スクール水着は面積最小!

作者:雷紋寺音弥

●最高のスクール水着
 夏を迎え、早くも蝉の声が聞こえるようになってきた公園にて。
 普段であれば、子どもの声で賑わう時刻。だが、その日に限っては園内はおろか、園の周りにさえ子ども達の姿は無い。
 原因は、そんな公園の真ん中に陣取っている、鳥頭の怪人と取り巻き達だった。
「諸君も知っての通り、夏といえば水泳! 学校でも、水泳の授業が始まる季節! そして、水泳といえば水着だろう!」
 その際に、最も適した水着は何か。それは、布面積が最小の、ブーメランパンツにマイクロビキニであると、ビルシャナはドヤ顔で言い放った。
「そもそも、今の学校で使われているスクール水着はなっておらん! 摩擦が多い素材な上に、布面積も無駄に広く、水の抵抗も受け易ければ脱ぐのも面倒だ! 故に、全国の小中学校でも、布面積最小の水着を着用させるべきなのだ!」
 どう考えても、夏の暑さで頭をやられたとしか思えない程の酷い教義。しかし、周りにいる者達は既にビルシャナの影響を受けている者ばかりであり、何ら疑問を持ってなどおらず。
「そうだ! 俺は文科省と教育委員会に抗議するぜ! スクール水着のデザインを、今すぐに変更するようにってなぁっ!」
 むしろ、抗議に行ったら最後、反対に逮捕されるのではないだろうか。そんな頭の痛くなるような言葉を叫ぶ信者達のせいで、公園には異様な空気が漂っていた。

●危険な水着の悪夢
「うぅ……。ようやく、じめじめした季節が終わると思っていたら、また変な教義を広めるビルシャナが……」
 その日、ケルベロス達の前に現れた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は、ぐったりとした様子で肩を落とし、大きな溜息と共に自らの垣間見た予知について語り出した。
「えっと……今回のビルシャナの教えなんですけど……そ、その……学校の水泳の授業で使う水着は……え、えっちなデザインが最高だっていうもので……」
 これ以上は、とても自分の口から語れそうにない。だが、それでも可能な限り語らなければならないのが、ヘリオライダーの悲しい運命。そして、ビルシャナの周囲にいる取り巻き達が、変態集団というのもお約束。
「戦いになるとビルシャナは……み、みなさんの、お洋服の面積を小さくする光線を発射してきます。他にも、おかしな構えで攻撃を受け流したり、攻撃力を上げたりしてくるので、注意してください」
 ちなみに、ビルシャナの周りには、既に配下とされてしまった一般人が10名ほどいるとのこと。上手に説得できなかった場合、彼らはビルシャナのサーヴァントのような存在となり戦いに参加して来る。
 もっとも、ケルベロスの敵として考えた場合、その戦闘力は最弱レベル。それ故に、グラビティの直撃を食らったが最後、まず間違いなく昇天してしまうので、やってられない。
「配下の人達の目を覚ますには、ビルシャナの言葉に負けないような説得が必要です。でも……普通のスクール水着を勧めても、たぶん聞いてくれないと思います」
 彼らはスクール水着の素材や機能性までも否定しているため、スク水の魅力を伝えたところで意味は無い。説得の際、重要になるのはインパクト。多少、無茶苦茶な理論でも構わないので、マイクロビキニやブーメランパンツよりも、刺激的で機能的な水着を提案できれば、そちらに意識が逸れるだろう。
「こ、こんな人達が増えたら、ねむも水泳の時はえっちな水着を着なくちゃいけなくなるんでしょうか……。うぅ……そんなことになったら、もう安心してプールで泳げません!」
「うへぇ……。機能性とか言ってるけど、どう考えても別の理由で変な水着を勧めてるよね、これ……」
 脅えるねむに賛同し、同じく肩を落とす成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)。
 なんやかんやで、今回も色々と危険なビルシャナを相手に、奮闘することになりそうだ。


参加者
マイ・カスタム(一般的な形状のロボ・e00399)
モモ・ライジング(神薙画竜・e01721)
瀧尾・千紘(唐紅の不忍狐・e03044)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
ナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)
ミルム・エーク(歩くミルクサーバー・e45157)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)

■リプレイ

●水着は極小、これが一番!
 真夏の日差しが公園を照らす。そんな夏の情緒溢れる場所にて、現れたのは今日も今日で下らない教義を説くビルシャナだった。
「今の学校で使われているスクール水着など邪道の極み! やはり、水着は布面積が小さい物こそ至高なのだ!」
 声高に叫ぶビルシャナと、それに合わせて盛り上がる信者達。だが、そんな彼らの姿を見たケルベロス達からすれば、早くもドン引き待ったなし。
「私が出会ったビルシャナの中で、一番酷いのが来たわね……」
「夏になると、頭の茹だった連中が出てくるのはもはや毎年恒例だな……!」
 変態的な教義を惜しみ隠さず大声で語るビルシャナを前に、モモ・ライジング(神薙画竜・e01721)とマイ・カスタム(一般的な形状のロボ・e00399)の二人は、呆れと憐みの混ざった表情を浮かべている。そんな中、彼女達と共に同行して来た成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)もまた、大きな溜息を吐いて項垂れた。
「うん……こういうの、もう何回目だろうね。さすがに、お腹いっぱいなんだよ……」
 ケルベロスは地球を守る戦士のはずなのに、気が付いてみれば周りに現れるのは変態ばかりなので、やってられない。
「小さい水着……また変態共が出たのね……。早く懲らしめて、さっさと終わらせるわ」
 もう、いっそのこと、このまま説得無しで殴り殺してしまおうか。ふと、ナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)の脳裏に、思わずそんな考えが浮かんだが。
「皆さ~ん、冷た~いアイスはいかがですか~? 優しいミルク味ですよ~」
 とりあえず、まずは信者達の警戒を解こうと、ミルム・エーク(歩くミルクサーバー・e45157)が自家製のアイスキャンディーを振る舞い始めた。
「ふむ、なかなか美味そうだな」
「ほう……ならば、1本いただくか」
 案の定、水着とアイスは何の関係もなかったためか、すんなりと受け入れてはもらえたようだ。
 もっとも、それは即ちアイスだけでは、信者達の頭を冷やすことはできないのを意味している。ならば、まずはそちらの言っている水着を着た上で、その有用性が低いことを証明してやろうと、リフィルディード・ラクシュエル(刀乱剛呀・e25284)は自らコートを脱ぎ捨てた……の、だが。
「ひっ……! ちょ、ちょっと動いただけで、零れ落ちそうな気が……。こ、これはもう、学校で着るような水着ではないでしょーよ!」
 細身の癖に特定の部分だけ発育の良い彼女の身体では、そもそも面積の小さい水着など常にポロリの危険と隣り合わせでの爆弾でしかない。
「うっひょ~! こいつは最高だぜ!」
「やっぱり、水着は布面積が小さいやつに限るよなぁ!」
 早くも興奮した信者達の何人かがリフィルディードを凝視して来たが、ここで退いたら負けである。水着が脱げないよう、両手で胸元を押さえながら固まってる彼女の姿に、思わず瀧尾・千紘(唐紅の不忍狐・e03044)が苦笑した。
「面積最小のスク水着はアリだと思います♪ 思います、けれど……」
 体型によっては簡単に脱げてしまい、そこから先はポロリの楽園、オンパレード! どう考えても、学校の授業で着るようなものではない。
「水泳において、速さを重視するべきという意見は分かる。だが、このような面積の小さい水着では、泳いでいる途中に脱げてしまうかもしれないではないか!」
 その場合、誰が責任を取るのかとエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)が一括したが、そこはビルシャナのせいで、脳まで茹で上がってしまった信者達。
「うるせー! だったら、脱げないように、気持ち小さめのサイズを買えばいいだろ!」
 やはりというか、無茶苦茶な屁理屈を並べ立て、より危険な方向へ誘導する始末。
「リリにはよく分からないけど、白いスクール水着なら、普通のとは違う魅力があるらしいよ?」
 こうなれば、是が非でも本来の形状のスクール水着に戻させるべく、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)は自ら白スク水を着用して信者達の前に出た。
「お話、あまり上手じゃないから……リリ、実際に着てみたよ」
 ケルベロスコートを脱いだ下から現れる、小さな身体と白スクの組み合わせ。確かに、そういうのが好きな者達にとっては、この上ない破壊力になったはずだが。
「ハッ……! そんなもんで、騙されると思ったか?」
「白いだけで、布面積ありまくりじゃねーか! 全く駄目だ、解ってねーぜ!」
 重要なのは、あくまで布面積。どれだけ不思議な魅力を持っていようと、露出がなければゴミ同然。そう言って、両手をわきわきさせながら、一斉にリリエッタと詰め寄って来た。
「でゅふふふ~♪ 今、お嬢ちゃんの水着も俺達で美しく……っ!?」
 リリエッタの白スク水を切り裂いて、理想のエロ水着へ作り変えんと信者達が迫る。だが、次の瞬間、晴天の空に銃声が轟き、信者達の背後にあった土管が木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「リリ、悪くないよ! あいつらが、変な目で見てくるのが悪いんだもん!」
 そういうわけで、流れ弾で死んでも自業自得だ。拳銃片手に、早くも殺す気満々のリリエッタ。
 兎にも角にも、こいつはなかなか骨の折れそうな連中だ。真夏の太陽が照り付ける最中、ケルベロス達は内に秘めたる怒りを堪え、色々な意味で危険な説得を開始した。

●最速最強の水着
 布面積の広い水着は、スクール水着として不適である。そう言って譲らないビルシャナと信者達だったが、どう考えても夏の暑さで頭がイカれているとしか思えない主張だった。
「……水泳の際に水着を着るのは当たり前だけど、そんなの着るの? 私、そういった露出する水着って嫌なのよね。恥ずかしいし……」
 年頃の少女に、こんな肌を露わにする水着を着せるなどセクハラ行為。おまけに、この水着では小中学生の持っている、このシーズンならではの魅力がなくなると、モモは信者達に言ってのけた。
「小中学生にある魅力……それは、『日焼け跡』よ。日に焼けた褐色肌と、水着に隠されていた肌の対照性の事よ」
 色白の子の日焼け跡に、妙な色気を感じたことはないか。だが、布面積の少ない水着では、殆どの肌が日に焼けて、折角の日焼け跡を台無しにしてしまうのだと。
「だから、私はあえて言うわ。『夏といえば水泳、水着、そして日焼け跡』よ!」
 これで決まった。渾身の台詞を言い終わり、どうだとばかりに仁王立ちするモモだったが、果たしてビルシャナの信者達は、その大半が全く動じていなかった。
「ハッ……! 何かと思えば、そんなことか?」
「別に、全裸で泳げって言ってるわけじゃねーんだ。マイクロビキニやブーメランパンツでも、それはそれで味のある日焼け跡ができるんじゃねーのか?」
 それ以前に、日焼け跡が魅力ならば、全身を健康的な小麦色にすることで得られる魅力もあるはずだ。そんな屁理屈を聞いて、今度はナナリアが信者達に問い掛けた。
「……で、見てるあんた達は良いでしょうけど、そんな小さい水着を着せられる私たちにメリットって物はあるんでしょうね? 私達に、そんな恥ずかしい恰好させるんだもの。着せられる方にも、何かしらメリットはあるんでしょうね!? はっきり答えなさい!!」
 もし、大したメリットがないのであれば、己の羞恥心に抗ってまでエッチな水着を着る意味はない。そう言って、ナナリアは信者達に詰め寄ったが。
「ふっ……当然、あるに決まっているだろう?」
「その通り! この水着なら、摩擦も最小で脱ぎ着もし易い! 時間のない学生達には、正に理想の水着だぜ!」
 布面積が少なければ、その分だけ水の抵抗が減る。どう考えても屁理屈丸出しな台詞を吐いて、ドヤ顔で反論してくるから頭が痛い。
「水泳において、速さを重視するべきという意見は分かる。だが、このような面積の小さい水着では、泳いでいる途中に脱げてしまうかもしれないではないか!」
 それでも、ここで諦めたら戦闘中に変態に襲われ……もとい、一般人を見殺しにしてしまう危険性があるため、エメラルドは敢えて敵の考えに賛同する素振りを見せつつも指摘する。
「そもそも、最新の水着は鮫肌を模した微細な形状で作られていて、逆に抵抗が少なくなっているのだ」
「ああ、そう言えば……鮫肌を再現した水着なら、抵抗少ないて言われてたっけ」
 すかさずリフィルディードが、エメラルドの意見に賛同して見せた。
 競泳水着は全身を覆うタイプだが、速さのためなら仕方がないだろう。というか、子供がそんな肌の露出が多いの着せようなど、もはや単なるロリコンの類にしか見えないと。
「それに、出てるとこでてたら、その分抵抗増えるんだけど?」
 おまけに、布の面積が少なくて外れやすい水着なら、メリットよりもデメリットの方が大きいのではないか。そんな彼女達の説得を受け……何人かの信者達に、変化があった。
「鮫肌……そうか! 速さを追及するのなら、より高度なリアリティが必要だ!」
「確かに! 人間は、そもそも水中生活に適応しているわけじゃないからな! つまり、よりリアルな鮫肌水着を作ることができれば、それこそが真のスクール水着に相応しいはずだ!」
 そうと解れば、善は急げ。本物の人食い鮫を狩って皮を剥ぎ、その素材で水着を作るべきだと、何故か勝手に盛り上がる信者達。
「ヒャッハァァァッ! 鮫狩りだぁぁぁっ!!」
 そう言うが早いか、信者達の何人かはブーメランパンツ姿のまま、まだ見ぬ人食い鮫を狩るために、大海原目掛けて駆け出して行った。
「えっと……あれ、放っておいても大丈夫なのかな?」
 思わず、理奈が茫然と立ち尽くしたまま尋ねていたが、それはそれ。
 映画に出てくるような人食い鮫が、この日本の近海になどいるものか。しかし、ビルシャナの支配からは逃れられたようなので、とりあえずは結果オーライだろう。

●究極の素材
 何故か鮫狩りに出かける者が出始めた結果、残る信者は半分程度。しかし、それだけに残っている者達は、なかなかどうして頑固な連中ばかり。
「俺達は、そう簡単に布面積最小水着の真理を捨てたりはしないぜ!」
 特殊な素材でマイクロビキニを作れば同じこと。人の話をまともに聞かず、ともすれば自分勝手な解釈を始めるので頭が痛い。
「愚かな妄想にとりつかれたHENTAIども! 幸せな妄想は己の内に秘めればよいものを、他者にひけらかすなど言語道断!」
 さすがに、これは重傷だ。見兼ねたマイが、とうとう信者達に向かって激しく叫んだ。
「貴様らのような欲望の権化のせいで、女子はニーソでもストッキングでもなく、やたらレギンスを穿くようになった。ブルマーは半パンに取って代わられ、そして今、袖付きのスクール水着まで生まれはじめている!」
 その理由は、全て女子を変な目で見る連中がいるからだ。欲望全開の視線をいたいけな少女達に向ければ、社会が反発するのは必至。このままでは、やがてスク水は囚人服の如きデザインとなり、今に人が住めなくなると。
「じゃっかましい! 俺達は、別に変な目で女子を見てるわけじゃねーぞ!」
「それに、女子だけ布面積を減らすなんて、誰が言った! 男は男で、ちゃんとブーメランパンツを用意してあるんだぜ?」
 だが、肝心の信者達は自分達を変態だとは思っていなかったので、却って激昂させてしまった模様。
 こういう時、最も厄介なのは無自覚な変態。同じ変態でも、自ら『変態である』ことを自覚した上で行動している全裸コートの丸出しオジサンの方が、まだ可愛げがあるように思えて仕方がない。
「分かりました……。面積最小のスク水着はアリだと思います♪」
 こうなれば、信者達を持ち上げてから取り入ろうと、千紘は敢えてビルシャナの教えに賛同する素振りを見せた。その上で、実際に着用もしてみたと、惜し気もなく自らのマイクロビキニ姿を露わにし。
「……ステキですけれど、小中学生では水に入っただけで脱げちゃうわ。お胸もお尻も、ボリューム不足な千紘が言うから、本当です」
 実際、今も吐息が掛かっただけで脱げそうなので恥ずかしい。そういうわけで、フリル付きのエプロンで前を隠させてもらっているが、しかしこれはこれで、遠間から見たら裸エプロンにしか見えなかった。
「千紘は信者さんたちと、もっともーっとお話したいわ。だから……他にもね、イ・ロ・イ・ロ、用意してきたの♪」
 そう言って千紘が取り出したのは、貝殻の水着や荒縄の水着。他にも、溶ける紙の水着などといった、もはや全裸と大差ない代物まで。
「うむぅ……。布面積を縮めれば良いと思っていたが、水着の素材にも色々あるのだな」
「いったい、どれが正解なんだ! 最強で最速のスクール水着に適した素材は何なんだ!」
 無駄に選択肢が多かったことで、困惑して頭を抱える信者達。その瞬間、今までアイスを配り続けていたミルムが、ここに来てとうとう新たな行動に出た。
「マイクロビキニって、脱げないように動かないといけないから実用的じゃないですよね? でも、このシールは軽くて薄く、伸縮性に優れてます。牛乳瓶の蓋としても使えるほど耐水性に優れていて、水着にも利用できますよ」
 そんなことを言いながら、自分の胸に貼ってあるシールに牛乳アイスを擦り付ける。溶けたアイスが胸元に散って、なんとも危険な感じになっているが、それが信者達の何かを刺激したのだろうか。
「……そうか! 分かったぞ! これだ……これなんだ!」
「耐水シールで局部だけ隠す! これなら、もはや紐さえ不要! 限りなく自然に近い姿になって、水の抵抗を受け流せるぜ!」
 そう言って服を脱ぎ捨てると、信者達はミルムから受け取ったシールを危険な場所に貼り付けた上で、何故かドヤ顔でポージング!
 はっきり言って、これはキモい。しかし、今は彼らに突っ込むよりも、残ったビルシャナを退治する方が先決だ。
「おのれぇ……。貴様達、よくも私の崇高なる布面積最小水着を否定してくれたな! その罪、万死に値するぞ!」
 それ程までに邪魔をしたいのであれば、実力行使に出るのみだ。翼を広げ、こちらを威嚇してくるビルシャナだったが、許さないのはケルベロス達も同じこと。
「ようやく戦闘? リリは待ちくたびれたんだよ」
 大きな欠伸をしながら、リリエッタが銃口をビルシャナに向ける。ポージングを続ける変態達を横目に、ケルベロス達は最後の仕上げに入ることにした。

●危ない光線! ポロリもあるよ!?
 全ての信者の意識を逸らすことに成功し、残るは変態教祖のビルシャナのみ。だが、攻撃力こそ高くないものの、敵はなかなかしぶとかった。
「ハーッハッハ! どうだ、私の布面積最小化光線の味は!」
 強烈な光線を放ち、ビルシャナはケルベロス達の纏った防具の面積を縮小化させて来る。ただでさえ露出の高い格好をしている者達は、もはやポロリの寸前に!
「激しく動いたら……ポロリしないよな……?」
 最初からマイクロビキニを着用していたことが災いし、リフィルディードは既に全裸に荒縄レベルの際どい格好になっていた。
 だが、それでも、ここで怯んではいられない。このまま敵を見逃せば、今に本当に裸同然にさせられてしまうかもしれないのだから。
「これを使え! 少しは気にならなくなるはずだ!」
 見兼ねたマイが仲間達へタオルを投げ、改めてビルシャナを殴り飛ばす。その瞬間、骨が砕け散り肉が爆ぜるような感触を覚え、マイは思わず首を傾げた。
「……あれ? このビルシャナ、弱くない?」
 よくよく考えてみれば、敵はタフなだけで、碌な攻撃手段を持っていない。防御を固められると面倒だが、そうなる前に叩いてしまえば、後はこちらのものである。
「なるほど……。ならば、攻撃あるのみだ!」
「そういうことなら、お前を毟り取ってやろう」
 エメラルドとリフィルディードの二人が、それぞれに稲妻や雷の霊力を纏った武器で、ビルシャナの尻を容赦なく突く。その上で、ナナリアは正面からビルシャナの顔面を殴り飛ばし、テレビウムのシングが持っていた凶器で頭をカチ割った。
「ぐはっ! ちょ……ま、待ってくれ!」
 劣勢に追い込まれ、途端にビルシャナが命乞いを始めた。もっとも、そんな言葉で騙される程、ケルベロス達は甘くなく。
「もう、手加減はしなくていいよね」
「あなたには感謝していますよ。千紘に新たなる信者を紹介してくれたんですから」
 リリエッタの拳銃と千紘のガトリングガンが火を噴いたところで、最後はモモが拳銃片手に肉薄した。
「命を賭けるギャンブルは嫌いなの。勇気を持って、逝った少女の思い……たっぷり喰らって消えてね」
「なっ……! や、止め……ぐぼぁぁぁっ!?」
 哀れ、口にリボルバーの銃口を突っ込まれ、零距離から連射されてビルシャナは散った。布面積最小の水着は、しかしその面積の少なさ故に、ビルシャナを守ってくれる防具とは成り得なかった。
「皆さん、ビルシャナのお仕置きお疲れ様です! 暑いですし、皆さんもアイスキャンディーいかがですか? 今ならシールもプレゼント中です!」
 最後に、ミルムが仲間達へ、自家製のアイスとシールを配っている。もっとも、アイスは兎も角シールの方は、使い方次第でなかなか危ないことになりそうだ。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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