熊本城を夕焼けが茜に染めている。
太陽が沈むにしたがってその色合いも徐々に暗い影へと取って代わろうとしている。
しかし、訪れる夜よりも早く空を闇で覆ったものがあった。
それは、数多のドラゴンの群れ。
侵空竜エオスポロスの軍団が、熊本城の上空を覆いつくしたのだった。
一体のドラゴンが、大きく翼を広げて、天高く、高く、舞い上がった。
そして、十分な高度を取ると、弾丸のような猛スピードで突進降下し、熊本城へと激突した。
大地が揺れに揺れ、爆音が辺り一帯に鳴り響く。
天守閣に大穴をあけたドラゴンは、その肉体は爆散し、ただのコギト玉となって破壊した城の奥へと転がり落ちていった。
ドラゴン達は天高く咆哮を上げて、同じように次々と熊本城へとその身を躍らせ、爆破していったのだった。
そう長い時間もかからず、熊本城は完膚なきまで破壊されつくした。
つい先ほどまで熊本城であった廃墟の中から、やがて、恐ろしい力を秘めた『何か』が姿を現したのだった。
●
セリカ・リュミエールは予知を告げる。
「熊本市全域で行われたドラゴン勢力との戦いは、最小限の被害で敵を撃退する勝利する事ができました。
しかし、竜十字島から出撃したドラゴンの軍団が、すぐそこまで迫ってきています。
敵の目的は『熊本城』に封じられた『魔竜王を復活させる事すらできる魔竜王の遺産の奪取』に間違いありません。
ケルベロスの活躍により、グラビティ・チェインの略奪を阻止できた為、魔竜王の遺産の封印はいまだ破られていません。
しかし、この封印を無理やりこじ開けるべく、ドラゴンの軍団は熊本城に特攻、自爆する事で自らのグラビティ・チェインを捧げ、封印を解放しようとしているのです。
皆さんには、今すぐ、熊本城に向かい、熊本の戦いに参加したケルベロス達と合流、熊本城の防衛に参加してほしいのです。
敵の目的は2つあります。
1つは『侵空竜エオスポロス』の軍団を熊本城に突撃させて自爆させ、魔竜王の遺産の封印を解除する事。
そして、もう一つは、覇空竜アストライオスと配下の四竜、廻天竜ゼピュロス、喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースの儀式により、封印を解除された魔竜王の遺産を、竜十字島に転移させる事です。
魔竜王の遺産が、竜十字島に転移させられてしまえば、こちらから手出しする事は至難となり、ドラゴン勢力の野望を食い止める事は不可能となるでしょう。
それを防ぐ為には、侵空竜エオスポロスを迎撃すると同時に、儀式を行う、覇空竜アストライオスと四竜への攻撃を敢行する必要があります。
強大なドラゴンとの戦いとなりますが、ここで敗北するわけにはいきません。
厳しい戦いが続きますが、どうか皆さんの力を貸してください」
●
セリカは引き続き作戦内容を説明する。
「まず、熊本城に突撃してくる『侵空竜エオスポロス』1体と戦います。
侵空竜エオスポロスは、覇空竜アストライオス配下のドラゴンで、素早い機動と鋭い斬撃、電撃のブレスなどを得意としています。
侵空竜エオスポロスは、熊本城突入の12分後に自爆しコギトエルゴスムとなる事で、封印の解除の為のグラビティ・チェインを放出します。
これを完全に阻止する為には、12分が経過する前に撃破する必要があります。
撃破ができなかった場合も、大きなダメージを与える事ができれば、自爆の効果が弱まり、封印を解除するグラビティ・チェインも減少するので、可能な限りダメージを与え続けるようにしてください。
この戦いと同時に、儀式を行なう、覇空竜アストライオスと四竜への対策も必要になります。
覇空竜アストライオスは、自爆による封印の解除に失敗した場合、儀式を終了させた配下の四竜を犠牲に捧げてでも、魔竜王の遺産を手に入れ竜十字島に送り届けようとします。
これを阻止する為には、儀式が完成する前に、覇空竜アストライオス或いは四竜の一体でも撃破する必要があります。
しかし、覇空竜アストライオスと四竜は、侵空竜エオスポロスの軍団の背後にいる為、侵空竜エオスポロスを突破しなければ戦いを挑む事は出来ません。
検証の結果、侵空竜エオスポロスと戦いつつ、少数の飛行可能なケルベロスを突破させて、覇空竜アストライオスと四竜を奇襲する作戦が成功の可能性が最も高い事がわかりました。
覇空竜アストライオスと配下の四竜は、互いに連携して戦う事ができるため、突破した全戦力を一体の目標に集中させた場合、他の4竜が連携して妨害してくる為、確実に撃退されてしまいます。
それを阻止する為には、本命の攻撃の他、残りの4体に対しても少数での攻撃を仕掛けて、連携を妨害する必要があるでしょう。
四竜は、覇空竜アストライオスを守る事を最優先にする為、ある程度の戦力でアストライオスを攻撃しつつ、本命の攻撃を集中させる作戦は有効かもしれませんね。
非常に危険な作戦となりますが、全てはケルベロスの皆さんの勇気と力にかかっています。どうぞ、よろしくお願いします」
セリカは全て言い終えると、ご武運を、と言い添えて、深く一礼したのだった。
参加者 | |
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幸・鳳琴(黄龍拳・e00039) |
テルル・ライト(クォーツシリーズ・e00524) |
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695) |
ジョーイ・ガーシュイン(地球人の鎧装騎兵・e00706) |
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784) |
笹ヶ根・鐐(白壁の護熊・e10049) |
ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736) |
葵原・風流(蒼翠の五祝刀・e28315) |
『魔竜王の遺産』の封印を解くために、侵空竜エオスポロスの群れは、熊本城めがけて飛来する。
それを阻止せんと、ケルベロスたちは、熊本城に陣取り、これを迎え撃つ。
今ここに、ケルベロスとドラゴンの決戦が始まった。
●
「来たよっ!」
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)は空を指さして叫んだ。
夕刻の近づいた空遠に、侵空竜エオスポロスの群れが凄まじい速度で近づいてくるのが見えた。
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)は合わせた両手に、思わずぎゅっと力を籠めてしまう。
ミライの敵は、更にその向こうにいるのだ。
エオスポロス達は、ケルベロス達の姿に気付いてそれぞれ相手をしようと滑空する。
そのうちの一体が、こちらへと突進してくる。迎え撃とうと身がまえる頭上を、速度も落とさず飛び越えた。
風圧に煽られてみを竦めるケルベロスたちをあざ笑うかのようにぐるり旋回すると、大気を切り裂く咆哮と共に、雷光を迸らせた。
稲妻は最前線の者たちを防護を想像以上の威力で貫き、衝撃で麻痺させる。
さらに進撃しようとするエオスポロスの眼前で、幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)が竜砲弾が炸裂した。
笹ヶ根・鐐(白壁の護熊・e10049)は痺れて膝をつきながら、ボクスドラゴンの『明燦』に指示をだす。自らはまだ動けず、様子見だ。
ミライのオウガメタルが輝いた。オウガ粒子が前衛へと降り注ぎ、感覚を鋭くする。
ミライは翼で飛んでいる。危険な立ち位置だが、この場を突破し、彼方の敵を狙うためには必要だった。
同じく突破を狙うウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)のダメージを、明燦が属性を注入することで癒した。
「ありがとうよ」
小さな竜に礼を言うと、ウォリアはバスターライフルを担ぎ上げ、フロストレーザーを発射する。
ウォリアとミライを護り、この戦場を突破するための隙を作ることが目下の作戦だ。
「必ず送り出して……そして、倒します!」
突破も、撃破も同時にやって見せる。いつもは前に立つ鳳琴も、そのために、今回は後方からの援護を選んでいた。
そのためにも、エオスポロスの動きを見極めておかなくてはならない。
テルル・ライト(クォーツシリーズ・e00524)は強化の弾丸を自分に撃ち込みながらも観察を忘れない。
葵原・風流(蒼翠の五祝刀・e28315)は愛用のゾディアックソード、天秤星軌剣を抜く。
何より大事なことは、この熊本城にある魔竜王の遺産を、ドラゴンに渡さないことだ、と風流は思う。
祈りを込めて天秤星軌剣を一振り、星座を空中に描けば、その加護は鳳琴に力を与えた。
エオスポロスの炎が、ケルベロスらを焼き尽くそうと燃え上がる。
皮膚を焦がされながらも炎をかいくぐり、鳳琴は電光石火の蹴りを浴びせた。正確な一撃が入ったはずだが、手ごたえが薄い。
「さっきの電撃と、琴ちゃんを焼いたお返しだよっ!」
シルは、光の剣を具現化し、エオスポロスに斬りつける。怒りの一撃は、エオスポロスは少しばかり怯ませた。
その隙へ、ジョーイ・ガーシュイン(地球人の鎧装騎兵・e00706)は天空から急襲する。
美しい虹をまとう急降下の蹴りを叩き込めば、その痛みが逆鱗に触れたのか、エオスポロスはジョーイへ爛々と輝く目を向けた。
「おう、どうしたよ」
にやりと笑って挑発するジョーイに、エオスポロスはいきり立った。
「ポンちゃんはジョーイんさんをお願いね」
ミライの指示を受けた『ポンちゃん』はジョーイの元へとパタパタ飛んで援護している。サーヴァントたちもよく頑張っている。
ミライ自身は大きく息を吐き、気合を入れ直した。
鐐は、エオスポロスに組み付いた。もふもふな毛皮が妙に心地よく、エオスポロスはかえって苛ついている様子だ。
爪を振るって纏わりつく鐐に切りつけ、振り落とす。
ウォリアが激しく打ち出す竜砲弾が、ドラゴンに命中する。よろめいたドラゴンだが、与えた傷は浅いようだった。
「やっぱり硬ぇな」
テルルの展開したヒールドローンが周囲を跳んでいる。
風流はの星座の重力を宿した愛剣で、星天十字撃を叩き込んだ。その一撃が、ドラゴンの機動力を削いだ。
ドラゴンは風流めがけて尻尾を振るう。すんでのところでジョーイが割り込み、その太い尾を受け止めた。
「あ、ありが……」
「当たると吹っ飛ぶぞ。お前ちっせえんだからよ」
「小さいって言うなぁ!」
そんなやり取りを横目に、シルは影を縫って走る。死角から襲うその刃は見切ること困難で、ドラゴンの巨体で剥き出しの急所を確実に斬り裂く。
ジョーイがチェーンソー剣を起動する。シルの付けた傷へと刃を叩き込み、ガリガリと切り広げる。
ドラゴンは激痛に怒り、闇雲に音腕を振り回した。しかし、ミライの作った障壁によって、その威力は弱められている。
エオスポロスの周囲へとウォリアの打ち込む竜砲弾が釘付けにする。
「『我が汝に与えるは苦痛の渦。己が疫疾のうちに沈み込め!』」
鐐がさっき組み付いた時、エオスポロスにくっついた鐐の体毛が病糸と化して、エオスポロスの傷を抉り深める。
テルルは治癒の弾丸を鐐に撃ち、治した。
その時、ミライが皆へと声をかける。エオスポロスには聞こえないように、慎重に。
「……行きます」
●突破
突破するためのタイミングはあらかじめ決めてあった。今がその時だ。
エオスポロスの様子を観察していたテルルは、既にいくつかの隙を見つけている。
もし突破に失敗すれば、一巻の終わり。あの威力を喰らえばただでは済まないだろう。慎重に、未来とウォリアに伝える。
風流へ、エオスポロスは爪を振るった。剣で受け止めるが、その勢いを殺しきれず、鋭い爪に斬り裂かれてしまう。
「くっ、まだまだです!」
激痛にも臆することなく、風流はフォーチュンスターをエオスポロスにぶつけた。不意を撃たれたドラゴンに、星のオーラが弾け、鱗を砕いた。
大きく態勢を崩したドラゴンに、ケルベロスたちは一気に畳みかける。
「シルさん!」
「うん、琴ちゃん!」
鳳琴が己のグラビティを龍の形に具現化させるのに併せて、シルが、グラビティと魔力を光の剣に具現化させる。
鳳琴は龍のオーラを纏い、威力を増したグラビティを力の限り叩きつける。よろけた所にさらに一撃、もう一撃拳を打ちこみ、跳躍しての蹴りを浴びせ、舞い踊るように連打を浴びせる。
「六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
シルの詠唱と共に精霊が魔力の剣に収束し、膨れ上がる。撃ちだされた魔力砲は、さしものドラゴンにも痛打を与えた。
その勢いを途切れさせることなく、ジョーイはチェーンソー剣を叩き込む。
グォオオオオン! 吼えるエオスポロスに、テルルはエネルギー光線を放ち、先生のテレビフラッシュで目くらましをかけた。
ミライは放った弾丸がエオスポロスに着弾し、その時間を凍結させるのを確かめると、翼を広げた。
そちらを見たエオスポロスがブレスを吐こうと口を開くより早く、顔面にウォリアのオーラ弾が喰らいついた。
口中で炎が弾けて悶絶するエオスポロスの目の前を、明燦がパタパタと飛んでは挑発する。鐐はがっしりと組み付き、その注意を他所へ向けさせない。
かなりイラッとしたエオスポロスは、翼を広げるふたりを失念した。
「振り返らず行けやァ! コレ逃したら後がねェぞッ!」
ジョーイの発破にウォリアは頷き、翼を広げてドラゴンの右側へと羽ばたく。
「目指すはあの竜達……此処は任せた! 地球の護り手達!」
「いつも守ってもらってばかりで。……この瞬間も。どうかそれに応えたい」
ミライはポンちゃんを抱えてドラゴンの左を飛び超える。左右に攪乱されて混乱するドラゴンを飛び越えて、ミライとウォリアは戦場を突破した。
2人は顔を見合わせ互いの武運を祈る。そして、それぞれの狙う敵がいる高みへと飛ぶのだった。
●
強敵であるドラゴンに対して、戦力減少の不利で挑まなくてはならない。
まして、立て続けの猛攻を喰らって、エオスポロスは怒り心頭の様子だった。
高く飛び上がると、天から雷を雨あられと浴びせる。
「あァ?クッソ面倒臭ェなァ……それくらい気合いで治せや!」
嘘みたいだけどこれ回復技なのよね。ジョーイの乱暴な物言いで発破をかけられ、何故か治ってしまう。
「ケルベロスってすげー」
鐐、感心しつつ気力溜めを使ってシルを癒している。
(「うーん、でもちょっとやばいかなあ」)
ドラゴンの威力が高いのは承知で、その対策も万全だ。それでも、少しづつ、治せないダメージが積み重なっていく。
エオスポロスに与えたダメージもかなりなもののはずだが、まだ余力があるようだ。……間に合うだろうか?
胸によぎる不安を振り払い、ケルベロスたちは一層の攻撃を仕掛ける。猟犬の名に懸けて、決してあきらめはしない。
エオスポロスが太い尾を振るってシル達を薙ぎ払う。
もう一度、と鳳琴はシルとのコンビネーションで攻撃を仕掛ける。シルの翼が輝き、精霊砲の強烈な一撃が、エオスポロスを直撃した。
ジョーイのチェーンソー剣が唸りを上げて切り刻み、鐐 の病糸が傷口を腐らせさらに広げていく。
明燦は忙しく飛び回り、『先生』も応援に必死だ。
テルルのフロストレーザーによって、エオスポロスの翼が凍り付いた。
風流はゾディアックソードを振るう。その一撃はドラゴンの鱗に食い込んだ。その刃を抑えられ、逆にドラゴンの爪が彼女を襲う。
「あっ……」
剣の柄を離せぬまま、何とか身を捩るが間に合わない。鋭く巨大な爪が、風流の柔らかな肉に深々と突き刺さり、そのまま大きく切り裂いていた。
目の前が真っ赤に染まり、激痛で声も出ない。
(「まだ……倒れる訳に、は…………」)
もがく手は空を切り、風流の意識は闇に沈んでいった。
「やってくれましたね!」
鳳琴のオーラが怒りに燃え上がる。
嘲笑うようにエオスポロスは距離を取ると、雷のブレスを浴びせて来た。
テルルとジョーイの飛ばしたヒールドローンによって、威力は弱められているが、それでも体を貫く電光は強烈だ。
慎重に事を運び、2人を突破させた。作戦自体は間違いなく成功だ。
けれど、戦力を欠いてなおドラゴンを倒しきるには、もう一歩足りなかったかもしれない。
エオスポロスが不意に動きを止める。天をふり仰いで雄たけびを上げたかと思うと侵空竜は高く飛び上がった。
鱗をズタズタに裂かれた傷から、体液が大量に流れだしている。
「!? 待てっ!」
その意図を悟って、テルルはコアブラスターを発射した。それは、確かにエオスポロスの身体を貫いたが、ドラゴンは倒れない。
大きくのけぞって、エオスポロスは炎のブレスを吐いた。血反吐と共に吐き出す威力は衰えず、ケルベロスたちを焼き焦がす。
そのままエオスポロスは反転し、熊本城へと飛んだ。
「行かせるものか!」
鳳琴は竜砲弾で狙い撃つ。その一撃は翼を掠め、エオスポロスは一瞬よろめいたが、阻止するには至らなかった。
「待て! ……待てぇえええっ!!」
鳳琴の叫びは届かない。エオスポロスは全速力で熊本城めがけて突進すると、何のためらいもなく天守閣に激突し、自爆した。
●
ケルベロス達の攻撃を躱した何体かのエオスポロス達が次々と熊本城に突撃し、自爆する。
ドラゴンが爆発し、膨大なグラビティチェインが放出されていく。
爆音は彼方まで轟き、衝撃が大地を揺さぶった。ごうごうと吹き荒れる爆風に煽られ、砂塵が巻き上げて視界が閉ざされた。
地獄のような数分間の後、ようやく爆発が止んだ。辺りは静けさを取り戻し、徐々に砂煙が晴れていく。
そろそろと顔を上げ、目に飛び込んだ光景は、誰にも衝撃的なものだった。
熊本城は、完全に消滅し、ただただ地面がひろがるばかりだった。瓦礫が散らばり、そこかしこに爆発による穴が開いている。
「あ、あれは!?」
見上げれば、数時間前まで熊本城の天守閣があった辺りの空中に、禍々しい輝きを放つ水晶にも似た、巨大な球体が浮かんでいた。
「あれが……魔竜王の遺産?」
テルルが呆然と呟いた。よくよく見れば、その内側にドラゴンのような影が見える。球体の周囲は空間が振動しているのか、小刻みに歪みぶれていた。
鐐は、試しに、球体に向かって竜砲弾を轟竜砲を撃ち込んだ。だが、砲弾は球体に届く前に空間に弾かれ四散する。
シルとジョーイで吶喊し攻撃を試みたが、やはり弾かれ、近づくことがかなわない。
「こりゃあ……空間が歪んでいるのか?」
首をかしげるジョーイ。
「ううん、違う。……わからないけど、もっと禍々しいなにかだと思う」
精霊を操る少女は、その得体のしれない気配に身を震わせた。
「一旦脱出しよう」
鐐が言う。近づくことも出来ず、何が起きるかもわからない。ましてけが人もいるのだ。
作戦を立て、体勢を整えて出直すべきだろう。
撃破叶わなかった悔しさはあるが、今現れた脅威への危機感はそれを上回る。
更なる死闘の予感を胸に、ケルベロスたちは暗雲漂う熊本城を後にしたのだった。
作者:黄秦 |
重傷:葵原・風流(蒼翠の五祝刀・e28315) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年7月7日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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