾。屋根の上にてハンマーの柄を握り締め、アイビー・サオトメ(アグリッピナ・e03636)の一撃が容赦なく敵を撃つ。
「何やってんだ、落ち着けよレイン。周り見てみろ……あたしが、みんながいる! 一人で抱え込むんじゃねぇよ!」
「おわっ!? ミリア……みんな……?」
 唐突に背中を叩かれ、レインは思わず後ろを振り返った。そこにいたのは白銀・ミリア(白銀の鉄の塊・e11509)と、そして見知った顔の仲間達。
「そうだな……。みんなで、こいつを倒す!」
 髑髏の仮面をしまい、レインは先程まで自分が抱いていた覚悟を胸の内に納めた。
 ここは自分の死に場所ではない。忌むべき力に頼らずとも、自分にはこんなに素晴らしい仲間達がいるではないか。
 ならば、その力を以て運命に抗おう。誰かから与えられた力ではなく、自ら紡いで掴みとった、最高にして最強の力を以て。
「……友情、とでも言うの? ……下らない。力を持たない者が群れたところで、それは所詮、傷を舐め合う負け犬と同じ……」
 爆風の中から現れたクリーティエが、さも面倒臭そうにして埃を払った。やはり、お前は失格だ。真の力を授かる資格などない。そう、何気なしに呟くクリーティエだったが、それはこの場に集まったケルベロス達の想いを踏み躙り、怒りの感情を抱かせるのに十分過ぎるものだった。
「仮面……仮面、ねぇ。その辺のお祭りだったら、ひとつくらい買ってもよかったところだが」
 残念ながら、今宵この場では踏み倒すしかなさそうだ。それだけ言って、ガロンド・エクシャメル(災禍喚ぶ呪いの黄金・e09925)は相棒のミミック、アドウィクスをけしかけると、自らもまた気弾を放ち。
「……その観劇をお手伝い、でーすよ♪」
 敵が他の仲間達に意識を向けている隙に、メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)は自らの五感を徹底的に研ぎ澄ませて強化する。
「踏み倒す……? 私の仮面に相応しくない者は……皆、纏めて消えればいい……」
 それでも、あくまで落ち着いた態度を崩さないクリーティエだったが、その言葉は完全にカンナ・プティブラン(男装妖剣士・e46592)の琴線に触れた。
「消えればいいだって!? キミ……本気で言っているのかい?」
 残念ながら、相手からの返事はない。しかし、命の価値を容易く見積もるデウスエクスの所業は、カンナにとって許し難いものに違いはなく。
 本当に恐ろしいもの。それは自分の死ではなく、他人の死。大切な人が帰らず、戻らず……永遠に居なくなる恐怖に怯えながら待ち続ける。その不安は、どれだけ強敵との戦いに打ち勝ち、死線を潜り抜けた者であっても変わらないはず。
「それなのに、軽々しく人の命を奪おうとする、お前達デウスエクスをボクは許さない! 行くよ笹丸友成!」
 妖刀に秘められし力を解放し、カンナはそれをレインへと分け与えた。しかし、果たしてそんなケルベロス達の姿を見ても、クリーティエは何ら取り乱す素振りさえ見せず。
「……残念だけど……あなた達の行動、全て無駄……」
 徐に弁天の仮面を取り出して被れば、彼女の傷が瞬く間に塞がって行く。それだけでなく、動きを封じるための楔からも抜け出して、完全に体勢を立て直していた。
「あなた達は……不愉快な存在……。だから……全員纏めて、殺してあげる……」
「上等だ! 本気になった私達の力、貴様にも見せてやる!」
 対峙するレインとクリーティエ。仮面職人と海賊船長。誰もいない縁日の通りで、命を賭した忌むべき祭りが幕を開けた。

●ニ乃巻・弁天
 夕暮れ時の街中にて、繰り広げられる激しい攻防。だが、数多の足止めを食らってもなお、クリーティエの動きは未だ鈍る兆しさえ見せない。
「言ったはず……そういうのは、全部無駄だって……」
 弁天の仮面の隙間から、冷たい瞳が覗いていた。どれだけ技を重ねようと、狡猾なる仮面職人は、一瞬にして体勢を整える術を持っている。少しばかり戦いが長引いたところで、徐々に弱って行くような相手ではないのだ。
「そっちに行ったよ、レインちゃん!」
「このっ! ちょこまか動くな!」
 アイリスとレインが左右から挟み込む形で槍を繰り出すも、クリーティエはそれを軽々と避け、あまつさえ槍の矛先に爪先で乗ってみせた。
「あちゃ~、しまったな。こんなことなら、もっとレインをフォローできる技を用意しておくんだったぜ」
 事前の準備が甘かったことに、ミリアが思わず頭をかきながら黒き太陽を具現化させる。狙撃手である自分はクリーティエを狙うのに不足はないが、それだけで勝とうというのは、いささか無謀だ。
 ならば、せめて動きを止めんと奮闘するも、拡散する黒太陽の力では、敵に与えられるダメージが少なすぎる。これでは、再び弁天の仮面を持ち出されたが最後、容易に挽回されてしまう。
「慌てないで……。全部の攻撃が当たらないわけじゃない。落ち着いて行こう」
 それでも、ここで取り乱せば敵の思う壺だと、カンナは冷静に仕切り直しを試みる。その口から紡がれるのは、希望の為に走り続ける者達の歌。何度倒れても諦めない、不屈の闘志を呼び覚ます勝利への凱歌。
「さて……そろそろ攻めに転じるか。いつまでも、下らない命の削り合いをしているわけには、いかないからねぇ」
 回復は十分。そう判断し、ガロンドは自らの身体を覆う気を、両手の平へと集中させた。アドウィクスのばら撒く偽物の財宝を囮に気弾を放てば、それは奇妙な軌跡を描いて、どこまでも敵を追撃し。
「……っ! 曲がった……」
 空高く跳躍して避けようとしたクリーティエに、真下から追い縋って叩き落す。いかに彼女が素早いとはいえ、そのスピードを超える技で攻撃できれば勝機はある。
「Hey、スマイルレディ! 準備はいいか?」
「合わせるってこと? 了解ですよ♪」
 無防備なまま落下してくるクリーティエ目掛け、駆け出すヴォイドとメリーナの二人。そのまま大地を蹴って跳び上がれば、タイミングを合わせて流星の如き蹴りをお見舞いし。
「まだです……。ついでに、これも持って行くといいですよ」
 屋台に突っ込んだクリーティエ目掛け、アイビーが紅蓮の蹴りにて三日月状の炎を放つ。
「Oh、美味しいとこ、持ってくじゃネェの! 可愛い顔してダーティだな、Boy!」
「ありがとうございます。誉め言葉として、受け取っておきますよ」
 ヴォイドの軽口に苦笑するアイビー。見れば、クリーティエが潰れた屋台の残骸を払い除けて立ち上がろうとしていたが、その様子からは微かな消耗が見て取れた。
「……許さない。……全て……殺す……」
 その身を業火に焼かれつつも、未だ戦う意思を失わない仮面職人。しかし、そんな彼女の瞳からは、先程の余裕が感じられない。
 下らない消耗戦は、ここで終わりだ。これから先は、殺すか殺されるかの一発勝負。
 誰も言葉にはしなかったが、それでもケルベロス達は戦場に流れる空気から、ここが戦いの正念場だと察していた。

●参乃巻・妖狐
 駿足を誇る仮面職人との戦いは、佳境へと突入していた。
 弁天の面の力によって、体勢を整えるクリーティエ。しかし、どれだけ回復を繰り返そうと、癒し切れぬ傷は蓄積して行く。加えて、ケルベロス達の布陣は元より命中率を重視した狙撃手主体。避けようにも避けられぬ攻撃を重ねることで、徐々にだが確実に相手を追い詰めていた。
「これ以上は……やらせない……」
 ならば、その狙撃手の力を奪ってやろうと、クリーティエは妖狐の面を被り幻惑の術を繰り出してくる。だが、後方に立つ者達を狙ったそれは、立ちはだかるアイリスとガロンド、そしてアドウィクスが壁となって受け止めた。
「敵が分裂して見える? なるほど……これも仮面の見せる幻覚かねぇ?」
 正に、狐に化かされるが如しだと納得しつつも、ガロンドはすぐさま花弁のオーラを散布することで幻覚を振り払う。その隙に、アドウィクスが敵の脚に噛り付いたところで、続けて仕掛けたのはヴォイドだった。
「Hey、仮面ガール! ……えーっと、こういう時なんつうんだったっけ……。あぁ、そうそう。『君、良い体してるね。フェイス軍団に入らないか?』だっけ?」
 殆どふざけているとしか思えない口調で、しかし放たれるのは強烈な毒電波。哀れ、その直撃を浴びてしまったクリーティエの姿は、ヴォイドと同じ覆面全身タイツの格好に。
「……っ! な、なに……これ……!?」
 さすがにこれは、百戦錬磨の螺旋忍軍とて衝撃にしばし固まる以外になかった。しかも、慌てて仮面を取り出してみれば、なぜか弁天はヒョットコに、鬼神は天狗に代わっている始末。
「無様ですね。いっそのこと、その姿のまま逝ってしまわれたらどうですか?」
 高所からの跳び蹴りで相手の懐に飛び込み、アイビーはクリーティエの身体を蹴り飛ばす。その懐から転がる仮面に手を伸ばすクリーティエだったが、アイビーはそれさえも真上から踏み抜いた。
「そ、そんな……。願いを叶える……私の仮面が……」
「仮面が願いを叶える? 分かってるじゃないですか、その通ーりっ♪」
 信じられない。そんな声を漏らすクリーティエに、メリーナは敢えて笑顔で返す。その口から紡がれるのは、世界を愛する者達を癒す歌。
 欲しい景色や願う未来。今の自分で届かぬのなら、敢えて偽る者達がいる。
 だが、それは間違った選択ではない。なぜならそれは、多くの人が『頑張る』と呼ぶものだから。そして、必要とあらばその選択を、今のレインはきっとできるはずなのだとも。
「ここで諦めるわけには行かないよ。笹丸友成、もう一度だけ、力を貸して」
「みなさん、闘いというものは臆した者に負けがおとずれます。だから、ファイトー! です!!」
 カンナが、そしてアイリスが、それぞれにレインへと力を送る。さすがに拙いと察し、その場から離れようとするクリーティエだったが、そこはミリアがさせなかった。
「逃げられると思ったのか? 甘いぜ!」
 大地をも穿つ強烈な一撃が、クリーティエの背後から襲いかかる。衝撃に相手が膝を突いたところで、ミリアは改めてレインに叫んだ。
「今だ、レイン! よく狙えよ!」
「ああ、任せろ!」
 今度という今度は外さない。巨大な十字架を携えて、レインはそれをクリーティエに叩きつけ。
「私は弱い、けどこの力がある! 仮面を使って孤独に強くなるよりも、こちらの方が百倍いい!」
 そのまま先端を突き付けて、至近距離から砲弾を叩き込んだ。
「眠れ。十字架の下に」
 瞬間、巻き起こる大爆発。後に残されたのは巨大な窪みと、そこに突き刺さるレインの十字架だけだった。

●四乃巻・髑髏
 戦いの終わった街中は、いつしか活気を取り戻していた。
 ヒールの終わった縁日にて、人々は何事もなかったかのように屋台での商売を続けている。まるで、今しがたの戦いは、夏の夕闇が見せた幻であったかのように。
「折角のお祭りだ。林檎飴や綿あめを買って帰るのもよさそうだね」
「それじゃ、私はモロコシ買ってきますね。人数分の確保はお任せあれ♪」
 カンナの問いに、メリーナが満面の笑みで返して答える。そんな中、アイリスは戦いが終わってもなお、レインの身を人一倍案じていた。
「大丈夫、レインちゃん? どこか怪我してない?」
「にょわっ!? お姉ちゃん、だ、大丈夫だってば!」
 心配する姉を振り払い、レインは改めて髑髏の仮面を取り出した。クリーティエが倒された以上、これは彼女の遺品になるのだろうが。
「あ、それはそれとして、これは貰っていくのだぞ!」
 貰えるものは、貰っておくのが海賊流。もっとも、今となってはこの仮面も、単なる戦利品に過ぎないだろう。
 願いを叶える謎の仮面。だが、欲しいものは自らの手で、いただいて行くのが海賊だ。そんなことを思いつつ、レインは髑髏の仮面を静かに懐へと納めた。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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