使い捨ての狂戦士

作者:飛角龍馬

●罪人のエインヘリアル
 横浜市の大通りに夏の日差しが降り注いでいる。
 陽炎揺らめく道路を走る車は多く、広い交差点では、スーツに身を包んだ男女のほか、観光客も行き交っている。
 そんな日常の光景を、ビルの上から見下ろす巨躯があった。
「グフフフフ、オデの獲物が沢山なんだナ……狩り甲斐があるんだナ……」
 傷つき汚れた鎧兜に身を包んだエインヘリアルだ。その巨体に相応しい、鉄塊の如き大斧を提げ、奇怪な笑いに肩を揺する。
「オデは難しコトはわがんね。とにかく潰して殺しゃいいんだナ」
 アスガルドで重罪を犯し、地球に送りつけられたエインヘリアル。使い捨ての戦士。つまりは、捨て駒。それがこの男の置かれた状況だ。
 大斧を肩まで持ち上げ、跳躍する。
 地響きを立て、アスファルトを割りながら、広い交差点に着地した。
 突如として空から落ちてきた大男に、人々が悲鳴をあげて逃げ惑う。
 エインヘリアルは、不気味な笑い声をたてながら、逃げる者達を品定めするようにゆっくりと見回して大斧を構えた。
「さァて、殺して殺して殺しまくるんだナ……!」
 平穏な市街地が死屍累々の地獄と化した。

●イントロダクション
「エインヘリアルによる襲撃事件が起こります。解決をお願いします」
 ヘリポートに集まったケルベロス達に、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が告げた。
「出現するエインヘリアルは、過去、アスガルドで重罪を犯した凶悪犯罪者のようです。このまま放置すれば大きな被害が出てしまいます」
 虐殺が行われれば、人々の恐怖と憎悪が掻き立てられ、地球で活動するエインヘリアルの定命化を遅らせることにも繋がりかねない。
「傷ついた鎧兜を身につけていることから、当該エインヘリアルを『スカー』と呼称します。スカーは大通りの交差点に降り立ち、強大な力を振るって凶行に及びます。従って、今回は一般人の避難を行いながら戦闘を仕掛け、撃破することが求められます」
 スカーが現れる前にあらかじめ避難誘導をしてしまうと、他に獲物を求めて別の場所に移動してしまう恐れがある。幸い、スカーの出現後、最初の犠牲者が出るまでには少し間があるため、一般人を逃がすことは可能だろう。
「スカーは攻撃力を重視し、大斧を自在に操ります。更に、叫びをあげて自身の状態異常を吹き飛ばすことも可能のようです。後がない使い捨てであるためか、不利な状況に陥っても戦い続けるので、決着をつけて頂くようお願いします」
 このエインヘリアルが、どのような経緯で罪を犯したのかは分からない。思考がにぶく、利用され捨て駒にされやすい者であったのかも知れない。
 賢いタイプではないものの、戦闘能力は高く、攻撃の威力も侮れないものがある。
「野放しにすれば大惨事は免れません。皆さんの力で、街と人々を守って下さい。宜しくお願いします」


参加者
木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634)
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
山内・源三郎(姜子牙・e24606)
唯織・雅(告死天使・e25132)
柔・宇佐子(ナインチェプラウス・e33881)
金元・樹壱(修行中魔導士・e34863)
フィーリ・フィオーレ(乱舞フロイライン・e53251)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)

■リプレイ

●襲来の狂戦士、迎撃のケルベロス
「グフフフフ、オデの獲物が沢山なんだナ……狩り甲斐があるんだナ……」
 灼熱の日差しを浴びながら、罪人エインヘリアル――スカーがビルの屋上から交差点を見下ろす。鉄塊の如き大斧を提げて奇怪な笑いに身を揺する大男は、眼下で着々と進められていた迎撃と避難準備にも、ついぞ気付くことはなかった。
 宙に身を躍らせ、アスファルトを割りながら着地する。
 その瞬間、スカーの背後から戦槌が振り抜かれた。醜い叫び声をあげて地面に叩きつけられ、怒声をあげて跳ね起きる。
「グヌフウゥゥゥ! オデを殴ったのはオメェかぁぁ!!」
 睨むスカーの視線の先には、白銀の甲冑と大盾を輝かせ、大槌を手にしたロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)の勇姿があった。
「如何にも。難しいことを考える必要はありません。貴方の相手はこちらです」
「さて、行くとしますかね」
 本格的な避難誘導が開始される中、木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634)が大太刀シラヌイの鯉口を切って駆ける。
「ポヨンも来い! お前に避難誘導をさせる訳にもいかないからな」
 赤いスカートを履いたボクスドラゴンのポヨンが羽をはためかせて主の背を追う。
「初めまして、エインヘリアル。おイタは、頂けませんね……」
 唯織・雅(告死天使・e25132)もふわりとスカーの前に降り立って、長銃の銃口を突きつけた。雌獅子を思わせるウイングキャットのセクメトも、鷲の翼で羽ばたきながら眼前の敵を威嚇する。
 その周囲では、避難誘導を買って出たケルベロス達が懸命に声をあげていた。
「今ここには悪と戦うものがいます。わたくし達ケルベロスがいます。決して誰も傷つけさせません」
 ほんの少し前の平穏がまるで夢のよう――ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)が眼鏡を通して現実を見つめながらも、不安を覆い隠して毅然と訴えた。その身に纏う闘衣やブーツまでもが緑の茨に覆われ、人々の目を惹き、逃げゆく者達の心を鼓舞する。
「可能であれば怪我をしたり体の不自由な人を助けてあげてください」
 連携を取ったフィーリ・フィオーレ(乱舞フロイライン・e53251)が割り込みヴォイスを駆使しながら、落ち着いた声色で誘導する。
「僕達が何とかしてみせます! 今は避難を!」
 金元・樹壱(修行中魔導士・e34863)も警察と連携して、逃げ遅れる人がいないよう声をかける。泣いている男の子を見つけると、駆け寄って気遣い、近くの警官に託した。
「お姉ちゃんは……?」
「ケルベロスですよ。……それと、お兄ちゃん、ですからね」
 隣人力の効果もあり、警官も信頼の眼差しで樹壱に敬礼した。
「避難はおまかせしてだいじょうぶよね」
 ふるふると周りを見回して柔・宇佐子(ナインチェプラウス・e33881)が言うと、
「大丈夫じゃろ。そこまで頭の回る奴でもなし」
 逃げていく人々とは逆行して、山内・源三郎(姜子牙・e24606)が服を翻しながら悠々と敵に歩み寄る。それじゃあ、と宇佐子も戦いの渦中に飛び込んでいった。
「活きのいい獲物なんだな……みんな纏めて皆殺しなんだな……!」
「狩り甲斐のある獲物か? お前は狩人じゃねえな。獲物の方に回ったらどうだ」
 人の気配がなくなった交差点の中心で、巨大な斧を大太刀で逸しながらケイが返す。
「どんな罪を犯したのはご存知ありませんけれど、強い戦士は嫌いにはなれませんわね」
 フィーリがレイピアのフォルムを持つ二振りの巨剣を敵に向け、優雅に微笑した。
「お手合わせ、お願いできますこと?」

●激突
「オメエらみてぇなのがオデにかなうハズないんだな!」
 歴戦を思わせるスカーの戦斧と鎧兜に、鋭角的なルーンが輪となって躍動する。
「さあこっちだ。やれるもんならやってみな」
 風切る音さえ重い。大太刀とは言え受け止めるのは愚策と、横から襲い来る斧を受け流すようにケイが刃を振るい、軌跡を逸しながら後方へと飛んだ。胴を抉られながらも空中で掌を掲げて精神を集中。スカーの足元から爆発が巻き起こる。
「どんどん行くのよー!」
「まず、支援を。セクメト、お願い……」
 宇佐子がふわふわの手で爆破スイッチのボタンを押した。
 雅も指示を出し、爆破装置を起動。
 交差点を取り囲んで虹色の爆発が花開く。
「……少しでも足を止めないと」
 これほどの殺意を持った敵と戦うのは、ルーシィドにとって初めてのこと。爆煙の中から突進してくるスカーに気圧されかけながらも、指輪をかざして圧縮した霊弾を放った。脚部に着弾。セクメトの生成したリングが胴を締め付け共に戦闘行動を阻害するが、スカーは歪んだ笑い声をあげてケルベロス達を迎え撃つ。
「このくらい大したコトないんだな……!」
「力を誇る戦士ですものね。そうでなくては困ります」
 フィーリが闘気を纏いながら二振りの剣で交互に高速突きを繰り出す。
 スカーは仰け反ってかわし、斧で弾きながら、逆方向に跳んで槍状砲塔の照準を定めたロベリアを、兜の隙間の濁った眼で睨んだ。
「意外に隙がないですね」
 着地と同時に槍での近接戦に切り替えたロベリアが道路を蹴って刺突。斧を盾に急所を逸したスカーだが体の麻痺は避けられず、背後に回ったフィーリが炎を宿した強烈な回し蹴りを叩き込んだ。巨体を独楽のように回転させ斧で薙ぎ払うスカー。
「この飛び蹴りを、避けられますか!?」
 ポヨンが水属性ブレスを吐き、樹壱が跳躍からの狙い澄ました蹴りを炸裂させた。
 そこへ源三郎が溜めていた冥界の力を解き放つ。
「闇の深淵にて揺蕩う言霊達が呼び覚ませしは降魔の波動、彼の者の前に驟雨の如く撃ち付けよ!」
 言葉の通りの波動が、ガードして後退するスカーを猛追、殺到する。
「ワイルドに行くのよ!」
 ふわふわの宇佐子が腕をワイルドスペースで覆い巨大刀に変化させ、飛び跳ねながらスカーの斧と打ち合い巨体に斬撃を加える。
「グフフフフ……可愛いらしんだな……」
「こっ……この人犯罪者なのよ!」
「言うまでもなく犯罪者じゃ。何しでかしたんだか分からんがの」
 直後、ケルベロス達が、スカーの振り回す斧に纏めて斬撃され弾き飛ばされた。
 セクメトが羽ばたきで破邪の風を送り回復支援。
「古代語の魔法よ、光線により敵を石化させよ!」
 樹壱が古代語に日頃培ってきた魔力を乗せ、紡がれた光条がスカーを襲う。
 それでも未だ勢いは止まらない。
 重い斧の一撃をバスターライフルで受け止めた雅が、深い傷を負いながらビルに叩きつけられた。窓ガラスを割って二階フロアに転がる雅。
「くぅっ……まだ、これほど、まで……」
 その前方に光の盾が出現、傷を癒やす。ルーシィドのマインドシールドだ。
「倒れさせはしません……!」
 敵の一撃はひたすらに重く、彼女の回復が戦線維持の要と言ってもいい。
 ケイが大太刀シラヌイを鞘に収め、抜刀術の構えを取って気を練る。
(「攻撃力特化のエインヘリアルだ。単純だが……それだけに油断はできん」)
 その目前でフィーリが双剣をフェンシングさながらに操り、スカーに攻めかかる。
 突きから薙ぎへ。受け止めた大斧と競り合う。
「グフフハハハァ! オデと打ち合うなんてオメェも相当の馬鹿力なんだな!」
「レディに直接的すぎる物言いですわね。でも、褒め言葉と受け取っておきます!」
 全力で押し切るフィーリ。
「徐々に動きが鈍っている筈ですが……これならどうです」
 たたらを踏んだスカーにロベリアが戦槌を叩き込む。
「ああいうのでぶん殴られたらあやつもちっとは賢く……ならんか」
「びりびりさせたら良くなるかも?」
 源三郎が光の粒子そのものとなって突撃。宇佐子が凄まじい速度でスカーの懐に迫り、電光石火の蹴りを炸裂させた。スカーが呻いてよろめいたところに長銃を構えた雅がビルの二階から照準を定め、トリガー。スカーの鎧ごと砕いて撃ち抜いた。
 その好機にケイが納刀状態から一瞬にして抜刀。
 桜吹雪が舞い散る中、居合斬りの一閃が狙い過たずスカーの巨体を薙いだ。花散らしを思わせる風が巻き起こり、巨体を包んだ花弁の群れが炎に変じて荒れ狂う。
「やれやれ……まだ倒れる気配がないな、これは」
 激烈な叫びをあげたスカーが、燃え盛る炎を他の状態異常ごと吹き飛ばした。

●戦いの果てに
「グルゥアアァアァァ! 叩き潰されろォォ!!」
 咆哮と共に振るわれる巨大な斧をロベリアが戦槌で弾き、猛然と打ち合う。
「私は人々を守るための騎士。ここで倒れるわけにはいきません」
 血だらけのスカーの胴に戦槌が打ち込まれ、大斧もまたロベリアを切り裂いて信号柱に叩きつけた。尚も攻めかかる前衛とスカーがぶつかり合う。
 スカーの薙ぎ払いを受けて吹っ飛ばされた源三郎が路傍の白バンに突っ込んだ。
「あいたたた、少しは年寄りに気を使わんか! お蔭でボコボコじゃ! 主に車が!」
 尚も襲い来る斧を慌てて避けると、バンが一刀両断されていた。
「あーあ、わし知らんし」
 コミカルながらも高い戦闘能力を持つ源三郎が、戦場の緊張を僅かに弛緩させる。
 ルーシィドが震えそうになる手に力を込めて指輪から光の盾を具現化。加護がロベリアを守り、傷を塞いだ。眼鏡の向こうに展開されている激戦は紛れもない現実だ。
「大丈夫、まだみんな動けますから。……大自然の緑よ、仲間を癒す力を与えよ……」
 樹壱が祈ると、青々と美しく茂る葉の柄を施した長衣がはためく。奇跡の萌芽と名付けられた葉を纏った如意棒にも神秘的な蔦が生い茂り――放たれた癒しの力に包まれたケイが気合一声、雷を帯びたシラヌイの切っ先でスカーを突き刺した。
「生きる力は、魂の力。それぞれの、存在の形。今、共々に鳴り響き。いざ、生を奏でよ……」
 展開された力場フィールド――生命の輪が源三郎の気力を賦活、裂傷を癒した。
 セクメトが軽快な動きでスカーを引っ掻いて飛び回るが、攻撃を引き受けてきたこともあり、大斧の一撃に敢えなく消滅してしまう。
 しかしその間にケルベロス達は反撃の態勢を整えていた。
 対するスカーは重なる状態異常に回復が追いついていない。
「退路を断たれた者の力は侮れないもの……まさに捨て身の闘士ですか」
 斧を打ち振るうスカーにフィーリが重力を宿した蹴りを叩き込んだ。
「ムグォオオオオォオォォ!!」
 ガードして踏み止まったスカーだが、衝撃は殺せず地面にクレーターが生じる。
「ここが終着点です。倒れなさい」
 ロベリアが陽を浴びて白銀の装甲を輝かせ、真横から来た斧を飛び越える。着地と同時に渾身の力を込めて槍を振り上げ、穂先が斜めに胴を斬り裂く。
 巨体に不可視の爆薬を仕掛けていた雅がこの時とばかりに発破、舞い上がる爆煙の中を源三郎が踏み込んだ。煙の中に呪われた斬撃が閃く。
「痛みにも足を止めませんか。でも効いていますよ!」
 樹壱が持ち手に力を込めると蔦の絡みついたバールから棘が飛び出した。スカーの目前に走り込んだ樹壱が奇跡の萌芽を地面に突いて伸ばし、高跳びの要領で背後を取る。
 フィーリがエアシューズに力を込めて加速、水平に弧を描く斧を飛び越え、背後から樹壱が力を込めてバールを振り抜いた直後、スカーの顔面を炎を纏った脚で蹴りつけた。
 兜が飛び散り、よろけるスカー。
「グブフゥウゥッ! まだ、まだオデは……オデは闘えるんだな……!!」
「猛獣狩りだな」
 醜く歪み血に染まったスカーの顔を見て、ケイが呟く。
「自転車で轢いちゃうのよー!」
 青い自転車を駆る宇佐子が超高速でペダルを踏んでスカーに突っ込み、衝突の直前にサドルから飛び跳ねた。
「ア……アアァ…………」
 スカーがのけぞりながら真上を飛ぶ宇佐子を目で追う。
「……ここで、押し切ります……!」
 道路の中央線上で雅がバスターライフルを構えて高速演算。
 スカーの壊れた鎧の各部位を捕捉。行動予測。そして発射。
 放たれた弾丸が狙い過たず目標に着弾した。
「せめて最期は戦士として散りなさい」
 踏み留まろうとするスカーに、フィーリが双剣を閃かせる。
 煌めきが瞬いた刹那のうちに、目にも留まらぬ高速突きがスカーを無数に貫いていた。
 ――千刺万攻(コルメーナ)
 ふわりと髪をなびかせ、絶技の名を口にするフィーリ。
「辞世の句は……ないだろうな。トドメだ、一瞬で楽にしてやる」
 ケイがシラヌイを抜刀。刻まれた『情無用』の文字が陽を受けて輝き、閃いた刃がスカーの胴を一刀の下に両断。桜吹雪が巨体を取り巻き燃え上がる。
 炎に包まれた狂戦士の命を重力の鎖が砕いた。

●名もなき戦士へ
「何とかなりましたか。放っておいたらどうなっていたことか」
 騎士としての努めを果たせたと、ロベリアが緊張の糸を緩めて一息吐いた。
「狩り甲斐は……まあ、あったかね」
 ぱたぱた浮かぶポヨンに少し表情を緩めてケイが言った。狩猟という捉え方で太刀を振るうことはないものの――ケイは手を下したエインヘリアルを思い、呟く。
「あいつは獣だった」
「哀れ、とも言えますか」
 命の限り戦うしかなかった罪人。
 ロベリアが地面に突いた槍の柄を握りながら応じた。
「戦士らしい散り様だった、と思いたいですね」
 フィーリが二剣を鞘に収めながら言った。粗暴なりと言えども確かな力を持った闘士が、最期まで戦い抜いて散ったのだと。
「僕はこちらを直しますので、反対側をお願いします」
「はい、お任せを」
 樹壱が破壊された道路や建物にヒールをかけて回り、道を挟んで反対側をルーシィドが修復していく。
「ファンシーなのだわ!」
「ご愁傷様じゃの」
 ヒールされた白バンを見て宇佐子が跳ね、源三郎が目を細めた。
「さて、帰るとするかの。つーか暑い。年寄りは熱中症にかかって死にそうじゃわい」
 ご苦労さん、と腕を振って、夏の日差しを背にその場を後にする源三郎。
「セクメト……お疲れ様」
 雅が勇敢に戦ったセクメトに言うと、尻尾が嬉しそうに跳ねた。
 やがて徐々に戻ってきた人々に彼女は凛として告げていた。
「例え、デウスエクスが。攻め来ようとも……私達、ケルベロスが。必ず……皆さんを、お守りします!」
 最後まで残っていたルーシィドはヒールをかけた建物の柱を見ていた。
 期せずして石碑のような模様が現れた、その場に。
 それは全くの偶然で、言われなければ気付かないほどのものに過ぎない。それでも。
「せめて安らかに。おやすみなさい」
 瞑目して祈ると、ルーシィドが修復された街を後にした。

作者:飛角龍馬 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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