夕影を踏み荒らし

作者:幾夜緋琉

●夕影を踏み荒らし
 東京都は小金井市、武蔵小金井駅前。
 ロータリーには多摩地区の各地へと向かう多くのバスが往来し、幾つかの大規模店舗も並ぶ繁華街の一つ。
 そして……空が僅かに夕焼けに暮れゆく頃。夕焼け空から、幾つもの影が……ロータリーに向けて落下。
 地面に白煙と共に堕ちてきたのは、大きな竜牙兵の牙。
 駅前のビルを翳め、外廊下に風穴を開けて、地面に到達すると……白煙を上げる。
 突然の襲来に、周りの市民は驚き、立ち止る。
 そして、みるみる内に竜牙兵は牙から姿を変え、ゾディアックソードを構えし姿に。
『……フハハハハ!! サァ、グラビティ・チェインをヨコセ!!』
 剣を掲げ、威圧の叫びと共に竜牙兵は、周りの一般人達を次々と殺害していくのであった。

「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね。それじゃ、早速ッスけど始めさせて貰うッスよ!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスに元気な挨拶と共に、早速。
「今回ケルベロスの皆さんには、小金井市に向かって欲しいッス。ここに竜牙兵が突如襲来する、という予知されたんッス」
「竜牙兵は、姿を現わすなり、すぐに周りの一般人達を『グラビティ・チェインをヨコセ』と叫びながら惨殺していくのが見えてしまったッス。竜牙兵を放置すれば、そういう事態が起きるのは間違い無いッス」
「でも、竜牙兵が現れる前に、周囲へ避難勧告をしてしまうと、竜牙兵達は他の場所に現れてしまい、甚大な被害を及ぼしかねないッスから、竜牙兵の牙が地面に穿たれてから作戦を開始して欲しいッス。駅前ッスから、警察官の方、駅員の方の協力を得て避難誘導する事は可能ッスからね」
 更にダンテが、詳しい状況を説明する。
「今回の竜牙兵ッスけど、数は5体で、全員ゾディアックソードを持った、クラッシャーの超前衛的な竜牙兵の様ッス」
「当然彼らはグラビティ・チェインを得るが為に、目に付く者は全て殺そうとするッスから、一般人をその視界に入れさせない様に立ち回る必要があるッス」
「又、彼らはかなり好戦的な意識に向いて要る様ッスから、相互に連携を取りながら攻防する事が可能ッス。又、全員が死ぬまで戦い続ける様ッスから、必ず竜牙兵を全部倒して来て欲しいッスよ!」
 そしてダンテは一度皆を見渡してから。
「何にしても、こんな竜牙兵による虐殺事件を止めない訳には行かないッスよ。ケルベロスの皆さんが頼りッスから、宜しく頼むッス!!」
 と、深く頭を下げるのであった。


参加者
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)
クルーアル・フローラル(其の掌は何を攫む・e25724)
リエラ・ガラード(刻腕・e30925)
ルリディア・メリーバ(ときめくクランベリー・e41388)
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)
兎之原・十三(首狩り子兎・e45359)
穂村・花園(忌火・e56672)
ニルヴァーナ・アーリマン(外法のぽんこつ猫・e61577)

■リプレイ

●時を刻み、傷付け
 東京都小金井市、武蔵小金井駅前。
 多摩地区各地へと向かう多くのバスが出入りし、大規模な店舗も並ぶ駅前広場。
 そして……時刻は夕刻の頃、夕焼け空は美しく灼けている。
「にゃぁ……本当、竜牙兵は仕方ないにゃね」
 その夕焼け空を見上げて、肩を竦めるニルヴァーナ・アーリマン(外法のぽんこつ猫・e61577)。
 それに、こくん、と頷いた兎之原・十三(首狩り子兎・e45359)。
「うん、いつまでも、懲りない、骨頭達だ、ね……」
「骨頭? ああ、確かに骨しかないから骨頭にゃね。だから脳みそも無いのかもしれないにゃね」
 そんな二人の会話に、穂村・花園(忌火・e56672)も加わり。
「んだな。まぁ、脳みそがあったとしても、口癖の様に言っているドラゴンサマの為に、って所は変んないんだろうけどな」
 と花園が苦笑すると、眼鏡を整えながらタキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)も。
「ええ。グラビティ・チェインですか……今やドラゴンの力が強まりつつある中です。そんな時に敵にグラビティ・チェインを譲る訳にはいきませんね」
 静かに頷く、そして天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)も。
「……竜牙兵か。最近活発なドラゴンの影響も否定できないかもしれぬ。勢いを削ぐためにも此処は守らねば」
 そんな仲間達よりも一層気合いが入っているのはルリディア・メリーバ(ときめくクランベリー・e41388)。
「そうだよ! あたしの大切な町で暴れるなんて、いいどきょーしてるね! 絶対に倒してやるんだから!」
 それにクルーアル・フローラル(其の掌は何を攫む・e25724)、リエラ・ガラード(刻腕・e30925)らも。
「あら、ルリディアさんは此処の出身ですのね? では、絶対に護らなければなりませんわ……しかし竜牙兵も、次から次へとキリがないですわね。でも、好き勝手はさせませんわ」
「ええ、五体の竜牙兵の殲滅。一般の方に犠牲者を出さない様に動こうと思います。そして、外道に差し上げるグラビティ・チェインは無い事を身を持って知って頂きましょう」
 ……そんな仲間達の言葉に頷き、十三は。
「そう、だね。普通に、暮らす、人達を、傷付けさせは、しない、よ……【月喰み】も、でうすえくすを、殺せって、嘆いて、いるから……だから、その首、もらう、よ」
 静かにその手の妖刀と大鎌を握りしめ……ケルベロスらは、駅前ロータリーにたどり着くのであった。

●風を裂く
 そして、駅前ロータリーに到着したケルベロス達。
 夕方の買い物に出かける人、子供を迎えに来た人、様々な人が駅前ロータリーを歩いている。
 勿論、竜牙兵の牙が空から堕ちてくる等とは、露ほども思っている訳も無く。
「……でも、事前に避難させる事が出来ないのにゃ、取りあえずは落下してくるのを待つ他無いにゃ」
 とニルヴァーナがぽつり呟きつつも、いつ、何処に落ちてきても良い様に展開する。
 そして……。
『ヒュゥゥゥウ……』
 遠く上空から何かが落下してくる音。
 その音と共に、空から落下してくる竜牙兵の牙。
 駅前ビルの外廊下を翳め、ロータリーに突き刺さる竜牙兵の牙……幸い人的被害は無いものの、周りの一般人達は、恐怖に其の場に竦み、悲鳴を上げる。
 そんな一般人達に、さっ、とプリンセスモードを纏ったルリディアが声を上げて。
「みなさま、あたくしの尾言葉をお聞きになって、ざますー! 落ち着いて誘導に従って、避難してね! ですわのよ!!」
 お嬢様言葉っぽいけど、何か違う言葉で以て、周りの皆を避難する様に促す。
 勿論彼女だけで全部を担当する事は難しい為。
「ここは危険だ、戦闘区域になる。駅の中に逃げ込んで欲しい。警察官も、周りの人達の避難誘導を手伝ってくれ」
「にゃ、こっちにゃよー!」
 水凪とニルヴァーナも手分けして、周りに居る一般人を一人ずつ、その場から逃がしていく。
 ……そして、そうしている間にも、竜牙兵の牙は瞬く間に姿を変え……。
『グゥアハハハハハ……!!』
 獰猛に笑い、その手のゾディアックソードを掲げる竜牙兵。
 そして周りを見渡し、逃げ惑う一般人を視界に入れると。
『ムシケラタチガイッパイダゼ!!』
『サァ、ケルベロス・チェインヲヨコセ!!』
 次々と、一般人に向けて展開し始める……が、その前に、竜牙兵に次々と対峙するケルベロス。
「骨頭。あなた達の、相手は、じゅーぞー達だ、よ」
 と、十三は宣言すると共に、妖刀を一閃、更に殺界形成を展開し、周囲から一般人を引き離す。
 そして、花園も。
「ああ。ほら俺達が相手してやるよ! 逃げるなんて事ねぇよな!」
 と挑発気味に宣言し、接近、惨殺ナイフの一閃を叩き込んで行く。
 と、攻撃を受けた竜牙兵は剣戟で、数歩の距離を取りつつ。
『何ダテメェラ、邪魔スルナ!』
『ソレトモ、オ前達ガ獲物ニナルカ? ハハハ!!』
 まだ、多少余裕を持っている竜牙兵。
 ……しかしそんな竜牙兵にタキオンは、後衛からヘルレーザーの牽制攻撃。
「簡単には獲物になんてなりませんよ。寧ろ獲物になるのは……貴方達ですから」
「そうですわ。さぁ……おいでなさいな」
 不敵に微笑むクルーアル、そして。
『イイゼ、ジャア、ヤッテヤロウ!』
 とこちらも獰猛に笑い、竜牙兵達は次々と攻撃開始。
 そのゾディアックソードを全力で振り回す彼らは、正しく戦闘狂。
 そんな竜牙兵達の連携攻撃をギリギリの所で回避したリエラ。
「攻撃は最大の防御……なるほど、ならば力には力を、攻撃には攻撃でお相手するとしましょう……では、行きましょうっ!」
 と光剣【Agateram】を構え、接近。
 十三、花園が牽制した、同じ竜牙兵に向けて、力一杯の一撃を叩きつけて、一般人からの注意を逸らす。
 そして、ルリディア、水凪、ニルヴァーナも手分けして、周りの一般人を早急に避難させていく。
 数分、避難誘導に掛かるものの、全員を駅の中に避難させて……そして三人も、竜牙兵の下へ対峙する。
「……それじゃ、確実に、数を減らして行く、よ」
 と、十三が仲間達に声を掛け、妖刀と大鎌を翳す。
 そして……まだ余裕な竜牙兵に近接し。
「【月喰み】解放……呪怨の刃にて……その首……刎ねて、つかまつる」
 妖刀を抜き、流れる様に【新月:逸兎・凌断】の一閃を放つ。
 クラッシャーの効果もあり、今迄とは比較にならない程の強力な一閃……元々ダメージを喰らっていた竜牙兵一体の片腕を砕く。
『グゥア!』
 と苦悶の叫びを上げるも、流れる様にリエラの攻撃。
「潰れろーーっ!!」
 全身全霊を籠めたブレイズクラッシュの一撃で、その身を炎に包みこむと……その炎の中に悶え苦しみ……崩れ墜ちるように其の場に倒れる。
『ナニ……ッ!』
 と流石にちょっと焦りを見せた竜牙兵……だが、他の奴が。
『ウロタエロナ! オレタチノ力、ミセテヤロウゼ!!』
 と発破を掛けると、頷き、四体の竜牙兵達は怒濤の如くの勢いで、連携した攻撃を仕掛けてくる。
 流石に一撃、二撃の程度ならば、見極め躱す事も出来ようが、集中砲火されると躱すのは難しい。
「っ……!」
 しかしその攻撃……クルーアルは唇を噛みしめ……怒りを力に変えて、耐えきる。
 更に敢て。
「ふふっ……どうしたのかしら? その程度の攻撃じゃ、私は倒せませんわよ?」
 『嘲笑』し、竜牙兵への怒りを呼ぶ。
 そして、怒濤の竜牙兵の連続攻撃の後、すぐにタキオンが。
「大丈夫ですか、すぐに治しますね!」
 とウィッチオペレーションを展開し、クルーアルの体力を回復。
 ……そしてニルヴァーナも。
「氷はめんどうだからにゃ。これで大丈夫にゃよ」
 と護法覚醒陣で以て前衛強化を行う。
 そして、ディフェンダーの一角花園が、竜牙兵の狙いを自分に誘う様に。
「命の火を見るがいい、消さずにゃいられないんだろ、アンタら」
 『飛火』を放ち、火と共に注目を惹きつける。
 そして、水凪は迅雷破界光のパラライズ効果を付与すると、同時にルリディアは、先のクルーアルが挑発した敵へ。
「足止めキィーック!!」
 ハイジャンプから繰り出すスターゲイザーの足蹴。
 行動は一巡し、次の刻……竜牙兵共は、植え付けられた怒のままに。
『オノゾミドオリ殺シテヤラァ!』
 と言い放ちつつ、またも連携した攻撃を、クルーアルと花園に。
「っ……先輩方がドラゴン相手に頑張ってくれてるんだ。足元で騒ぎを起こさせるわけにゃいかねぇよなぁ!」
「そうですわ。倒れる訳には参りませんわ!」
 それぞれの決死の叫びは、竜牙兵に決して撒けぬ心の強さを示す。
 そして猛攻一巡の後、すぐにタキオンがメディカルレインに切り替え仲間のキュアを行う。
 又、ニルヴァーナは、バトルプロフェシーを中衛に掛けて妨アップ。
 そしてそれを受けた水凪が、竜牙兵に対しジュデッカの刃を突き立て、氷のバッドステータスを一気に増殖させる。
 そして、ルリディアは。
「ここはあたしの思い出の街なんだ! あんたらなんかに、好きにさせないっ!」
 強い気持ちと共に繰り出すスカーレットシザースが、竜牙兵の頭部に命中……。
 頭部より、吊り糸を失うが如く、ボロボロに崩れ去る一体。
 更にはリエラが、もう一体に向けて。
「最大出力……薙ぎ払えっ!!」
 『刻み込む、黒炎の腕』による、腕をもぎ取る一閃。
 更に十三が同時に。
「どんなに、やられても、分からない、なら、その頭、いらない、ね」
 と憑霊弧月にて、その頭部を破壊。
 片腕と頭を失いし竜牙兵は、苦悶にのたうつ。
 ……その苦しみ方に、他の竜牙兵は明らかに動揺。
『ッ……』
 しかしそんな竜牙兵に向けて、クルーアルが。
「さあ、根絶やしになるまで狩り尽くして差し上げましょう」
 と言い放ちながら、手負いの竜牙兵へと接近……肩甲骨の辺りへゲイルブレイドの一閃を叩きつけ、もう一腕を根元から叩き落とす。
 そして、両手と頭を失った竜牙兵に、花園が惨劇の鏡像。
 深いトラウマを炙り出し……恐怖の叫びと共に死にゆく竜牙兵。
 ……瞬く間に3体の竜牙兵が崩れ去り、残るはたった二体。
『クソッ……』
 明らかに苛立つ竜牙兵だが、戦いを辞めるような事はしない。
 むしろ……ケルベロス達に対し、果敢にも戦いを挑んでいく。
 そんな竜牙兵の攻撃にリエラが一言。
「連携を取るのなら……その連携を砕くまでっ! さあ、皆さん。後二体、油断せずに一気に倒しましょう!」
 そのリエラの言葉にケルベロス達は勢い付き……彼らの攻撃を受けながらも。
「目標捕捉、攻撃準備完了……発射!」
 とタキオンの『クォーク加速放射』に、ニルヴァーナの暗黒縛鎖、ルリディアのスピニングドワーフ。
 一体を討ち滅ぼし、残る一体。
「……頼むぞ」
 と水凪の『喚起』が竜牙兵の動きを制止し、そして、クルーアルが。
「さぁ、砕け散りなさい!」
 全力なる竜爪撃が、その身を薙いで……竜牙兵らは全て骨塊となって、その場に並ぶのであった。

●夜の帳に落ちる頃
 そして……ケルベロス達は、どうにか竜牙兵五体を全て討ち倒す。
「……やった、倒したよー!!」
 ガッツポーズを取り、ハイジャンプするルリディア。
 嬉しくて堪らなさそうな感じのルリディアに、くすりと笑いながら。
「ええ……終わりましたね」
 と安堵の一息を吐くリエラ。
 そして、その横で、十三も。
「ん……【月喰み】も、これで、しばらく静かに、なるか、な」
 と、【月喰み】を納刀しながら、ぽつりと呟く。
 ……そんな嬉し気な仲間達に対し、クルーアルが。
「……アイツを必ず見つけ出す……」
 拳を握りしめる彼女……その言葉は誰にも聞こえず。
 そして……。
「さて、と……それでは駅の破壊された箇所をヒールで修復しておくとしましょうか」
 とタキオンの言葉にクルーアルも頷き。
「そうですわね。手伝いますわ」
 と進んで周囲のヒールと、修復を始める。
 ……そして建物を修復しながら花園が。
「それにしても、こうやって簡単に戦力ばらまけるのがドラゴンの怖いとこだよなぁ……さっさとどうにかしたいもんだぜ」
「そうだな……」
 水凪が頷きつつ……ケルベロス達は、壊れた外廊下等の片付けと修復を行う。
 そして、地面のアスファルトも整えたり、と……一通り、元の姿へと修復した後に、帰路へとつくのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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