豚頭の悪鬼

作者:寅杜柳

●責め立てるように
 その日、木恒・赤成(フクスフェヒター・e60902)はねぐらへと帰る木々の間の道を一人歩いていた。普段は通らない道ではあるがちょっとした用事を終えての帰り道。
 ゆらゆら揺れる豊かな毛並の尾はいつも通り、大きな耳も感度よく木々のさざめきと虫の音色をとらえている。
 歩き、広場めいたところに差し掛かった辺りでふと、音が途絶える。元々人気のほぼない道、風が止んで静まり返るのはよくあるけれども、虫の声まで消えるのは明らかにおかしい。死線の感覚――馴染みあるそれを感じ取った瞬間、赤成は前方へと飛び込むように跳躍する。同時、太く黄色い帯のような何かが彼の居た空間を通り過ぎた。
「外シタカ」
 品性の感じられない声と、草を踏みしめる音が同じ方向から響くと共に、槍を手にしたオークが姿を現す。
 咄嗟に緑の刃を構えた赤成が何かを口にする間もなく、そのオークは槍を腰の高さに構え、標的の赤狐に勢いを乗せ突撃してきた。
「大変だ! ケルベロスがデウスエクスに襲撃される未来が予知されたんだ!」
 慌てた様子の雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)がヘリポートに集まったケルベロス達に事情を説明し始める。
「襲撃されるのは木恒・赤成というケルベロスだ。予知を見て、急いで連絡を取ろうとしたんだが繋がらない。多分、もう一刻の猶予もない」
 手遅れになる前に急いで彼の所に救援に向かってほしい、と知香は自身の予知した内容を説明し始めた。
「今回赤成を襲撃してくるのはコグト・ンガリという名のオークだ。戦うことが第一で、人を攫うよりも殺害して直接グラビティ・チェインを得る事をよしとしているみたいだ。武器は槍、それに背中に生やした太い触手を組み合わせてガンガン攻撃を仕掛けてくる」
 そして、次に戦場の状況を説明する。
「戦場となるのは林の中、広場のようになっている場所で赤成とオークが接触しているところに介入する事になるはずだ。戦うには支障のない広さはあるけども、あまり人の手が入ってないから灯りは準備していった方がいいかもしれない」
 そこまで説明した知香はケルベロス達へと視線を合わせ告げる。
「今からできるだけ飛ばしていくが、到着とオークが赤成に接触するのはほぼ同時か、ちょっと遅れるぐらいになると思う。……遅くなった場合すでに倒されているかもしれないが、なんとかみんなで無事に帰ってきてくれ!」
 そう締め括った知香はヘリオンの操縦席へと乗り込み、ケルベロス達を乗せ空へと飛び立った。


参加者
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
千歳緑・豊(喜懼・e09097)
ディオニクス・ウィガルフ(否定の黒陽爪・e17530)
ティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467)
比良坂・陸也(化け狸・e28489)
木恒・赤成(フクスフェヒター・e60902)
ペスカトーレ・カレッティエッラ(ポンコツフィッシング・e62528)

■リプレイ

●暗い森の襲撃者
 オークが低く邪悪な咆哮と共に構えた槍に雷撃を纏わせ突きを繰り出す。その速度を木恒・赤成(フクスフェヒター・e60902)は完全には回避できず、けれどもギリギリのところで急所を外し、反撃のハウリングを放つ。けれども機敏なオーク――コグト・ンガリはその寸前でその効果範囲から外れるよう距離をとった。
「奇襲とは中々に味な真似をしてくれるな」
「……避ケラレルトハナ」
 アカギツネの青年の悪態に豚鬼が返す。
「見事な奇襲だった、しかし臭いまでは消せていなかったな」
 アカギツネの青年がそう返す。その言葉の通り、よくよく集中すると自然ではない、染みついたような血の臭いが感じ取れる。
「貴様は、誰の差し金だ?」
「……マアイイ。逃ガサナイ」
 差し向けたのは誰か。その問いには答えず、再びの攻撃の準備。迎撃の為に赤成が深緑の刀を構えたその時、
「うおおおぉぉぉー! 赤成くーん!」
 唐突な叫び声。少し遅れて木々の合間から白い影が猛ダッシュで飛び込んできた。対峙していた二者も思わず止まってしまう。
「来たよー! モフ恩を返すためにー!」
 その白い影、色白な外見と病院着にも見えるワンピースに身を包んだ平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)は腰のランタンが勢いのまま揺れるのも構わず、テンション高くそう言った。
「助っ人さんじょー! いざ尋常に、勝負勝負!」
 ややテンション高く述べるのはペスカトーレ・カレッティエッラ(ポンコツフィッシング・e62528)。
 一瞬止まった戦場に獣の、獅子のような咆哮が響き、オークが後退する。咆哮の主はディオニクス・ウィガルフ(否定の黒陽爪・e17530)。
「美味そうな黒豚だなァ? オイ、混ぜろよ」
 そう口にした彼の赤い瞳が歪み、獰猛な笑みを敵へと向ける。
「目標捕捉……動くな!」
 警告の言葉と同時に発砲音。鋭敏な感覚で狙い澄ましたその一射がオークの足を撃ち抜くと、もう一つ静かな目標補足の声と同時に豚鬼に弾丸が命中、爆発。
 二つの声のした方にはディオニクスとは逆、色白青目の銀狼のリューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)、ライフルを構えた小柄なティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467)と愛竜のプリンケプスが駆けて来る姿があった。
「木恒君とは知らない仲じゃないしね。加勢させてもらうよ」
 更に質のいい仕立てのシャツに身みを包んだ千歳緑・豊(喜懼・e09097)が普段と変わらぬ調子で木々の影から姿を現し、眼光鋭い狸のウェアライダーの比良坂・陸也(化け狸・e28489)がその後に続く。
「しかし、狐に狸に豚もいるとなると、後は餅が欲しいところだなぁ……ああ、平君でいいか。何となくもっちりしてるし」
「……搗くんですか?」
「搗かないでよ!?」
 豊の淡々とした軽口に、ふわふわの大きな兎耳をこてんと揺らしたティと和が反応する。
「まーどっちみち脅威なのは変わりないや、ぶっとばしちゃおう!」
 ペスカトーレが宣言し、釣竿型のガジェットをオークへと向け、
「人々のため、そして大切な仲間のために、貴様の蛮行はここで止めさせてもらうぞ!」
 赤成を庇うよう豚鬼の前に立ちはだかったリューディガーがそう宣言する。
「邪魔ガ入ロウガ倒セバイイ、皆殺シダ!」
 触手を蠢かせ槍を構え、構えを取り直したオークが吼えた。
(「オークにしては珍しく気骨のある戦士みたいですね。昔いた戦場を思い出します」)
 こちらも敬意をもって戦いを挑むべきですね、とティは静かな表情のままそう認識する。
「それじゃ行くよ?プリンケプス」
 その言葉と共に、暗い森の戦闘は始まった。

●狩人のように
 先の交錯の合間に木の傍に置かれたランプをはじめ、各自が持ち込んだ灯りが薄暗い戦場を照らす。調達してきた灯りの具合はいずれも十分なようだ。
「さァ、狩りの始まりだ」
 ディオニクスが両拳を正面で打ち付け、漆黒の炎が両腕を包み込むよう燃え上がると、その後には愛用の黒焔爪【冥牙】が装着されていた。さらに腕を巨狼のそれへと変化させた腕が合わせて突きこまれるも、豚鬼の槍に軌道を逸らされる。同時、虹を纏った銀狼の追撃の蹴りが放たれるも最小限の動きでずらされ回避される。
 その合間に和が手元のスイッチを押し込み、カラフルな煙を後方に発生させ周囲の仲間を鼓舞、陸也もそれに重ねるように鎖の陣を敷き前衛の守りを固める。
「相手は強者だ、集中していこう」
 スイッチを切り替えたように豊が雷電の撃鉄を起こし、コグトへと向ける。その傍らに、彼の地獄の炎が何かを象る。
「フォロー」
 形成されたのは大柄な犬に似た獣。主の指示に、豚鬼へと喰らいつく。そこにペスカトーレとティの轟竜砲が着弾。オークの機敏な動きを縛ろうとする。
 続き赤成は怪力で引き裂こうかと考えたが咆哮の次では見切られる、そう切り替え禍々しい深緑の刀身を振るう。深緑が照明の灯りに閃き、豚鬼に刀傷を与えその魂を赤成の体力へと転化。さらに陸也の手にした符、青白き月光を溜め込んだそれを媒介に、青白い月が顕現すると、赤成の攻撃に動きが一瞬鈍った刹那に一際輝き、照らし出した豚鬼の動きを鈍らせる。
 しかしコグトもやられるままではない。反撃にその得物に稲妻を纏わせ、接近した赤成を雷速で突く。
「任せとけ!」
 貫く直前、ディオニクスが庇う。速度を重視していたその一撃は魔獣の毛皮に縁取られた衣を貫けはしなかったが、衝撃と痺れまでは防ぎきれない。
 そこに豊が炎弾で追撃、直撃するかと思われたが、豚鬼は反射的に黄の触手を割り込ませ、それを相殺した。
「いいね。真面目な強者は戦い甲斐がある」
 防がれたにも関わらず、豊はその飄々とした姿勢を崩さない。
(「オークにしては見所あるじゃねェか」)
 その一撃と、仲間達の攻撃の直撃を上手く逸らしていた敵の姿にディオニクスは思う。正確な攻撃に専念しているケルベロス以外の多くの攻撃が躱されている。足止めがしっかり機能しても、ある程度は避けられてしまうかもしれない。
「俺自身が灯りだ。狙えよ?」
 黒炎を赤へと変じさせ挑発の言葉。豚野郎、と言いかけた彼に構わず豚鬼が跳躍、高速の連続突きが前衛に雨のように降り注ぐ。護り手は各々それを防ぎ、赤成への刺突はプリンケプスがその小さな身体を目いっぱいに使い代わりに受ける。
「任せて!」
 その直後、和のケルベロスチェインが地面に陣を描き守りの効果を発動。同時に狸の青年の流星の飛び蹴り、リューディガーの威嚇発砲が呼吸を合わせ反撃を狙うが、器用に槍と触手で受け流されそれらも回避される。
 槍に触手、取り回しの悪そうな獲物だが、それを隙なく器用に扱っているのは力を求める在り方だけはあるのか。
(「己一人の力を武器に戦う者がいた、か」)
 リューディガーが固い表情のままそう思考する。
 群でか弱き女性を囲み、その心を砕く卑劣な存在。この個体はそのイメージと、もしかすると違うのかもしれない。
(「だが、一方的な殺戮と略奪は決して許せぬ所業」)
 結局のところ、ケルベロスである彼自身が為すべき事、駆逐すべき鬼畜を始末する事に変わりはない。
 とん、とん。どう狙うかを思案するようにオークが跳ねながら位置を変えている。黒い体に描かれた黄色の紋様は夜の森という環境では保護色のようにも見える。
 不意に、豚鬼が跳躍。槍の雨かと守りを固める。けれどもそれは来ない。後方にあった樹を触手で強く殴打、反動で一気にケルベロス達間近に飛び込んできたのだ。
 槍の周りに雷電が弾ける音、そして高速の刺突。狙いは近くにいた赤成。庇いは間に合わず、その直撃を受け、運悪く護りの加護が重なっていなかった赤狐の青年から声が漏れる。
 護りの加護は火力がそこまででなく、加護を砕く手段を持たない豚鬼相手には有効だろう。けれど広範囲に効果を発揮するそれだけではどうしてもムラが出る。特に序盤ではまだ加護のかかっていない者もいるのを見逃さず、正確に狙ってきたのだ。
 だが逆にここが狙い所とばかりにペスカトーレが攻撃直後のタイミングを狙い、腕を獣化させオークの腹部に叩き込む。
「……災難と思って諦めな!」
 さらに攻撃を受けた赤成の反撃、豚鬼の至近から特殊ドレイン弾を連射。剣術一筋ではなく、使えるものは何でも使う彼の攻撃だ。追撃はは無理と判断したか、コグトが即座に後方に跳ね全弾の命中は回避する。豊とティ、ディオニクスが追撃するも追いきれない。
 その間に和が自由なる者のオーラを、さらに陸也の手から陽と月のどちらにも似た輝きのオーラを赤成へと放ち、奪えた生命力のみでは回復しきれなかった傷を癒やす。
「まるで獄卒だ」
 陸也の口から思わずそんな言葉が漏れる。地獄の罪人を責め立てる獣頭の存在。豚ではなかったはずだが似ている、と赤成も思った。
(「だけど好きにはさせねえぞ」)
 同じ師団の仲間である赤い狐のピンチなのだ。緑の化け狸である陸也も、普段より気合を入れてこの戦いに臨んでいて。
「……性質の悪い冗談だ」
 多くの敵を穿ち、裏切りの仲間を切り伏せてきた自分がそんな相手と戦うのは因果だと赤成は自嘲しつつ、それでも陸也の言葉に切り返す。
 体勢を立て直しかけたケルベロス達に、再びのコグトが突撃する。それを護り手達が受け止め、戦いは続いていく。

●一と八
 そして十数分。
 狙撃技術を活かしたティの貫通弾が木々の合間を抜けて豚鬼の胴体に着弾、爆発を引き起こす。
「黒豚の肉は美味いらしいじゃねェか。よォ、齧らせろ」
 さらにディオニクスの巨狼の腕が、牙に見立てられたそれが容赦なく豚鬼の触手を引き裂き、呼吸を合わせた豊が、五つの目と棘もつ炎の猟犬をけしかける。赤と紫の軌跡を尾が残しながら猟犬はしつこく豚鬼に纏わりつく。
 陸也が瓢箪を投げつけると、それは置物でよくあるような狸の姿となり、コグトへと向かう。躱そうとするが度重なる攻撃に鈍らされた足は動かず直撃。呪いが豚鬼を汚染し、一気に呪縛が何重にも重なり、合わせて赤成が飛び込む。伸ばされたのは素手、その怪力で触手を掴み、力任せに引き裂いた。零れた生命力は彼へと吸収される。
「お前が傷つくほどオレは回復する、最高じゃないか!」
 前衛として長く戦場に立ち続ける為に相手の体力を奪う手段を多く準備していたが、序盤は回避に優れる豚鬼を捉え切れなかった。けれども中盤以降、敵の動きが鈍り始めると、狙い通りに体力を奪える機会が増える。
 反撃にオークの背から触手の群が伸びる。陸也に向かう黄の連撃を、リューディガーが手袋の周囲に気流の盾を展開し受け止める。序盤は回避されていた虹の急降下蹴りも当たるようになり、その結果攻撃が彼へと集中するようになっている。仲間への攻撃も含め、ダメージは徐々に重なってきているが、彼の戦意は欠片も衰えない。
 愛妻家で元警察官としての使命感の強いリューディガーにとって、オークの生存競争を逸脱した性質は決して許すことの出来ない邪悪。それこそ吐気を感じてしまう程の憎悪を抱いてしまう程。
 向けられた憎悪にも豚鬼の闘争心は失せぬようで、ケルベロス達の攻撃を鈍った足でも致命的な一撃だけは回避しつつ、攻撃の切れ間を見出し跳躍。雨のような突きを降り注がせる。重圧に勢いは多少落ちているが、不利な状況でもきっちりと弱い所を見極め攻撃を重ねるのは、その闘志と本能故か。
「闘争本能の塊みたいなオークってのもいるもんだネ。まー伝承を考えればこっちの方が普通かもなんだけど!」
 けれどハリモグラの青年はそれらを前にしてもふてぶてしさを崩さず、獣のそれと化した腕でカウンターを合わせる。臆したらそれこそ負けに近づいてしまうのだから。
 一撃を受け後退した豚鬼に追随する影が一つ。狙撃位置、十分距離をとっていたはずのティがいつの間にか間近にいた。その拳を叩きつけ、網状の霊力で縛り付け、すぐさま飛びのく。
「あら? もう終わりですか? その自慢の槍を掲げ、触手の連撃で私達を圧倒したらどうです? 動かなくなった戦士は死んだも同然ですよ?」
 ティの挑発の言葉に反撃の槍を、プリンケプスがブレスを吹きかけ出鼻を挫き、
「ハッハァ!!  なンだよ何処見てンだァ?!」
 黒焔爪の強烈な一撃はそれを逃さない。鈍らせた動きをディオニクスの爪が捕らえ、
「過日の幻、薄暮の現、黄昏の夢、宵闇の真――」
 彼の詠唱と共に獄炎が流し込まれる。豚鬼の表情が歪んだのは、ありもしない過日の幻影に精神を侵されたせいか。
 生まれたを見逃さず、豊が雷電を向け地獄の焔を纏った弾丸を放つ。黄の触手ごと豚鬼の体を炎で包み、
「知恵を崇めよ。知識を崇めよ――」
 さらに、和の全知の一撃を発動させる詠唱。豚鬼の頭上に分厚い本が出現。
「――我が知の全てをここに示す」
 詠唱の完了と共に落雷の速度で落下。めきっ、と鈍い音と共にコグトの頭頂に凶器そのものと化した本の角が突き刺さる。
「敵さん敵さんさっようならー!」
 おちょくるかのようなペスカトーレの言葉と共に、機械的に変形した釣竿が大砲の形態をとり、閃光。その衝撃に堪らず豚鬼は吹き飛ばされる。さらに、連携した銀狼のオーラの弾丸が喰らいつき、青白い月光が豚鬼を照らし出す。
 激しい連撃にコグトは息も絶え絶え。せめて、一人はとその触手を蠢かせ狙いを定め、
「遅い」
 けれども、赤成が一手早かった。月光の輝きに合わせ距離を詰めた彼の刃がオークの肉深くに突き刺さる。呪われた刃は、豚鬼の魂の最後の一雫までも啜り尽くした。

●戦のあと
「……もっとも。戦場で個人は生き残れませんから、己の力を過信して単独行動を取った時点で貴方の運命は決まっていたのですけどね」
 挑発の続きを静かにティが口にした。まるで手向けのように。
「其の命、糧となれ」
 ディオニクスがオークの戦士の骸に祈りを捧げる。
「思ったんだけどあの武人っぽさが本来のオークなのかもネ? 曲がりなりにもドラゴンの部下だしサ!」
 ペスカトーレがそう推測をしてみるが、実際の所は分からない。
 人気のない森の中とはいえ、戦闘痕は残さないに限る。木々をヒールして回った陸也とリューディガー、そして仲間達の治療を行っていた和も一仕事を終え、ほっと一息ついた。
「木恒君は無事かい?」
 まあ聞くまでもないだろうが、と豊が赤成に問うと、心配された彼も問題ないと首肯。それを見た豊の雰囲気が僅かに綻ぶ。助けに来たんだから、これで成功だとでも言うかのように。
「貸し一つ、でどーだ?」
 冗談めかした陸也の言葉に赤成は思案顔。
「さて、一仕事の後だ。飲みに行かねェか?」
 呑気に誘うのはディオニクス。いずれにせよ、夜深くなるまでここにいる理由もないだろう。
 そして灯りが八つ、夜の森の外へと揺れて行き、静寂が森に戻った。

作者:寅杜柳 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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