祈りの天燈

作者:小鳥遊彩羽

●祈りの天燈
「皆さんは、『スカイランタン』をご存知ですか?」
 竹の棒と紙袋で作られた熱気球の一種で、海外では行事やお祭りの一環として、願い事を書いて空に飛ばす風習がある。
 近年では日本でも同様のイベントが各地で開催されており、フィエルテ・プリエール(祈りの花・en0046)が切り出したのも、とあるスカイランタンのお祭りについての話だった。
「なるほど、つまりフィエルテちゃんは、そのお祭りが気になると」
 トキサ・ツキシロ(蒼昊のヘリオライダー・en0055)が楽しげに首を傾げるのに、フィエルテははい、と小さく頷いて。
「今度の日曜日……7月8日に、開催されるんだそうです。それで、宜しければ皆さんとも、ご一緒出来たらと思いまして」
 それから、少しだけ迷うような間を挟んで。その日は私の誕生日なんです、と、小さな声で付け加えた。

 スカイランタン祭りが開催されるのは、とある小さな町の海辺だ。
 七夕の短冊に願いを書いて笹に吊るすように、ランタンに願いや想いを綴って空へ飛ばす。もちろん、必ずしも書く必要はなく、ただ想いを託して空へ放つだけでも良い。
 無数の灯りが夜空を彩る様はとても幻想的で、まるで、ランタンの天の川のようだと言う人もいるのだとか。
 無事に空へと送り出したら、そのまま砂浜を辿り、少し離れた場所から眺めるのも良いだろう。
「たくさんの想いを抱いて空を舞う灯りは、きっと、とても美しいのでしょうね」
 フィエルテはそう呟いて、ほんの少しばかり照れくさそうにはにかんでみせた。


■リプレイ

 暗闇の中、呼吸をするように瞬く光の群れはまるで生命の鼓動のよう。
 無数の灯が天へ昇るのをエトヴァは瞬きもせずに見上げながら、己に熱を灯してくれた人達を想い、彼らの無事を祈った。
 内容は秘密だと言いながら、穣は青い睡蓮の花に葦手の文字で願いを散らす。
 巌は『今日集まった旧縁も新しい縁も大事に、これからも楽しく穏やかな日々が続きますように』とカランコエに書き添えて。
 皆と一緒にこうしているだけで、願いは叶っているようなもの。ゆえにウォーレンは薄紅色の花びらに『みんな大好き』の想いを込める。
『和を以て貴しとなす。色々な人と仲良くできますように』
 改めて文字に起こせば、ミンは何となく照れくさくなり。そしてイストテーブルは朝顔の花に『カワイイ子と出会えますように!』と綴って満面の笑み。
 この時が続きますように、今が終わらないように。そしておもう人と共にあれますように――。皆との縁にそう願い、春臣はもう一つの小さなランタンにタンポポを描いて自身の花と願いを結ぶ。
『今後もこの穏やかな日々を皆と過ごせるように』
 そう願った陽治は、よく似た皆の願いに自分達らしいと笑う。
(「……このままずっと皆と一緒にいたい、なんて」)
 願いを書くのは面映ゆく、シグリットはそっと心に留めながら皆と共にたくさんの花が咲いたランタンを見送り。
「フィエルテも皆も素敵な日になった?」
 イストテーブルが問う声に、皆も娘も頷いて。
 大切な仲間達と過ごす、ありふれた日常のひととき。
 きっとこういう時間こそが宝なのだろうと思いながら、穣はランタンが空を昇っていく光景に少しだけ熱くなった目頭を人知れず押さえた。
「絶対叶うようにしっかり書かなくちゃ!」
 前にランタンを飛ばしたことがあると得意げなマイヤは、『これからも皆で一緒に沢山楽しい時間を過ごせますように』と大きく書きつける。
 一方のキアラは『旅団内安全』――家内安全があるならこれもいいだろうと。
 セレスは二人の仲睦まじい様子に微笑みながらも、少し考え『妹達が幸せに過ごせますように』と綴る。
「じゃあ、3・2・1で離すよ? いい?」
 合図と同時、三つのランタンが空へ舞い上がった。
『あなたにたくさんの幸せが訪れますように』
 自身の年齢ゆえ、一人であればルリの願いは一つしかなかった。
 しかし、今日はレカと二人だ。ゆえに、ルリはいつもと違う願いを形にした。
 一方のレカも、ルリと他愛ない話の花を綻ばせる内に浮かんだ願いを書き記す。
『心優しいご友人に、多くの幸せが訪れますように』
 どちらも大切な人を想う気持ちであり、同じ願いに、ルリとレカは笑みを綻ばせた。
『私の妹弟たちが今年も無事に過ごせますように』
 妹弟も隣にいる萌花も、如月にとっては大切な妹分。
 彼女らしい願いと似顔絵に萌花はつい笑みを零し、隣に『如月ちゃんの願いが叶いますように』と書き添えた。
「……もぅ、もっと欲張っても良かったのに。だけど……ありがと、萌花ちゃん」
 くっついてくる如月を抱き寄せ、萌花は二人の願いを乗せたランタンを空へ送り出す。
(「――これからもあたしの最愛が、たくさんのことを願いますように」)

 ランタンの面は四つ。なので願いを四つ書けるのではと真剣に思案しながら、アメージングはペイントでデコレーションしたランタンに『日々是創造』と『みんなとずっといっしょに』と書きつける。
 そのカラフルさに微笑みながら、颯音も『皆が息災でありますように』と記して相棒の花竜ロゼの花と飾り紐を据え、更にロゼからお墨付きの肉球スタンプを頂戴した。
 暫し迷ってから、アミルは『すきな人達が幸せになりますよう』と綴って満足気に頷く。
(「この先も、素敵な縁とめぐりあえますように」)
 白黒は想いを乗せて、そっとランタンを送り出す。
 縁を繋いだ仲間達と共に在るこのひとときがそれだけでもう幸福で、マリアムはなかなか願いを紡げずにいたけれど。
「……自分も欲張りな願い、決めました」
 皆が灯す願いを見て『大切な人々皆に、砂の様な静穏の時を』と書き記すと、少量の砂とたくさんの想いを込めて空へ託した。
 マリアムの想いと皆の願いに、帷も『友人達の願いが叶いますよう』と綴り空へ放つ。
「ふふ、なんだかみんなして優しい願い事ばっかり」
「他の人のために祈る、とても優しいお願い。すてきだと思います」
 微笑むアミルにアメージングもこくこくと頷いてから、『みんな大好き』『この幸せがいつまでも』と皆には内緒で書き加え。
 空へ至る天燈に倣って指を組み、颯音は静かにその道筋に想いを馳せた。
「見てくださいませ、フィエルテ様! 空に舞うランタンがまるで星のよう!」
 美しい景色にはしゃぐシエルの隣で、フィエルテも目を輝かせ。
「さあ、屋台もご一緒に見て回りませんか? 今日はわたくしに奢らせてくださいませ! そして、また半分こしましょうね」
「はいっ、では、たくさん美味しいもの、見つけましょうねっ」
(「――これからもフィエルテ様と一緒に、」)
 楽しく美味しい想い出がたくさんつくれますように。
「君は、なにか願い事はないの?」
「んー、俺の周りのヤツらが平和に暮らせますように。その中には勿論、シュクリも入ってるぜ」
 ダイナの願いに宿利は瞬いてから嬉しそうに微笑み、ありがとうと返す。
「なあ、そっちも教えてくれるよな?」
「私はね……私の大切な人たちと、一日でも長く縁が続いて、その皆が楽しい日々を過ごせるように。勿論……君もね、ダイナくん」
 星を掴むように空へ伸ばした手は届かないけれど。
 小さな幸せを拾い上げることくらいは、きっと出来るだろうから。
『私の大切な人達が幸せでありますように』
 これは私自身の願いだと微笑む志苑。
「あんた自身のことは願わないのか?」
 すると蓮は『蓮水の幸せ』と記し、志苑が口を開くより先に手放した。
「私の、願い……」
 たくさんの想いを乗せた幻想的な光。
 それを共に見上げる横顔をそっと見遣り、志苑は少しだけ蓮の傍に寄る。
(「ほんの少しだけ、今だけ、お傍へ」)
 ささやかなぬくもりを感じながら、蓮は空に灯る光を見つめる。
(「……俺の本当の願いなど、きっと」)
 それは形になることなく、胸の奥底に仕舞い込まれた。

 満天の空に舞う、幻想的な光の粒。
 二人で送り出したランタンも、一つの光となって空を昇っていく。
 エヴァンジェリンが願うのは、友人や家族の――大切な人達の、幸福。
「……届く、かな」
「ええ、きっと」
 ぽつりと零れた呟きに、フィエルテは確りと頷いた。
 空に吸い込まれてゆく天燈に、煌介はかつて救えなかった少女の魂の安寧を祈り、ヌリアは心の迷いや惑いが克服出来るよう祈る。
「今が、きっと……ヌリアの、第一歩」
 勇気づけるように微笑む煌介にヌリアはありがとうと笑み返し、二人は美しい祈りを抱いて宵空をゆく燈火を見送った。
 己の役割を果たせるよう心に強く願い、雪乃はランタンを空へ放つ。
 遙か空の彼方へ向かう燈火を仰ぎ見ながらエルバートは繋いだ指先を絡め、雪乃と皆の祈りが叶うことを願う。
 夜空を彩る、人の手によってつくられたもう一つの天の川。結局願いを託すことはしなかったけれど、そこに込められた誰かの願いが叶えばいいと想いながら、つかさは光の群れを見つめていた。
「トキサくんはなんてお願いするのー? 僕はね、みんなといっぱい仲良くなれますよーにって」
「俺はね、勿論、皆がいつでも無事に帰ってきますように、って」
 きれいだねと笑顔でスカイランタンを見送ってから、リィンハルトはよしと意気込み、トキサの手を取って駆け出した。
「フィエルテちゃんのところにいこ! 僕もお祝い、してあげたいんだ!」
 最初に掛ける言葉は、もう決まっている。
『一緒に世界を歩み、笑い、愛を歌い。かけがえのない物語を紡いでいけますように』
『愛するロゼが幸せであり、共に仕合わせを紡げますように』
 空の彼方でも離れぬように、ロゼとアレクセイは一つのランタンに願いを紡ぐ。
「ねぇ、アレクセイ。ずっとそばにいて」
 愛する人のための歌は、貴方がいなくては奏でられないから。
 ロゼが差し伸べた手を取り、アレクセイはその甲に唇を寄せて想いを込める。
 ――何があっても、離さない。
 願いは出来れば叶ってほしかった。
 けれどまだ怖いから、小さなランタンにラカが故郷の綴りで記した文字も小さくて。
「……お前は。決まったの。ねがいごと」
「――きみの隣に。……高望みかな」
 染は真っ白なまま持て余していたランタンを、願いを重ねるようにラカが空へ放った灯に寄り添わせて送り出す。
 見上げる空には灯の天の河。
 来年にはその空に願いが一つ増えていたらいいとラカは想う。
 ――いつか。
 君の願いが、叶いますように。

 人が多くを成し遂げてきたのは、祈りや願いの、想いの強さ。
「今日は天にたくさんの灯りが集まってるぞ。だから、フィエルテの先だって照らしてくれる」
「貴女のおかげで楽しい夜となりましたよ。フィエルテさんの笑顔も愛らしいもの」
 祝辞を告げた律に続き、アラタと藤尾が笑顔で添えれば、ありがとうございますと仄かな笑みが綻んで。
 互いに良い夜を願って別れた後、三人は改めてランタンへと向き直る。
 けれど律にはもう神にも悪魔にも願うものがなく、浮かぶ想いとそれを伝えたい相手を胸に一字だけ書き入れた。
 何を願おうか悩んでいたアラタは、律が書いた文字の意味を藤尾からそっと受け取ると驚きに目を瞠り。
「火岬、お前な……好し! ならアラタも付き合うぞ」
 揺らいでいた願いはもう迷いなく、アラタはペンを走らせる。
『勲が、早く帰ってきますように!!』
 二人を微笑ましく見守りながら、藤尾は『皆さんの祈りが届きますよう』と綴った。
 無数に空を泳いで昇る祈りを、律はただじっと見上げて。
 叶えるのは己の手で。決めた覚悟ごと届くといい。
 灯に綴った願いはあなたとの永遠。
 託した想いと光を柔い風に乗せれば、二つの天燈は寄り添いながら夜空を綾なす光の中に溶けてゆく。
 絃は夢のような美しい光景に目を細めながら月夜の手を取り、確りと握り締める。
「もし逸れてしまっても、たとえ無数の燈火たちに紛れても。あなたという光を、必ず見つけて迎えに行くよ」
「あなたは、ようやく巡り合えた大事な人だから。――離さないでね」
 想いを抱き締めるように指を絡め、月夜は愛おしげに呟いた。
 二人で共に空へ放つ、透明な祈りを込めた一つの燈。
 たとえ何も叶わなくても、貴方のいるこの瞬間がそれだけで生きる意味になる。
 世界中のうつくしいものよりたった一つ欲しいのは。
「――愛してる」
 祈るのは天ではなく瞳に映す唯一人。アイヴォリーの鮮烈な想いが夜の心に光を灯す。
「……寝物語に謡うから、今夜の君を独占させて」
 そして二人で星灯りの海を揺蕩う夢を見よう。
 やがて輝かしい朝が巡り来ても、この目には貴方しか映らない。
 二人の影が混じる砂浜で、ラウルとシズネは人々の想いを乗せた光を見届ける。
 ひとりぼっちになってもどうということはないと思っていた。
 なのに、弱いままの自分は手の中にあるぬくもりを失うのが恐ろしい。
 だから、失くさないようにとシズネは願いを託した。
「なあ、余計に弱くなっちまったオレは、強くなれると思うか?」
 初めてシズネがラウルの前で見せた弱さに、俺だってそうだよと、ラウルはシズネに寄り添うように、指先から掌を重ねて微笑う。
「だからこうして互いに手を繋ぎ合って、強さに変えていけばいい」
 ――君と俺なら、きっと変えていけるから。
 空にランタンが連なる様は天の川のようで、アリシスフェイルはいつか一緒に見た星空を思い出す。
 お祝いの言葉を伝えられたことも、きらきらした笑顔を見られたことも。
 そしてまた『一緒に』星を見られたことも嬉しくて。
「ね、フィエルテ、私、これから何度だってこうして一緒に空を見上げたいわ」
「私もです、アリシスさん」
 フィエルテの手に煌めくのは、桃色の石を金鎖で繋いだブレスレット。
 願いを込めるように、繋いだ手をぎゅっと握り締めた。
『福徳円満』――当たり障りない一言を綴ってよしと頷く市邨の横でムジカは思案顔。
 自分の願いは自分で書きたくて、でも日本語で書くのは難しいからとムジカが手に取ったのは筆記具ではなく愛用のルージュ。
『Quero estar junto para sempre』――ずっと一緒にいたいと故郷の言葉を書き記し、ムジカは内緒のお願いと笑って市邨の頬に口づけた。
 皆の願いが届きますように。こうして小さな願いを紡げるような安寧が、これからも続いていきますように。
 四文字の裏に、市邨がそっと書いた本当の願いは――。
『君がずっと、傍で笑っていてくれますように』

 託した想いは、空の向こうの『彼』の元へと届くだろうか。
 沖縄のお盆は、迎え火の代わりに提灯を玄関に飾るのだと語る陣内に、それなら燕の絵柄の提灯を探そうかとあかりは思案する。
 その小さな耳がぴんと立ったのは、陣内が夏休みの予定を続けて話したから。
「――夏休み丸ごと? お盆の期間も、ずっと?」
「ああ、ちょっと窮屈な思いをさせるだろうけど……一緒に来るだろう?」
 共に過ごす夏。ずっと独りで悼んできた時間を、これから二人で分かち合えたら。
「万里くん。双葉は、亡くなったことを忘れていたおねえちゃんなんて、きらいかしら」
「……誰かが一華を忘れたとしたら、きっと一華はわんわん泣くけれど。それでもその人を嫌いになんてならないだろ」
 思い出してくれたなら、ほっとしたような怒ったような、でもやっぱり泣きそうな顔で笑うのだろう。
 そんな彼女の妹だから、きっと同じだと万里は笑う。
 少し不格好な狐が描かれたランタンはもう遠くて見えない。
 けれど、一華は何とか笑おうとして唇を噛み締めた。
「ねぇ万里くん。……泣くって、目が燃えるように熱いのですね」
 空に浮かぶ無数のランタンは、少し離れた場所から見ても眩しくて。
 友たる少女に願いを問えば、はにかむような笑みと少しの間。
「皆さんのお願いが、叶いますように、と。……春乃さんは?」
「わたしはねー、ひとりぼっちにならないように願ったの。……わたしが、じゃなくて、みんなが、フィーちゃんが、彼が」
 年に一度しか逢えない織姫と彦星に想いを重ねながら、春乃は隣に立つフィエルテへ穏やかに微笑んだ。
「だからね、フィーちゃん。これから先もちゃんと、隣にいるよ」
 互いに選んだ浴衣を纏い、いつも通りに手を繋いで。
『ふたりで一緒に生きていけますように。この先も、未来も、ずっと』
 願いはいつだって変わらないけれど、変わらずにいられることもまた嬉しい。
「ね、ジエロ。一緒に空に飛ばそう」
 ジエロは眩しげにクィルを見やり、ランタンに触れる。
 願いは同じだから、自分の想いも一緒に乗せて。
 濃藍の空を彩るあたたかな光を見送りながら、クィルはそっと繋ぐ指先に力を込めた。
「ハイ、笑って笑って」
 ランタンと向き合う皆の『いい』顔が、キソラのカメラに収められてゆく。
 可愛く撮ってくださいねと微笑んで応じながら、シィラは特に叶えたいことがなく、お裾分けとばかりに『皆の願いや想いが叶いますように』とランタンに綴った。
(「……願い、なんて」)
 叶うはずがないとアガサはよく知っているから、ランタンは真っ白なまま。でも、もしかしたらとつい考えてしまうくらいには、見上げた空に舞う光とその先にある天の川はとても綺麗で。
「あれ、みんなお願い書かないの?」
 千鶴は不思議そうに首を傾げながらも、皆の今夜の楽しいが星に届いて明日も続いて行くように、『明日、晴れますように!』と書いて空へ送った。
「僕は、願いは己の力で叶えたい派なので」
 そう言いながらもティノは『この縁が良きものとなるように』とこっそり書いたの隠していたけれど。
「――僕は、願いよりも今は……」
 飛べずして行けない場所へ代わりに旅をと、ゼレフは弾いた指先から地獄の炎を一片、いっておいでとランタンの灯に混ぜて託し。
 大切な皆が幸せでありますようにと、ティアンは両手で挟んだランタンに籠める。
 それぞれの『らしい』仕草にどれも叶うさと笑み零し、一十も自分の手元の灯りには何も書かぬまま。皆の祈りに添いながら遠くの空まで飛んでゆくならそれでよいし、それがよいと。
 せーの、と空へ送り出した灯が星に紛れるまで見送った後は、キソラも交えて皆で記念の一枚を。
 思い思いに煌めくランタンは、手放して尚それぞれの彩を纏っているよう。
 きっと明日も空は晴れて、夜にはたくさんの星が瞬くのだろう。
 ――あなたが生まれたとくべつな日を、きらきらなもので満たしたいから。
 互いを想う願いを込めたランタンを見送って、不意にメロゥは海へ視線を落とす。
「――ね、梅太、見て」
 すいと指差す海面は、空を漂う灯がまるで鏡のように映し出され、星空とは違う幻想的な世界が広がっていて。ふたりでこの景色を見られてよかったと微笑むメロゥとそっと手を重ね、梅太も笑みを綻ばせる。
 空も海もきらきらときれいで、隣を見れば、だいすきなひとの笑顔が咲いている。
 ――とくべつな日を、ありがとう。

作者:小鳥遊彩羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月14日
難度:易しい
参加:67人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 3
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