●熊本城ドラゴン決戦
空の色は青から橙へ。夕闇迫る熊本城――そこへ次々突撃するものがあった。
猛々しい咆哮、風切る羽搏きの音は幾重にも重なる。
それらを起こすのは侵空竜エオスポロス。侵空竜たちは自分の身をもって熊本城に突撃し自爆してゆく。
それは贄となるために。
やがて熊本城は破壊され、その廃墟より何かが姿を現した。
恐ろしい力を秘めたそれは――。
●続く戦い
熊本市全域で行われたドラゴン勢力との戦いは、最小限の被害で敵を撃退し、勝利することができた。
しかし、竜十字島から出撃したドラゴンの軍団はすぐそこまで迫ってきているのだと夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は紡いだ。
「敵の目的は『熊本城』に封じられた『魔竜王を復活させる事すらできる魔竜王の遺産の奪取』だと思われるんだ」
ケルベロスの活躍により、グラビティ・チェインの略奪を阻止できた今、魔竜王の遺産の封印はまだ破られてはいない。
だがこの封印を無理やりこじ開けるべく、ドラゴンの軍団は熊本城に特攻。自爆する事で自らのグラビティ・チェインを捧げ封印を解放しようとしているようだ。
「もちろん解放させるわけにはいかないから、すでに戦っている皆と合流し、熊本城の防衛にあたってほしいんだ」
そう言って、イチは敵の目的について続ける。
敵の目的はふたつ。
ひとつは、『侵空竜エオスポロス』の軍団を熊本城に突撃させて自爆させ、魔竜王の遺産の封印を解除する事。
そしてもうひとつは覇空竜アストライオスと配下の四竜、廻天竜ゼピュロス、喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースの儀式により、封印を解除された魔竜王の遺産を竜十字島に転移させる事。
魔竜王の遺産が竜十字島に転移させられてしまえば、こちらから手出しする事は至難なり、ドラゴン勢力の野望を食い止める事は不可能となると思われる。
それを防ぐ為には侵空竜エオスポロスを迎撃すると同時に、儀式を行う覇空竜アストライオスと四竜への攻撃を敢行する必要があるのだ。
となれば、この戦いに負けるわけにはいかない。
「まず、熊本城に突撃してくる『侵空竜エオスポロス』1体と戦うことになるんだ」
侵空竜エオスポロスは、覇空竜アストライオス配下のドラゴンで素早い機動と鋭い斬撃、電撃のブレスなどを得意としている。
この侵空竜エオスポロスは、熊本城突入の12分後に自爆しコギトエルゴスムとなる事で、封印の解除の為のグラビティ・チェインを放出するようだ。
これを完全に阻止する為には、12分が経過する前に撃破する必要がある。
撃破ができなかった場合も、大きなダメージを与える事ができれば、自爆の効果が弱まり、封印を解除するグラビティ・チェインも減少するので可能な限りダメージを与える必要がある。
「そして侵空竜エオスポロスへ対すると同時に、儀式を行なう覇空竜アストライオスと四竜への対策も必要になるんだ」
覇空竜アストライオスは自爆による封印の解除に失敗した場合、儀式を終了させた配下の四竜を犠牲に捧げてでも魔竜王の遺産を手に入れ竜十字島に送り届けようとするはずとイチは言う。
これを阻止する為には、儀式が完成する前に覇空竜アストライオス、或いは四竜の一体でも撃破する必要がある。
しかし覇空竜アストライオスと四竜は、侵空竜エオスポロスの軍団の背後にいる為、侵空竜エオスポロスを突破しなければ戦いを挑む事が出来ない。
「という事を踏まえて、検証をした結果――侵空竜エオスポロスと戦いつつ、少数の飛行可能なケルベロスを突破させて、覇空竜アストライオスと四竜を奇襲する作戦が成功の可能性が最も高いんだ」
それはとても危険な作戦となると、イチは集った者達へと視線向ける。
けれどやれるのはケルベロス達しかいないのもまた事実なのだ。
「覇空竜アストライオスと配下の四竜は、互いに連携して戦うようだから、突破した全戦力を一体の目標に集中させると逆に危険だと思うよ」
それは他の竜が連携して妨害し確実に撃退する事が予想されるからだ。
だが有効な手がないわけではない。
皆にこの戦いをゆだねるよと、イチはケルベロス達を送り出した。
参加者 | |
---|---|
天壌院・カノン(ペンタグラム・e00009) |
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998) |
狗上・士浪(天狼・e01564) |
シィ・ブラントネール(フロントラインフロイライン・e03575) |
アベル・ウォークライ(ブラックドラゴン・e04735) |
サフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381) |
アトリ・セトリ(エアリーレイダー・e21602) |
朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547) |
●接敵
それを――侵空竜エオスポロスを越えなければ、その先には行けない。
難しい戦いに躍り出たケルベロス達は一体の敵と見えていた。
「キヌサヤ、まだ終わってないんだ。行くよ」
傍らのウイングキャット、キヌサヤへとアトリ・セトリ(エアリーレイダー・e21602)は声かける。
先の戦いから続けて向かった戦場がここだったのだ。
「さっさと片付けて帰るとしようぜ」
なぁと疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)が声向けたのは狗上・士浪(天狼・e01564)だ。何度も同じ戦線を辿った仲間の存在は心強い。
「ああ、けど……自爆特攻たぁな」
なりふり構わずってのはハタ迷惑なもんだと士浪は零す。
「……花火代わりにもならねぇ。好きにできると思うなよ」
士浪の言葉に朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)も頷く。
「それだけ重要なんだよね? だったら、尚の事、好き勝手はさせられない!」
まさにその通りとアベル・ウォークライ(ブラックドラゴン・e04735)は頷く。
「この空は地球全ての命のものだ。貴様らの好きにはさせない!」
どんな相手であれ騎士道精神に則って。
アベルは真っ直ぐ敵を見据えていた。真っ向勝負を好む性分故にだろう。
すぅと一呼吸して、サフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381)は青い瞳を敵へ。
「我らは星の猟犬、汝らを葬る牙持つ者なり……!」
紡ぐ言葉には敵と相対する意志があった。
天壌院・カノン(ペンタグラム・e00009)は低い位置飛び、突破を図っている事を気取られぬ様注意しながら攻撃を仕掛ける。
「私は撫子、冷たい撫子。名前は教えてあげないわ」
かつて『彼女』が紡いだ言葉を再現し、その魂とのリンクを形成した間は『彼女』が得意としていた氷河の魔法がカノンの手に。
淡い赤紫色の花連なるリンクが散っていく。散る前にカノンは大切な友の力を借りて敵の身に氷結を穿つ。
「レトラ、行くよ」
傍らのシャーマンズゴースト、レトラへとシィ・ブラントネール(フロントラインフロイライン・e03575)は声かけながら、己の周囲に圧縮空間を生む。
「シャボン玉遊び、したことあるかしら? 触るとすぐに壊れちゃうの。こんな風に、ね?」
空間を超圧縮しシャボン玉のような形に固定。それが敵に触れると元の空間へ戻ろうと反発力で強力な衝撃波を。
その衝撃は身に深く入る響き、痺れを残していく。
レトラはその霊魂に響く攻撃を。
後方からは、結が仲間の為に自らのグラビティを形とする。結の傍らではボクスドラゴンのハコが属性インストールをヒコへ。
紅く燃える猛禽の翼、それをアトリへ向けた。
その翼にアトリは瞬き、そして己の足元に集中する。
「冥く鋭き影、猛禽の剛爪の如く――刺し貫く!」
影の刃を両脚に宿しアトリは跳躍した。
敵の姿は眼下に、猛禽の如く急降下しながらその身を裂く。そして着地と共にその影は敵を侵食し、敵を刺し貫かんと暗き爪へと変貌した。
そしてキヌサヤは耐性を高める為羽ばたきを前列の仲間達へ。
流星の煌めきと重力の力を乗せサフィールが蹴りを放つ。
攻撃に重きを置いたのはサフィール一人。
一番強烈な攻撃を喰らわせたことで早めに倒すべきと、その爪向けられる。
放たれた攻撃は早く避ける事はままならない。
サフィールは正面からそれを受けるが伏すほどではない。
それにすぐ、癒しの手が伸びる。
己を含む前衛に向け、アベルはヒールドローンを。それらは仲間達を警護するように飛び交う。
後衛に向けてはヒコからは光輝くオウガ粒子を手向ける。
その力も受けて、士浪は竜鎚を振り下ろす。
士浪の放った竜砲弾は敵のその顔を殴り倒すようにぶち当たる。
その様に思わず、いい当たり所だと零すほどに。
この戦いは決め所がある。その時の為までにできる事を。
それが戦況を分けると知っているからだ。
●突破
攻撃を重ね、敵の動きの幅を狭めていく。
先程、アトリと結が四分経過したことを皆に知らせた。
突破を狙うタイミングがやってきたのだ。
が、先に仕掛けてきたのは敵。その口元には雷撃。
雷の吐息が向く先を察しアベルはカノンとシィ、二人の前へと急ぎ入り込む。
二人が倒れればこの後の作戦に繋ぐ事ができないのだ。そして主守るべくレトラも同時に入り込む。
轟音と共に走る雷の吐息はアベル達のおかげで二人には届かない。
「……まだ、いけるな」
攻撃を受け、自身の状況をすぐさま判断しアベルはそのまま己が腕を振り上げる。
「ドラゴニック・グランドクロー!」
今までの攻撃で、敵の足は落ちている。避けるという事は難しい所までにおちていた。
アベルの、両手の、竜爪。それは巨大変異し振り下ろされる。
騎士の誇りと悪への怒りを乗せて力強く虚空を切り裂けば竜爪の軌跡は空間の歪みを引き起こし、超重力衝撃波が走った。
それを追いかけるようにアトリが走りこむ。
その脚に流星の煌めきと重力の力。
とんと地面を蹴って敵の身体を蹴りあげれば、敵の身は一層重くなる。
攻撃の機会でもあるのだろう。けれど結はアベルを癒す。
オーラを溜めて、アベルへ。仲間を護るように動くアベルは、守りを固めていてもその傷は深い。
雪色の花を模した銀鎚にカノンは無数の霊体を憑依させ、攻撃を掛ける。
その一撃は重く、その身を汚染していく一撃。
シィから向けられたのは全てを物質の時間を凍結する弾丸。それは敵を穿ち、身を固まらせていく。
朱色の霊布を纏う浄星刀を振るい、影の如き斬撃をサフィールは繰り出す。
それは密やかに敵の急所を掻き切っていく。
距離を取り勢い着けて、士浪が蹴り上げればそこに星のオーラが踊りあう。
その蹴りは一閃、敵の懐を捉えていた。
「錦、出番だ」
呼べば、ヒコの手にあるファミリアロッドはにゃあと鳴いて仔猫の姿となり跳躍する。魔力を帯びたその身で敵へと攻撃するために。
その時もてる最大火力を、敵へ打ち込んだ。
一撃ずつは十分に重い。だがその中で、敵は余裕のある素振りを見せている。
「これは、まだだな」
敵の様子を観察し、ヒコは無理だと制する。
攻撃のダメージは募っている。だがこれではまだ足りなかった。
敵はぎらぎらと瞳輝かせ威嚇するように構えている。
叩き落される――そんな、予感。
突破不能な可能性感じる雰囲気にカノンとシィ、そして仲間達も突破を掛ける事を踏み止まった。
しかしまだ、もう一度。
まだもう一度、突破を仕掛ける時間はある。
けれど、どこか焦りのようなものもある。
「絶対に自爆だけはさせんじゃねぇぞ! 限界まで削れ!」
だがこの場の空気を切り替えるかのように士浪の声が響く。
周囲でも突破を行い成功しているところがある。それを目にすれば、敵はその可能性も抱くだろう。
それはブラフ――突破を気取られぬように、こちらの目的は自爆阻止であるかのように見せかけるための声。
「その心意気や良し」
アベルはその声に頷き、再び構えを取る。
その隣でサフィールも同じように頷く。
「一歩も、引かない」
「そうですね、必ず倒しましょう」
カノンもその声に頷き、戦意を見せる。突破は無いと思わせるように。
その、倒すのだと思わせる様子に敵も受けて応える気なのか、その爪で攻撃を仕掛けてくる。
「鈍っているな」
しかしそれは、アベルによって受け止められた。
そのまま、アベルは至近距離、アームドフォートの主砲を敵に向け、一斉発射を行う。
光と熱を受ける敵。
さらに、アトリが推した爆破スイッチ。
その一押しにより敵の身の上で無数の爆発が起きてゆく。
カノンは再度、大切な友の力を借りて。
梅花の紋が綻び咲く木製の下駄をカラコロと音甲高く。そこに秘めたる星型のオーラと共にヒコは蹴りを見舞った。
結はさらなる援護をと、サフィールへと満月に似たエネルギー光球をぶつけ、その攻撃力を高めた。
その援護と共にサフィールは懐へと走りこんだ。
肉薄すればその爪も牙も自身より大きい。
けれど身体が大きい分――死角もそうなる。
「咲き誇れ血華、速やかに葬送せよ」
魔術により幻想化した花、その魔力より造り出したダガーが無数に現れる。
サフィールの造り出したそれは敵の身へと勢いよく、突き刺さってゆく。
レトラの攻撃に続けて、シィの傍らからファミリアが、空を泳ぐように敵へと向かう。
そして走る衝撃波が一閃する。士浪と敵と。それを繋ぐように迸ったそれは敵の上を走っていく。
「食い破れ」
そして、超振動により内側から敵を引き裂いていく。
募った攻撃と、その内側からの攻撃により、ごばりと敵はその口元から鮮血を零す。
先程よりも、敵を襲った威力は大きい。
耐えるのにも限界がある。くしゃりと、潰れるように態勢崩すのが見て取れた。
巨体である分、その態勢を直すのにも時間がかかる。
そこには大きな隙が生まれていた。
「ヒコさん、アベルさん! 突破を!」
結が二人に突破を促す。けれどそれは囮。
敵も突破の可能性がゼロだとは思っていなかったのだろう。
アベルとヒコは視線を合わせ動く。二人の視線は儀式が行われている方向。
ヒコが大きく羽ばたいて敵の向こうを見据えるような動きを。
アベルもその翼を大きく動かし、ヒコの逆方向へと動いた。
左右に動き、それを敵の視線が追う。それはどちらを追うかと瞬時に判じようとしているのだろう。だが標的がふたつに分かれては意識もそぞろ。
行かせてなるものかと敵の意識が完全に、そちらに向いた瞬間だ。
今しかないとシィは共に突破を掛ける者の名を響かせる。
「カノン!」
「ええ!」
シィは上を跳び越え、カノンは下からすり抜けるように、その敵の巨体ギリギリをすり抜けて突破した。
「行った……!」
その姿を目に、アトリは良しと、ぎゅっと拳握る。
けれどその安堵は一瞬だ。敵もまた動いている。
敵も、すぐに気付いて反応したのだろう。だがそれよりも二人の方が速かった。
レトラは主の行先を見送るように一礼をする。
己を越えられ、儀式の方へ向かう二人。
敵はそちらに一瞬気を取られたがすぐに敵意は残った者達へと向けられた。
それはよくもやってくれたなと、そう言っているような視線。
「我々ケルベロスの団結力を侮るな!」
アベルは高々と、その視線に応えるように声を上げる。
一番の目的は、達した。けれど、まだ仕事はある。
「無事、突破はできたがこれからがキツイな」
「ここからが本番だろ」
鋭い視線はそのまま敵に、けれど口端上げて士浪は笑って見せる。
その様に、頼りにしてるぜとヒコもまた笑って返した。
気を引き締めるように、結も紡ぐ。
「癒しは任せて! でもちょっと無理なときはヒコさんもよろしく!」
結は己の為すことを知っている。けれど、今一人で支えられるかは際どくなるだろう。
それに誰も倒れさせない、その為に自分も倒れない――今日はひとりで支えるには難しい相手との戦いなのだから。
「でも、確実にダメージは与えてる。倒せる相手だ」
サフィールは武器をぎゅっと握り、倒せるのだと、一歩も引かない強さを見せた。
●強者なれど
敵からの攻撃は、変わらず苛烈だ。
前列すべてを巻き込むように雷の吐息。
それは庇いに入っても、全員を守りきれるものではなく、守りに徹していたサーヴァント達はこの場より姿を消していた。
それでも敵は確実に追い詰められている。
敵の息も上がっている。飛ぶのもどうにか、そんな様子だがまだ戦意はある。
今までかけてきた阻害の数は増えている。敵の攻撃、その威力も確実に下がってはいるのだ。
けれどこちらも消耗している為、集中して一撃を受ければ危ういのは必至だ。
「しぶといな」
さっさと倒れちまえと悪態つきながら氷結の螺旋を士浪は放つ。
けれど、その表情は決して余裕のない物ではない。
見ていればわかる、あちらは終わりが近いのだ。
ぐるぐると頭上で簒奪者の大鎌をアベルは回し、構えを取る。
そして刃に『虚』の力を纏わせ敵を激しく斬りつけた。その傷から、微々たるものだが受けたダメージを癒していく。
ギリギリの戦い、回復できる術があるのならする必要があった。
もちろん、回復に気を回してくれてはいるもののこちらに運悪く入るような一撃があれば倒れる事は必至なのだから。
ハコがタックルを仕掛け、前列の仲間達を癒すべく、漆黒に紅いラインが印象的なブーツをもって結は舞う。
花弁のオーラはひらひらと降り注ぎ、皆の傷を癒していく。
「――速やかに葬送せよ」
幻想化した花、そしてダガーを再び死角からサフィールが放つ。
それは敵の身の上、を横断するように突き刺さっていく。
その痛みに敵は悶え、がくりと頭落とすように態勢を崩した。
その姿は、ドラゴンの強さを感じさせない弱弱しいものだ。
このドラゴンの終わりは、もうそこにある。
そう感じた時、アトリの身体は自然と動いていた。
地面を蹴ったのは自分の意志よりも早い、反射だ。
紡ぐ言葉も自然と零れていた。
「冥く鋭き影、猛禽の剛爪の如く」
影の刃を両脚に、すでに宿されている。
「――刺し貫く!」
敵の上から、その落ちる力と共に自らの力を乗せて。
敵を穿つように、影纏う蹴りは落とされた。
●現れしもの
敵が、侵空竜エオスポロスが墜ちる。
アトリの猛禽の如き一蹴に最後、圧されて。
それはケルベロス達に押し切られての終わりだった。
重たい音と共に地に落ちたそれはすでに事切れている。
「すごい……倒しちゃった……」
11分目の、その合図を出す直前に。
まだ戦っている者達がいる。その中でドラゴンを一体落とした事に、結は高揚する者を抱く。
けれどまだ安堵はできない。周囲に戦っている者達がいるのだから。
「回復くらいなら、手伝いにいけるな」
結はどうだとヒコが尋ねればもちろんと頷く。
皆はと視線向ければ、士浪は雑に頭かきながら一つ息吐いて。
「仕方ねぇから付き合ってやるよ」
「まだ一度くらいなら、庇いにはいれるだろう。共に行こう」
アベルもまだ戦意は高い。
サフィールも勿論、まだ戦えるのだからと頷いた。
近くの仲間達の元へと動き始めた時だ。
「待って、ドラゴン達が、自爆だ……!」
アトリが指し示す。
援護に向かうよりも早く――まだ戦っていたエオスポロス達は熊本城へと自ら向かう。それは命を賭して行われるもの。
それを、防げた所、防げなかった所と様々だ。
熊本城はその自爆攻撃にて完全に崩壊し、砂煙が立ち上る。
「花火にしちゃタチが悪ぃ」
低く唸るような声を士浪が零す。
砂煙の先に何が出るのか――瞳を凝らすがそれはまだ見えない。
しかしそれがだんだんと収まると天守閣があったあたりに、何かが浮いていた。
それは――禍々しきドラゴンオーブだった。
作者:志羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年7月7日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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