●熊本城ドラゴン決戦~迫り来る竜牙
熊本県、熊本市、熊本城。
夕闇迫り、夕焼けが綺麗なその時に……熊本市内は恐怖へと包まれていた。
象徴でもある、熊本城に次々と突っ込んで行く巨大な影。
巨大な体躯の侵空竜エオスポロスが、大空から次々と熊本城に向けて特攻を仕掛けていたのである。
勿論エオスポロスの身も無事では済まないが……熊本城の外壁はおろか、本丸までも打ち崩してしまう。
そして……熊本城内部を蹂躙して暫し後に……自己の身を犠牲にして、自爆する。
その威力に……熊本のシンボルでもある熊本城が、目の前で崩れ去ってしまう光景は、悪夢としか言い様がない。
しかしその悪夢は現実であり……熊本城は完全に崩壊してしまう。
……その土煙の中から、淡い光を放つ、手のような台座に載った、丸い宝玉が現れた。
「ケルベロスの皆さん、立て続けで申し訳ありませんが、至急の依頼があります」
セリカ・リュミエールは、ケルベロス達へ。
「皆さんのおかげで、熊本市全域で行われていたドラゴン勢力との戦いは、最小限の被害で敵を撃退し、勝利を収める事が出来ました。しかし、竜十字島から出撃したドラゴンの軍団が、すぐそこまで迫って来ているのです」
「敵の目的は『熊本城』に封じられし『魔竜王を復活させる事すら出来る魔竜王の遺産の奪取』に間違いありません。皆さんの活躍によって、グラビティ・チェインの略奪を阻止出来た為、魔竜王の遺産の封印はまだ破られていないのです」
「しかし、この封印を今、無理矢理こじ開けるべく、ドラゴンの軍団は熊本城へと特攻し、自爆する事で自らのグラビティ・チェインを捧げ、封印の解放を意図している様なのです」
「皆さんには、今すぐ熊本城へと向かい、熊本の戦いに参加したケルベロスの皆さんと合流し、熊本城防衛に参加して頂きたいのです」
「恐らく敵の目的は二つ……一つは『侵空竜エオスポロス』の軍団を熊本城に突撃させ、自爆させ、魔竜王の遺産の封印を解放する事。もう一つは、覇空竜アストライオスとその配下の四竜、廻天竜ゼピュロス、喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースの儀式によって、封印を解放された魔竜王の遺産を、竜十字島に転移させる事でしょう」
「魔竜王の遺産が、竜十字島に転移させられてしまえば、こちらから手出しをする事は至難の業です。ドラゴン勢力の野望を食い止める事は不可能になるでしょう……それを防ぐ為に、侵空竜エオスポロスを迎撃すると同時に、儀式を行う覇空竜アストライオスと四竜への攻撃を敢行を行う必要があります」
「強大なドラゴンとの戦いになりますが、ここで敗北する訳にはいきません。皆さんの力を今一度、発揮して頂きたいのです」
そしてセリカは。
「今回は、先ず熊本城に突撃為てくる『侵空竜エオスポロス』の内一体と対峙し、倒す必要があります。侵空竜エオスポロスは、覇空竜アストライオスの配下のドラゴン達で、素早い機動力と、鋭い斬撃力。そして電撃のブレスを吐く事を得意としている様です」
「侵空竜エオスポロスは、熊本城突入の12分後に自爆し、コギトエルゴスムとなる事によって、封印の解除の為のグラビティ・チェインを放出します。つまり、これを完全に阻止するには、12分以内に撃破しなければなりません」
「撃破出来ずとも、大きなダメージを与える事によって自爆効果が弱まり、封印を解除するグラビティ・チェインの領も減少する為、可能な限りダメージを与え続け、疲弊させる様にして頂きたいと思います」
「又、この戦いと同時に、儀式を行う覇空竜アストライオスと四竜への対策も必要になるでしょう。覇空竜アストライオスは、自爆による封印の解除に失敗した場合に、儀式を終了させた配下の四竜を犠牲に捧げてでも、魔竜王の遺産を手に入れ、竜十字島へと送り届けようとしているのです」
「これを阻止する為に、儀式完成前に、覇空竜アストライオス或いは四竜の一体でも撃破しなければなりません」
「しかし、覇空竜アストライオスと四竜は、侵空竜エオスポロスの軍団の背後に居る為、侵空竜エオスポロスを突破しなければ戦いを挑む事も出来ません」
「様々な事情を勘案しても、侵空竜エオスポロスと戦いつつ、少数の飛行可能なケルベロスを突破させる事で、覇空竜アストライオスと四竜を奇襲する作戦が、成功の可能性が一番である事が分かりました」
「勿論、これは非常に危険な作戦となるでしょう。ですが……全てはケルベロスの皆さんの勇気と力が頼りなのです。どうか、宜しくお願いします」
最後にセリカはもう一度皆を見渡し。
「覇空竜アストライオスと配下の四竜、これらは互いに連携し戦う事が出来る為、突破為た全戦力を一体の目標に集中させた場合、他四竜が連携し妨害する為、確実に撃破されてしまうでしょう。でも、それを阻止するには本命の攻撃の他、残り四体に対しても少数での攻撃を仕掛け、連携を妨害しなければなりません」
「四竜は、覇空竜アストライオスを守る事を最優先にしますので、ある程度の戦力でアストライオスを攻撃しつつ、本命への攻撃を集中させる、等の作戦が必要になると思います」
「厳しい戦いではありますが……皆さんの力を結集し、熊本を救って下さい。宜しくお願いします」
と、頭を深く下げた。
参加者 | |
---|---|
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031) |
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547) |
ミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629) |
エリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672) |
クライス・ミフネ(黒龍の花嫁・e07034) |
マロン・ビネガー(六花流転・e17169) |
ゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246) |
レシタティフ・ジュブワ(フェアリー・e45184) |
●熊本の空
夕闇迫る、熊本市内。
熊本城に程近い其方には、多くのケルベロス達が揃い立ち、竜十字島から来襲せしドラゴン達を遠くに眺める。
「……あれですか。本当……凄い数ですね……」
近づきつつある影に、静かに十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)がぽつり。
それにミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629)とレシタティフ・ジュブワ(フェアリー・e45184)も。
「ええ……数体という数では収まりませんね。これだけ多くの竜が一度に来襲してくるのは今迄にありませんでしたし……ある意味、ドラゴン達は切羽詰まっているのでしょうか?」
「ああ、そうだろう。しかしこの群れの中を突っ切らなければならないのか……ふん、面白いじゃないか」
鼻で笑い、不遜な笑みを浮かべるレシタティフ。
それを聞いたエリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672)も。
「全くだ。本当最近、随分と大規模侵攻が続くよなぁ……デウスエクスも、これは多少切羽詰まってきてる、と考えていいのかねー。そんなら重畳なんだけどね」
と肩を竦めながら溜息一つ吐くと、更に平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)も。
「うん。それにセリカちゃんが言ってた魔竜王の遺産……これ、良く分からないんだけど、ドラゴンに渡しちゃったら、碌な事にならないの! 断固阻止! 頑張るぞー!」
えいえいおー、と言う掛け声と共に拳を振り上げる和に、翼をはためかせながらゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246)と、マロン・ビネガー(六花流転・e17169)も。
「そうだね。伊達に壁にぶつかってまでも空飛び回ってるわけじゃないんだからね! 魚が水を得たが如くなこと、見せてやるー!」
「ええ。竜牙兵さんの次はドラゴンの所為で例のクマが探せないのですっ! でも今は仕方ないのです。このお城は熊本の方々の物ですから、壊させません! この身は空に行けずとも、心の行く先はきっと同じですから、ドラゴンをここで必ず止めますっ!」
ぐぐっ、と拳を握りしめるマロン、そしてクライス・ミフネ(黒龍の花嫁・e07034)が。
「うむ。さあ、ドラゴンじゃのう。この龍を殺めし、大太刀の錆にしてやらんといかぬのう」
何処か獰猛に笑う彼女。
そして、エリシエルがこほんと咳払いしつつ。
「まぁ敵陣に味方を送りつつ尖兵の撃滅、か。任された以上、きっちりとブッ潰してやるさ。正直……飛べない身としちゃ託すしかないってのはちっと歯痒くはあるけど、ね……」
とレシタティフとゲリンの二人へ視線を配すと、レシタティフは。
「ああ、任せておけ。わたし達は必ず突破し、喪亡竜エウロスを仕留めてくるさ」
ニヤリと笑う彼女の不思議な自信。
そして……とうとう来襲しつつある侵空竜エオスポロスに、ケルベロス達は真っ正面から対峙するのである。
●魁し竜を撃つ
そして……みるみる内に、熊本城に向けて近づいてくる侵空竜エオスポロス。
飛空している時には、米粒のような大きさだったが……ケルベロス達が真っ正面に立ち塞がると、個々が次々と高度を落とし、対峙する。
……が、ケルベロス達が見上げるは遥かに上方……全長12m程の巨躯が持つは、多大なる威圧感である。
「……すごいおっきいねぇ……」
ぽつりと呟いた和だが、対峙するドラゴンは。
『グゥオオオアアア……!!』
地を轟かせる咆哮を上げて、次の瞬間、閃光の雷撃を伴い、ドラゴンブレスを吐く。
先手のその一撃を咄嗟に身を呈し、和が庇う……が、雷鳴のドラゴンブレスは身を焦がし、かなりのダメージとなる。
「っ……!」
唇を噛みしめる和、そしてその雷をやり過ごすと共にミオリが。
「状況開始、オープンコンバット」
と短く呟き、構えると同時にエリシエルも。
「悠長な事やってらんないんでね。……一息に潰します。お覚悟を」
それぞれ構え、戦闘態勢。
更にスマホのアラームをスタートし……カウントダウンを開始。
「さて、我が名はクライス。其方を屠るものじゃ! その名を刻んでくれるっ!」
と、威勢良く見得を切りながら拳を掲げ、『森羅流奥伝・響天導地』を叩きつける。
そして、多少ダメージを喰らっていた和はフォーチュンスターを降り注がせ、服破り効果を付与。
続くジャマーに属するミオリが、メタリックバーストを展開し、狙アップを付与する。
対し飛行中のレシタティフが。
「さあ、では喰らって貰おう!」
と轟竜砲の一撃を叩きつけると、連携してゲリンのフォーチュンスター、エリシエルがスターゲイザー、そしてマロンは轟竜砲で、次々と足止め効果を追加付与していく。
そして泉は、後衛陣へブレイブマインで壊アップを付与し強化。
次の刻となれども、ドラゴンは全力での攻勢に向かう。
数多のドラゴンブレスが身を焦がし、対峙するケルベロスを振り抜けんと攻撃し続ける。
……そのドラゴンブレスを、次に掻い潜っていくのはクライス。
「っ……中々じゃの。しかし、ここを通す訳には行かぬ。絶対にじゃ!」
と、気合いと共に、受け流しつつの轟竜砲をとどろかせる。
そして、ミオリは敵の具合を見据えて。
「粒子加速器、全力運転……電子束、発射」
【AccES】を放ち、更にパラライズ効果を付与し、その動きを鈍らせる。
そして、エリシエルがフロストレーザーをスナイパーから打ち抜く。
対しマロンは黄金の果実でBS耐性をゲリン、レシタティフへと付与し、泉が前衛陣に向けてメタリックバーストの狙うアップを前衛に付与。
そして飛行中のゲリン、レシタティフはドラゴンの動静を見ながら。
「中々隙を見せてくれないね……流石に決死の覚悟で挑んでいるだけのことはあるね」
「ああ。であっても、必ず一人は送り出す。ゲリン、頼むぞ」
「うん、わかった」
そうレシタティフとゲリン二人が頷き合い、レシタティフが猟犬縛鎖、ゲリンが轟竜砲を連携攻撃。
更に和が、惨劇の鏡像を映し……ドラゴンにトラウマをあぶり出していく。
……3分目のアラームが鳴り響く中、ドラゴンの攻撃はその爪で切り裂いてくる。
雷とは違い、直接的に殺戮へと至る攻撃は、真っ正面から喰らえば重傷は間違い無いだろう。
僅かに身体を反らし、直撃を避けたものの、大ダメージに片膝を突く。
それにすぐに泉が。
「大丈夫ですか?」
と、すぐにスターサンクチュアリによる回復。
「ありがとう! よーっし、みんな頑張るよー!」
と和がサークリットチェインで強化しつつ、クライスがシャドウリッパー。
更にミオリのファミリアシュートでジグザグ効果、バッドステータスを一気に倍増させる。
続くエリシエルの雷刃突、マロンのドラゴニックミラージュ、ゲリンのフォーチュンスターに、レシタティフ。
「さぁ、惨めに死にさらせ。蛆虫め」
と吐き捨てながらの『天使の抱擁』。
そして、四分目。
もう一つの爪撃を、和が今度は受け止めつつ、飛行中の二人にファナティックレインボウの強化。
一方彼への回復に、再度泉がメタリックバーストを掛ける。
更にクライスのアイスエイジインパクトに、ミオリの更なるファミリアシュート。
多くのバッドステータスをジグザグ効果で積み重ねつつ、エリシエルのフロストレーザー。
そしてゲリンとレシタティフは、ドラゴンに近接しながら轟竜砲を叩きつけていく。
……5分目のアラームが鳴ると、ドラゴンも、多少ダメージは負っているものの、倒れる様な気配は全くない。
「流石にそろそろじゃな……皆、突破口を開くのじゃ!」
と声を上げ、仲間達と意識をあわせ、ドラゴンの注意を引き付けるようクライスと和が動く。
「龍が矮小な人、一人潰さぬとは滑稽じゃな!」
「そうだそうだー、自爆特攻するしか脳の無いトカゲヤロー。そんな強さでドラゴンを名乗るなんて恥ずかしくないのかー?」
そんなドラゴンの自尊心をあおるような物言いで、『森羅流奥伝・響天導』と『全知の一撃』を連携。
そしてミオリも。
「効力射モード。火力集中します」
と真っ正面に見据えたコアブラスターを打ち抜き、更にエリシエル、マロンも。
「山辺が神宮石上、神武の御代に給はりし、武御雷の下したる、甕布都神と発したり。万理断ち切れ、御霊布津主!」
「お残しは許しませんなのですよ!!」
『布都御魂剣』と『Op.Sp2【Bouffee au MB】』の、怒濤の連携を仕掛けつつ、泉は飛行中の二人に更にブレイブマイン。
そしてゲリン、レシタティフはドラゴンの左右に展開する……が、ドラゴンは暴れ、妨げる。
……そして、6刻目。
もう一つ、突破しようとした飛行中の二人に対し、ファナティックレインボウを更に付与、また泉はメタリックバースト、マロンが黄金の果実。
としつつも、和はドラゴンに。
「ひれ伏せー、そして仰ぎ見るのだー! お前のみたいなトカゲヤローなんて、地べたを這い蹲るのがお似合いなのだー!」
と挑発を重ねる。
一方クライスは再度の『森羅流奥伝・響天導』、ミオリのマジックミサイルを左右から打ち貫き、気を惹きつける。
そしてその隙に、一気にゲリン、レシタティフが飛行し、突撃開始。
勿論、ドラゴンは対峙しようとするも、エリシエルがフロストレーザーで狙撃し、振り向かせる。
「こちらはお任せを! 親玉は頼みましたよ!」
と大声で送り出すと、ゲリンは軽く手を掲げ。
「うん! ……マロンちゃんのためにも、絶対に飛んでみせる! 力を貸して、流星の太刀(メテオール・キーリッジ)!」
と威勢と共に、ドラゴンの追撃を打ち払い、突破。
二人突破し、残るは6人……多少の手負いとは言え、相手はドラゴン。
ケルベロス達からの挑発の言葉に何か目だった反応を返すという事もなく……目の前に立ちふさがる物を全て打ち倒そうと、暴れ回る。
『グゴォアアアア!』
と、更なるドラゴンブレスを吹き荒らさせ、ケルベロスの隙を誘う。
そして、僅かな隙を……その竜爪を薙いで、切り開く。
「っ……だから、させないよっ!!」
と、和とクライスが交互にその攻撃を受け止め、ダメージを分散。
そして、二人の体力の状況を見て、ほぼ常に、メタリックバーストとスターサンクチュアリ、更に爪の一閃による大ダメージには、マロンも加わり黄金の果実を飛ばす事で、戦線を維持。
また、ミオリがコアブラスター等でバッドステータスを積み重ねつつ、エリシエル、マロンは高命中率を行かし、確実にスターゲイザーやフォーチュンスター等、確実にダメージを与えていく。
そして……和の惨劇の鏡像と、クライスのアイスエイジで、討伐に向けて仕掛けて行くのである。
●喪亡竜の声
そして……一方、侵空竜エオスポロスを突破した先。
四竜が一つ、喪亡竜エウロス。
全長20m程の体躯を誇るそのドラゴンの前に飛来するケルベロス。
「……あれだな、エウロス発見」
飛行するレイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721)が、エウロスの姿を視認すると共に、その方角へと向かう。
同じエウロスの元へ、別の方向から近づく影。
フレック・ヴィクター(武器を鳴らす者・e24378)と、アレックス・アストライア(煌剣の爽騎士・e25497)の二人も、エウロスの元へと接近。
……エオスポロスを突破した第一陣は三人……だが、流石に三人で四竜の一角を相手にするのは……。
「流石に荷が重すぎるね……取りあえず、間合いを取りながら追跡しようか」
「了解」
と三人はつかず離れずの距離で、エウロスを追跡。
そして次の刻……侵空竜エオスポロスを突破した第二陣が、次々と合流。
「お待たせっ……! あれがエウロス、かな?」
「ああ……そうだな。すまん、ちょっと遅れたか」
「大丈夫だ。良し……一気に仕掛けるとしよう」
ゲリンとレシタティフの言葉に頷くレイリア……そして、その時と同じくして、同時に他の四竜と、アストライオスとの戦闘が一気に始まっていく。
その状況に、今が攻め時。
「では……始めましょうか、皆さん」
天壌院・カノン(ペンタグラム・e00009)の言葉と共に、ケルベロス達が対峙。
現れたケルベロス達にエウロスは。
『邪魔スルナ……!』
怒りを孕み、近づくな、と言わんばかりに威嚇。
その言葉に対し、ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)は。
「オレ/我が相手をする。加勢はさせん」
とバトルオーラを纏いつつ、構えたバスターライフルよりフロストレーザーで射抜く。
初撃がその翼を傷付けるも、さして気にしている風でもないエウロス。
更にアビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)が続いて轟竜砲の射撃、更にカノンからの時空凍結弾と、レシタティフの『天使の抱擁』、そしてゲリンが「悠久のメイズ」。
そしてアレックスが。
「我は女神の騎士にして裁定者。彼の輝きを以て汝に相対す。今まさに審判の時。汝、懺悔せよ。これより全て、汝より出でて還る物!」
と『いざや傾け、天秤よ』を発動し、足止めを付与する。
多段に仕掛けられる攻撃で、ドラゴンの動きを鈍らせるように攻撃を継続。
そして、攻撃する仲間達に対し、レイリアがメタリックバーストで命中率をブースト、戦況を優位に進める。
その一方で。
「では、奇襲を仕掛けるとするか……」
と一言紡ぎ、ネロ・ダハーカ(マグメルの柩・e00662)が外側から回り込んで、エウロスの背後に回り込み、後方からの轟竜砲。
『グゥ……!』
と、その一撃は背後から直撃し、苦悶に唸る。
しかし……ドラゴンは。
『許サン……!』
怒りを露わにし、反撃……その狙いは、レシタティフ。
「くっ……!」
真っ正面からの直撃はどうにか避けたものの、風圧に身は押し返される。
防ぐ為に掲げた腕から、多少の出血。
しかし、退く事は出来ない……アストライオスらと戦う仲間達が、彼を倒す事を信じ。
「全く。あなた達は随分と魔竜王の遺産にご執心なようだね。でも、こんなに強くて凄いドラゴンが、たまころ一つに拘るなんて随分と滑稽じゃない!?」
と、フレックが敢て挑発じみた言葉を投げかけると、巨躯から睨み付けて。
『ウルサイ……!』
怒りの怒号、だがフレックは気にしない様にして。
「何にせよ、あなたが加勢することは出来ないわ。さぁ……これでも喰らいなさい。我が手に来たるは大いなる父神が神槍! 刹那たるこの時にてその力を示せ!」
光翼を鋼鉄の刃へと変化させ『Replica「Gungnir」』にて攻撃すると、同時にアビスも。
「……もうちょっと苦んだら」
と『氷盾結界・腐蝕領域』を展開、ジグザグ効果でバッドステータスを倍加させて足止め効果を高める。
そして、ゲリンとレシタティフが連携を取っての轟竜砲を撃ち放つと、ネロが。
「欲しがれ。目を離すなど聴してあげない」
『舞踏会:咎の戀』、更に足止め効果を付与。
そしてレイリアのメタリックバーストに、カノンが憑霊弧月。
……大量の足止め効果を多重に付与する事で、敵の動きを大幅に制限していく。
そして……3刻目。
ドラゴンの爪撃は更に激しく、苛烈になり、ケルベロスの包囲網を切り抜けようと暴れ廻る。
その攻撃は、今度はゲリンに一閃し、こちらも大きなダメージを喰らう。
ただ、悠長に回復為ている時間もない為、どうにか飛び続け、エウロスに対峙し続けるしかない……まだ、他の四竜達の方からは、断末魔の声は聞こえてこない。
時折気にするようなエウロスの仕草には、レシタティフが。
「ほら、余所見をしている暇はないぞ。相手はこっちなのだからな!」
と尊大な言葉を投げかけつつ、轟竜砲などを撃って注意をこちらへと惹きつけ続ける。
勿論、飛行中のポジションも生かし、ドラゴンの行く先を9人全員が縦横無尽に動く事で、身を呈してでも先へと行かせない様にする。
そして、前後左右、様々な方向から牽制攻撃を続け、その包囲網から逃げる事を制する。
……エウロスと戦い、四分、五分、そして……六分が経過した、その時。
『ドゴォオォン……!!』
遠くから轟く、爆発音。
視線を配すと……熊本城に向けて突撃していったエオスポロス達が、次々と爆発していく光景。
そして、その爆発した後に、舞い上がる土煙の中……熊本城が、崩れ墜ちて行く姿。
「っ……」
唇を噛みしめるレシタティフ……だが、目前のエウロスは、そんなケルベロス達の僅かな動揺に気付いたようで。
『ハハ!』
彼女の元へ一気に接近すると……そのドラゴンテイルが頭上から叩き落とされ……その衝撃に、レシタティフの体力は、かなりギリギリに追い詰められる。
しかしながら、エウロスを抑える為には、戦い続けるしかない。
「少ししか回復出来ないけど……頑張ろう」
とアレックスがブレイブマインで回復するが、それでも不足している状況。
「仕方ない……霊峰天舞へ願い奉り候。左に猛る火砕の熔たる赤を。右に仄めく幽灯の劫たる蒼を。是弐領を半躯に宿し……いざ我が追憶の門を解き開かん!」
と『想起・竜皇顕現蘇婆訶』で更に回復を付与する。
一方、アビスの轟竜砲に続き、レシタティフの『天使の抱擁』、ネロの轟竜砲。
レイリアがグラインドファイアで炎に包み、カノンの時空凍結弾。
更にゲリンが『流星の太刀』と、フレックの絶空斬の斬撃を続け、体力を削る。
そして、七分目、八分目……。
回りを一瞬見渡したエウロス……その瞬間。
『グゥォオオ……!!』
遠くの方から聞こえる、断末魔の悲鳴。
……どうやら仲間達が、ゼピュロスをどうにか倒した様で……ゼピュロスの断末魔の悲鳴である。
『チッ……! シカタナイ……!』
僅かに苛立つ様な素振りを見せたエウロス。
「逃げる気か! させんぞ!」
とレシタティフが叫び、立ちはだかるも。
『邪魔ダ、シネ!!』
と、鋭く尖った竜爪が、レシタティフを一閃。
その一撃に、飛行状態を維持する事が出来なくなり……落下し始めるその身体。
「すまない……頼む……!」
落下していくレシタティフが、後を仲間に託す。
しかしながら……一人減った包囲網は、大きな隙間が出来てしまう。
すぐに補間しようと他の仲間達が動くが……その巨躯と、大きな翼を大きく羽ばたかせながら、逆の方向へと撤退しようとする素早い動き。
「っ……!」
どうにか追い縋ろうと、フレックの熾炎業炎砲や、ネロのホーミングアローが放たれるが……その攻撃が当たっても、踵を返すこと無く、熊本の空を飛翔していくエウロス。
ケルベロス達の速度よりも早く撤退していく彼の姿を見送りながら……。
「……どうにか、最低限の作戦は成功した、と言えるのかな?」
アレックスの呟きに、アビスはこくり、と頷き。
「……そうだね。取りあえず、熊本城の状況を確認しなければ」
と……土煙の晴れつつある熊本城に向けて転回するのであった。
●影の行く先
……一方、戦闘開始より12分。
侵空竜エオスポロスも、多く対峙するケルベロス達も……共に、かなりの疲弊の跡が見て取れる。
『グゥ……ゥ……』
と、低くうなり声を上げた侵空竜エオスポロス……次の瞬間。
無情にも、スマホのアラームは12分の経過を警鐘する。
「っ……不味いね」
唇をかみしめるエリシエルだが……効率的な手立ては、攻撃するがのみ。
そして眼前のドラゴンは、立ち、ケルベロス達を睨みつけた。
……その睨みは、心底の恐怖心をあぶり出すが如く、見据えてくる。
でも、ケルベロス達は決してあきらめることなく、12分目、全員がフルパワーで攻撃に傾注。
……しかし、ドラゴンは倒れることはなく……次の瞬間。
『グゴオオオ!!!』
地に轟く咆哮と共に、その身体は雷鳴に包まれ……熊本城に向けて飛翔。
そしてまばゆい光と共に、目前のドラゴンをはじめとして、20体程のドラゴン次々と熊本城に突撃、自爆。
その爆風の中に、熊本城は崩壊……砂煙へと包まれてしまう。
……暫くの間、砂煙の中に熊本城は見えなくなる。
が、数分後……だんだんと砂煙が晴れていくと、そこには……天守閣のあたりに浮かんだ、全長3M程のドラゴンオーブ。
誰かがそのドラゴンオーブへと近づこうとするが……周囲の空間は、その者が近づくと共に、震動し、弾かれる。
「これは……空間がゆがんでいる?」
とエリシエルの言葉に、泉は首を横に振り。
「いや……違います。もっと、禍々しい、何か……でしょう」
漂う気配に冷や汗を滲ませ……そして、和が。
「仕方ないね……みんな、一端撤退だよ。きっと、セリカちゃんが考えてくれるよ!」
と仲間達を促し、そしてケルベロス達は一端その場を離脱するのである。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年7月7日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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