熊本城ドラゴン決戦~茜の空に尾を引いて

作者:洗井落雲

●流星群
 夕焼けに赤く染まる空を、いくつもの、黒い影が埋め尽くす。
 東の空より来た、絶望の黒い影は、悠然と翼をはばたかせ、大空を縦断する。
 熊本城の上空を旋回する黒い影――ドラゴンの群れは、大空の支配者とはすなわち自分達であると確信する様に、悠然と、悠然と空を飛んだ。
 その内の一匹が雄たけびを上げるや、眼下にそびえる熊本城へと急降下した。
 ドラゴンが熊本城の外壁を破壊し、内部へと到達するや、凄まじい閃光と爆音が響き渡り、己が身を爆砕させた。それに続くように、空からは数多の同種のドラゴンが熊本城へと降下、次々にその身を爆ぜさせ、辺りを吹き飛ばしてゆく。
 しばしの後。もはや原型など留めていない熊本城の跡地から、ゆっくりと、ゆっくりと、何かがその姿を現した。

●星を撃つもの
「集まってくれたか。今回の作戦について説明する」
 そう言って、アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)はごくり、とつばを飲み込んだ。その様子から、緊張が見て取れる。
 人前に出ることについての緊張ではないのだから、アーサーのそれは、この作戦への恐れだろう。それだけ危険な作戦である、という事なのだ。
「まず、先だって行われた熊本市での作戦は、最小限の被害で敵を撃退することに成功した。皆のおかげだ。まずは感謝を。――だが、既に見た者もいるかもしれないが、竜十字島から出撃したドラゴンの軍団は、すぐそこまで迫っている。その目的は、『熊本城』に封印されている『魔竜王の遺産の奪取』……これに間違いはない」
 ケルベロス達の活躍により、熊本市襲撃によるグラビティ・チェインの略奪は阻止できた為、魔竜王の遺産の封印はいまだ健在である。
 しかし、『覇空竜アストライオス』は、それをある程度カバーできる次善策を持っていたようだ。アストライオスは、『侵空竜エオスポロス』の軍団を熊本城に突撃、自爆させる事で、エオスポロス自身のグラビティ・チェインを捧げさせ、封印を解放しようとしている。
「皆には、熊本城に向かってもらい、熊本防衛の戦いに参加したケルベロス達と合流。そして熊本城を防衛してもらいたい」
 敵の作戦は、二段階に分けられる。
 まず、侵空竜エオスポロスの軍団を熊本城に突撃・自爆させ、魔竜王の遺産の封印を解除する。
 その後、覇空竜アストライオスと配下の四竜、『廻天竜ゼピュロス』、『喪亡竜エウロス』、『赫熱竜ノトス』、『貪食竜ボレアース』が儀式を行い、封印解除された『魔竜王の遺産』を、竜十字島に転移させる。
「もし魔竜王の遺産が竜十字島に転移させられてしまえば、その奪還や破壊を行う事は極めて難しい……ほぼ不可能と言ってもいい。そうなってしまっては、ドラゴン勢力の勝ちだ。それだけは防がなければならない。つまり、今回は、エオスポロスの軍団を撃退しつつ、転移儀式を行っているアストライオスと四竜へも攻撃を行わなければならない、という事なんだ」
 アーサーはふぅ、と息を吐きだした後、
「強大なドラゴン達との戦いとなるが……ここで敗北するわけには、いかない」
 意を決したように、そう告げた。
 アーサーが告げた、今回の作戦の内容は、こうだ。
 まず、熊本城にて『侵空竜エオスポロス』を撃退する。
 エオスポロスは、素早い機動と鋭い斬撃、電撃のブレスなどを得意としているようだ。
 エオスポロスは、熊本城に突入してから12分後に自爆し、自身をコギトエルゴスムとする事で、封印の解除の為のグラビティ・チェインを放出する。
 これを阻止する為には、12分が経過する前に、エオスポロスを撃破する必要があるのだ。
 仮に時間内に撃破できず、自爆を許してしまった場合でも、それまでに大きなダメージを与える事ができれば、自爆によりささげられるグラビティ・チェインの量は減少する。諦めず、可能な限り攻撃を行ってもらいたい。
 そして、この戦いと並行して、儀式を行なうアストライオスと四竜への対策も同時に行う必要がある。
 アストライオスは、エオスポロスの自爆による封印の解除に失敗した場合、儀式が完了した後に、四竜を生贄にしてグラビティ・チェインを捧げ、魔竜王の遺産の封印を解除。遺産を手に入れ竜十字島に送り届けようとするという。
 これを阻止する為には、儀式が完成する前に、覇空竜アストライオスと配下の四竜の内、最低でも一体を撃破する必要がある。
 だが、アストライオスと四竜は、エオスポロスの軍団の背後にいる為、エオスポロスの群れを突破しなければ、戦いを挑む事は出来ない。では、どうするか。
「様々な作戦を検討した結果、『エオスポロスと戦いながら、その最中に敵の隙を突き、飛行可能な少数のケルベロスにエオスポロスの軍団を突破させ、アストライオスと四竜を奇襲する』という作戦が、最も成功確率が高い、と判断された」
 アーサーは口元に手をやった。
「……非常に危険な作戦だ。だが、他に手はない」
 絞り出すように、そう言った。
 なお、アストライオスと配下の四竜は、互いに連携して戦う事ができる。そのため、突破したケルベロスの全戦力を一体の目標に集中させる、と言った作戦をとった場合、他の四竜が連携して妨害を行って来る。これでは確実に撃退されてしまうだろう。
 それを阻止する為には、本命の攻撃の他、残りの4体に対しても、少数でも攻撃を仕掛けて、連携を妨害する必要がある。
「非常に困難なミッションだ。作戦の成功と……なにより、君達の無事を、祈っている」
 そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出した。


参加者
篁・悠(暁光の騎士・e00141)
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)
ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)
宵華・季由(華猫協奏曲・e20803)
柚野・霞(瑠璃燕・e21406)
相川・愛(メイド見習い魔女見習い・e23799)
ノルン・ホルダー(黒雷姫・e42445)

■リプレイ

●侵空竜迎撃
 空より来る侵空竜の吐き出した雷のブレスが、ケルベロス達の身体を焼いた。
 灼熱の痛みと、鼓膜を破らんばかりの轟音、そして感覚を失ってしまったかと誤認するほどの強烈な痺れが、ケルベロス達を襲う。
 夕闇せまる熊本城を背景に、数多のドラゴンとケルベロス達が、戦いを始めていた。
 剣戟と叫び声、そして竜の咆哮が響き渡る。
 12mの巨体を誇るエオスポロスに比べ、ケルベロス達は――人間は、あまりにも小さい。
 アリと象の戦い。両者を見た者が、もし絶望に囚われているならば、そんな言葉を思い浮かべるかもしれない。
 だが、人は――ケルベロス達は、決して希望を捨てたりはしない。
「人間を――なめるんじゃねーぞ!」
 渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)が叫んだ。同時に高く飛びあがり、強烈な蹴りの一撃を叩き込む。エオスポロスの鱗を削り取る様に、エアシューズのローラーがフル回転。
「同じ雷でも、こっちは皆に勇気と力を与える《閃(ブリッツ)》だ!」
 ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)が叫び、上空に手をかざした。
 手のひらから空へと放たれた雲の塊は、ケルベロス達の上空へと広がると、雷を放ち、ケルベロス達を撃った。肉体と精神を活性化させる雷――ハインツの『竜ノ加護《閃》(ドラッヘグナーデ・ブリッツ)』だ。
 主の放つ援護に応えるように、オルトロス『チビ助』は走った。咥えた剣による斬撃が、竜の鱗を切り裂く。
「彼らの日常を。彼らの街角を。壊させるものか! ……総ては、牙無き人の未来の為に!」
 篁・悠(暁光の騎士・e00141)が叫ぶ。その身体を包む『神雷装・輝煌』は、人々を鼓舞するかのように光輝き、
「超鋼よ! 暁に立つ勇者に、星光の輝きを!」
 その身を包むオウガメタルも、また、輝いていた。
 柚野・霞(瑠璃燕・e21406)は『Spata Orichalci』をかざし、その魂のエネルギーを放出した。魂のエネルギーはラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)の身の内へと宿り、活力となる。
「援護、感謝する」
 ラギアの言葉に、霞は頷いた。ラギアは『伏雷』をヌンチャクのように振り回しながら、エオスポロスへと接敵。その動きの合間を縫って、鋭い爪へと打撃を与える。
「え、ええと、えと、ま、まずは援護から……っ!」
 わたわたと慌てつつ、相川・愛(メイド見習い魔女見習い・e23799)はオウガメタルへと呼びかけ、輝きと共にオウガ粒子を放出させた。
「まぁ、落ち着いて」
 同様に、オウガメタル『Chocola』へと呼びかけ、チョコ色の装甲から粒子を放出させつつ、宵華・季由(華猫協奏曲・e20803)が愛へと声をかけた。
「俺達が必ず、二人を送り出して見せる。だから、大丈夫」
 安心させるように言う季由。その言葉を保証する様に、ウイングキャット『ミコト』は小さく鳴いた。パタパタと背中の羽をはばたかせ、清浄なる風を起こし、仲間達を癒していく。
 保証なんてない事は、ここにいる誰もが分かっている。針の穴を通すような作戦を、それでも実行しなければならないくらいに、ギリギリの状況にいる事は。
 それでも、ここにいる誰もが、絶望とは縁遠い心境にあった。
 最大のピンチなんて、今まで嫌って程経験してきた。
 それでも自分達は、その全てをはねのけてきた。
 慢心とは違う、経験と実力により裏打ちされた自信。
 だから愛も、今だけは、表情を引き締めて頷いた。
「凄いね」
 ノルン・ホルダー(黒雷姫・e42445)が呟く。石化魔法の呪文を唱え、エオスポロスへと撃ち放ちつつ、
「竜牙兵達の親玉で、狙いはドラゴンオーブで……凄い事なんだけど、ちょっとだけ、ワクワクしてる……かも」
「相手にとって不足はなし、ってな」
 数汰が答えるのへ、
「少しくらい不足してくれても構わないんだが」
 苦笑を浮かべつつ、季由。
「敵は強大ですが――同時に、それだけの戦力を繰り出してまで確保を狙うという事は、魔竜王の遺産が、敵にとってのアキレス腱となりかねない、という事でもあります」
 霞が続き、
「ここを守り切れれば、戦況は私達にとっても有利に動くはず……いえ、それだけではありません、この地に住まう人々の為にも、必ず、勝利を……!」
 その言葉に、ケルベロス達が頷く。
「やろうぜ、皆で力を合わせて敵を打ち破るんだ!」
 ハインツが声をあげた。それに応じるように、ケルベロス達はエオスポロスへ構え直す。エオスポロスは空中で大きく羽ばたくと、ケルベロス達目がけて突撃してくる。
「来るぞ!」
「散開ッ!」
 ラギア、そして悠が叫び、ケルベロス達は一斉に飛びずさった。間を置かずしてエオスポロスが『着弾』し、同時に回転するように尻尾を振るう。その一撃を受けながらも、
「まだ……まだぁ!」
 ハインツは叫び、戦場を駆ける。同時に舞う花びらが仲間達の傷を癒し、チビ助は空中でエオスポロスを睨みつけ、その肌を発火させる。
「凍っちまえッ!」
 数汰の放つ凍結光線が宙を奔る。エオスポロスの肌をなぞるように光線がはしり、エオスポロスが鳴き声を上げた。
「幻影よ……!」
 霞が放つドラゴンの幻影が、エオスポロスへと殴り掛かる様にその身を躍らせた。二体の竜が絡み合い、幻影が消えるとともにエオスポロスの身体を炎が包む。
 一方で、仲間達の攻撃を後押しするように、オウガメタルの輝きが戦場を美しく彩る。
「撃て、撃て撃て! 少しでも体力を削るんだ!」
 ラギアが叫びながら、雪色のアームドフォート、『フレースヴェルク』を展開し、一斉射撃を放つ。
 愛がエクトプラズムを圧縮して撃ち放ち、
「絶対に、とめて見せるっ!!」
 ノルンもバスターライフルでの射撃を行う。三者の砲撃が次々とエオスポロスに着弾し、爆発する。エオスポロスは少々身じろぎをした物の、未だ致命傷には至らない。エオスポロスはギラリとケルベロス達を睨みつけ、ふわりと飛び上がるや、一瞬にしてトップスピードに乗り、その巨体による体当たりを敢行した。ケルベロス達を巻き込み、大地へと突撃する。
 土煙と轟音をあげて着弾。土煙を縫うようにして、ケルベロス達が現れた。
「チビ助……すまない……!」
 歯噛みするように、ハインツが呻いた。その身を挺して仲間を庇い、身体を維持できず一時的に消えた友へ。しかし悔やんではいられない。ハインツは仲間への援護を再開する。
「刹那は久遠となり、零は那由他となる。悠久の因果は狂い汝の刻は奪われる……狂え、時の歯車」
 数汰が唱え、放つ圧縮したグラビティは、それを注ぎ込まれた目標の体内時間を加速させ、負傷や毒などの効果を急速に悪化させるという。
 ――『時流変転(クロノアクセル)』。それを受けたエオスポロスは、苦悶の叫びをあげる。
「ジャスティーン、GO!」
 悠の叫びと共に放たれたファミリアが、エオスポロスへと突撃。合わせるように霞が凍結の銃弾を打ち放ち、ラギアは『ドラゴンステイル』を構えて突撃、その大斧の一撃を叩き込んだ。
 愛がエクトプラズムを撃ち放ち、季由の咎人の血が仲間達を濡らす。その血に込められた力が仲間達の傷を癒した。
「わたしたちの希望を以って、お前たちの野望を撃ち落とす……!」
 ノルンが言って、静かにグラビティを練り始めた。練り上げられた膨大なグラビティは、巨大な鳳凰の姿を形作る雷となり、エオスポロスへと迫る。
 羽ばたいた鳳凰がエオスポロスを飲み込み、雷にて激しく打ち付けた。
「時間だ!」
 悠が叫んだ。同時に、ハインツとラギアがその翼をはばたかせ、飛翔した。それを援護するように、ケルベロス達の一斉攻撃がエオスポロスへと叩きつけられる。
 だが、エオスポロスは、ハインツとラギアの前へ、立ちはだかったのである。

●茜の空に、尾を引いて
 茜の空に、尾を引いて。小さな影が、飛んで行く。
 一つ。二つ。片方は飛行に不慣れな様子で、少しふらふらと。
「――う、上手く、行きました……!」
 影――愛が声をあげるのへ、もう一つの影――霞が頷いた。
「ええ……でも、私達の役目は、これからです」
 霞の言葉へ、愛が頷いた。
「は、はい……! か、霞様、ここで食い止めて下さる皆様のためにも、がんばりましょう、ねっ!」
 愛の言葉を合図にしたように、二人は、それぞれ別の場所へ向かって飛んでいった。

「ははっ、残念、だったな……!」
 ハインツが、ニヤリと笑った。
「俺達は囮、というわけだ。迫真の演技だっただろう?」
 ラギアが不敵に笑って、言った。
 エオスポロスの隙をついて、二人のケルベロスを突破させる。それが、今回の作戦だった。本命は、霞と愛。それを隠すために、ハインツとラギアは、戦闘中、敵の気を引くように翼をはためかせたりして、「飛行して、戦闘を離脱しようとしている」と思わせたのだ。
 そしてエオスポロスは、まんまとそれに引っかかった。
 ケルベロス達は、本命の二人をノーマークで突破させることに成功したのである。
 エオスポロスは吠えた。
「生意気に、悔しがってるのか?」
 数汰がファミリアを射出し、エオスポロスへと追撃を仕掛ける。ハインツは援護の花弁をまき散らし、
「皆がオレ達の勝利を祈り信じてるんだ。悪いけど、ここで負けてはやれなくてね!」
「後は貴様を倒すだけだ! 輝きをその身に刻め! 神雷ッ! 光雨ッ!!」
 悠が跳んだ。『神雷砲』を携え、神速の軌跡を描く。その動きは不規則にして不意。慣性すら無視した軌跡から放たれる無数の射撃による飽和攻撃が、エオスポロスへ次々と突き刺さる。エオスポロスが叫び声をあげた。
「貴様の行い、死を以て償え」
 静かな呟きと共に、ラギアが駆けた。猛々しい氷獄竜の拳を構えての突撃。弾丸のように、一筋に駆け抜け、放たれるは氷結の一撃!
(「霞、愛……どうか無事で」)
 二人の飛んでいった空を見やりつつ、季由が胸中で呟く。
「さて……ここで俺達が倒れたら、あの二人に申し訳が立たない……それに、ちゃんと皆、無事に帰らないとな」
 呟き、癒しの花弁を散らす。
「さぁ、最後の仕上げだ!」
「後は考えない……必ず! 止めるっ!」
 ノルンは再び、『神凰雷鳴覇(エクレール・ラルゴ)』による全力攻撃を放つ。雷電の鳳凰がエオスポロスを飲み込み、雷にて焼き尽くす。
 エオスポロスは悲鳴をあげ、たまらず空へと逃れた。やがて一声鳴くと、ケルベロス達へ向けて急降下を行う。
「また体当たりか……いや!?」
 数汰が疑問の声をあげた。エオスポロスの視線は、明らかにケルベロス達の背後……熊本城を向いている。
「タイムリミットか!」
 ラギアが叫んだ。
「最後のチャンスだ、止めるよ、皆!」
 ノルンの言葉に、ケルベロス達が頷いた。
 こちらへと飛翔するエオスポロスへ向けて、ケルベロス達は最大攻撃を叩き込む。
 数汰が『時流変転(クロノアクセル)』を撃ち込む。エオスポロスの体中がめきめきと悲鳴をあげ、あらゆる傷口が急速に開いていく。さらにハインツが竜砲弾を撃ち込み、
「ジャスティーン!」
 悠がファミリアを撃ち込む。ほぼ同時に着弾し、爆発と衝撃を与える。エオスポロスが悲鳴をあげる。
 ラギアが『ドラゴンステイル』による一撃を叩き込み、季由は氷雪の猫を召喚する。猫が踊れば氷の嵐を呼ぶ。嵐はエオスポロスを飲み込み、その身を凍らせるだろう。
「止まれ……っ!」
 祈る様に放った、ノルンの石化魔術がエオスポロスへと直撃する。ケルベロス達の猛攻を受けたエオスポロスは、空中で大きく悲鳴をあげた。途端、こと切れたようにがくり、と首が項垂れる。
 エオスポロスは、速度を殺すことなく、そのまま熊本城へと突っ込んだ。だが、爆発は起きない。すでに空中にて死を迎えていたエオスポロスは、その亡骸を激しく熊本城へと投げ出しただけである。
「止まった……?」
 声をあげるノルンに、
「やった……!」
 ハインツが喜びの声をあげる。だが。
「いや……まだだ!」
 ラギアが声をあげた。他のチームのケルベロス達が相手取っていた一部のエオスポロス達が、爆発を起こそうとしている。
「くっ……一旦引くぞ!」
 悠の言葉に、ケルベロス達は一斉に戦域を離脱する。
 途端、いくつもの爆発が起こり、熊本城を飲み込んだのであった。

●魔竜王の遺産
「皆、無事か……?」
 煙が遮る世界の中で、季由が声をあげる。
 あたりは不気味なほどに静まり返っている。先ほどまでの戦いが嘘であったかのように。
「なんとか……熊本城はどうなった?」
 ハインツが尋ねる。徐々に煙が晴れ、視界がクリアになっていく中、ケルベロス達を迎えたのは、
「熊本城が……」
 消滅した熊本城と、
「あの、天守閣があったあたり……!」
 ノルンが呆然と声をあげた。
 そこにあったものは、3mほどの大きさの物体――。
「ドラゴンオーブ、なのか」
 ラギアが声をあげた。
 遠目から見ても、どこか禍々しい雰囲気を纏うその物体は、熊本城・天守閣があったあたりの空間に浮き、漂っている。
「くそっ……!」
 思わず駆け出そうとしたハインツを、
「だめだ、ハインツ君!」
 悠が制した。
「けど……!」
 ハインツが声をあげるのへ、
「危険すぎる……今は一旦退いた方がいい」
 悠が言い、
「俺も同感だ……ヤバイ空気を感じる」
 数汰も同意する。
「俺達も万全じゃないからな……深追いは避けた方がいい」
 季由の言葉に、ハインツは頷いた。
「ドラゴンオーブ……今は……」
 ラギアが悔し気に声をあげる。
「行こう、皆」
 ノルンの言葉に、ケルベロス達は頷いた。

 ケルベロス達は、アストライオスの作戦をくじく事には成功した。
 だが、突如現れた魔竜王の遺産――ドラゴンオーブは不気味に輝く。
 ひとまずの勝利と、次なる戦いの予感を感じつつ。
 ケルベロス達はひとまずの帰路へとつくのであった。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月7日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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